サッカー、しますわよ【ウマ娘×イナズマイレブン】   作:ローマ市民兼インド村住人

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前回のあらすじ
ギャン厨照奈


第3話「夢への旅路」

「うおー! フランスだー!」

 

 

 シャルル・ド・ゴール空港から出て1歩目。円堂が大声で叫んだ。彼のように言葉に出してはいないが、他の部員3人も目を輝かせながら周りを見渡す。

 

 

 サッカー部が設立した4月から月日は流れて8月。彼らは、合宿を行なうためにフランスへと飛んだ。

 

 

 その間に起こったイベントと言えば、中間テスト・期末テストの1週間前から当日までも合宿を行なったことだ。

 

 

 特段の事情がない限りはテスト1週間前から部活動を禁止されているのだが、照奈は『学校に泊まるなら、部活動をしてもいいのでは?』と理事長に直談判したところ、許可が下りた。雷門中には合宿所が併設されているのと、部員が少ないのが主な理由である。

 

 

 照奈主催の勉強会が良い方向に向いたのもあり、4人全員が補習を回避。無事にフランスの地に降り立った。

 

 

「はい、注目」

 

 

 各々がフランスの空気を味わっているところに、照奈が手を叩いて彼らの視線を自分に向けさせた。

 

 

「今から、私たちが泊まる()に向かいます。隣には約1か月間共にすることになるチームの監督と、チームのキーパーを務めている()()()()が住んでいるから────多分着いてからも言うと思うけれど、何かあれば私か彼女たちを頼りなさい」

 

「家、ですか?」

 

 

 木野が首を傾げる。てっきり、彼女は合宿所かホテルに泊まると思っていたのだ。他の3人も同じことを思っていたようで、期待と不安が入り混じっている様子。

 

 

 ────フランス合宿の予定は、照奈の口からほぼ語られていない。知っているのは、合宿に掛かる費用が全て照奈負担であること。彼らの保護者にはある程度説明済みだが、口封じをされていること。この2つだけである。

 

 

「ええ、そうよ。費用削減────というのは冗談で、その姉弟が住んでいる家の隣が、たまたま空いていたから()()()()

 

「「「「……」」」」

 

 

 たまたま空いていたから買った。この一言で4人が固まる。

 

 

 数秒固まったあと、円堂が恐る恐る口を開いた。

 

 

「監督、この合宿は1回だけしかやらないって言ってませんでした?」

 

「言ったわよ。まあ、来年になって部員が増えなかったら、もう1回行ってもいいけど」

 

 

 2回目の合宿を匂わせる照奈だが、彼らが気になっているのはそこではない。自分たちの認識が正しければ、合宿の費用よりも家を買う方がお金が掛かるのではないかと。

 

 

 しかも、自分たちが合宿でフランスに行くのは1回限り。"いくらなんでもやり過ぎなんじゃないか"、という感想が4人の間で駆け巡る。

 

 

 そんな雰囲気を察したのか、照奈はフォローを試みた。

 

 

「────もしかして、家のことかしら? 合宿が終わったら私の別荘になるだけだから、変に気にしなくていいわよ」

 

 

 子供がお金のことなんて考えなくてもいいのに、と思っている彼女ではあるが、買った物が買った物なので気にしてしまうのも仕方なしと割り切ってもいる。

 

 

 加えて、特に別荘として使う予定もない。『家具付き賃貸として長期的な運用をする予定よ』と真実を言ってしまえば、余計な気遣いをさせてしまうことを考えたからだ。

 

 

 ここまで言っても、部員たちは微妙な表情をしている。となれば、強引に話を切り上げて次の場所へ移動すべきだと、照奈は判断した。

 

 

 

 

★☆

 

 

 

 フランス・パリの郊外。照奈のガイドによって雷門中サッカー部が宿泊する予定の家────ごく普通の一軒家────に着けば、男女2人が門の前で待っていた。

 

 

 男の方は髪色がド派手に3色へと分かれていた。七三分で前が白、後ろが栗色、インナーで金。女の方はその男よりも30cmぐらい背が小さく、黒髪ロングにインナーで灰色が入っている。チェーン付きのフチなし眼鏡を掛けているのもポイントと言えるだろう。

 

 

 そのド派手な見た目で服装が緑色のジャージ上下であることは4人を驚かせた上に、その中で一番驚いたのは半田だった。なお、照奈は男の姿を見て吹き出していた。

 

 

「会って早々に吹き出すとは……まあ、実際に会うのは初めてですから、()()()()()()が見ればそうなるのも仕方ありませんか」

 

 

 女は照奈に呆れながらも、流暢な日本語で喋り出す。

 

 

「もう少しなんとかならなかったのかしら?」

 

「本人が気に入っているので。であれば、変える必要なんてないです」

 

「ならこれ以上は何も言いませんが────半田くん、何か言いたいことでもあるの?」

 

 

 容姿の次は言語力に度肝を抜かれる部員たちだが、半田だけ別の何かに反応しているようで、そのことに気付いた照奈が問いただす。

 

 

「監督、この女性ってまさか……」

 

「あら、知ってるのね」

 

「いや、知ってるも何も、()()()()()()()()M()V()P()じゃないですか!!」

 

 

 半田の発言に、他の3人が思わず一歩下がる。

 

 

「俺、サッカー見るのも好きなんで流石に知ってますって! 2年前に行なわれたワールドカップで、ゴールデンボール・ゴールデンブーツ・最優秀若手選手賞を受賞した"フランスの英雄"ですよ!!」

 

「マジかよ……」

 

「フランスの英雄……」

 

「オレたち、そんなすっげぇ人が監督をしてるチームと練習するってことですよね!」

 

 

 そして、各々のリアクションは英雄を気持ちよくさせるには十分だった。隣の男も目を瞑って何度も頷いている。

 

 

 ────照奈は再び吹き出しそうになるのを我慢した。

 

 

「ふふ、ありがとうございます。あ、自己紹介が遅れましたね。私は"ジャーニー・ステイ"。この子は()の"オルフェ・ステイ"です。オルは日本語を喋れませんが、英語なら少し話せるので、授業で習った英単語を並べたりして話してあげてください」

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

 

 お辞儀をした4人に対して、ペコリと返すオルフェ。彼の動作1つ1つが照奈の笑いのツボを刺激する。

 

 

「監督、さっきから様子がおかしいですけど……大丈夫ですか?」

 

 

 事あるごとに笑いを堪えているため、不審に感じた木野が話しかけるも、彼女は後ろを向いて答えない。

 

 

「放っておいていいですよ。Or, dis-leur comment se répartir les chambres(オル、部屋割りを教えてあげて)

 

D'accord(分かった)

 

「オルが部屋を教えてくれるので、先に荷物を置いてきてください。この失礼な女は私がなんとかしておきます」

 

 

 そう言って、ジャーニーは4人を家の中に押し込んだ。玄関の扉が閉まってから数秒後、照奈は何事もなかったかのようにスンッと真顔に戻る。

 

 

「いきなり落ち着くのやめてくれます?」

 

「本人がいなくなれば耐えられるのよ」

 

「こうなることが予め分かっていたので、オルには気にしないように言ってありますが……」

 

「ま、次は大丈夫ね」

 

「そうですか。次笑ったら病院送りにしますね」

 

「やれるものならやってみなさい────と言いたいところだけど、あの子たちに迷惑を掛けてしまうから極力我慢するわ」

 

 

  前世の知り合い(オルフェーヴル)が男体化していた。トレセン学園を卒業してから片手で数えるぐらいしか会っていなくとも、照奈も笑うしかなく。

 

 

 とはいえ、彼はジェンティルドンナを知らない。本来なら一方的に笑われることに対して不快感を覚えるところだが、そこはジャーニーが言及していた通り、事前にフォロー済み。

 

 

 ──────このフォローは、()()()()()()()()()()()を知っていないとできない。

 

 

 つまり、ドリームジャーニーも転生したということを意味する。

 

 

 

 

★☆

 

 

 

「中学の頃、"ラヴィアンローズ"というフランスのチームと戦ったのよ。そのときの10番がジャーニーで」

 

「コンタクトを取ったのは私からですね。当時の帝国学園が優勝した記事にジェンティルさんの写真があったので、学園に連絡しました」

 

 

 荷物を纏めたあと、リビングで昔話が語られる。理由はもちろん、部員4人が気になっているからだ。一体、どうやって"フランスの英雄"と友人になれたのか。

 

 

「その試合、どっちが勝ったんですか!」

 

 

 円堂が机に身体を乗せそうな勢いで前のめりになる。彼は今、ワクワクが止まらないのだ。

 

 

 ジャーニー・ステイというとんでもないプレイヤーと出会えたこと。そして、自分たちの監督がそんな英雄と試合をしたという、夢のような出来事が実際にあったこと。

 

 

 当然ながら、他の3人も円堂までとはいかずともソワソワしている。

 

 

「2-2で引き分けだったかと」

 

「帝国学園ってすげぇな……」

 

 

 照奈がいるとはいえ、負けはしなかった当時の帝国学園の凄さに感心する染岡。日本のサッカーは世界に通用すると、僅かながらも希望を抱いたのだが、

 

 

「凄かったのは照奈さんだけでしたよ。彼女が縦横無尽に走り回った結果が引き分けです」

 

 

 それをジャーニーが無慈悲に両断する。通用したのは照奈だけであり、当の本人が「攻撃も守備もほぼ私1人でやっていたわね」と肯定したのが更なる追い打ちとなる。

 

 

 しかし、照奈の言葉をそのまま受け取るのであれば、たった1人で引き分けに持ち込んだということでもある。

 

 

「私以外の帝国メンバーは、彼らからボールを奪うことすらできなかったわ。全国優勝後に戦ったのもあって、椎奈以外はしばらく学校に来なかったぐらいに精神的なダメージを受けていたのよ」

 

 

 「へぇ……」と相槌を打つ半田。

 

 

 今、4人の中では様々な感情が渦巻いている。照奈以外が手も足も出なかったことからのショック、逆に照奈は通用したどころか1人で全てなんとかしてしまったことに対する衝撃、あの帝国でさえ心が折れることがあるんだという意外な事実。

 

 

 それぞれの反応を伺いながら、ジャーニーは話を続ける。

 

 

「確かそれがきっかけでしたね。貴女が指導者を目指すように────いえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思ったのは」

 

「そうね。日本のレベルを手っ取り早く上げるなら、優秀な指導者を増やすのが最速だと考えたの。それと、いつまでも帝国が優勝するわけにもいかないでしょう?」

 

 

 語られる照奈の決意。世界相手にたった1人で勝ちかけた日本最強のプレイヤーがプロにならず、雷門中の監督になった理由。

 

 

 日本のサッカーのレベルを上げる。世界と戦える国にするために。そして、帝国一強ムードを打ち壊すために。

 

 

 これまで、照奈が部員たちに個人的な話をすることはなかった。うっかりポロってギャン厨だとバレたらブランディングが台無しになってしまうのを恐れたからだが、監督がそんな想いで指導していたことを知った彼らは、感銘を受けていた。

 

 

 半田だけは若干不思議がってはいたものの、その様子を見逃さなかった照奈が問う。

 

 

「質問があるなら聞くわよ」

 

「監督やコーチって向き不向きがあるじゃないですか。必ずしも名選手が名監督になるわけではないので、全員を指導者にするっていうのはだいぶリスクが大きい賭けなんじゃないかなと」

 

 

 彼の真っ当な指摘に対して、彼女は首を横に振った。

 

 

「根拠は教えられないけど、絶対に良い指導者になると確信したから提案したのよ」

 

「なるほど、ありがとうございます」

 

 

 返って来たのは抽象的な回答。それでも半田は納得して礼を言う。"監督がそう言うのならそうなのだろう"と、ここ数か月間で妄信するようになった。なってしまった。

 

 

 となれば、次の疑問はこれだ。

 

 

「ジャーニーさんはなんで監督になろうと思ったんですか?」

 

「オルにサッカーを教えるためです。プロになってしまったら、時間を作れないので」

 

 

 




ジャーニー・ステイ
年齢:22
ポジション:フォワード
背番号:10

照奈と同様に転生者。"フランスの英雄"という二つ名とは裏腹に、常軌を逸したブラコン。照奈曰く、「年が離れたせいで、何かが壊れたのでしょうね」とのこと。


オルフェ・ステイ
年齢:13
ポジション:?
背番号:?

転生者ではない。ウマ娘のオルフェーヴルと大体同じだが、性別は男。そろそろ1人でお風呂に入りたいのに、姉が強引に入ってくるのでどうしたらいいか悩んでいる。
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