サッカー、しますわよ【ウマ娘×イナズマイレブン】   作:ローマ市民兼インド村住人

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前回のあらすじ
ドリジャも転生してた。

とりあえずここまでです。

今月中に6話ぐらいまで投稿できたらいいなと思いますが、書き溜めよう!となったら次回の投稿は6月になります。
というか、書き溜めと言った割には数が少な過ぎるので普通に投稿しても良かったような気がしなくもないです。

細かい修正ですが、タイトルを「サッカー、しますわよ」に変更しております。


第4話「シャスソヴァージュ」

 翌日。雷門中サッカー部の4人は、長旅の疲れなんて関係ないと照奈に叩き起こされ、朝のランニングを行なっていた。

 

 

 それにはジャーニーとオルフェの姉弟も参加しており、元から彼らも日課としてやっているらしい。

 

 

 30分にも及ぶ長距離ランを終えれば、姉弟とは一旦別れてシャワーで汗を流し、朝食の準備。食卓に並ぶはご飯に味噌汁、出汁巻き玉子にほうれん草のおひたしと、日本にいたときも食べているようなメニューばかり。

 

 

「あの流暢っぷりから見て分かる通り、ジャーニーは日本が好きなのよ。だから、フランス政府が日本のスーパーマーケットを近辺に建てて、日本食を簡単に手に入れられるようにしたの」

 

 

 4人の中でそんな疑問が思い浮かんだのを予測していたのか、照奈がセッティングをしながら説明を始める。

 

 

 政府がジャーニーのためにスーパーを建てた。たったそれだけでも、彼女の偉業を国が讃えていることが分かるし、朝食のメニューが日本を思い出させるようなラインナップになっているのも理解できた。

 

 

 全員が椅子に座り、手を合わせて「いただきます」と挨拶をする。その直後、円堂は白飯をこれでもかと掻き込む。

 

 

 テスト期間中の合宿でも円堂は同じようなことをしていたため、誰も気にしていない。余程お腹が空いていたんだな、と毎回誰かが思っている。

 

 

 ────黙々と食べ進める5人。会話がないのは、このあとの予定が詰まっており、喋りながら食べていると間に合わないからだ。

 

 

 照奈が絶対避けたいのは初っ端からの遅刻。それが理由でジャーニーに煽られた場合、腸が煮えくり返るのが見えている。

 

 

 前世では彼女と仲が良いというわけではなかった────そもそも照奈にとっての友人はブエナビスタぐらいしかいなかったのだが、今世では唯一事情を知る者同士であり、サッカーの実力的にも大体同じなので、ほぼ親友レベルにまで仲を深めていた。言い換えると、競馬仲間(ギャン厨)である。

 

 

 なので、8月中に開催されるG1レース、モーリス・ド・ゲスト賞、ジャック・ル・マロワ賞、インターナショナルステークスは現地で観戦する予定だ。

 

 

 本音を言うなら、開催する日はずっと競馬場に入り浸りたいレベルだが、そこまでやるとギャン厨が露呈してしまう。あくまでも秘密の趣味。

 

 

 とはいえ、いつかは部員たちにバレてしまいそうな予感もしている。そうなったらそうなったで仕方ないが、できる限り隠しておきたいのだ。

 

 

「ごちそうさまでした!」

 

 

 真っ先にご飯を平らげた円堂が、そう高らかに叫んで皿を片付けに行く。続けて半田と染岡も完食し、残るは照奈と木野の2人だけ。

 

 

 これも、合宿と同じ流れである。

 

 

「ここでも私たちが最後なんですね」

 

「いいじゃない。時間はまだあるから、そんなに急がなくてもいいわよ」

 

「そうします」

 

 

 

★☆

 

 

 

 

 朝食と準備を済ませ、集合時間の30分前には近くのサッカーグラウンドに集まった雷門中サッカー部。と言っても、隣に住んでいる姉弟は先に来ており、初めて見る赤毛の少年もいる。

 

 

 照奈は少年を見て、咄嗟に目を逸らした。

 

 

 姉は昨日と同じジャージ。弟と少年はユニフォーム。

 

 

 そのユニフォームは紺色を基調とし、金で縁取られている。胸元の紋章には狼が描かれていて、その上にはフランスのシンボルであるフルール・ド・リス。

 

 

「真ん中に書いてある英語はどう読むんですか?」

 

 

 木野の質問に対して、待ってましたと言わんばかりにジャーニーは眼鏡をクイッと上げた。

 

 

「英語ではなくフランス語です。"CHASSE SAUVAGE(シャスソヴァージュ)"と言って、ヨーロッパに伝わる伝承"WILD HUNT(ワイルドハント)"に由来しています。言うなれば、"夜を駆ける狩猟団"みたいな。カッコいいと思いません?」

 

「貴女にしてはなかなかセンスがあると思うわ」

 

「まるで普段はセンスがないかのような言い振りですが……まあ、いいでしょう」

 

 

  照奈の煽りをギリギリ受け流すジャーニー。言い合いをしに来たわけではないので、さっさと本題に入ろうとする。

 

 

「とりあえず、始めましょうか。他の子たちは練習中に来ると思いますし」

 

「随分と時間にルーズなのね」

 

「子供ですから。サッカーをしたいときに来て、疲れたら帰ればいいんです」

 

「それも1つのやり方ね。私たちは部活動としてやっているから、キッチリと時間を決める必要があるけど」

 

「はい。まあ、今はオルと()()()が真面目にやっていれば問題ありませんから」

 

 

 そう言って、ジャーニーは名前を呼んだ2人の肩を叩く。"シオン"、と聞こえた途端に照奈は再び目を逸らした。

 

 

 流石に2回も同じことをやれば、シオンと呼ばれた少年は疑問符を浮かべる。自分とは初めて会ったはずなのに、と。

 

 

 事情を理解しているジャーニーは、内心呆れながらもそのまま話を進める。

 

 

「そういえば、紹介するのを忘れていましたね。彼は"シオン・ウイン"、ポジションはフォワードでチームのキャプテンをしています」

 

 

 シオンは「ヨロシクオネガイシマス」と片言の日本語で挨拶をしながらペコリとお辞儀をし、雷門中サッカー部は各々挨拶を返していく。

 

 

「オルじゃないんですね」

 

 

 円堂が意外そうに呟けば、オルフェは彼の発言をなんとなく読み取って答えた。

 

 

「Je ne suis pas doué pour diriger les gens.」

 

「『人を束ねるのが得意ではない』だそうです」

 

「Sion n'est pas non plus l'idéal en tant que chef, mais comme lui et moi sommes les plus âgés.」

 

「Si je pouvais changer, je le ferais bien, mais comme il n'y a personne……」

 

「シオンもキャプテンとしては微妙なのですが、チームの最年長がこの2人なので仕方なくという感じです。人がいませんからね」

 

 

 オルフェとシオンの言葉を、ジャーニーが上手いこと翻訳する。

 

 

 現在の雷門中のキャプテンは円堂。『一番モチベーションが高いから』という理由で照奈が任命し、彼はシオンと違って前向きな姿勢でキャプテンを務めている。

 

 

 だからこそ感じるところがあったのか、円堂はシオンの右手を握って「一緒に頑張ろうな!」と声をかけた。話の流れや彼がキャプテンマークを付けていることから、シオンはフィーリングで感じ取り、握り返す。

 

 

 シオンの中で、熱く燃え滾る何かが芽生えた気がした。円堂守、彼は自分に良い影響を与えてくれる人物だと認識する。

 

 

「……」

 

 

 たった一言で変化したチームメイトの様子を、オルフェは興味深そうに眺めていた。

 

 

 

★☆

 

 

 

 

 練習が始まって数時間後。ようやく正式にサッカーボールの使用が解禁された雷門中の4人は、途中から来たシャスソヴァージュのメンバーを相手に1v1や2v1の練習をしていた。

 

 

 ちなみに部活後の自主練の許可は下りていたのだが、やる体力なんてモノはなく、結局彼らは一度もボールに触れていない。()()()()()()

 

 

「上手過ぎるだろ……」

 

 

  染岡が対峙しているのは、長いサイドテールに前髪パッツン、髪色はワインレッドでインナーが()()()()()の少女。小学生ながらも凛々しく感じる風貌だった。

 

 

 彼が攻撃側で少女が防御側。いくらブランクがあるとはいえ、小学生に負けるはずがないだろうと高を括っていた染岡だが、外から中へ切り返した瞬間にボールを取られるという流れを幾度も繰り返していた。

 

 

 その様子を見ていた照奈が声をかける。

 

 

()()()()()が上手いというより、貴方が下手くそね。理由は分かるでしょう?」

 

「切り返すときのボールタッチが遅れて、その隙を突かれてる。軸足に重心が掛かり過ぎているからなのは何回かやっているうちに理解できました。でも────」

 

「改善方法が分からないと」

 

「はい」

 

「まあ、今言っていた軸足の話もあるけど────そもそもボールをさらしているとき、相手側へどんどん近付いているのよ。足を伸ばしても取られない距離でさらさないと」

 

 

 染岡は、ララという少女に対してボールをさらす────敢えて取られやすい位置にボールを置きながら外へ動き、相手が食いついてきたタイミングで切り返して中に入るというやり方で突破しようとしていた。

 

 

 しかし、"食いついてきた"と認識するのと同時にボールを奪われてしまう。

 

 

「近いから最小限の動きで取れるのもあるし、この子の瞬発力が高いのもあるわね。しかも、主導権を握っているのは染岡くんではなくて、実はララちゃんなの」

 

「どういうことですか?」

 

「彼女は本当に食いついているわけではないのよ。『ここなら行ける』と貴方に思わせて、嵌めているだけ。だから動き出しを見てからでも間に合うの」

 

「なるほど」

 

「一度に全てを改善するのは無理があるし、まずは真横にさらすことね。そうすれば、ディフェンスも横に動くから距離が縮まらないじゃない?」

 

 

 と言って、照奈は染岡からボールを貰う。

 

 

 それを1回ララに渡し、彼女が返してくることで1v1が始まる。

 

 

 自分が彼に教えた通り、真横にボールをさらしてララを誘う。だが、相手が相手なので彼女は警戒して手を出してこない。隙があるように見せているのに、強者特有の圧が委縮させてしまっていたのだ。

 

 

 やらかした、と思いながらも照奈は自分から動くことにした。

 

 

 左足に体重を乗せ、如何にも今から外へ抜けますよと言わんばかりの動きをララに見せる。身体も進行方向(外側)に向いており、明らかな隙が生まれる。

 

 

 そこからボールを左へと蹴ろうにも、ララの足は十分に届く。右に切り替えそうにも、ラグが発生している以上はボールに触られてしまう。

 

 

 監督はここからどうするんだ、と染岡が考えたそのとき。

 

 

 照奈は()にボールを蹴り、それはララの足が届かないところまで転がる。

 

 

「嘘だろ……」

 

 

 ララが反応し、外へ行きかけた身体を内へ戻そうとした瞬間には、照奈がボールに再び触れて突破していた。

 

 

 もし他のプレイヤーが近くにいれば────1v2や2v2であれば、照奈が内へ蹴り出した際に取っていたかもしれない。1v1だからこそ通用するやり方だと、揶揄されていただろう。

 

 

 だが、蹴り出してから再び触れるまでの速度が明らかに異常だった。元々内側に向いているのならともかく、照奈の身体は確実に外を向いていたというのに。 

 

 

 染岡とララは度肝を抜かれた。そして、これがたった1人でラヴィアンローズと渡り合ったプレイヤーなのかと、戦慄する。

 

 

「さ、今の感じでやってみなさいな」

 

「できるか!!!!!!」

 

 

 

★☆

 

 

 

「あのー、見えないんですけど……」

 

 

 木野は、ゴールキーパーのコーチングをジャーニーから受けていた。しかし、彼女のシュートが目視できないレベルで速過ぎるせいで、練習になっていない。

 

 

 初めてのキーパーでこんなの取れるわけがないんじゃ、と完全に諦めていたのだ。

 

 

「すみません、加減が難しくて。よくオルからも言われるのですが、未だに直らず……」

 

 

 と謝られるも、この先が不安になる木野。

 

 

 ────必殺技の範疇を超えたシュートを叩き込まれても、ビビッてすらいない彼女の度胸には、自身もジャーニーも気付いていなかった。

 

 

「もう1回いきますね」

 

 

 ジャーニーはペナルティエリアの外側にボールを置き、助走もなしでボールを蹴り抜く。木野が手を伸ばす前にゴールネットに突き刺さる。

 

 

 少しでも左にズレていれば木野の顔面に直撃していたのだが、そんなことは気にしていなかった。

 

 

「本当にすみません……できれば他の誰かと代わってあげたいのですが、誰とも代われないので今日は私で我慢してください……」

 

 

 現在、途中参加はララのみ。誰かが来ない限りはずっと2人のまま。誰がどのトレーニングをするかは事前に決めてあることもあり、交換することも(はばか)られる。

 

 

「は、はい。あ、そういえば必殺技があるんですけど、1回見て貰えませんか?」

 

 

 なので、木野は頑張って時間を稼ぐことにした。実は、休日返上でキーパーとしての必殺技を1つ習得していたのだ。

 

 

「いいですね。ボールを投げるので、やってみてください」

 

 

 ジャーニーは快諾する。そのあと、ペナルティエリア内からボールをポイッと軽く投げるも、発動が間に合わずに木野の顔面に直撃。

 

 

 流石の彼女もかなり焦って「大丈夫ですか!?」と駆け寄る。木野は「大丈夫ですよ」と少し笑いながら返した。

 

 

 申し訳なさそうな表情を浮かべながら離れ、必死に思考を張り巡らせるジャーニー。案が思い付いたのは、僅か数秒後のことだった。

 

 

「では、私をボールだと思ってやってみてください」

 

「えっ」

 

 

 予想すらしていなかった一言に木野は戸惑いを覚えるも、恐る恐る構えた。

 

 

「ムゲン・ザ────」

 

 

 頭の上で手を合わせ、胸の前まで下ろす。その姿はさながら千手観音を連想させ、彼女の背後から無数の手のオーラが出現する。

 

 

「ハンド!!」

 

 

 手を伸ばせば、それに合わせてオーラもジャーニーに向かって伸びていく。そして、無数のオーラは彼女に張り付き────

 

 

 次の瞬間、木野はジャーニーを両手で挟んでいた。

 

 

「やった私が言うのもなんですけど、だ、大丈夫でしたか?」

 

「痛くも痒くもなかったですよ」

 

「よ、良かった……」

 

 

 ホッと息を吐く木野。失敗したらどうしよう、ジャーニーさんを怪我させたらどうしよう、などの様々な不安を打ち払えたのだった。

 

 

 ──────ムゲン・ザ・ハンド。円堂大介のノートに書かれていた『シュタタタタタン、ドバババッバーン』のことであり、木野が照奈に必殺技を教えてほしいとお願いしたのが習得のきっかけとなる。

 

 

「とはいえ、キーパーとして本格的な練習をする前に必殺技を習得するって珍しいですね」

 

「それに関してはちょっとやり方が特殊というか……言っていいのか分からないんですけど……」

 

 

 もじもじとする木野を見て、ジャーニーは好奇心をくすぐられる。

 

 

「誰にも言わないので、ここだけの話として教えてください」

 

「じゃあ、秘密ですよ? 特訓したことは円堂くんたちにも言ってないんですから」

 

 

 恥ずかしそうに少し顔を赤らめながらも、木野はジャーニーの耳元に顔を近付けて囁く。

 

 

「使い手である監督にコツとかを教えてもらいました」

 

「……はい?」

 

 

 聞き間違いかもしれない、とジャーニーはクルッと回ってもう片方の耳を木野の口元に近付ける。

 

 

「監督がムゲン・ザ・ハンドを使えるので、教えてもらいました」

 

「……照奈ってキーパーにコンバートしたんですか?」

 

「いえ、フォワードのままです。私もビックリしたんですけど、監督は一度見た必殺技ならできるらしいです。でも、ムゲン・ザ・ハンドは円堂くんのおじいさんが書いたノートにあった空想上の技だそうです」

 

「?????」

 

 

 ジャーニーは考えるのをやめた。

 

 




シオン・ウイン
年齢:13
ポジション:フォワード
背番号:11

ノット転生者。前世とは違ってオルフェにコンプレックスはなく、めちゃくちゃ尊敬してる。なぜどす黒い感情がないのかは、次話で判明する。多分。


ララ・ラキリー
年齢:11
ポジション:ミッドフィルダー
背番号:7

ノット転生者。オルフェのことをめちゃくちゃ尊敬してる。周りにボケ役がいないので心の中でツッコむことはない。
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