サッカー、しますわよ【ウマ娘×イナズマイレブン】   作:ローマ市民兼インド村住人

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前回のあらすじ
木野秋はムゲン・ザ・ハンドを習得していた!

4話のあとがきで「なぜどす黒い感情がないのかは、次話で判明する。多分」と言いましたが、半分嘘です。色々考えた結果、フランス遠征は1話で終わらすことにしました。
なので、その間の話はちょっとずつ出します。


第5話「帝国襲来」

 雷門中サッカー部設立から1年。初期部員は学年が上がり2年へ。そして、新入生4名が入部。部員は9()()となった。

 

 

 実は、昨年の秋に1名加入している。その部員の名前は風丸一朗太(かぜまるいちろうた)。左目が青緑色の髪に隠れている少年で、男の子にしては珍しくポニーテール。

 

 

 元陸上部なのだが、そんな彼が入部した理由。それは、体力テストで行われたシャトルランがきっかけだった。

 

 

 サッカー部4人全員が170回を超え、染岡に至っては197回ともう少しで200回を超える記録を叩き出した。

 

 

 それを見ていた風丸は衝撃を受け、その日の放課後に陸上部を退部。次の日にサッカー部に体験入部と、その行動力の早さには照奈も思わず、『脳が焼かれたのね』と感心していた。

 

 

 ──────閑話休題。

 

 

 照奈は校長に呼び出され、校長室へと向かった。

 

 

 椅子に座っている、校長"火来伸蔵(ひらいしんぞう)"。横に立つ冬海に、窓を眺めている茶髪の少女。

 

 

「何の用でしょうか?」

 

 

 心当たりがないまま照奈が質問すれば、冬海が答える。

 

 

「突然ですが、1週間後に練習試合を行います」

 

「はあ」

 

 

 ────何を言ってるのかしら。そう言いたいのをグッと堪えて、照奈は詳細を待つ。

 

 

 監督としては、9名のまま試合に出ても負けるつもりは更々ない。だが、ルール上は認められない。そして、急遽あと2名集めなければいけないとなると、今すぐにでもここから出たい気分だった。

 

 

「相手は帝国学園です」

 

 

 ────何を言っているのかしら。(2回目)

 

 

 照奈は困惑する。部員が足りていないのは帝国のコーチである椎奈だって把握しているというのに。その話は影山に伝わっているはず。

 

 

 とはいえ、また自分が知らないところで何かが進んでいるのだろうと推測した。影山零治はそういう男であると。

 

 

 であれば、ひとまずはその話に乗ってあげることに決めた照奈。

 

 

「承知しました。話は終わりでしょうか」

 

「いえ、まだあるわ」

 

 

 とっとと出たいのに、茶髪の少女は引き止めてくる。

 

 

「あら、理事長令嬢が私に何か?」

 

 

 ──────"雷門夏未(らいもんなつみ)"。一般の生徒とは違う制服を着た彼女は、軽く挑発した照奈に怖気づくことなく語る。

 

 

「もし、部員が足りなくて試合ができなかった場合。あるいは試合に負けた場合は、サッカー部を廃部にします

 

「……それは、何故(なにゆえ)?」

 

 

 意味が分からない。雷門総一郎がいきなり心変わりするにしても、自分に何も言わずに決めたのは不義理だと、照奈は苛立ちを覚える。

 

 

「お父様は貴女に謝罪をしています。『申し訳ない、圧に耐えきれなかった』と。ですが正直、あんなちっぽけな部室で活動している弱小サッカー部に、長期的な投資をする意図が理解できませんでしたの」

 

 

 だが、今の通達は総一郎の意向ではない。それが分かった彼女は少し安心した。娘の圧に負けたという点は減点対象に入るものの、結局は試合に勝てばいいのだ。

 

 

 ──────ついでに、照奈は悪魔的提案を閃く。

 

 

「事情は分かりました。1つご相談なのですが……」

 

「なんでしょう?」

 

「雷門さんも、()()()()()()()()として試合に参加していただけないでしょうか?」

 

「「「なっ……」」」

 

 

 思わぬ発言に3人揃って驚く。

 

 

「せ、芹坂先生。流石にそれは……」

 

 

 火来校長は夏未の機嫌を損ねまいと、焦りながらも照奈の蛮行を止めようとするも、止まるわけがなく。

 

 

「練習には来なくていいです。試合当日、コートの隅で立っていただくだけで十分ですから」

 

「絶対にお断りします。素人を参加させるなんて、何を考えているのですか?」

 

 

 悪魔的提案に、夏未は心底呆れたような表情で否定した。しかし、悪魔はまだ諦めていない様子。

 

 

 この提案の懸念点は、理事長に話を通す必要があることだけ。ただの人数合わせであり、危ない目に遭わせるつもりはないという旨を伝えれば、首を縦に振ってくれると、照奈は見ている。

 

 

「その素人を参加させても勝てるということです」

 

 

 どう夏未を引き込むのか考えながらも、対帝国の作戦を練っていく照奈。1年生の4人は、入ったばかりなのもあってあまり期待はできないし、無理はさせられない。

 

 

 だが、無敗の牙城を崩すには5人で十分だった。

 

 

 

★☆

 

 

 

 部室に戻り一連の出来事を報告すれば、大声を上げたのは1年生のみ。2年生は"ようやく特訓の成果を見せられる"と気持ちが昂っていた。

 

 

 しかし、栗みたいな髪型で出っ歯、鼻に絆創膏といった、特徴があり過ぎる1年生────"栗松鉄平(くりまつてっぺい)は疑問を述べる。

 

 

「監督、雷門さんが入ってくれるとしてもあと2人はどうするでヤンスか?」

 

 

 照奈は首を傾げた。

 

 

「あと1人よ?」

 

「あ、俺も思ってました。今から2人集めるのって大変じゃないですか?」

 

 

 オレンジのアフロでそばかすが付いている1年生、"宍戸佐吉(ししどさきち)"も続く。

 

 

 残りの2人、スキンヘッドにポニーテールで小柄な少年の"少林寺歩(しょうりんじあゆむ)"、少林寺とは真逆の巨体に緑のパンチヘアー、顎ヒゲが特徴の"壁山塀吾郎(かべやまへいごろう)"も同意した。

 

 

「……そういえば監督、木野がマネージャー兼選手だってコイツらに言うの忘れてますよ」

 

「あっ」

 

 

 染岡の指摘で合点がいく。部員が増えてから、木野には本来の役職であるマネージャーをやらせていたのだ。その上、制服のまま活動していたのもあり、彼らは彼女"も"キーパーだと知る機会がなかった。

 

 

 この1年で木野も成長した。そして照奈とより仲が深まった結果、ギャン厨だとバレてしまったのはまた別のお話。

 

 

「ええーっ!? 木野先輩って選手だったでヤンスか!?」

 

「まあ、うん。そうだよ」

 

「となると監督、オレがミッドフィルダーってことですよね?」

 

「そうね。だから、半田くんはディフェンダーをやってもらうわ。木野ちゃんは全部止められると思うけど、1年生だけでは帝国の攻撃を抑えきれないし」

 

 

 照奈は自然な流れでホワイトボードを彼らの前へ持っていき、黒のインクで描かれたコートに丸型の小さい磁石を張っていく。

 

 

「き、木野先輩がゴールキーパー……」

 

「イメージできないッス……」

 

「なら度肝を抜かれるわよ。帝国如きのシュートなんて、片手で止めてしまうわ」

 

 

 木野が女の子ということもあり、どうしても信じられない1年生たちに対して、照奈は悪い笑顔で誇張する。

 

 

「か、監督! そこまでは無理ですって!りょ、両手なら……」

 

「木野も言うようになったなあ……」

 

「あ、半田くんのシュートは片手で止められるよ」

 

「傷つくからやめてくれる?」

 

 

 イジリへの返しも満点。木野と半田で一笑いを起こしたあと、照奈は残りの磁石を張る。

 

 

 FWに2個、MFに3個、DFに5個、GKに1個。5-3-2という、サッカーにおいては少し守備寄りのフォーメーションだ。

 

 

「フォワードは染岡くんと風丸くん。ミッドフィルダーはボランチが円堂くんで、左右のインハーフサイドは希望者求むという感じね。ディフェンダーはセンターバックが半田くん確定。雷門さんは左のウィングバックでボーッとしてもらう予定よ」

 

「基本的に円堂が俺たちにパスを繋げてくれるだろうが、時と場合ってもんがある。だがまあ、多少無理な通し方でも俺と風丸なら取ってやるから、安心しろ」

 

「ちょっとプレッシャーだが、やってやるさ」

 

「とりあえず、困ったらオレにボールを渡してくれよな!」

 

「ディフェンダーは私と半田くんの指示を聞くこと。優先順位は私の方が上だよ」

 

「俺は帝国を止めながら円堂にパスを繋げる役だな。円堂と同じく、困ったら俺にボールを渡すのもアリだぞ」

 

 

 2年生が、1年生に頼りがいのある言葉を紡いでいく。初の練習試合だというのに、まるで何度も修羅場を潜り抜けてきたような猛者感が醸し出される。

 

 

 声をかけられた彼らは、自分の先輩たちが輝かしい存在に見えてくることだろう。

 

 

 これが照奈の理想としていた形。コアメンバーの熱意が、後続の情熱に火を点けていく。これなら期間が短くても1年生は成長すると見た。

 

 

 ならば、解決すべき問題はあと1つ。

 

 

「で、あと1人をどうしようかってところね」

 

「あ! それならオレ、誘えます! すっげぇヤツ!」

 

 

 円堂が自信満々に手を挙げた。"すっげぇヤツ"と聞いて、照奈は興味深そうに「誰かしら?」と尋ねる。

 

 

「"豪炎寺修也(ごうえんじしゅうや)"です!

 

 

 

★☆

 

 

 

 1週間経った放課後。

 

 

 雷門中の正門の前に装甲バスがやって来た。レッドカーペットが敷かれ、両列に帽子を被った生徒らしき人物がたくさん並び、ポーズを取っている。

 

 

 バスの扉から、ゴーグルを掛けたドレッドヘアーの少年を先頭にして登場するは、帝国学園サッカー部。

 

 

 40年無敗のチームであり、照奈の古巣。緑を基調としたユニフォームを見て、彼女は懐かしそうに微笑んだ。

 

 

 それを眺めていた円堂が、何かを思い出したかのように彼女に話しかける。

 

 

「そういえば、奥崎さんとは試合について話したんですか?」

 

「ええ、『総帥は豪炎寺修也を引っ張り出して欲しいみたいです』って言ってたわ」

 

「じゃあ、その通りになったんですね」

 

 

 そう言って、右を向く円堂。その視線の先には逆立った白い髪のチームメンバー、豪炎寺修也がいた。

 

 

 雷門中サッカー部、11人目の部員。全国大会決勝常連校の木戸川清修中から転校し、"炎のエースストライカー"とも呼ばれている。

 

 

「それにしても、なんで豪炎寺が関係してるんですか?」

 

「去年、妹さんが総帥の陰謀で交通事故に遭ったの。今も目覚めていないそうよ」

 

「えっ」

 

 

 聞かれたから答えただけに過ぎないが、平然と言い放つ照奈。円堂だけではなく、耳に入った他のメンバーも彼女の方を向いて続きを待つ。

 

 

 一方、豪炎寺は目を伏せていた。

 

 

「どんな手を使ってでも勝つ。それが帝国学園────影山零治のやり方ね。ま、そこまでしないと木戸川清修に完勝できる気がしなかったのでしょう」

 

「なるほどな。つまり、大したことねェってことか」

 

 

 随分と強気な発言をする染岡に、照奈は大きく頷く。

 

 

「その通り。だから、豪炎寺くんも雷門さんも安心して隅っこで立ってなさい」

 

 

 ────実は、豪炎寺も夏未と同じで"コートの隅で立っているだけでいいから"という条件の下、雷門中サッカー部に加入していた。

 

 

 だが、『サッカーはしない』と断言。そして『俺抜きで11人になったら辞めさせてもらう』とも。

 

 

 彼のプレーを見れそうにないと感じた円堂は心底残念がっていたし、練習に一度も参加しなかったことにも悲しんでいたが、練習試合には来てくれたのでホッとしている。

 

 

「そうさせてもらいますが────精々最後の試合を楽しむことね」

 

 

 夏未は雷門中の負けを確信。練習の様子を一切見ていないので、彼女も豪炎寺も、木野のことは"いきなりキーパーをやらされた可哀想なマネージャー"だと思っている。

 

 

 ──────帝国メンバーは、サッカーコートでウォーミングアップ開始。

 

 

 その間に監督の影山とコーチの椎奈が雷門メンバーのところへやって来た。豪炎寺は仇敵である影山を睨むが、彼は見向きもせずに照奈に話しかける。

 

 

「久しぶりだな。それと、唐突の練習試合を受け入れてくれたことに感謝する」

 

「お久しぶりです。こちらこそ、練習の成果を発揮できる機会を設けていただきありがとうございます」

 

「照奈、負けたら廃部と聞きましたが」

 

「そうね。わざと負けてくれるとありがたいわ」

 

「もちろん、断固拒否よ。帝国に"敗北"の2文字はないのだから」

 

「では、()()()()と勝負しよう」

 

「真正面から叩きのめしてやりますわ」

 

 

 プロレスを終えると、戻っていく2人。最後の『正々堂々』を聞いて、椎奈が影山への伝言をちゃんと伝えていたのが分かった照奈。

 

 

 当然ながら、豪炎寺はこのことを良く思っておらず、我慢できずに口出そうとしたところで円堂に止められる。

 

 

「豪炎寺、ここで監督に文句を言っても変わらないぞ。今オレたちにできるのは、帝国に勝つこと。それだけだ」

 

「……」

 

 

 正論をぶつけられて黙るしかない豪炎寺。しばらくの間、沈黙が流れる。

 

 

 彼が何かを決めようとしている。そんな予感がして、誰も喋らないようにしているのだ。

 

 

 ──────そして案の定、豪炎寺の言葉によって静寂が終わる。その瞳の奥には、復讐心ではなく燃えるような闘志が宿っていた。

 

 

「監督、いきなりで申し訳ないですが、俺をフォワードにしてもらうことはできますか」

 

「嫌よ」

 

 

 空気を読めない監督が爆誕。熱い展開をぶった切られ、円堂たちは思わずズッコケる。

 

 

「ミッドフィルダーなら許可するけど、フォワードは無理ね。今の貴方が、染岡くんと風丸くんについて行けるとは思えない」

 

「そう、ですか……」

 

 

 しかし、その理由は至極真っ当なため、豪炎寺は引き下がらざるを得ない。ブランクがなければ、照奈は待ってましたと言わんばかりにゴーサインを出していたが、現実はそう上手くいかず。

 

 

「オレは豪炎寺とサッカーができて嬉しいぞ!」

 

「円堂……」

 

 

 それでも、円堂は嬉しそうに肩を組む。周りも彼の決意に喜びの声を露わにする。

 

 

 豪炎寺修也が、正式に雷門中サッカー部の一員になった瞬間だった。

 

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