サッカー、しますわよ【ウマ娘×イナズマイレブン】 作:ローマ市民兼インド村住人
豪炎寺加入
マックスと影野はちゃんと入れるので安心してください。
「豪炎寺くん。貴方の必殺技に"ファイアトルネード"ってあるわよね」
「はい」
「それって、空中でパスを受けてそのまま使えるかしら?」
「タイミング次第ではやれます」
「なら、やれる前提で作戦を伝えるけど────」
★☆
雷門中vs帝国学園。言い換えれば、無名の弱小校vs無敗の最強校。これまでの実績からして、どちらが勝つのかは明白だと言える。
雷門が勝つと思っているのは、ピッチに立っている10人とベンチに座っている1人だけ。校舎から見守っている雷門総一郎でさえ、"今は流石に厳しい"と思っている。
────キックオフ直前。先攻は雷門で、中央には染岡と風丸が立っていた。
「風丸、初めが肝心だぞ」
「分かってる。でも、1点さえ取ればオレたちの勝ちだろ?」
「監督が力量を見誤ってなければな。けど、多く取っておくに越したことはねェだろ」
「違いない」
やけに自信がある2人の会話を聞いていた帝国のFW陣────"
「おいおい、聞いたか佐久間?」
「もしかしたら我々の名声が行き届いていないかもしれんな。ま、こんなボロい学校じゃガラパゴスだとしても仕方ないか」
「ハハハハハ! じゃあ、心を折るついでに教えてやろうぜ! "帝国学園に歯向かうんじゃねェよ"ってな!」
「おい、監督の隣に誰かいるぞ」
「メモ帳を持ってるし、新聞部の取材じゃないか? 陸上部にいた頃も、たまに来ていたのを覚えている。あの子ではないが」
見向きもされなかったので、佐久間と寺門は面白くなさそうに舌打ちする。そして、絶対に痛めつけてやろうと決めた。
それから1分程経つと、試合開始を告げるホイッスルが鳴る。
染岡が風丸にボールを渡せば、先程の恨みを晴らさんと佐久間と寺門が奪いに来た。
風丸はそのまま直進して突破する。2人の間にできた、ギリギリ身体が通れるぐらいの隙間を当たり前のようにくぐっていったのだ。
「何っ!?」「速い!?」
想像より素早い風丸の動きに反応できなかった2人だが、それは彼らの後ろにいたドレッドヘアーでゴーグルを掛けた少年────"
「馬鹿な……!?」
────風丸の持ち味は足の速さ。そこに目を付けた照奈は、徹底的にドリブルを練習させた。ボールを見ずとも、スピードを殺さずにゴールまで突っ切れるように。
「止めろ!!」
焦る鬼道はDF陣に怒号を飛ばす。
「"疾風ダッシュ"」
3人がかりで風丸にプレスをかけるも、彼はワープしたかのように一瞬で抜き去った。必殺技の発動があまりにも早過ぎたのだ。
そして、獅子を連想させる容姿のゴールキーパー、"
「"疾風ダッシュ"」
だが、風丸は再び必殺技を発動して源田をも突破する。そのまま自分ごとゴールに突っ込み、ネットが緩衝材となって勢いを止めた。
「ゴーーーーーール! 先制点はなんと雷門中!!! まさかの事態が発生しました!!!!」
叫ぶ実況、ざわつく観客。
「ふぅ……疲れるなこれは」
そんな中で風丸は、一瞬の出来事で呆気に取られていた源田に見向きもせず、息を切らしながら自陣へ戻って行く。中央からゴールまで全力疾走し、さらには必殺技を連続で使用。流石に体力の消耗は激しいようだ。
ゆっくりと歩いて戻れば、染岡とハイタッチ。
「やっぱチートだな」
「何回でも使えるなら、な。オレは後半までのんびりするから、あとは頼んだ」
「パスは出せよ」
「分かってるって」
軽口を言い合う2人とは対照的に、帝国の空気は一気に地獄と化していた。
──────ここまでの一連の流れを帝国側のベンチで見ていた椎奈が、呆れながら口を開く。
「あれは対策しようがありませんね……」
「攻撃の度にアレを使えるわけではないのが不幸中の幸いだろう」
影山はこの事態を前向きに捉えていた。当然ながら、風丸の息切れは見逃していない。
「ですね。しかも、今の1点が我々のチームに大きなダメージとなっていますが、一旦止めますか?」
「いや、続けろ。この試合は鬼道への課題だ。こちらから指示は一切出さん」
影山がそう言えば、椎奈は一瞬目を見開く。このまま手を打たなければ負けると考えていたからだ。
「承知しました。つまり、40年続いた無敗をここで終わらせると?」
「そうだ。まだ私も死にたくないのでな」
★☆
side:Kido
「鬼道さん、今のは……」
正直、信じたくはなかった。何が起きたのかを理解したくなかった。弱小中学校の無名プレイヤーが、たった1分で帝国学園から点を奪ったなんて、起こり得ないはずだと。
佐久間────いや、帝国メンバー全員が衝撃と恐怖が入り混じった表情でオレを見つめる。オレの指示を待っている。
「……悪い夢だろう」
多分、数ある選択肢の中で一番最悪なチョイスをした。だが、そうでもしなければ戦える気がしなかったからだ。
総帥とコーチの方を見れば、どちらもオレを見ている。
……貴方たちは何を考えているのですか? と今すぐにでも言い寄りたいのを我慢して、ボールをセットした。
ホイッスルが鳴り、寺門が佐久間にボールを渡す。雷門のFW2人は奪いに行かず、ましてやさっきのワープ野郎は一歩も動かなかった。
雷門のMFは、総帥が探していた豪炎寺修也とキャプテンマークを付けているバンダナ、オレンジのアフロの3人。
記憶が正しければ、木戸川清修にいた頃の豪炎寺はFWだったはずだが……。
ちょっとした違和感は脳の片隅に置いておき、前に進みながらピッチを見渡す。3人の中ならあのアフロがカモれそうだな。
「右サイドから行け!」
洞面にボールが渡り、アフロとの1対1は楽々と突破した。どうやら、選手のパワーバランスに大きな差があるらしい。
それに、その後ろの女は明らかに素人だ。ただ突っ立っているだけな上に、横にいる栗みたいなヤツも位置取りが悪い。パスルートを空けてどうする。
が、洞面はオレにボールを戻した。なるほど、確かにその方が確実ではある。
「デスゾーン開始」
──────やはり、さっきのは悪い夢だった。
ボールを宙に蹴り上げれば、佐久間・寺門・洞面の3人が走り出して三角形を描くようにジャンプする。
エネルギーを生むために空中で回転。集中したのと同時に中央に寄り────
「「「"デスゾーン"!!」」」
踏みつけるようにシュート。禍々しい紫のオーラを纏ったボールは、ゴールキーパーの女を襲う。
守りは大したことない。結局はただの初見殺しであり、総帥とコーチは割り切っていたのだろう。
無失点はもう不可能だが、無敗は続けられる。帝国の伝説はまだ続く。
「せいっ!!」
キーパーはそう叫んで、両手を突き出した。ボールが両手に触れた瞬間、勢いが完全に止まって彼女の手の中に収まる。
「……は?」
必殺技なしでデスゾーンが止められただと……?
──────違う。呆然としている場合ではない。
「すぐに戻れ!!!」
もしあのワープ野郎にボールが渡れば、追加点を入れられる。アレは源田がどうこうの話ではなく、そもそも勝負すらさせてもらえていない。
雷門のキーパーはボールを高く蹴り上げる。ロングパス────流石に高過ぎないか?
急いでFWの位置を確認する。ワープ野郎はセンターサークルの中央から一歩も動いておらず、ピンク頭は源田の目の前に立って視界を制限していた。一体、何を企んでいる……?
ボールの着地地点を予測しながら移動していると、雷門の誰かが回転しながら空高く飛んだ。ソイツは炎を纏っており、そのままボールを真下へと叩きつけるように蹴る。
その下にはあのワープ野郎がいて────
「はあっ!」
帝国側のゴールへ向けてロングシュートを放った。蹴り返してやろうと決めたときに、ボールはオレの横を通り過ぎていく。
振り返れば辺見と大野が自身の身体を使い、2人がかりでシュートを止めようとしていた。だが、ボールの勢いは止まることを知らず、彼らを吹き飛ばして
──────触れはしたが、止められずに追加点を決められた。
0-2、それでも監督とコーチは一切表情を変えず。もしこれ以上失点すれば────そう考えながらプレーをしたものの、雷門は先程と打って変わって自陣でパスを回し始めた。
普段ならパスをカットしてカウンターに入るのだが、オレは────いや、オレたちは怖くてできなかった。相手のミスを待つしかなかったのだ。
──────そして、恐怖の前半が終了する。
ベンチに集まった帝国メンバーは完全にお通夜。特に、源田の顔色が明らかに悪い。何も指示を出さずにベンチからずっと見ていた2人だけが通常運転といったところ。
「見ての通り、必殺技で点を入れることは不可能と言っても過言ではありません。なので、横から不意を突く形が望ましいでしょう。
「お前たちが思っている通り、DFは1人を除いて大した技術を持っていない」
「だからこそ、"これだけはやられたくない"という行動だけ注意していると思います」
とても安心する。オレたちが恐怖に陥っている中でも、この2人は冷静を保っていた。即座に分析し、帝国を勝利へと導こうとしている。
「それが、先程仰っていた横からの不意打ちでしょうか?」
「はい。ですが、
だが、淡い希望は呆気なく打ち砕かれた。
「もう点数を入れなくても勝てる状況、照奈なら────」
★☆
「は?」
一方、雷門中サイド。夏未がマジでキレる5秒前と言わんばかりに照奈を睨んでいた。
「あら、何かおかしいこと言ったかしら?」
「おかしいことしか言っていませんよ。
「ご飯とパンね」
「……」
涼しげに答える照奈、怒りが爆発しそうな夏未。対照的な2人に何かを感じ取ったのか、ゴリゴリとペンを進める音無。
「雷門先輩が怖くて、チビりそうッス……」
「分かる……超怖ぇ……」
壁山と宍戸は彼女たちから距離を取り、夏未の怖さにビビっていた。
──────後半は守っているだけで勝てる。あと1回ぐらいは風丸を酷使してもいいと考えたが、どうせなら少しでも練習になる方が有意義だ。
そう考えた照奈は円堂をGKにし、MFは豪炎寺のみ。FWは木野・夏未で残りをDFという、極端なフォーメーションを提案した。
サッカー素人の夏未でも、"これはおかしい"と感じて異議を申し立てたのだ。しかし、受け入れられなかったのは彼女だけである。
「今更FWを潰したところで彼らが3点取らないといけないことには変わりないの。だから、危ない目には遭わないわよ」
「そういう意味ではありません。後半の間、ずっと保守的なプレーをすることに対して文句を言いたいのです。何の面白味のないパス回しを見せられる観客の気持ちにもなってください」
「木野ちゃんが頑張ってシュートを決めるから、そこも問題ないわよ。そのために源田幸次郎を無力化させたの」
「無力化?」
雷門中が2点目を入れる直前、染岡は源田の目の前に立っていた。それも、シュートが辺見と大野が吹き飛ばされるギリギリまで。
豪炎寺の必殺技"ファイアトルネード"の威力が風丸のシュートに乗っかっているとはいえ、絶対にDFがワントライしに来るのは分かっていた。加えて、基本的にロングシュートは威力が減衰する。
であれば、流石の源田も止められる。そう考えた照奈は、"いつシュートが来るか分からない状況"を作り出すことで対策した。
源田視点、横にズレたら何が起こっているのかは理解できる。しかしそれではキャッチが間に合わない可能性がある。ボールが真っ直ぐ飛んでくるのは分かり切っていることなのだから。
なので、彼は動けない。その上、準備こそできるが咄嗟に反応する必要はあるし、風丸の1点でメンタルが揺らいでいた。
その結果が、追加点。反応が遅れたのが原因で体勢が崩れて失点を許してしまう。
そうなれば、"キング・オブ・ゴールキーパー"も堕ちる。控えに交代すれば解決するものの、根本的な問題は残ったまま。
「ま、色々頑張ったのよ。……さ、木野ちゃん。1点入れてきなさい」
「はい、頑張ります!」
不満タラタラの夏未とは違って元気いっぱいに返事をする木野。彼女は練習の成果を発揮したくてしょうがない。
★☆
雷門中vs帝国学園は、2-0で雷門中の勝利に終わり、40年間続いた無敗の記録は途絶えた。
後半のハイライトは、鬼道渾身のシュートを片手で止める円堂。パスを貰ったあとどうすればいいか分からずに適当に蹴った結果、佐久間の顔面にボールを当ててしまう夏未の2シーン。
────片や天国、片や地獄。試合終了後、帝国メンバーは一言も発さずに装甲バスへと乗った。初試合・初勝利で盛り上がっている雷門中のところへ、影山と椎奈が再びやって来る。
「初敗北のお味はいかがでしょうか?」
「何も感じないな。雷門が我々の想定を大きく上回っていただけのことだ」
「私は悔しいですよ。ハーフタイムで負けを認めてしまい、彼らには非常に申し訳なく感じています」
「なるほど。"指導のため"だとか言って、私の隣から逃げたのが足を引っ張っているのでは?」
「なわけないでしょう────と言いたいところですが、キーパー未経験の貴女が源田くんを超える選手を2人生み出してしまったことで、私に発言権がなくなりました」
「ゴミ山大将敗北者ってことね」
「……あまり調子に乗っていると、今後一切料理を作らないけど」
「悪かったわよ」
毎日自炊は嫌なのか、煽り過ぎたことを謝る照奈。────影山は帝国のユニフォームを見たときの照奈と同じく、しかし2人にはバレないように笑う。
2人にとっては日常だが、彼にとっては過去の栄光を思い出すやり取りなのだ。
「────次は地区予選の決勝で会おう」
そう言って、影山は去っていく。椎奈は「またあとで」と。
帝国の敗北は、その日中に全国へ知れ渡った。そして、雷門中の名も一気に広まる。そんな予感がした照奈はあらかじめ雷門総一郎に告げておいた。
"メディア露出はNG"と。
これは決して自分がバレたくないからではなく、過去の出来事────特に、オグリキャップ関連から学んだことだった。