光輝の都の頂へ〜元社畜、欲望渦巻く魔都にて傭兵生活を始める 作:ズブ左衛門
メック。それは強化外骨格の派生形にあたる搭乗型の二足歩行兵器であり、あくまでも人間が着用する形で防護や動力補助を行うパワーアーマーとは幾つかの類似点こそあれど根本的に異なるものである。
運搬性や隠匿性、調達及び維持コスト面こそ後者に劣るものの火力や機動力、拡張性で大きなアドバンテージを持ち、それでいて従来型の装甲車両が苦手とした市街戦や山岳戦、非対称戦にも高い適性を有している。
流石に広大な平原での戦いでは戦車を始め従来型の装甲車両に分があるが、そんな旧世紀じみた戦いが殆ど起こらない現代においては些細な欠点でしかなく、高い汎用性を活かして企業軍装甲部隊の主力兵器として広く用いられているのだ。
問題はそんな軍用規格の戦闘兵器が何故こんな地下の寂れた場所にあるのか、そして何故スカヴィードッグスのような連中が隠し持っていた上にある程度扱えているのかであったが、今はそれを追求するしている場合ではなく破壊もしくは無力化する方策を考えるべき時間である。
「これはかなりマズそうな雰囲気だ……!」
「ヤバいぞ拓郎、一旦下がってこい!」
「ホンモノだ……初期ロットのメック……!」
メックの右腕に装備された一五ミリ連装重機関銃が重苦しい咆哮と共に毎分五〇〇発の速さで徹甲弾を放ち、辺りに無差別な破壊をまき散らす。うっかり当たれば五体は木っ端微塵になり、掠っただけでも限りなく即死に近い致命傷を負い、生半可な装甲では薄紙のように突き破られて終わりだ。
「ヤバいヤバいヤバい、これは洒落にならねえ……俺でも流石にメックと撃ち合った経験なんてねえぞ。一撃食らえばほぼ確でお陀仏間違いなしだ」
「オダブツどころじゃないって! あーし達死んじゃうってば!?」
アシハラ市街ではまずお目にかかれない本格的な軍用兵器のエントリーにさしものファンも顔面蒼白といった具合であり、明らかに想定外の遭遇に狼狽している。企業の軍か一定規模の傭兵団でもない限りマトモに運用できない兵器など持ってるどころか扱えているなど普通は思い至らないのだから。
そんな彼らにとって素直に喜べないが、パイロットの腕が悪いのか機体のフィードバックが甘いのか狙いが大雑把過ぎるため、味方数人を誤射しているうちに遮蔽のある暗がりへと逃げ込んだ三人はメック側から認識すらされておらず、盛んに応射する『ドレッドスウォーム』と『トランセンデンス』を主要な脅威と認識して猛攻を仕掛けている。
双方ともそこそこ名の知れた中堅どころの傭兵チームであるため、その脅威を直感で理解しすぐさま広めの排水溝へ飛び込んだため追加の損害は受けなかったが、左腕のガトリング砲と合わせて凄まじい鉄の雨を頭上に浴びせられて身動きが取れなくなっていた。
「あんなガチガチの兵器だと、ニューロンブースターで無理やり近付いても攻撃が効かないかもしれない」
「メックがいるって分かってたらEMPグレネードでも持ってきたのに……」
無論、標的にされた二チームも暴れ狂うメック相手に決死の反撃を試みてはいるのだが、事前情報通り対人に最適化された装備しか持ち込んでいないため効果は薄い。いかに第一世代の最初期型という半ば骨董品めいた機体であっても、歩兵の持つ小火器や機関銃程度までなら殆ど無効化する装甲を有しているため表面を傷付けるか多少へこませる以上のことはできなかった。
軽装甲の暴徒相手には有効な八ミリ級のライフル弾や破片手榴弾も装甲車並の防御力を持つ軍用兵器相手には形無しであり、余程の幸運がない限り効果は薄いだろう。装甲の隙間から正確に駆動部を撃ち抜いたり、コクピットの狭い防弾ガラスごと搭乗者を撃ち抜けるなら話は別なのだが、いかに緩慢な動作とはいえ敵意を持って動き回る相手にそれをできる凄技の持ち主はそうそういないのだ。
「しかし固いな、アサルトライフルを一マガジン分撃っても効果なしだなんて」
不幸中の幸いながら、本来なら両肩部に取り付けられているはずの武装がないため火力は通常の機体よりかなり低い。ミサイルポッドや連発式グレネードランチャーといった爆発武器がないため制圧力は本来の三割ほどしかないが、閉所において濃密な弾幕を展開できる利点は失われていない。
十人と少しにまですり減ったスカヴィードッグスの残存兵も味方のメックの活躍で士気を回復させており、勝ちに乗じて再び攻めかかっている。無論そちらは装備も士気も弱いことが分かっているため、流れ弾もあったためすぐさま何人か撃ち倒されていたが。
それでも肝心のメックを破壊できる手段が見当たらないため、不意に拓郎の端末が着信を伝えている。中継器もなく電波など全く入らないはずの地下四〇メートルにいるにも関わらず着信があることに驚いたが、とりあえず応答することにした。
『ちょっとアンタ、そっちは生きてるかい!? ヴァルだよ、通常の通信がムリだからトランシーバー機能で何とか話してる。何か妙案はないかい』
すると行きのトラックでカルロスと言い合っていた『トランセンデンス』のリーダー、ヴァルの声が響いてくる。トランシーバー機能という言葉にそんな便利な機能なんかついていたのかと思ってしまったが、悠長に驚いている暇などないため努めて冷静に返していた。
『チーム拓郎』は火力が絶対的に不足しているだけで何らかの損害を受けたわけではない。しかし有効打を与えられないのに打って出るのは人死にどころか全滅する危険性があるため、遮蔽の裏側から機を窺うことしかできなかったのだ。
「俺の方は全員無事だ、だけどあのメックを破壊できる強力な武器は生憎持ってない……最低でもロケットランチャー、出来れば対戦車ミサイルでもないと無理そうだ。そちらはどう?」
『こっちは一人やられたし、『ドレッドスウォーム』は一人死んだ。うちの負傷者は今も応急手当してるけど、ちょっち厳しいかもしれない』
三人と同じように通話の向こう側の状況はあまり芳しくないようで、トラックの中で聞いたような明るさはなくやや厳しさを感じさせる声色であった。全く想定外の、しかも民生品やジャンク品を用いた違法改造の産物ではなく本物の軍用兵器を相手にしてこれなら充分上出来なのだが、それでも想定された戦力とは全く違う隠し玉に遭遇した上に対抗策が皆無に等しいショックは経験ある中堅層でも隠しきれていない。
『クソッ、せめてメックかロボットがいるかもって言ってくれりゃ、集束手榴弾とか
そうやって愚痴を垂れている間にもメックによる断続的な制圧射撃は続いており、流れ弾によって配管や機能停止した機械類が破壊されていく。溜まっていた悪臭放つ汚水が漏れ出して辺りを汚していたが、戦場の興奮状態でアドレナリンが大量分泌されている傭兵たちはそんな些細なことに気付かない。工業排水で汚染された夏のドブ川じみた悪臭ごとき、命の危機に比べたら屁でもないのだ。
あれだけ派手に撃っているのだから弾切れを狙えばいいとは思ったが、弾切れや節約しようという気配が全く見られないため半ば諦めている。作戦の主導権を相手側に委ねる事ほど危険なことはなく、もし数千から数万という大量の弾薬を持っていたら弾切れを起こす前に被弾する方が早いからだ。
「うっし……あーしが行く。マシンガンが効かない装甲があっても、ハッキングなら通用するかもしれないし」
「……えっ!? 本気かミキモト!」
「流石にそれはマズい、自殺しにいくようなもんだぞ!」
しかしアリサは別の突破口を考えていた。ジャンカーズのアジトを急襲した時と同じくハッキングでこの機械仕掛けの巨兵を陥落させようと目論んでいる。メックはメックでも最新型や一世代型落ちの普及型ではなく最初期の実証機じみた骨董品であると見抜いており、システムやセキュリティも相応に古く脆弱であるだろうと踏んでいるのだ。
もちろん一人だけ危険な目に遭う真似は拓郎もファンも即座に反対したが、同時にそれくらいしかあの兵器を無力化できる方策が思いつかない現実も理解している。アサルトライフルや大口径散弾銃、手榴弾ですら有効打を与えられないとなれば、それを行うために最も可能性が高いのは彼女のハッキング攻撃だ。
手早く勝負を決めるべく決死隊となる覚悟を決めたアリサが弾切れで帰還したドローンを二人に預けると、端末をスタンバイ状態にして遮蔽から飛び出そうとした。もちろん敵に気付かれる前に二人がかりで襟首を掴んで引きずり戻し、何とか説得しようと試みている。
「強くなるために傭兵になったんだから……こんなトコでビビって逃げてたら、探してる人になんか近付けないし。だから行かせて、後ろからドローンやハッキングでやってるだけじゃないって」
「いや、ジャンカーズのアジトの時は殆どミキモトの手柄だっただろ。そんなバカなこと思ってないから無茶は止めてくれ!」
「そもそも現代社会でハッカーをバカにするドアホなんていない、ちょっと自己評価が低すぎるって。もっと自分を大切にしてくれ!」
それでもなお一人、しかも新人だけに死の危険を強要する戦術なんて取らせたくないと言い張る二人であったが、そんな時に思わぬ所から横槍が入った。
『……よく言ったじゃねえか嬢ちゃん。ちょいと無謀だけど俺はいいと思うぜそういうの』
端末越しに響いてきたのはカルロスの声であり、声色からして冗談でも冷やかしでも、ましてや嫌味ですらないのは誰しもが理解できている。
「ミュラー……さん?」
『どの道隠れててもジリ貧なら、どっかで誰かがやらなきゃダメなんだ。俺たちだってそう長くは保たねえ、段々隠れてるネオコンクリートが銃弾で削れてきやがった』
第一印象は最悪の一言に尽き、今でも嫌いだと思っている男。そんな人物から援護がもらえたことにアリサは驚きを隠せなかったが、何が目的や下心があるとかではなく、ただ現状における最善策を提示しているだけなのは彼女も分かっていた。
「いやちょっと待ってくれ、何でいきなりそんな事を……」
『いいから、俺たちが全力で援護するからその間にやっちまえ。そっちの優男は念のため嬢ちゃんに随伴しろ、顔の濃いライフルマンのオッサンは後方で不測の事態に備えとけ』
「ちょっ、何で勝手に人に指示出して……てか何で俺たちの役割分担まで知ってんだ!?」
『そんくらい人さまの得物とカラダ見りゃ大体分かるわ、こちとら傭兵生活は今年で一〇年目なんだ。味方の何が得意か、どんな役割かを把握するくらいできらあ』
挙げ句に勝手に指示を出し始めたカルロスに食い下がろうとした二人であったが、ファンの言葉にも場数を踏んだ傭兵らしい一言で返すと画面越しに拓郎をじっと見ている。チームのリーダーとして速やかに決断を下せと言外に伝えているのだ。
「チームのボスはアンタだ拓郎、どうするか指示をくれ」
「……わかった、やろう。でも俺も援護に出る、ミキモトにはハッキング集中して欲しいから」
「了解したぜボス、後方支援は任せてくれ」
そこまで言われては拓郎としても拒むに拒めず、自分も同行するという条件付きで承諾することになった。彼はこの場で効果的な代案も提示できないのに感情的に反対することがどれだけ愚かか理解できる理性も知性も持っているのだ。
『よし、これで決まったな……ミュラーより全員へ、これより勇者が死地に征く。ならば我らもそれに応えるぞ、総員一〇秒後に最大火力を叩きつけろ!』
『よしっ、期待してるよニュービーたち! 終わったらパーッと打ち上げでもしようじゃないか、陳のヤツの奢りでね!』
そうして俄づくりの作戦が幕を開ける。恐ろしく単純で子供騙しじみたものだが、この依頼の成否がかかっているとなれば緊張感も高まるものだ。
「……よし今っ!」
パチパチと小さな金属塊が装甲板で弾ける音と共にアリサと援護役の拓郎は遮蔽を飛び出し全速力で走り出す。反対側からはカルロスの号令一下、二チームが後先考えない火力でメックと未だ数人残っていたスカヴィードッグスへと襲いかかり、先ほどより多い火箭で敵の目を引きつけていた。
その殆どは装甲に阻まれ表層で火花を散らすだけに終わったが、カルロスの放った何発かのスラグ弾はコクピット部の装甲を派手に叩いてへこませ、音と衝撃に驚いたパイロットの注意を前方へと強く集中させた。
最も原始的ながら確実かつ即効性の高い有線接続は使えないが、なるべく接近して外部通信用の機器を見つけ、そこからありったけのコンピューターウイルスやマルウェアを送りつける。それがどれだけ有効かは分からないが、とにかく敵のメインシステムが旧式でセキュリティが穴だらけであることを祈るしかない。
いつ上体がくるりとこちらを向き、サイバネ機器で強化された人体に対してさえ過剰な運動エネルギーを押し付けてくる二種類の機関銃が放たれるか分からない恐怖を必死に押し殺しながらひた走り、ハッキング専用の端末でサイバー攻撃に使えそうな通信機器があるかどうか探っていく。
一秒一秒が恐ろしく長く感じられる緊張感の中、肉体を引き裂く銃弾の恐怖と焦燥を抑え込んで冷静を保ち、警戒を全面的に拓郎に委ねて、端正な顔で膨大な文字列を映し出す画面を睨みつけつつ一心不乱に作業へと集中力を注ぎ込んでいた。
「外部通信用の無線ポート……あった!」
実時間にすれば一〇秒足らずのはずが、まるで数分ほどにも感じられた時間はお目当てのものを見つけたことで何とか終わり、次の作業に取り掛かった。
その間もメックは小癪にも断続的に銃火を浴びせてくる二つのチームを徐々に小さくなっていく遮蔽ごと叩き潰すべく腰を据えて射撃戦に挑んでいたが、二足歩行による機動性が売りの兵器ながら、それをあまり活かせない閉所であるためかすっかり足を止めて射撃戦に付き合っているため、想定より難易度は下がっている。
おまけにパイロットは素人同然であり、背後でコソコソと良からぬことを企む彼女に全く気付くことなく大火力を向ける優越感のままに二種類の機関銃を敵が籠城する側溝へ向けて撃ち続けていた。攻撃らしい攻撃をしていないため当然だが、足下に忍び寄る脅威に全く気付いていないままだ。
「攻撃パッケージは……テキトーでいいや!」
それでもいつ気まぐれに後退してきたり気付く危険性があるため、アリサは目についたコンピューターウイルスのセットを選択してエンターキーを叩き電子的な攻撃を始めた。
「おらっ、やっちゃえウイルス!」
ハッキング用端末から不正なリクエストを幾つも送り付け、返信があったものを辿って通信を確立すれば侵入が始まり、そこから先は蹂躙と呼ぶのが相応しい一方的な展開となる。
メックにインストールされていたシステムこそ多少近代化されていたがファイアウォール含む防御構造は四半世紀ほど前の、つまりこの機体が製造された頃のままであったため、進化したサイバー戦に全く対応していない。そんなところに最新のコンピューターウイルスを送り込まれたのだからたまったものではなかった。
瞬く間にファイアウォールを食い破った悪意あるプログラムはものの数秒で制御系を乗っ取るとアルゴリズムをめちゃくちゃに書き換えたり重要箇所を削除したりとやりたい放題である。
仕事を終えたアリサが足下を離脱してから数秒後、両腕から放たれていた凄まじい銃火がピタリと止まり、続いて本体の動きもぎこちないものになっていき最後にはピクリとも動かなくなってしまった。
「やった……!」
速さと安全性を重視したにも関わらず完全に動きを止めるに至り、脅威となる機関銃も機動力も完全に封じたとなれば戦局は一気に引っくり返った。つい数十秒までは、今や木偶の坊でしかない。
「うっしゃ、止めたった! 拓郎さん、イケイケっ!」
「よし、俺もやることやらなきゃ!」
『はっ、よくやってくれたねニュービー! アンタ最高だよ!!』
『よし行くぞ。死んだパウロの敵討ちだ、皆やっちまえ!』
動きを止めたメックの左腕によじ登り、そのままコクピット部を目指す。二つ並んだガトリング砲を踏み台にして左腕へと上がり、装甲や駆動部のカバーを踏み台にしてコクピットの真上へと到達した彼は中のパイロットを引きずり出すべくハッチへと攻撃を仕掛けた。
「くそ、固いな! この、このっ!」
しかしハッチにも破片防御用の薄い装甲が施されており、いかに装甲が薄いと言っても長ドスと拳銃で歯が立つものではなく、弾も刃も弾かれる無闇に甲高い金属音を響かせるばかりである。
「こうなったら……」
「どけニュービー、こいつで吹っ飛ばす!」
そこにやや遅れて到達したカルロスは装甲ハッチに苦戦する拓郎を見るなりぐいと押しのけ、手にした大口径散弾銃でハッチにゼロ距離射撃をお見舞いした。二七ミリという規格外の口径に違わぬ凄まじい威力と反動を誇るその一撃は、貫通力の低い散弾でありながら、他の面と違いごく薄いとはいえ張られていた装甲を容易くぶち抜き、穴あきチーズのようにしてしまう。
それでも最後の層は辛うじて貫通していなかったが、肝心の閉鎖機構は破壊していたためそのまま無理やりこじ開けると、理解不能な出来事に呆気に取られたまま固まったパイロットをサイバネ化した剛腕で軽々と引きずり出し、文字通りの鉄拳で腹を抉ると五メートル下のコンクリート面へ叩き付けた。
「しまった……」
火力不足で手こずっていたお陰で大手柄を取られてしまった。こいつにまたあげつらわれた上に嫌味でも言われてしまうんだろう。そう思った拓郎はため息を吐きそうになってしまった。
「……フン、最後だけはしまらなかったが、ニュービーの癖に中々やるじゃねえか。お前も、下の嬢ちゃんもな。それにあの顔の濃いヤツもニクい腕前と肝っ玉を持ってやがる」
しかし彼の予想に反して出てきたのは賞賛の言葉であった。本人の顔は余り認めたくないといった表情なのだが、それでも戦局を一変させた手柄や自らの目で見たものは認めねばならないという信条に従っている。
「あぁもう、完っ全に出遅れちまったよ! コイツに遅れを取った上に大手柄持ってかれたのはシャクだけど、まあこっちにも怪我人いたから仕方ないか」
「違えよヴァル、今回の大手柄はあっちの嬢ちゃんだ。お前はトランシーバー機能に気付いた位だな」
「ったく言わせておけば……まあ、今日はもうやめとくさ」
余計な一言のせいでカルロスとヴァルによる言い合いが再び始まりそうになったが、こうして地下深くに巣食い『祝宴』を今や遅しと待ち構えていたスカヴィードッグスの一団は掃討され、その切り札たる古びた戦闘兵器も一人の傭兵の命を代価として無力化されたことでひとまず静まっている。
まだ値がつきそうだと判断した微かな戦利品を持ち出した傭兵が去った後に残されたのは五〇近い亡骸と機能停止した古いメックのみであり、辺りに漂う血と肉、そして硝煙と微かな機械油が混じった異臭がこの大規模な戦いがつい先ほどあったばかりであることを示していた。