光輝の都の頂へ〜元社畜、欲望渦巻く魔都にて傭兵生活を始める 作:ズブ左衛門
「な、何だお前ら!? クソっ、ナメたマネしやがって!」
「それはこっちのセリフやこの三下ァ、俺たちゃこの辺りを縄張りにしてる『デンジャラスキラーズ』だぞ、誰の縄張りに手出してんのか分かってんのかこの鼻クソ野郎どもが! よしみんな、いてもうたれ!」
正面玄関から押し入ったギャングたちと近くにいた数人のチンピラが、リーダーの怒鳴り声と共に戦い始めたのを確信した拓郎はするりと裏口から建物内へと忍び込み、拳銃ではなく長ドスを手に照明の灯った廊下を歩く。今は正面に気を取られてはいるが、いきなり近くで銃声がすれば嫌でもそちらに注目がいくからだ。
「今のうちに一人でも多く敵を減らそう。頼れるカメラも少ないし、警戒は怠らないでくれよ」
「りょーかいっ、照明がついてるだけだいぶマシかも」
途中から打擲する打撃音と肉が潰されるような鈍い音、恐ろしげな悲鳴、そして断末魔が響くようになった頃にはすっかり騒ぎの中心は玄関や待合室側に移行しており、裏口から二人が侵入したことなど全く気付かれていない。でなければ正面玄関に戦力を集中させ、裏口がガラ空きなんてことにはならないからだ。
「……なんか左の部屋とトイレが怪しいカンジ。あーしのカンだけどね」
「任せろ、すぐに確認していこう」
アリサのアドバイスに従い拓郎が入ったのは準備室であり、リネン室と物置が合わさったような役割を持っている部屋であったが、それより大切なのは不穏な音が何度も聞こえてるにも関わらず一心不乱に棚を物色する欲深なチンピラを静かに始末することであった。
そっとドアを開けて殆ど音も立てずに忍び寄ると、合金製の長ドスで頭蓋に近い側を突き刺している。肩に近い方だと皮膚下装甲で守られていて刃が通らない場合があったため、奇襲ということもあってより脆弱な場所を狙ってみたのだ。
「ごっ……!?」
すっかり十八番となりつつある背後からの奇襲攻撃によって、彼の狙い通り頸動脈を断ち切られるどころか気道まで切り裂かれた薄汚い男はろくに声をあげることすらままならず、略奪品である日本製の消毒液入りボトルを握りしめたままその短い生涯を終えている。
夏にも関わらず何日か放置されていたためか、微かに悪臭を放ち始めていた洗濯物の山を漏れ出た血と体液で汚しながら物音を立てずに崩れ落ちた。他に誰もいないかだけを手早く確認すると、そのまま踵を返してトイレへ突撃した。
「よし、こっちもご開帳だ」
不用心にもトイレで用を足していたのはがさつそうな女であり、目の据わった男が無言でドアを開けたため思わず悲鳴をあげそうになったのだが、出で立ちが明らかにチンピラの一員であったため長ドスによる斬首で何一つ声を発することなくこの世から去ることとなった。
「これで二人、正面のことも考えたら残りはそういないはずだけどな……」
「……まずっ、一人こっちに来てる! 気付かれたかも」
そうして殆ど音を立てることなく二人を始末した拓郎であったが、流石に何かおかしいと勘付いた仲間が様子を見るべく廊下に近づいており、それをカメラの一つが捉えたためアリサが警告している。メック戦で共に恐るべき弾幕の洗礼を受けたとはいえ、戦闘能力に乏しく戦い慣れているとは言い難い彼女からすれば今は拓郎だけが頼りだからだ。
「ようやく気付いたみたいだけど、挟み撃ちされてるからもう手遅れだぞ」
しかし建物内にいるチンピラの数を最大でも一〇人と見積もった彼はそろそろ露見しても問題ないだろうと思っており、攻撃手段の制限は解除するつもりだ。それに彼は殺人に快楽や美を見出すサイコ野郎ではないので、出来ることなら近接攻撃より銃撃で敵と戦いたいのだ。ただ、一般的な火器はニューロンブースターとの相性が悪いため、仕方なく接近戦を主軸にしているだけである。
「んあ、誰だお前……!?」
「……お前みたいなチンピラに名乗る名前はない!」
何か様子がおかしいと診察室に通じるドアから顔を出した男は仲間ではなく見知らぬ人が堂々といることに驚いたが、これ以上喋らせまいと返り血が鈍く輝く長ドスではなく拳銃で撃っている。何のバックグラウンドもない場末のチンピラ如きが皮膚下装甲やそれ以上のグレードのサイバネ機器を持っているはずもなく、音より速い速度で放たれた九ミリ弾は狙い違わず頭部を貫き、命の終わりを告げる真っ赤な大輪の花を二つも咲かせている。
「な、何だ!? じゅ、銃声だ!」
「裏だ、裏からも敵があぁぅっ!」
診療所内に響く二回の銃声によって、ようやく自分たちが挟み撃ちに遭っていることに気付き慌てふためくチンピラ集団の生き残りだが、だからといって出来ることは殆どない。遅まきながら気付いた現実に絶望して悲鳴をあげるか、そのまま正面から押し入ってきたギャング達に始末されることくらいだ。
それでも肩や太ももから血を流した生き残りが、正面玄関を蹂躙した連中の魔手から逃れるべく必死の形相で裏口へと疾走してきたのだが、その姿と気迫に驚いた拓郎とアリサによる近距離からの乱射で蜂の巣となり、外を見ることなく息絶えている。
「驚いた、ミキモトも普通に撃てるんだな……」
「……拓郎さんとファンさんがカジノで遊んでる時もあーしは射撃場でずっと練習してたんだよ。だってこーいう時にお荷物になりたくないし」
そうして建物内をクリアリングした両者であったが、ハッキングしたタレットではなく、銃器越しながら自らの手で敵を殺めたアリサであったが、あの時ほど震えも青ざめもせず、二人がかりで七発もの命中弾を出して打ち倒したチンピラであったものを見据えている。
防衛設備を乗っ取ってジャンカーズを一方的に葬り去った時とは違い、敵の命の灯が消え果てるまさにその瞬間を目の当たりにしたアリサを拓郎は心配していた。一月前まではしがない底辺労働者であったはずなのに、どうしてかこんなにも傭兵稼業に馴染んでしまった自分とは違い、彼女は一般人として裏社会とは無縁の人生を歩んできたと思っていたからだ。
確かにその推測は概ね正しく、イースタンファクトリーのフィクサーである陳に接触する前は単なる理系の得意な女子高生であり、荒事や裏社会など創作の世界でしか見たことないカタギでしかない。
だが、そんなありふれた存在であったはずの彼女は、自らの目的を果たすために強い決意を持って傭兵の世界に飛び込んだ。その手で人を殺めることへの抵抗は未だに少なくないが、それでも殺らなければこちらが殺られるといった状況ならば、躊躇いなく手にした銃の引き金を引くし、敵に破滅をもたらすコマンドを送るだろう。
「すごい向上心だ。俺やファンがカジノで遊び呆けてる時に……」
「……でもやっぱり銃は慣れないや。三月まではこんなハデ目なカッコして、同じような子と遊んでたんだもん」
敵対者は一人残らず床に転がっていることを改めて確認した拓郎は、誠から貰っていた診療所内の見取り図をもとに診察室から更に奥にある薬品庫へと向かう。そこは一見すると先ほどの準備室から雑多なものを取り払っただけだが、奥に鎮座する周囲とは不釣り合いな重厚さの扉が異様な雰囲気を放っていた。
あまりの異様さにこれは隠された弾薬庫か何かかと思ってしまった二人だが、目の前のそれが目的のものであることが分かったのは、油性マジックだというのに細い文字で『薬品庫︰冷暗所保管中につき開放厳禁!』と書かれたメモ書きがキーパッドの横にでかでかと貼られていたからだ。
「これが薬品棚か……予想してたより何十倍も頑丈そうだ」
「確かにコレを壊すのはかなり骨が折れそうやな……兄ちゃんは開ける番号とか聞いてないか? ないなら多少の被害上等でうちのアレに強行突破してもらうのが多分一番早いんだが」
さてこの強固な門番をさっさとどけようなどと拓郎が思案していると、追いついてきたギャングのリーダーが確実だが物騒な提案をする。その後ろにいる二メートル超えの巨漢と得物であるバールらしき金属製の棒は少なからぬ返り血に塗れており、命令さえあれば複数人のチンピラを撲殺したであろうそれで扉の破壊を試みるだろう。
「いや、普通に聞いてるから! 確か『ご苦労さん』だから5、9、6、3、と……」
「まあすげえ安直だなオイ……その方が手間かからなくていいけど」
そんなリーダーの言葉を聞き流しながらキーパッドに誠から事前に聞いた番号を打ち込むと、ピッという短い電子音と共にロックが外れ、生半可な銃弾なら難なく弾き返す強度を持つ鋼製の戸が油圧機構によって開いていく。あれだけ患者のことを第一に考えている人間が、何でこんな金のかかっていそうな保管庫を拵えたのかは謎であったが、これなら中の在庫は荒らされていなさそうだと安心できたほどだ。
一時的ながら協力者を雇い、薬品の現物で報酬を支払うと言った以上、中の在庫が多ければ多いほど自分たちが持ち帰れる分が増える。いかに絶対に必要な二種類には手出ししないと確約させたとはいえ、その他の薬剤だってあって損はないのだから。
「俺たちが絶対に欲しいのは『有機デトクサー』と『選択的免疫調整剤』だ。あとは麻酔と鎮痛剤、それに気付け薬が欲しいけど……」
「よしきた、じゃあ俺らはその二つ以外のやつから頂いていくぜ。中々いい取引になった」
「俺だって流石に約束は破らないぞ。そっちが先に破ったならともかく」
「いーや、69番街の使いの約束なんて破ったら何か恐ろしい目に遭いそうだしな……それじゃ約束通り貰っていくぜ」
拓郎とアリサは誠に指定された薬品と持てるだけの器具を抱えて車へと走り、後部座席へと積み込んでいった。共闘したチンピラの一団もその威圧的な見た目からは想像もつかないほどに手際よく保冷バッグのようなものを取り出すと、保管されている薬品を選び抜いて──拓郎に指定された二種類はしっかり除いてだが──詰め込んでいく。端から見れば手慣れた押し込み強盗でしかないが、これでも不法侵入者を叩き出した合法的な訪問者とその協力者である。
そこから更に五分ほどかけて二種類の薬品以外にも残っていた鎮痛剤や希少品であった麻酔薬、それから注射器や鉗子を始め用途がよく分からない医療器具も持てる限り持ち出した。ギャングの一味は闇市場や末端価格で高値がつく薬品──すなわち乱用すると多幸感を覚えやすいものを優先的に持ち出したため、彼が欲しかった鎮痛剤はともかく、アルコール系の消毒液は大部分が残っている。
「げ、鎮痛剤があんまり残ってない……消毒液は殆ど手付かずのままなのに。まあ残してあるんだからこっちが貰っていこう」
「お、麻酔薬残ってたよ! 三瓶だけだけど、期限は……だいじょーぶ……だと思う、たぶん……」
それらを片っ端から手に取るなり引っ掴むなりして持ち去る様は誰が泥棒なのか分からなくなる光景だが、所有者の許可を得ているため合法である。泥棒は保管室入り口近くで頭をかち割られたまま横たわるチンピラだ。
消毒液や麻酔薬といった液体は重いため最大搭載量が大きいとは言い難い車体が少しだけ沈み込んだような気がしたが、そこは車の動力源であるモーターやサスペンションに頑張ってもらうことにした。いかにコスト低減を最優先した廉価なモデルとはいえ、裏路地を五分と少しくらい走れば69番街に戻れるのだから、多少無理しているとしてもそれくらいは保ってほしいというのが偽らざる本音である。
「んじゃあな兄ちゃん、まさか本当に約束を守ってくれるなんてな。俺たちゃこの辺を縄張りにしてる『デンジャラスキラーズ』で、俺はリーダーのアジム。またここらで仕事をする時に美味しい話があったらお誘いよろしくな」
共闘する必要に迫られていたとはいえ、勝手に薬品庫の在庫を他人に渡したことに対するせめてもの償いとばかりに割られた窓に応急処置を施した上で改めて戸締まりをしてから、満面の笑みで戦利品を抱えるアジムたちと別れ二人も軽自動車に乗って診療所を去った。あまり長居しすぎると好ましからざる注目を集めてしまうかもしれない。
今の拓郎からすればそこらにたむろしているチンピラの数人程度など容易く蹴散らせるが、治療にあたる誠のために一刻も早く薬品を届けることが最優先だからだ。
そうして行きと全く同じ道を戻って69番街に戻ってきた『ウキヨエ』のガレージに車を止めるとクリスに連絡を入れ、薬品を抱えて従業員入り口から飛び込んでいる。
「持ってきたよ! これが有機デトクサーと選択的免疫調整剤で……」
「……麻酔や鎮痛剤、消毒液や医療器具も積める分だけ持ってきた。これだけあれば十分だろうか?」
「十分どころか完璧だよ、ありがとう二人とも! これで何日かは保たせられるぞ。そこの辺りに置いておいてほしい」
診察室代わりに使われているキャスト控え室で薬品を受け取った誠は二人に礼を言うと、置いたそばから消毒液を受け取ると噴霧器に詰める。倉庫に転がっていた古いアウトドア用品のテントを臨時の処置室として用いており、待ってましたとばかりに内外をやや過剰なくらいに消毒すると、二人から受け取った薬剤や器具を用いて処置を始めた。
その手際は素人である拓郎やアリサが見ても見事だと分かるほどで、自分たちが出しゃばれることなどないと瞬時に理解させるものである。金銭感覚が絶望的なまでにダメなだけで、誠は若手ながら凄腕の医師であり、一時は将来の主任教授や学部長とまで言われた傑物なのだ。
「俺たちが他に何か出来ることはないか?」
「いや、もう大丈夫。あとは僕がやるし、細々したことはショウコちゃんがやってくれるから二人は休んで。また明日から診療所開設の手伝いもしてもらいたいからね」
それでも何か手伝えることはないかと聞いてしまったが、医療の知識を持たない者に出来ることは殆どないため二人の出る幕はなく、あとの事は本職である誠と雑用を申し出たショウコに任せて解散となり宿へと戻っている。
部屋の前でアリサと別れ、入浴の準備をしながらそれにしても長い一日だったと拓郎は思っている。事の始まりはアリサとサイバネ機器について話していたらいきなり何回も銃声が響いた。
借金取りの真似事をしていたチンケなギャングから誠を助け出したらマダム・スミスと会うことになり、そのまま突然倒れた人々の治療を手伝うべく治安が崩壊しかかったベイエンド地区にある診療所へ行き、その先で不法侵入者を倒すべく一度は追い払ったギャングと共闘して何とか目当てのものを持ち帰ったのだ。
「改めて思うとすごい濃厚な一日だったな……殆ど日没以降の出来事だけど」
ユニットバスの湯船に張ったお湯に肩まで浸かりながら、今日みたいに濃密な日は廃ホテルの戦いがあった日以来だと振り返っていた。あの日は雨の中で意味深な空き巣犯を捕らえていたらメインストリートからそう離れていない場所で銃撃戦が起き、敵味方合わせて三〇名近い人員が一切の遠慮もなしに様々な銃器をぶっ放しているのだ。
それに比べれば今回は戦いの規模こそ小さかったが、そこに至るまでに複数の出来事があったため余計に疲労をためており、風呂の温かさもあって徐々に眠気が溜まっている。まさか宿で溺れ死ぬわけにもいかないので慌てて出ると寝る支度だけをしてベッドに転がり、いつ寝てもいいようにしていた。
明日からはしばらく診療所開設に向けた手伝いで日銭を稼ぐことになる。オレンジ級の傭兵がこなす依頼なのかと疑問符はつくが、マダム・スミスは恩人であり、他の依頼が入っていないため問題はなかった。いかにスミスのお気に入りといえど宿代がタダになることはなく、貯金額を目減りさせたくなければあくせく働くしかない。
そんな世知辛い理由で拓郎は明日からの診療所設営に参加し、宿代と食事代、そして少しの貯金を得る。最初の依頼である巡回警備よりは報酬額が少しだけ上がっているが、それでも駆け出しとやっていることは変わらなかった。
「オレンジ級に上がっても……あんまり変わらないな。実感なんて全然湧かないし、やってることは丸っきり同じ。それに一廉の傭兵って言われるのは、もう一つ上のイエロー級からだしな」
まあ千里の道も一歩からと思えばいい。そう自らを納得させた拓郎は睡魔の導きに抗うことなく意識を手放し、そのまま夢の世界へと落ちていく。
そうして心身共にすっきりした状態で迎えた翌朝からはレインボー通りの一角、『ウキヨエ』からそう離れていない所にある空の三階建て雑居ビルを診療所兼誠の自宅へと改装するべく工事が始まっていた。数年ほど放置されていたとはいえ一棟丸ごと貸し与えられるのは異例の待遇であり、いかにスミスがこのプロジェクトに期待しているのかを一言も語ることなく示している。
張り切って早起きした誠が指揮を執り、拓郎とアリサ、手空きの有志や自警団員数名が荷運びや基本的な普請を行う。中々に急ピッチのように思われるが、医療施設は色街である69番街には必要なものであり、スミスの指示もあって最優先でヒトやモノ、カネが回されていた。
それに昨晩はキャスト二人がいきなり倒れた動揺もあって急遽終業時間を繰り上げたが、いつまでもそれを引きずっているわけにはいかないし、キャストの控え室を臨時の病室にしたままにはできないのだ。
「手の空いた人から二階に下りて掃除とゴミの運び出しをお願い、三階はオフィス兼僕の自宅だから多少は適当でいいけど二階は病室予定地だからしっかり頼むよ!」
「よし、任せとけカノ先生! 最高速度でキレイにしたる!」
「二〇六八年製のボロだけど掃除機を持ってきたわ、少しでも役に立てればいいけど」
とにかくアズロフとマニエルの二人を一刻も早く移送すべく病室スペースは最優先で整備されていく。拓郎たちが持って帰ってきた薬品を得た誠の処置によって一命は取り留め小康状態を保っているが、いつ容体が急変するかは分からないため少しでも設備の整った場所に移したかったのだ。
「あー……あの、アカマさん?」
「ん? 鹿野さんか。何かあったのか?」
「昨日の患者さんのことで伝えたいことがあって……ちょっと一階に来てもらってもいい?」
拓郎がパーテーションを運び込んでいると、不意に誠に呼び止められ、人の集まっている二階ではなく、資材置き場兼休憩スペースと化している一階へと誘われている。
「俺は医者じゃなくて傭兵だし、そもそも医療の『い』の字も分からないから治療の役になんて立てないぞ?」
「昨日薬品を取りに行ってくれた君だからこそ正直に話しておきたくて……」
「分かった。このパーテーションを置いたら行くから先に待っててくれ」
その口振りや小声からして、きっと何か人には聞かれたくない話をしたいのだろう。愛嬌のある小男の意図を正しく解釈した彼は手に持っていたものを指定された場所に置くと、水道業者待ちのため手つかずのままである一階のトイレ前へと歩いていった。