光輝の都の頂へ〜元社畜、欲望渦巻く魔都にて傭兵生活を始める   作:ズブ左衛門

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第四四話

『依頼主との事前協定により、支援攻撃を実施する。直ちに回収ポイントへの離脱準備をされたし。協力者X』

 

 前回と同じくそんな短い文言だけのメッセージが届いた瞬間、なおも後方に取り付き直接乗り込もうとしていた最後の一台が何の前触れもなく迷走し始め、必死の制御も虚しくバランスを崩して少しずつ減速しながら反対側の車線どころか路肩まで侵入。時速四〇キロほどでシャッターに閉ざされ放置された店舗へと突っ込み、運転席含む前半分が潰れてしまった。

 運の悪いことにそれはリアエンジン式の車であるためボンネットなどあってないようなもので、乗っていた二人は鉄筋コンクリート製の建材と車の後ろ半分に挟まれて無惨にもぺしゃんこになっている。

 

「でもどうやって……というより、どこからあんな神業を?」

 

 よく見れば左側のタイヤが二つとも吹き飛んでおり、怪しげな動きをしていたり何か凶器を持っている人も見当たらないことから一体何があったのか皆目見当がつかなかったが、それでもあの車や中に乗っている敵兵がもはや脅威になることはないのは確かであった。

 ならばやるべきことは一つであり、更なる増援が来るまでに回収ポイントへと滑り込み仕事を終わらせることを最優先すべき。そう決断した彼は、あれだけいた追撃部隊が僅か一〇分足らずで全滅したことに驚きを覚えていたが、そんな感傷に浸りながらもまずは自動運転ルートの再設定を行なっている。目玉商品を奪われた彼らがそう簡単に諦めるとは思えないからだ。

 

『支援攻撃終了。速やかに回収ポイントへ向かえ』

 

 協力者Xを名乗る謎の人物からのメッセージを待つことなく自動運転AIに改めて回収ポイントへの走行を命じ、負傷したファンの容態を見ながらだが増援の可能性を警戒し続けている。

 最終目的地はニューヨシハラに近いベイエンドの東端付近であり、少なくとも数年前には既に廃業していた自動車整備工場という、治安最悪な地区でなくともまともな神経をした人間ならまず近付きたくない場所である。事実ここもそこそこ規模の大きい愚連隊の溜まり場と化していたのだが、今は何故かいなくなっていた。その理由など一々詮索する物好きなどこの街では皆無に等しく、拓郎もそれに倣っている。

 そこに自動運転のままモバイル・アンビュランスで乗り付け、廃墟だというのに一箇所だけ不自然に開かれていたガレージへと滑り込ませれば仕事は終了である。廃墟であるはずのガレージに電気が灯り、誰もいないはずの暗がりからガスマスクとフードで顔を隠した何人もの人間がぞろぞろと出てくる様は三人に露骨な警戒心を呼び起こしたが、もし闇討ちする気ならわざわざ電気もつけないし姿を見せる必要もないだろうと平然を装っていた。

 

「よし、確かにモバイル・アンビュランス一台を受領した。これでお前たちの仕事は終わりだ、詮索好きな奴らがここらを嗅ぎ回らないうちにさっさと離れろ。そして依頼主から報酬を受け取れ」

 

 真に警戒を解いたのはリーダーらしき人物がぶっきらぼうにそう言うなり踵を返し、持ってきた他の人物と同じように車へと近付き分解を始めた時であり、この不気味な格好をした集団がこれ以上自分たちに関わるつもりがないことを察している。

 

「分かった、じゃあ俺たちはもう帰るよ」

 

 そう一声かけてから目出し帽(バラクラバ)を処分した後に改めてファンの左腕の止血を行い、そこから三〇分ほど歩いて69番街に戻れば『ウキヨエ』の裏口前でマダム・スミスが三人を出迎えている。明らかに喜色に満ちており、左腕に血の滲んだ包帯を巻いたファンを見ると一瞬だけ表情を曇らせたが、それでも勇者である彼らを出迎える時は明るくあるべきという信念ですぐに笑顔に戻していた。

 

「よくやり遂げてくれたわねアナタたち! 全員無事……とはいかなくてもみんな生きて帰ってきた上に目的の物も持って帰って来るなんて!」

 

「それは俺たちだけの力じゃなくて、何割かは協力者Xとやらのお陰だけどな……あの謎の人物の助力がなかったら無事に帰ってこれなかった」

 

 とはいえ全てが自力ではなく、協力者Xなる正体不明の味方によって二度も危機から救われたという現実をしっかりと認識しているため、拓郎の表情はあまり明るくない。何ならどこの馬の骨とも知れない人物の助けを借りたなんて、実力社会に生きる傭兵として恥ずかしい話であるとすら思っていた。

 

「そう、なら万一の保険として仕込んでおいた甲斐はあったというわけね」

 

「え……マダムが仕込んでた? てっきり通りすがりのお人好しかと思ったけど、あの時他に誰かいたのか……」

 

 しかしスミスはさも当然だと言わんばかりに表情を変えず、さも当たり前どころか自らの仕込みであると言い切ったため拓郎は驚いている。フィクサーというものは傭兵の生死に関してはあまり関心を持たず、依頼を達成したか否かのみが判断基準であり、後で追加報酬を寄越したとはいえ戦死した傭兵に対して言われるまで触れなかった陳のように、ドライでビジネスライクな対応が普通であると思っていたからだ。

 

「そりゃあ当たり前よ。最低でもイエロー級、理想を言えばグリーン級の傭兵複数を充てがうべき危険な仕事にオレンジ級とレッド級のチームであるアナタたちを行かせた。死んでほしくない相手に然るべき投資や援助をするのは決して珍しい話じゃないわ」

 

 しかしマダム・スミスにとって拓郎たち三人は切り札──というにはまだ少しだけ心もとないが、影響なしに気軽に動かせる戦力としては掛け値なしで最強なのだ──であり、そう簡単に失われては困る人材である。腕はともかく忠誠心は信用できるレッド級の傭兵やチンピラを蹴散らせる自警団はいるが、外の依頼を受けて複数回生き乗り、その上等級まで上げたメンバーがいるチームは彼らだけなのだ。

 だから、彼らの実力より難易度の高い仕事をさせる際には内通させた警備兵とは別のルートで協力者を募り、少なくない対価を払って臨機応変な支援という極めて難しい仕事をしてもらっている。それが協力者Xなるスミスが切れる最上級の隠し玉であった。

 

「二回も俺たちを助けてくれたお礼を言いたいんだけど、誰か教えてもらったりは……」

 

「残念だけどそれはトップシークレットよ。依頼を受ける際の条件の一つが『協力者X自身が話さない限り、決して正体を明かしてはならない』だから、いくらアナタたちの頼みでも絶対に話せないわ」

 

 あれだけの的確な指示と情報収集能力、そして最後に見せた隠密下での攻撃力。ひょっとするとタチバナだろうか、はたまた前に話題に上がっていたブルー級の変人とやらか、はたまた別の実力者なのだろうか。そんなことを拓郎は考えていたが、スミスの断言の仕方からきっと自分で会わない限り今後も知ることなどないと察している。

 

「そうなのか……直接お礼を言いたかったし、できれば戦いの技術も盗みたかった」

 

「まあでも、アナタたち宛にメッセージは預かってるわよ。『久しぶりに楽しませてくれてありがとう、将来有望なルーキーに更なる栄達のあらんことを』ですって。メガコーポの人事部並に人を見る目が厳しいあの子にそこまで言わせるなんて中々のものよ」

 

「そこまで高く評価してくれてるのか、なら顔くらい見せてくれてもいいのにな」

 

「……まあ相手にも立場ってものはあるのよ。傭兵稼業を続けていればまた会う機会もあるかもしれないから、あの子の正体が知りたければもっと精進することね……少なくとも今のアナタたち三人を合わせたよりもずっと強いから」

 

「それって普通にヤバい実力者じゃんね……」

 

 それが終わればいよいよお待ちかねの報酬受け渡しであり、スミスが自らの端末を送金モードにして三人の端末へと振り込んでいく。この報酬を手にする瞬間こそ生を実感すると公言する傭兵は少なくなく、とある日系の傭兵は死地という非日常から無事に帰り着き、新たな日常を始められる瞬間を迎えることを古代の『ハレとケ』に例えて殊更神聖視していた。

 

「さ、報酬の時間よ。遠慮せずに受け取ってちょうだい。先約のあったサハラの独裁者サマにはちょっと悪いことしちゃったけど、これでこの町の人間が救われるわ」

 

 そんな言葉と共に、三人の端末にスミスの端末から大量のクレジットが流し込まれていく。物理的に見れば複製困難な暗号データを受け取っているに過ぎないが、この残高が凄い勢いで増えていく様を見るのも依頼を成功させた際の楽しみの一つなのだ。だからこそ一旦は容態が安定しているファンもこの『儀式』に参加しており、鎮痛剤で緩和された左肘の痛みに耐えながらも自らの口座の残高が二桁も増える瞬間を歓喜の表情で迎えている。

 

「おお、きっかり一三〇万クレジットだ……! 協力者に助けてもらった分を差し引いたりしないのか?」

 

 それでも当初の通りの金額が振り込まれたため拓郎は驚いてスミスに確認しているが、それは当初の手筈通りであるため微笑むだけだ。仮に減額することがあったならば理由と証拠を明確にして伝えるが、そうでなければ向こうから要求されない限り蛇足となる多くを語る必要はないと考えている。

 

「そもそも同じ依頼であっても、何の準備も支援も無しで放り出すなら最低でもその五割増は用意しているわ。保険付きといえど、アナタたちはそれだけ危険な仕事をやり遂げた。これなら三人とも次の昇格まで遠くないはずよ」

 

 アシハラでの勢力は七大ギャングに大きく劣るとはいえ、世界的に根を張る密輸組織相手に大立ち回りした挙げ句、目玉商品を盗み出して追っ手を散々に愚弄した上で持ち帰った功績は決して小さなものではない。無論その分彼らの賞金首となり追われる身となるが、現場に身分を示すものなどなく物的証拠も少ないとなれば早々に正体を特定することはかなり難しいだろう。

 彼らと癒着し支援する企業やギャングの派閥もあれば、逆に敵対する存在も同じようにいる。彼らはそんな敵味方への対応に常日頃から追われており、いかに組織のメンツを潰したとはいえ突発的かつ単発の犯行の下手人捜索に対してあまり大きなリソースは割けないのだ。

 

「さて、仕事終わりに長々とごめんさないね。さあ、これで。でもミスター・マクダニエルはカノの診療所で診てもらいなさい。今ごろは仮眠してるだろうし、アタシから急患一名って連絡しておくわ。もちろん治療費はコッチ持ちで」

 

「いいんですかマダム? そんな治療費まで出して頂いて……」

 

「アナタたちはあの二人だけじゃなくて、これから69番街で出る全てのけが人や病人を守ってくれたのよ。それくらいさせてちょうだい」

 

 三人から隠しきれないほどの疲労を感じたため、労いの言葉をかけ報酬を与えたところで早々に解散させている。小さな町の英雄をこれ以上付き合わせるのは気の毒であったし、秘密裏かつ超特急でモバイル・アンビュランスから取り外した医療機器を運び込ませている組織とも連絡を取らねばならないからだ。

 

「さ、これで話はおしまい。また頼みたい仕事ができたらアタシから連絡するわ、三人ともお疲れ様。そしてこの小さな町のために大きなことを成してくれて本当にありがとう、アナタたちの活躍は大っぴらに出来なくてもここがある限りその功績は忘れられることはないわ」

 

 そうしてスミスとの会合は終わり、負傷したファンは未だ工事途中だが一部稼働を始めた誠の診療所で一旦診てもらい、そのまま一晩経過観察をするため宿に帰るのは拓郎とアリサだけである。

 相も変わらず営業しているダイナーの隣にある入り口から一分も歩けば、そこは人気も明かりも殆どないゴーストタウンじみた家路であり、いつ暗がりから獲物を探す追い剥ぎやチンピラ、スカヴィードッグスのような連中が飛び出してきてもおかしくない雰囲気を放っている。

 しかし69番街の周辺は少しずつ人員が増えてきている自警団が客や住人の安全確保のため定期的に巡回するようになったため、当初のように常に警戒する必要はない。出会った木っ端ギャングが言っていたように、今の69番街は死に体どころか傍目から見れば不自然な復活を遂げつつあるため、混乱に乗じてちょっかいをかけてやろうという火事場泥棒じみた連中は淘汰されていた。

 

「やあ、ヴィジラント1001に1009。今日も異常なしさ。最近は絡んでくるチンピラなんて殆どいなくなったし、君たち様々だよ」

 

「役に立ってるなら何よりさ。これからも俺たちをよろしくな」

 

「また電気とかネットワーク関連の仕事あったらちょーだいって、スミスのオバちゃんに言っといてね!」

 

 たまたま遭遇した巡回の二人一組に軽く挨拶して笑顔ですれ違ったのだが、拓郎は少し経つとはぁ、と大きなため息を吐いている。

 

「メックの時もそうだったけど、今回もミキモトのハッキングに助けられてばっかりだな。それに比べて俺は今回全然役に立ってない……」

 

 アリサは潜入時のカモフラージュからカーチェイスの切り札まで八面六臂の大活躍であり、彼女なしでは協力者Xの存在があっても依頼を成功させられるとは思っていない。それに比べて自分はドスを振り回したり銃器で敵を撃つことしか出来ないのだと拓郎は無力感を覚えていた。

 もし仮に自分が何か戦う以外の特別な技能を持っていれば。特大車輌の操縦技術があり、あの馬鹿でかい動く病院を自力で操作できたならば、敵の最期っ屁でファンが負傷することなくもっと上手くいっていたかもしれない。彼はそんなことばかり考えている。

 

「……もう、何言ってんのさ拓郎さん。あんまりヘンなこと言ってるとあーし怒るよ? 拓郎さんが役立たずなんて言ったヤツは端末から情報全部ブッコ抜いて、個人情報から人さまに知られたくない性癖までぜーんぶダークネットに晒したげるから」

 

 しかしアリサからすれば、そんな拓郎の弱音は妙に腹立たしく聞こえていた。ニューロンブースターの有無は関係なく常に最前線に立ち続け、何倍の敵兵に囲まれようとも物怖じせず啖呵を切り、必要とあらば躊躇いなく自ら危険に飛び込んでいく様は自らに決して真似できないものであり、彼のいう役立たずとは対極の位置にあると思っているからだ。

 彼女自身、傭兵の世界に飛び込むまでは華の女子高生であり、今でも銃撃戦や命のやりとりに対する恐怖は未だ取り去られていない。診療所での遭遇戦は咄嗟のことであり、恐怖より先に生存本能が働いたこともあって対応できたが、それは拓郎がいたからこその反応である。

 武器を用いた直接戦闘などからっきしに近い彼女だからこそ、拓郎の凄さを知っている。それなのに自身をそうやって卑下されては腹も立つというものだ。

 

「……それにさ、しっかりやることやれる人はカッコいいって思う。拓郎さんとかファンさん見た後だと、カオだけ口だけ調子のいいチャラいやつなんて見かけ倒しでダサいとしか思えなくなっちゃったし」

 

「マダムや陳さん、それに他のチームも言ってたけど、本当に実力社会だもんな傭兵って」

 

 訳あって人の死が当たり前に存在する傭兵の世界に飛び込んだアリサは、リアルな命のやりとりを知って価値観が変わっている。そこにマンガやドラマなどで散々美化され語られるような華麗さなど全くと言っていいほどなく、自らの生命をベットしてまで明日を生きるべく戦い足掻く様に魅せられてしまったのだ。

 以前つるんでいた友人たちと同じくしていたはずの価値観が変わり、やれ最新のブランドだの大人気アイドルグループ来訪だのと浮かれ騒いでいたのが心底バカらしくなり、秘めたる自らの使命のためにも力を欲するようになっている。

 

「だから自分のこと役立たずなんて言わないで。次言ったらファンさんと同じ目に遭ってもらうから」

 

「……ごめん。ちょっと考えなしな言い方だった」

 

 普段全く見せない真剣な表情で窘められた拓郎は素直に謝ることしか出来ず、それで真に反省していることを悟ったアリサは端正な顔を満足げに綻ばせた。

 

「むふん、分かればよろしい……それで今回の仕事でいっぱいお金入ったし、サイバネ機器何入れるか決めちゃわない? 二日前だと追加で一三〇万入るなんて思ってなかったから、ケチくさいこと考えずにバンバン入れちゃお」

 

「確かにこれだけ残高があると、金銭面で諦めざるを得なかったやつとか二つ三つ入れても余裕で半分残るもんな……」

 

 そして終わったことを原則いつまでも引きずらないのが彼女のいいところであり、すぐ別の話題に切り替えている。ただ自分が役立たずでないと気付いてほしかっただけなのだ。

 

「お、また最新版のカタログ来てる。デジタルクーポンは付いてないけど、拓郎さんにもあげるねっ」

 

「ありがとなミキモト、何か気になるやつがないかまた探しておこう」

 

 そんな話で盛り上がる二人は、ゴーストタウンじみた場所故に騒音を気にすることなく喋りながら宿への道を歩いていく。

 しか彼らには二つ忘れていることがあった。一つは『チーム拓郎』という新進気鋭の傭兵チームとして致命的と言っても過言ではないほどみっともない名称に代わるものを考えておくことであり、一番真剣に考えているファンが診療所で一晩過ごすこともあって指摘する者がいないため少なくとも数日は放置されるだろう。今のところ何度か少し恥ずかしい思いをしただけで、実害はそれくらいだからだ。

 もう一つは間接的ではあるが七大ギャングの一角たる鬼哭衆との抗争であり、一カ月近く前に小規模かつ格の低い三次団体である『鬼爆組』の攻勢が撃退されたきり大きな動きを見せていなかった彼らだが、大親分からある程度便宜を図ってもらったことで何とか組織の再編成と拡大に成功したのだ。

 シノギの拡大や維持、他組織との交渉や抗争など普段から多忙であるため流石に組本部や傘下の別団体がわざわざ出張ってくることはないが、新たに配下とした無知で愚かなチンピラや愚連隊を加え、そして苦渋の決断だが傭兵を雇うことで減衰した戦力を補充・増強している。

 全てはあの時受けた屈辱をきっちりと清算し、今度こそ69番街を征服し自らの縄張りに組み入れて更なる飛躍の糧とするため。復讐に燃える鬼爆組の組長、サンキチロウ・ハマダは以前より充実した戦力を背景にまたもや良からぬことを企んでいるのだ。

 

「財布も潤ったし、明日の朝飯は追加料金のいるおかずを何品つけてやろうか……まあ明日は多分暇だし、たらふく食ってもよさそうだしな」

 

「あーしは追加の半熟卵でしょ、それにホンモノの豚ベーコンに……マグロの山かけもつけちゃおっかなー! その前に食べてても、やっぱ仕事するとお腹が空くのなんのって……んなことばっか考えてたらお腹減ってきちゃったかも」

 

「今からダイナーに戻るのもあれだし、宿の人に夜食でも用意してもらおうか。何が出てくるのかは知らないけど」

 

「いぇい、さんせーい! インスタント麺とか久しぶりに食べたい!」

 

 だが今この時だけは、夜がこの街らしからぬ静けさと共に更けていく。これぞ人類文明の象徴だと言わんばかりに煌めく中心街の眩い明かりを背景に、更なる飛躍と栄達を望む者はしばし羽を休めるべく帰るべき場所へと静かに、しかし確かな果実を手に入れて帰ってきた。

 戦いを終えた戦士に休息は必要であり、そこで心身ともにリフレッシュし次なる戦いに向けた準備を整えることで、再び死地へと赴けるようになるのだから。




これにて第三章は終わりとなります。
翌日(2026/9/17)に閑話第三章が投稿され、19日からは第四章が始まります。
よろしければ続きもお読みいただけると幸いです。
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