光輝の都の頂へ〜元社畜、欲望渦巻く魔都にて傭兵生活を始める 作:ズブ左衛門
「嘘だろ、そっちが来るのかよ……」
陳が抱える腕利きということで『ドレッドスウォーム』が選ばれる可能性があると頭では理解していたが、いざ本当に来ると分かると少しだけ拓郎を落胆させている。どうせならグリーン級のヴァルが率いるチーム『トランセンデンス』の方が人数的にも相性的にも良かった。いくら仕事には忠実で仕事に私情を持ち込まないとはいえ、ああも非友好的な態度を取られるのはあまり面白くないのだから。
とはいえイエロー級が複数在籍する実戦経験豊富なチームが増援として来てくれるのは純軍事的にはありがたい話であり、これだけでも敵は安易な襲撃を躊躇するようになるだろうとは推測していた。例え相手が二〇人を超えるチンピラであっても、完全武装の傭兵四人であればよほど油断していない限り鎧袖一触できるだろうからだ。
「まあ、せっかく来てもらったのに悪態をつくわけにはいかないし……」
それに今の自分たちは、右も左も分からなかった新人ではない。あの上から目線のいけ好かないデカブツを見返してやろうという気持ちが湧いており、そのためにも同じ仕事で進化した自分たちを見せつけてやろうなどと考えている。
「……お、ミキモトもオレンジ級になってる。これで全員がレッド級から昇格した訳だけど、これで何とか十把一絡げの底辺扱いからは脱せたかな」
それよりもびっくりしたのは、途中加入したためにレッド級のままであったアリサもオレンジ級に昇格していたことであった。恐らくチューブアロイ社の依頼達成を反映したものだと推測していたが、誰がどうやってここまで迅速に成果を見極めた上では全く分からないままである。
もしかしてタチバナが何か関係しているのではと邪推したが、すぐにありえないと思い直した。仮にそうなら昨日のうちに反映されているべきであり、そもそもどうやって彼がアシハラ中の事件や抗争に関わった傭兵たちの結果を知ることができるのか納得のいく説明ができないからだ。
世の中には知らなくていいことや、知らない方が幸せなことは意外と多くある。それを身を以て知っている拓郎はそれ以上追求しようとはせず、不思議なままにしておくつもりだ。
メガコーポや七大ギャングたちがかつて何度も追い求め、数ヶ月に渡る時間と数兆クレジットという資金を投入しても何一つ成果を得られなかった。そんな有様のため今も内容が変わりながら語り継がれるアシハラの七不思議としては殿堂入り扱いされてしまい、今ではカウントされていない。そんな迷宮入り同然の事象を自分一人で調べたところで時間の無駄なのは明らかだからだ。
「……おう暇そうな兄ちゃん、ボケーッと突っ立ってないで買うのか買わないのかはっきりしてくれよ」
「あ、ああ、ごめんなさい! すぐ買って退くから!」
そんな思索に耽っていると、ふと後ろから苛立たしげな声が聞こえた。慌てて後ろを向けば、明らかに不機嫌そうな顔をした同年代らしきサラリーマンが直射日光とアスファルトからの照り返しで熱くなった顔から汗を流しながら待っており、全身から熱気と共に早くしろという雰囲気を発している。
その瞬間、ここは自販機の前だったことを思い出した拓郎は適当に目に付いた飲料の購入ボタンを押す。手早く端末をかざして決済するとゴトン、という鈍い音と共にペットボトルが排出されたので、それを手早く手に取ると慌てて後ろで待っていた男性に列を譲った。
「うぐ、美味しくない……炭酸じゃなかったらちょっと吐き出しそう」
それはどこかのメガコーポ傘下である食品会社が発売している清涼飲料水であり、『これ一本で熱中症も疲れも怖くない!!』という謳い文句がラベルに書かれている。どうやらスポーツドリンクと栄養ドリンクを兼ねたもののようで、その下には複数の注目すべき栄養成分がどれだけ配合されているかが誇らしげに記載されていた。
ただし下層労働者向けの製品であるため当然のように味や匂いに関してはろくに配慮されておらず、形容し難い薬臭さの中にやっつけ仕事で入れたであろうレモンの香りが不自然に漂う暗褐色の液体は、彼の嗅覚と味覚を望まぬ方向で刺激している。
いかにも化学合成しましたと言わんばかりのキツい甘味と薬臭さを誤魔化しきれていないために奇妙な混ざり方をした香りは、夢の町で明日をも知れぬくず鉄拾いをしていた頃を思い出させていたが、唯一の救いはそこらの炭酸飲料よりも炭酸が強いため喉越しだけは意外と悪くないことだ。
「うわっ、おっさんもあれ飲むのかよ……剛の者か」
よくもまあサラリーマン連中はあんなクソ不味いやつを飲もうとするものだ。後ろに並んでいたサラリーマンも急いで同じ飲み物を買って一気に飲み干す様を見た拓郎は思わず口から言葉を漏らしてしまったが、その不用心な呟きは相手に聞こえてしまっている。
「ああ、兄ちゃんみたいな自由人とは違って、
様々な廃棄物で溢れかけているゴミ箱に空のペットボトルを投げ入れたサラリーマンは、どこか諦念の混じった表情を向けながら企業に仕える者の悲哀を端的に表した言葉を残し、足早に中心街の方へと去っていく。その足取りは重いとも軽いとも言えず、もはやノルマを達成するために機械的に動いているだけにしか見えなかった。
「世間一般だと人生勝ち組って言われる
企業による人類支配の前から見受けられるサラリーマンの悲哀を見送っていると、端末の着信音と共にアリサからメッセージが届いた。調べものをすると言っていたはずだが、何か聞きたいことがあるのだろうかと軽い気持ちでチャットアプリを起動し、アリサとのトーク画面を開いている。
『ねえ、タチバナさんについて何か知ってることない?』
だが、そこに書かれていたのは予想外のことであった。何と彼女はタチバナについて調査していたようであり、拓郎にも何か知っていることはないかと助けを求めている。
しかし彼はその要請に対して殆ど力になれそうにない。そもそも直接会ったのは
敵には一片の情け容赦すら見せないほどに苛烈だが味方や保護対象に対しては親切かつ丁寧で、それでいて少なからぬ傭兵のように粗野でも乱暴でもない。殺戮機械のようで人間味が薄いと言われれば否定できないが、依頼内容にないにも関わらず見ず知らずの人を助けてくれた優しさは決して偽物ではないと彼は信じている。
「と言われても、俺だって一昨日を除けば一度しか会ったことないんだけどな……」
ネット上、とりわけ混沌としたダークネットでの調査なら圧倒的にアリサの方が得意だろうに。そんなことを思いながらやんわりとした拒絶の意を込めた返信しようとしたが、その前に彼女から追加でメッセージが連続して届く。
『どんな細かいコトでもいいから、お願いっ! わりかし無茶苦茶言ってるのは分かってるケド、どーしてもあの人の正体を知りたいの』
『それに、あーしはどこかでタチバナさんを見たことある気がするんだよね……ひょっとしたら探してる人に関係あるかもしれないから』
『それにあんなに有名な傭兵なのに、プライベートなウワサが無いし経歴がキレイ過ぎるの。
「確かに変だよな……友達が皆無ってわけじゃなさそうだけど、俺たちが一般的な傭兵コミュニティと殆ど関わりない状態だからその辺がいまいちよく分からない」
それに言われてみれば、妙に出来すぎている感はあった。数年前に突如として現れ、目にも止まらぬ早さで華やかながらも残酷なアシハラの傭兵社会を駆け上がり、今やインディゴ級ながら街の最強格の一人として扱われる。傭兵の命など十把一絡げと言われるほどに安いこのご時世において、メガコーポや七大ギャングですら一目置いて相応の礼節と待遇を用意する数少ない例外的存在であり、その名と戦績を知らぬ者は余程のモグリかピカピカの
しかしその謎めいた男の素顔を知る者は誰もいないのだ。鼻から顎までを面頬で隠し、この地獄のような蒸し暑さの中でも闇に溶け込むかのような外套を纏っていることが多いのは、まだ恐怖を煽る演出や正体の隠匿とためと理解できるのだが、依頼や仕事の絡まない本人の個人的なエピソードが一つたりとも出てこないのは明らかな異常である。
普通なら有名になるに連れて、本人がそう思っているかに関わらず友人知人と名乗る者が何かしらの言及を争うようにするはずなのだが、彼だけはそういったものが存在しない。まるで、そこだけ意図的に消されてしまったかのように。あるいは、絶対に触れてほしくないから消して回っているかのように。
「でもこれでうっかりタチバナさんの地雷を踏んだりしたら本当にヤバいんだよな……悪いのは頼まれてもないのに根掘り葉掘りしようとしたこっちだし、仮に今の戦力で戦ったとして勝てるビジョンが全く見えない」
とはいえ拓郎としては藪をつついて蛇を出す真似をしたくないのが本音である。それも相手がとびきりの毒牙を備えた恐ろしい大蛇、おまけにこちらから手を出さない限り襲ってこないと分かっているのであればなおさらであり、好奇心から余計なことをして命を狙われることは避けたかった。好奇心は猫を殺すという格言はアシハラでもよく使われており、それを体現するかのような最期を迎えた亡骸は決して珍しくないのだ。
故に余力があれば協力するとだけ返信して、タチバナの不可解な謎については忘れるようにしている。そう、タチバナとは現時点で最強格の傭兵であり、頂点を目指す上でいずれは並び立ち追い越さねばならない同業者でしかない。拓郎は自らにそう言い聞かせ、鎌首をもたげつつあった危険な好奇心を何とか抑えつけた。
「よし、こんなことは忘れて口直しに宿のお茶でも飲もう……合成感丸出しの安物でも、あのクソマズドリンクに比べたら百倍、いや千倍はマシだからな。それにしても、ミキモトがあんなことをアプリ上で言うなんてらしくない。いつもは『あんまりメッセージアプリでプライベートな話や秘密にしたいことを送るな』って口うるさいのに、一体どうしたんだろう」
文字だけでも分かるいつも違うアリサの様子に首を傾げつつも、そんな疑問に答えが出ないまま宿に戻った拓郎は部屋に備え付けの合成茶葉で淹れた緑茶で一息ついている。安っぽい味という点では先ほどのドリンクと大して変わりないのだが、栄養になる成分を片っ端から放り込みましたと言わんばかりのアレに対して、曲がりなりにもお茶としての機能を有するように設計されているため口当たりも後味も遥かに良いのだ。
あれからアリサから追加のメッセージが届くことはなく、暇をしている『トランセンデンス』所属のエリヤとメッセージのやりとりをして他愛もない話で盛り上がったり、宿側に少しのチップを握らせて早めの夕食を出してもらい小腹を満たしてみたりと傭兵らしくないことをして暇を潰している。
鉄火場に慣れてしまえば刺激がなくて退屈かもしれないが、戦場から帰る場所として必要不可欠でどこか愛おしい日常を堪能し、迫りつつある新たな
『増援の傭兵との顔合わせを行うので、代表者だけでも詰め所まで来てほしい。他は予定が合えばで構わない』
怠惰というべき日常を過ごしていた彼のもとに、自警団を束ねる男クリスからそんなメッセージが届いたのは間もなく午後七時になろうかという頃合いだ。大多数の家庭ではまだ夕食が終わるかどうかといった時間であり、それ故に微妙に配慮したかのような文面となっていた。
自分の予定は空いているためこの事を二人に知らせようとした拓郎だが当然ファンとアリサにも同時に送信されており、文面を打ち込む寸前に二人から了承の旨の返信が届いている。二人とも既に用事を終えていたようで、出かける準備はほぼ整っている。
対外的にはリーダーということになっている自分が遅れるわけにはいかない。軽くシャワーを浴びてから再び外出用の服装へと着替え、宿のロビーで落ち合った。
「イースタンファクトリー随一のチームだと聞いてドキドキしてたんだが、まさかそっちだったとはな。俺としちゃ色々な意味で『トランセンデンス』の方が良かったが」
「それに関してはあーしも同感……ミュラーさんはちょっとね、やっぱりニガテかも」
「まあ、根っからの悪人ではないんだろうけど口が悪いのは事実だよな……俺もどちらかと言えば苦手だし」
そうして増援のリーダーであるカルロスへの愚痴や文句を言いつつ、三人で宿を出て徐々に東から順に夕暮れから宵闇に染まりつつある空の下を歩いていき、もうすぐ開店という具合で活気が出始めたレインボー通りを見つつ再び詰め所へと足を運ぶとそこにはクリスとカルロスがおり、遠くからでも存在感を放つ肉と鋼の融合した巨躯の背後には三人のメンバーが並んでいる。直立不動で待つ様は企業や国の軍隊と比較しても遜色なく、望まぬメンバーの入れ替わりがあってもなお高い練度を有しているのだと一目で理解できた。
「急な呼び出しなのによく来てくれたヴィジラント……いや、『チーム拓郎(仮)』各員。『ドレッドスウォーム』の方々は既に知ってるとは思うが、こちらが我ら69番街が誇る傭兵チーム『チーム拓郎(仮)』だ。オレンジ級二人とレッド級一人で構成されているが……」
両者が顔を合わせたのだが、実のところメックの奇襲で戦死した分の補充メンバー以外は拓郎たちと面識があるのだが、ただそれだけである。言葉を交わしたことも無ければ互いの名前以外は何も知らないため、事実上の顔合わせの場と化していた。
「……全員オレンジ級、だ。嬢ちゃん……いや、アリサ・ミキモトは今日分の更新でオレンジ級へと昇格してる。ヒモをつけた傭兵のことくらいきちんと把握しとけ」
クリスの説明を不機嫌そうに遮るカルロスであったが、それは自らの名声と実力に対する過信や小勢力に過ぎない69番街に対する侮蔑ではなく、戦士としての功績を違えられたことに対する憤りからくる行動である。その上よりによってメックとの戦いの時に後衛であるハッカーでありながら危険を冒して敵の足下に忍び寄り、制御システムをクラッシュさせて突破口を開いた『勇者』であるため、つい口を挟んでしまったのだ。
「……申し訳ない、ヴィジラント1009」
「いやいや、それくらい気にしないよ!? だってクリスさんは自警団のまとめ役にスミスのオバちゃんの補佐にって忙しいんだし!」
そんな些細なトラブルこそあれど、何か悪影響を及ぼすほどではない。地下空間での戦いの際は互いの実力や実績の差もあってそんなことをする雰囲気ではなかったが、今は拓郎たちも成果を出し続けているため一人前の傭兵として認め、互いに自己紹介をしていく。
しかしカルロスに苦手意識を抱く『チーム拓郎(仮)』と武辺者が揃った『ドレッドスウォーム』のメンバーは双方ともにあまり会話が続かず、数分ほど続いた後はどこかぎこちない沈黙が訪れている。窓越しに聞こえる微かな音と全力稼働するエアコンの駆動音だけが場を支配していたが、そんなどこか気まずさを含んだ静寂は唐突に破られた。
『こちら第二巡回班、襲撃を受けている! 敵は少なくとも一〇人以上、早く増援を寄越してくれ!』
詰め所のスピーカーから響き渡るのは、巡回班から届く悲鳴のような増援要請。切羽詰まった声色の後ろでは複数の銃器が火を噴く音で構成された旋律が鳴り響き、今まさに戦闘が繰り広げられているのだと誰にでも理解できる形で伝えている。
だがその程度で恐怖し狼狽える者は詰め所の中にはいない。むしろ懲りずにやってきた不埒者どもからこの小さな町と同胞もしくは味方を守るのだと奮い立っていた。
「『ドレッドスウォーム』、第二巡回班への増援を!」
「承知した。ようし、戦の時間だ! 『ドレッドスウォーム』出陣、出合え出合えぃ!!」
「「「応ッ!」」」
クリスからの要請があった瞬間、まるで戦国時代の戦が始まるかのようなカルロスの口上の後に、完全武装のメンバーが鬨の声を上げながら凄まじい勢いで詰所から飛び出し、徐々に往来が増え始めていたレインボー通りの通行人を驚かせながら駆け出していく。全員がある程度サイバネ化されているためその動きは恐ろしく素早く、一〇秒も経たないうちに詰め所から姿が見えなくなってしまった。
「あれが……イースタンファクトリーの腕利きチームなのか? 確かに実力はありそうだが、その、何というか……濃ゆい面子なんだな」
しばしの静寂に包まれた室内で数十秒ほど前に走り去っていった『ドレッドスウォーム』の面々を唖然としたまま見送ったクリスは、困惑を隠そうとしつつも隠しきれない表情で拓郎たちの方を見た。当たり前だ、他地区のフィクサー自慢の腕利きとして紹介されたチームがまさかバトルジャンキーじみた連中であるなど聞かされていなかったからだ。
「まあ、実力はあるんだけど……キャラが濃いっていうか、その、個性的というか……」
「……やっぱり実力者は変わった奴が多いなこの街は。こういうとこはほんと見てて飽きないんだよな、アシハラって」
拓郎たちが共闘した際は同時に多方向からの奇襲攻撃を行っただけであり、普段からあんな感じなのかは彼も知らない。それでもマダム・スミスお墨付きのフィクサーが誇る精鋭であるのは確かなので、クリスとしてもきちんと仕事をしてくれさえすれば文句を言うつもりもなかった。
「こちらとしては有能かつ誠実であればいいが……それでも愛嬌や面白みがあるに越したことはない」
それでもクリスは思わず笑みがこぼれ、つられて三人もクスクスと笑い出す。他の当直団員は一体何がそんなに面白いのだろうかと首を傾げていたが、傭兵というのは良くも悪くもはみ出し者ばかりであり、ちょっと変わった振る舞いをする者は決して珍しくないことをよく知らないのだ。
『……こちら第一巡回班、こっちも襲撃だ! 至急増援を!』
しかしスピーカーから響く再びの救援要請が室内の弛緩しかけた空気を引き締め、戦場の緊張感をもたらしている。先ほどは剣客のお手並み拝見とばかりに行ってもらったが、今度は一月以上この小さなコミュニティの守護者として戦ってきた彼らの出番であった。
「よし『チーム拓郎(仮)』も出撃だ! 俺たちだって『ドレッドスウォーム』に負けちゃいないことを証明しよう!」
「よっしゃ、やってやろうじゃねえか!」
「今はあーしだって戦えるようになったんだから!」
今夜は早めかつ二箇所同時襲撃とは、いよいよ敵も本格的に戦力を削りにかかってきたようだ。おまけに二日とも増援を送り込まれて対処されたからと、物量頼みに作戦を変えた上で攻めてきた。
となると、敵は中々功を焦って戦力を集中させているらしい。鬼爆組の心情を推測した拓郎はここからが踏ん張りどころであると定め、覚悟を決めるべく両頬を何度かペチペチと叩く。ここのところほぼ無傷で戦場から生還しているが、今回もそれが続くとは限らない。だからこそ慢心を打ち消し初心に帰るためにも気合を入れておきたかったのだ。
「さあ行け『チーム拓郎(仮)』、第一巡回班を救うんだ!」
完全武装した意気軒昂な三人はクリスが命じるや否や駆け足で詰め所を飛び出すと、端末に表示された地図の座標を頼りに襲撃現場へと向かう。今や守るべき第二の故郷となった69番街を、そしてそこに暮らす人々を守るため、傭兵と用心棒という二足のわらじを履く三人は断続的に銃声が響く方へと全速力で走っていった。