超かぐや姫! ~ツクヨミの守り人~   作:tanuu

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月曜日の憂鬱な朝にお届け。みんな、こういうのが好きなんでしょう? 私も好きです


Extra・IF√:楓がもっと早く越してきたら・4 【彩葉視点】

 理性を雨に流された私たちは、そのまま一線を越えてしまった。越えてしまったというとなんだか他人事みたいだけど、ほぼ私のせいみたいなところがある。お話の中みたいに上手くは行かなくて、滅茶苦茶痛かったし、苦しかったけど、それでも繋がり合えているっていう喜びが私の中をかき乱していた。

 

 その代償というべきか、彼の左手の薬指には私の歯形がリングみたいにして残ってしまったわけだけど。流石に冷静になった後で平謝りした。どうしても理性が飛んでいる間は変な行動をしてしまうみたい。抑えきれない情動、みたいな感じで。そこはどうにかしないと、彼の身体が傷だらけになってしまう。

 

 正しい始め方を知らない私たちは終わらせ方も良く分からず、結局床につけたのは深夜のことだった。翌朝の午前六時半。朝の光が差し込んでくる時間に私は目を覚まして、昨日の夜のことをこうして振り返っている。何というか、面倒くさい女すぎる。それでも取り敢えず落着できたのは楓の優しさによるところが大きい。

 

 彼はまだスースーと寝息を立てていた。穏やかな寝顔。でも、昨日の私は彼に――そう考えると恥ずかしくて直視できないので、私は視線を逸らした。考えないようにしないと、まともに生活できそうにない。

 

「君のことが好きだから」

 

 昨日の夜の言葉が頭の中に響いてくる。あんな真剣な顔で、あんな力強い声で、私を精一杯抱きしめながら、彼は言ってくれた。あの腕の中の温もりと全部包んでくれるような感覚を、私は忘れられない。

 

 今日は日曜日だ。少しくらい、少しくらい二度寝したって構わないだろう。横を向いて寝ている彼の前に潜り込んだ。息を吸えば、彼の匂いがする。あんなに抱いていた不安も、苦しみも、抱えていた黒い想いも、全部どこかに行ってしまったみたいだ。これから先、どんな苦しいことがあっても、耐えられない不安を抱えても、きっと楓なら一秒でどこかに追い払ってくれるはずだ。

 

 静かに目を閉じた。良い夢を見れる。そんな無邪気な予感を抱きながら。

 

 

 

 

 

 気にしなくて良いという彼の言葉に甘えて、何も気にしないことにした。芦花や真実は私たちを応援してくれている。温かく見守ってくれる人もいる。そんな人たちの方を大事にする。それが一番良い事だと二人で話して決めた。他のことは気にしない。雑音より、自分を大事にしている人たちの言葉に耳を傾けたい。

 

 堂々と、勢いで押し切る。その方針が正しかったのかは分からないけど、段々と私たちを取り巻く環境も変化していった。決定的だったのは、普段温厚だった彼が珍しく怒ったからだと思う。しかも、先輩相手に。

 

「これが酒寄ちゃんの彼氏? 見る目ないんだね」

 

 衆人の中でそんな風に言った割と女子人気のある先輩。今まで何を言われても流していたのに、楓は凄くムッとした顔で言い放った。

 

「俺を馬鹿にするのは好きにしていただいて結構ですけど、彩葉さんを馬鹿にしないでください。訂正して頂けませんか?」

 

 口調は丁寧。だけど語気は凄く険しかった。お仕事している時のモードに近かったと思う。それに気圧されたのか、先輩は帰ってくれた。ちゃんと私のために行動したってところで女子からのポイントは上がらなくてもいいのに上昇し、男子からもやる時はやるってことで評価が上がったらしい。少なくとも、クラスでごちゃごちゃ言う人はいなくなった。

 

 そんなこんなで順調にカップル生活を送れるようになった九月のある日、進路に関するアンケートが配られた。まだ一年生だけど、二年生以降にどういうカリキュラムにするのかを考える際に必要だから、だそうだ。

 

 前だったら迷わず東京大学だったけど、今はどうするべきか悩んでいるところがある。その方が健全なのかもしれない。

 

「進路、彩葉さんはどうするの?」

「まだ迷い中。こんなのは……ダメでしょうか」

 

 彼に見せた紙には、第一志望:あなたのお嫁さんと書いてある。自分でもなんかもう浮かれすぎているなって感じがある。それでもどうしても書きたくなってしまった。もちろん、これをそのまま提出するわけにはいかないのであとで消すけど。

 

「だ、ダメではないけど。むしろ大歓迎ではあるけど。ちなみに、第二希望はなんですか?」

「第二希望は高野楓の配偶者です」

「第三希望は?」

「お母さん」

「……なるほど。お父さんは?」

 

 私は何を言っているの? という視線を送りながら、彼を指した。

 

「あ、あの、重たいかもしれないけど、子供の名前とか、考えてみてて。女の子だったら彩月、男の子だったら楓月とかどうかなって。月は私を救ってくれた推しにして楓の頼れる相棒の名前を貰ってて、あとは私たちの名前なんだけど。一姫二太郎っていうように、最初は女の子がベストかな~って気もするんだけど、でも男の子でも全然いいっていうか」

「彩葉さん」 

「うん」

「大事な、お話があります」

「うん?」

「ヤチヨには付き合ったこととか、話をしているんだけど、先日ガチトーンで家族計画をちゃんと考えようと言われました。俺もそう思います」

 

 言いにくそうな顔をしながら、彼はハッキリと言い切った。

 

「流石に毎日は良くないと思います」

「……え。私に飽きたの?」

「違う違う。勉強だってちゃんとしないといけないし、もし彩葉さんが妊娠したりしたら、学校を続けられなくなっちゃう。俺はそんな無責任なことはしたくないから。しっかり、話し合わないとと思って」

 

 確かに、ちょっと浮かれすぎていたかもしれない。現実をちゃんと見ないとダメだ。楓の人生でもあるんだし。それに、子供を育ってるっていうのは凄く難しいと思う。私が良い親になれるのかも良く分からない。なにせ、親のモデルケースが両親しかないのだから。取り敢えず母は反面教師なのは分かるんだけど。 

 

「まだ高校生だし、せめて二人とも高校はしっかり卒業した方が良いと思う。大学なら、休学とか高校よりもやりやすいと思うし。彩葉さんが俺との将来を真剣に考えてくれるのは嬉しいけど、だからこそちゃんと家族になるのならプロセスを踏まないといけない。それが、俺の責任だと思う」

 

 プロセスを踏んだら家族になってくれるっていうことで良いのだろうか。今の言葉はそういう事だよね。そういうことでいいんだよね。私と一緒に居続けてくれるって理解であってるんだよね。

 

「だから、避妊はしっかりします」

「はい♡」

「大丈夫? 話、聞いてくれてる?」

「うん。楓が将来的に家族になってくれるっていう話だよね」

「いや、そうなんだけど、そうじゃないっていうか、本題はそこじゃないっていうか」

 

 本当に伝わったのかな、と言いながら彼は不安そうな顔をしている。大丈夫、話はちゃんと聞いていた。一応自由にさせてくれている母に妊娠中退しましたっていうのは申し訳ないっていうか、卒倒させてしまう気がする。流石にそこまで親不孝者になるつもりはなかった。産むなら、ちゃんと卒業後。楓が言いたいのはそういう理解であっているはず。合ってるよね?

 

「ちゃんとこの先どうするのかは考えてるから。五感実装用のシステムと、今新しく脳内転写用のプログラムを開発して、それを売る相談をヤチヨとしてる。彩葉さんも、そこから家族が増えたとしても、全員しっかり俺の稼ぎで養えるように。家だって、このボロアパートにずっといるわけにはいかないしさ。ここは絶望的に子育てには向いていないから」

 

 一生、一緒にいる。真夜中に支離滅裂な快楽の中で確かに私の耳に聞こえた彼の言葉は、どうやら嘘じゃないみたい。一緒のお墓に、じゃなかった一緒の家に住む話まで考えてくれているみたいだし。私一人で盛り上がっているだけだと思っていたけど、そうじゃなかったことが分かったことが何よりの収穫かもしれない。

 

「そこまで考えてくれてたんだ」

「それはまぁ、もちろん。彩葉さんと最初にしたときから、考えてるよ」

 

 やだ、私の旦那様かっこよすぎ。まだ旦那じゃないか。まぁ誤差みたいなものだよね、数年後に現実になるんだから。ふんふんと鼻歌を歌いながら、私は踊り出しそうな気分のまま台所に立った。

 

「もし結婚式したら、ヤチヨも来てくれるかな?」

「来てくれると思うよ、俺が頼めば」

「推しに見てもらえる結婚式、最高過ぎない?」

「失神しないようにね」

 

 推しに見守られながら愛する人と過ごす。桃源郷ってここのコトなのかもしれない。なんだ、中国の奥地に行かなくてもあるじゃないか。

 

「今日は何?」

「鮭のホイル焼きにしようかなって」

「おぉ、美味しそう」

 

 私の横に立った彼は、ドンと鎮座している鮭の切り身を見ている。その横顔は何度観たって飽きはしない。その瞳で私を見つめて、その唇で私を愛して、その声で私を包んでくれる。

 

 私は静かに目を閉じて、彼に唇を差し出す。俗に言う、キス待ち顔をしていた。すぐに優しいキスが返って来る。何度したって、電流が柔らかく私の中を駆け巡って、何でも出来てしまうような気にさせてくれるんだ。

 

 あなたに出会えてよかった。あなたがいてくれたから、私は今こうして幸せになれている。この先の未来の形なんか分からない。どんな運命が待っているのかなんてわからない。不安はぼんやり抱えたまま、でも今を生きるのに必死過ぎて先のことなんてあまり考えられないまま生きていた。

 

 ある意味で、私の人生は刹那的だったのかもしれない。でも、今は違う。幸せに未来を過ごしたい。彼と、私と、そして子供と。笑顔が絶えない、そんな素敵な空間を作りたい。その大きくてフワフワしているけど幸せな夢がある。それがあるから、今を大事にして、しっかり未来に繋げられるように生きないといけないと思えた。身体に気を遣って、寝る時は寝て。体調も美容も気にかけて。

 

 愛した人に、一番きれいな自分を見てもらえるように。汚い部分も全部見られてしまったけど、それでも綺麗な自分を見て欲しいのが乙女心っていうものだろう。

 

「楓に出会えてよかった。幸せって、こういうことなのかって知れたから」

「それだけ?」

「全部言ってたら、日が暮れちゃう」

「そっか。確かに俺も彩葉さんに出会えてよかった。両親がいなくなって、ずっと一人だったから。誰かと一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、なんてもう一生ありえないと思ってたし」

「これから、何度でも出来るよ。二人で日常にしていこう。もう当たり前になるくらいまで」

 

 二人の日常は少しずつ変化しながらも、ゆっくりと進んでいく。その日々が愛おしい。変化しないで欲しいなと思いながら、明日はどんな日になるんだろうっていう変化を楽しんでいる節もあった。矛盾している。でも、矛盾すら心地いい。愛って不思議だ。色んな全部を良い方向に運んでくれる気がするんだから。

 

 明日が来るのが楽しみなんて、人生で久しぶりに思えたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、プログラミングは高野君で」

 

 パチパチと軽い拍手が起きている。文化祭の出し物が決まったのは良いんだけど、楓の負担が重すぎる気がする。というか、彼がいないと成り立たない企画だし。オリジナルゲームと映像を組み合わせて得点に応じて景品をゲット、なんて企画普通のクラスじゃできない。パソコンとテレビの画面を使うとは言え、基幹になる部分を作らないといけないから。しかも、情報の授業とかでやるレベルからはるか上に逸脱したアイデアを通してしまった。

 

 いや、そりゃツクヨミの統括管理補佐こと私の、()()楓なら余裕で出来てしまうかもしれない。それでも、そんな大事な部分を一人に丸投げにしないでよ。それと、私と過ごす時間が減るかもしれないし。彼が拒んでないし嫌そうでもないから何も言わないけど、何かあったら……。恨みを込めて、文実の男子に視線を送った。ビクッとしてるので、気付いてくれたのだろう。私の殺意に。

 

「と、取り敢えず高野、こんな感じでどう?」

「……」

 

 仕様書を受け取った彼は、黙ってその紙を読んでいる。アレは頭の中で何か計算している顔だ。時計の秒針が半周するくらいの間読んでいたけど、静かに頷く。

 

「分かった。取り敢えず仕様書の通りに仕上げてみる。不具合があったら、どうする?」

「そこはほら、センス……」

 

 カツン、と私が机を叩いた音にビクッと反応した男子は取り繕うような声を出して訂正した。

 

「せ、センス……で解決できるならそれでいいけど、分からなかったら聞いてくれな」

「分かった」

「なるはやでよろ!」

「了解。文化祭準備期間ってスマコン使用可?」

「可!」

「そっか、ありがとう」

 

 かくして、文化祭の出し物は決定された。その日の昼休み、私は楓の机を挟んで反対側に坐っている。広げられているのは二つのお弁当。

 

「断っても良かったのに」

「まぁ、さして難しいもんじゃないから。ヤチヨが思い付きで出してくる無茶苦茶な仕様変更に比べれば全然簡単。すぐ終わると思う。終わったら俺も内装班手伝うからね」

「いいよ、楓の仕事が一番面倒なんだから」

「そうは言うけど、彩葉さんはバイトもあるしさ。それに、俺も一緒に作業とかしてみたいし」

「そういうことなら大歓迎だけど」

 

 嘘は言っていないと思うけど、私を気遣う色が瞳の中に沢山見えた。あぁ、多分心配してくれてるんだろうな。また無理していないかどうか。でもそれは杞憂。まったくもって大丈夫だ。体調管理はバッチリ出来ている。

 

 母体の健康状態が悪い時期が長いと将来に響いてしまうだろうし。

 

「じゃあ、ちょっとやってしまいますか」

 

 彼の瞳がオレンジ色に光った。スマコンが起動している。多分、ツクヨミの仮想キーボードを使って作業するつもりだ。彼専用のアクセスコードとか、割と好きに使える作業スペースとかがあるらしい。まぁ、ヤチヨと二人三脚でツクヨミを運営しているのだから当然かも。それにしても、ヤチヨがライバルじゃなくてよかった。推しが恋敵なんて最悪だし。

 

 彼の指が空中を凄い勢いで動いている。真剣にお仕事をしている姿はカッコいい。普段が優しい表情だからこそ、キリっとした顔で作業している姿はギャップで私をメロつかせてくる。

 

 でも、私と過ごす昼休みをもう少し大事にしてくれても良いんじゃないのかな。そんな小さな嫉妬心が湧き出てくる。折角お弁当だって作ってるわけだし。

 

「あ、そうか」

 

 食べさせてあげればいいんじゃないか。我ながら、なんて名案。

 

「楓」

「うん?」

「はい、口開けて」

 

 彼が言われるがままに開けている口に、私はお弁当の具を摘まんだ箸を入れる。

 

「いかがでしょうか?」

「今日も美味しいよ」

「よかった。じゃ、次はこっちね」

 

 ひょいひょいと運んでいくけど、彼はもぐもぐとドンドン食べてしまった。その間、まったく手は止まってない。その辺は流石かもしれない。

 

「彩葉さんも自分の食べないと、昼休み終わっちゃうよ?」

「大丈夫大丈夫。お茶飲む?」

「ありがと」

 

 渡したペットボトルに、彼は何のためらいもなく口を付けた。渡した後に気付いたけど、それ間接キスだ。私が飲んだ後だった。間接キスなんかじゃなくて口同士のキスを何回もしているのに、どうしてかドキドキしてしまうのはなぜだろう。

 

「ごめん、それ私の飲みかけだった」

「あ、そうなの? まぁだからどうってことは無いけど」

 

 彼はもう慣れてしまったのかと思ったけど、ほんのりと頬が紅色に染まっている。彼は肌が白いから、照れているとよく目立つ。

 

「そんな事言って、照れてるくせに」

「それはだって……彩葉さんのだから」

 

 カウンター攻撃ってこういうことを言うのかもしれない。お手本みたいなカウンターを食らって、私は静かに机に突っ伏した。この人はズルい。ここが学校じゃなかったら、私は今頃私はまた理性を吹っ飛ばしていたとしてもおかしくない。

 

「なぁ、コーヒーあるか」 

「売り切れてた」

「最近売り切れてるよな……」

 

 日常会話を話しているクラスメイトの声はどこか遠くに聞こえている。陽だまりの中にいるみたいなこの時間が、私は好きだった。

 

 

 

 

 結果として、一日で片付けてくれた楓は、私と一緒に内装仕事を手伝ってくれた。クラスは文化祭の大賞を獲得し、その立役者たる楓はみんなに称えられている。打ち上げで褒められている楓を見て、後方腕組顔になっている。みんなが気付いていない間に、私はしっかり気付いていましたよ、と。

 

 いまさら狙い始める泥棒猫がいないのかどうか、しっかり目を光らせつつではあるけど、彼の実力がちゃんと正当に評価されているのは嬉しい。そうなんだよ、私の楓は凄く優しくて、実力もあって、垂れ目の穏やかな眼差しを持っていて、私を陽だまりの中に導いてくれるんだよ。

 

 みんな、彼の魅力に気付こう。でも、渡しはしないけど。二次会のカラオケも目を白黒させながら付いてきてくれた。

 

「カラオケ、初めて?」

「歌姫の歌なら身近で聞いてるんだけどね。縁がなくって」

「そっか。じゃあ、楽しんでいこうよ。付いてきてくれて嬉しい」

「彩葉さんを一人にしてると、ちょっかいかけてくるヤツとかいそうだし、ね」

 

 なにそれ、私に独占欲を抱いてくれてるってこと? 秘められていた独占欲を見せてくれたのは初めてかもしれない。胸が高鳴るのを感じる。この優しさの塊みたいな人が、私を誰にも渡したくないと思ってくれている。両想いだ。付き合ってるから両想いなのは確定なんだけど、それに輪をかけて両想いだ。

 

 まるで劇薬みたい。愛されてるっていう実感でいっぱいだ。この気持ちを届けるには、この曲が良いかな。ちょっと古いかもしれないけど。

 

「――もしも古くなって目移りするときは 二人が初めて出逢ったあの日を思い出してね これからもどうぞよろしくね こんな私だけど笑って許してね ずっと大切にしてね 永久保証の私だから」

 

 ド直球の告白。面倒くさい女に惚れられてしまったのに、それを受け止めてくれた。あの雨の日の声を、言葉を、景色を、私は生涯忘れることは無い。あなたと一緒なら、私は私らしくいられる。

 

 私たちの人生はまだこれから先も何十年と続いていくのだろう。長い長い旅の途中に過ぎない。それでも、その旅程を一緒に歩んでくれる人がいるだけで、こんなに心強い。母の電話に、今度はお礼を言えそうだった。私を生んでくれてありがとう。あなたが私を生んでくれたから、私はこんなに幸せな気持ちになれる。

 

 未来は不確定。その不確定さに対して抱いた不安も、あなたにだけなら云えるんだ。もっと近づきたい。もっとそばにいたい。ずっと一緒にいたい。この距離が、立場がもどかしくすらある。そんな日々の中だけど、私はいつだって確信していることがあった。

 

 

 

 ――明日の私はきっと、今日の私よりも彼のことが好きだ。




次回:冬編

ヤチヨ的には、両親がくっつくのは大歓迎だけど、妊娠してしまうと安全な場所へ引っ越してしまい、かぐやと出会えない可能性があるので流石に止めています。
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