超かぐや姫! ~ツクヨミの守り人~   作:tanuu

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彩葉にトリセツ歌わせたのは我ながらそれなりにセンスあると思ってます。西野カナは他のも含めていい曲ばかりなのでみんなフルで聴いてね。他にこんな曲も合うよ〜ってのがあれば教えてください!


Extra・IF√:楓がもっと早く越してきたら・5 【彩葉視点】

 11月5日は彼の誕生日だ。この日、彼は16歳になる。私は5月なので、半年遅れくらい。恋人の誕生日をお祝いしたいところだけど、私がそんな作法を知っているわけもなく。色々と悩みながら日々を過ごしていた。

 

 この前の後期中間テストではちゃんと学年一位をキープ出来ている。彼氏がいても勉学に支障はありません! としっかりアピールできただろう。むしろ点数が良くなっている。体育でも自己ベスト更新できているし、心身ともに凄まじく調子がいい。

 

 彼もいつも通り理系科目で満点をたたき出していた。数学なんて先生の難易度調整ミスで平均点35点の中で満点を出している。私も80点しか取れなかったのに、どういう頭をしているんだろう。他の教科も私と一緒に勉強しているからか、点数が軒並みかなり上昇していた。先生役としては鼻が高い。

 

 世界史とか現代文も関連性とかそういうのをちゃんと論理だてて説明するとスルスル理解していた。中国の体制が啓蒙思想家に影響を与えて、それがフランス革命に繋がるんだよ、みたいな話をしたら「おもろ~」と言っていたし、繋がりが分かって作用を繰り返していくみたいな覚え方をするのが好きみたいだ。

 

 それはともかく彼の誕生日をどう迎えるのか。それが喫緊の課題だ。

 

「どうしたらいいかな」

「って言われてもねぇ」

「真実、彼氏いるでしょ?」

「いるけど」

 

 真実は困ったなぁという顔でへの字の眉をしている。芦花は苦笑しながらジュースを飲んでいた。頼るべきは私の親友たち。

 

「もういいじゃん、『私がプレゼント』で」 

「……」

「本気にしないでよ?」

 

 芦花の言葉に、それいいなぁ、採用! と思ってしまった。流石に冗談だったみたい。

 

「わ、分かってるよ、もちろん」

「真面目に言うと、形に残るモノか残らないモノのどっちかにしないといけないかな。どっちがいいかは、高野君の好みと彩葉のセンスによるけど」

「なるほど」

 

 彼氏持ちの言葉は含蓄がある。形に残らないモノ、例えばケーキとかだろうか。作れるとは思う。残るモノだと何かプレゼント、ということになる。あんまりお金が無いのは変わらないから、大したものは買えない……。気持ちが大事とは言うけど、あんまりしょぼいものを渡したくはないし。

 

「ま、ぶっちゃけ高野君なら何でも喜んでくれるんじゃない?」

「確かに。彩葉の気持ちが大事だよ、気持ちが」

「……そうだね、ありがとう!」

 

 二人に相談してよかった。普段から料理は作っているけど、お菓子とかは作らない。なので、今回やればかなり特別感が出るんじゃないだろうか。ここ数カ月の自炊の成果で腕は上がっている。練習すれば、きっといい感じに出来るんじゃないだろうか。

 

 そこから数日、私の試行錯誤が始まった。どういう系が好みなのか、どういう系なら技術的に作成できるのか。色々と試しつつ、考えつつ、悩んでいく。悩んでいる時間も、結構楽しい。そして、苦戦の末に何とか納得できるものが出来上がった。

 

 どういうわけか楓の持っている電子レンジがオーブン機能も付いている立派なものだったので、それを拝借して作っている。ショートケーキやタルト系よりもチョコ系が好きらしいので、チョコケーキにした。

 

 いまどき、ツクヨミでお料理動画が見れる。AR機能をオンにしておけば、目の前に動画を展開しながら自分も作業できる。なんなら指示を出してくれるAIとかもあるし。初心者でもある程度作業が出来るようなサポートシステムは溢れていた。中を見てはいけません、なんて鶴の恩返しみたいなことを言って、私は作っている。あと、ケーキだけじゃなくてちょっと豪華な夜ご飯も。

 

「よしっ、良い感じに出来たかな……」

 

 我ながら、納得できるものが出来た。クリームの塗りとかは流石にプロと比べると甘いかもしれないけど、味も見た目も女子高生にしては上出来じゃないだろうか。楓は今お仕事中だ。ヤチヨの作業配信の後ろにいる。時折する相棒感あるやり取りが人気で、結構視聴者もいるのがこの配信だ。ツクヨミ創設以来定期的にやっている。

 

「ライブ演出の骨子は出来ましたよ」

『ナイス~。うんうん、いいねぇ。流石のセンスだよ』

「取り敢えず通しで作成しておきますね」

 

 ヤチヨのライブの演出は彼が担当していることが多い。コンマ単位の細かい調整をしながら見守っている。ヤチヨの尊みを全力で引き出してくれる伝説の名演出の数々は、ツクヨミの持っている技術力の粋を結集させた代物。多くのファンを惹きつけている。

 

 一番人気なのは、千本桜を歌った時のものだろう。まだツクヨミの初期の方の演出だ。サビのところで一気に満開の桜が咲き誇る演出は、当時ハイテクノロジーの塊みたいなものだった。アレを一人で作っているのだから、その腕はすさまじい。

 

『カエデも彼女出来て、ヤッチョと遊んでくれないかと思ってたよ~』

「仕事はしっかりしますよ。食い扶持無くなっちゃうじゃないですか」

 

 唐突な暴露。コメント欄が凄い勢いで更新されていく。パーソナルな部分がほとんど明らかになってなかった分、このニュースはかなりのビッグニュースだったのかもしれない。

 

『どんな子なのかな?』

「どんな子って、そりゃ美人ですよ。俺には勿体ないくらいの才色兼備な人です。努力家で、真っ直ぐで、尊敬しています。捨てられないように、俺も頑張らないとと思ってますよ。だからこうして仕事を頑張ってるわけですしね。それだけじゃダメなので、最近はちゃんと勉強もしてます」

『わぁお』

 

 コメントの量が倍増した。恥ずかしくて画面を閉じる。思わず隅っこに置いてある布団に倒れこんだ。足をバタバタさせてしまう。私が配信を見ているなんて知らないはずだから、あそこで言っていたのは全部本心だってこと。

 

 俺も頑張らないとって、もう十分しっかり仕事しているのに。成績が上がっているのは、もしかして私のためだったのか。むしろ世間的に見れば私の方が釣り合ってないと思うのに。私のために頑張ってくれている。その事実を噛み締めるだけで、胸がキュンキュンしてしまう。

 

 そうやってしばらく悶えていた。

 

「やっと終わった……」

「お疲れ様」

 

 それからしばらくして、楓は疲れた顔で戻って来た。

 

「才色兼備な人なんだ、私」

「うぇ、聞いてたんだ。うわ、マジか……恥ずかしいな」

「恥ずかしがらなくてもいいのに。もっと褒めてもいいんだよ、ほらカモンカモン」

 

 普段は私がデロデロにされているので、ここぞとばかりに攻めてみる。でも、いざ褒め殺されると私は多分人には見せられない顔になってしまうんだろう。耳元で囁かれた日にはおかしくなってしまう。……いつもそんな感じか。

 

「ま、それはまた今度にお願いするとして」

「諦めたわけではないんだね」

「それはもちろん。それでなんだけど、ハッピーバースデー! プレゼントになるかは分からないけど、ケーキを作ってみました」

 

 私はじゃーんと用意した料理を広げる。ど真ん中には完成したケーキ。ちゃんとロウソクも用意している。クラッカーは買い忘れたけど。楓は目を丸くしていた。

 

「そっか、誕生日だったっけ。ここ数年、ヤチヨ以外に祝ってくれる人いなかったから……忘れてた」

「じゃあ、今年から毎年思い出せるようになるね」

「そう、だね。ありがとう、嬉しい」

「よかった」

 

 喜んでくれてよかった。貰ったもののお返しには程遠いけど、彼の思い出を少しでも増やすことができたのなら、これ以上ない喜びだ。今日は特別な日。あなたがこの世に生まれてきてくれた、一年で一日しかない大事な記念日。

 

 そういう記念日をちょっとずつ増やしていきたい。今は私たちの誕生日と、付き合った記念日くらいかな。そこに結婚記念日が足されて、子供の誕生日が足されて、そうやって少しずつ思い出深い日が増えていく。それが家族の営みっていうものなんだと思うから。

 

「私の時、期待してるよ?」

「任せて。今から考えておくから」

 

 来年の5月がたまらなく待ち遠しい。彼は美味しそうに食べてくれている。その表情を見るだけで心が満たされた。

 

 ハッピーバースデー、楓。この世界に生まれてきてくれて、私と出会ってくれてありがとう。来年の今日まで、あなたに沢山幸せがありますように。

 

 

 

 

 

 

 

 12月の空は、少し曇り空だった。寒い風が吹きつける中、私たちはお寺にいる。古い境内の奥にあるお墓には、高野家之墓と書かれていた。12月は楓のお母さんが亡くなった命日がある。だから、お父さんの亡くなった六月、そしてお盆と年末の計三回はお墓参りをしているそうだ。そして、私もそれについてきていた。

 

「付き合わせちゃったね。あんまり、楽しい場所じゃないのに」

「そんな事言わないで。楓のお母さんってことは、私にとってもお義母(かあ)さんなんだから」

「だってよ。よかったね、娘も欲しかったって言ってたじゃん」

 

 楓は寂しさと苦しさを優しい声音に混ぜて、墓石に語りかけている。大事な家族を喪っているという意味では、私たちは同じような存在だった。彼の心の中にはきっと、亡くなった家族の思い出が残っている。それは私も同じだ。お父さんの思い出は消えないまま残っている。それが支えになることもあるけど、時折無性に苦しくなることも、私は知っていた。

 

 楓のお母さんのことは、写真の中だけでしか知らない。名前は秋葉さん。旧姓、天月秋葉さんというらしい。アメツキカエデのアメツキはお母さんの旧姓から引っ張ってきたと言っていた。

 

「秋葉さんは、どういう人だったの?」

「どういう、って言うのも難しいな。うーん、優しい人だったよ」

「楓みたいに?」

「どうかな、俺より全然優しい人だったと思う。怒ってるの、見たことないし。父さんとは高校の先輩後輩だってさ。あ、母さんが先輩の方ね。入退院を繰り返してて、あんまり友達とかいなかったけど、父さんが声を掛けてくれたって言ってた」

 

 入院している時、部活で怪我をして病院に来ていた楓のお父さんと出会ったらしい。お父さんは結構ぐいぐいとくるタイプで、あまり男性に慣れてなかったお母さんはそのまま押し切られるようにして付き合い始めたとか。それでも病弱でよく体調を崩しているお母さんを献身的に支えたそうだ。その末に二人は結ばれて、楓が生まれた。

 

「凄い難産で、それでも生んでくれたんだよ。だから感謝してる。あそこで母さんが頑張ってくれなかったら、俺は彩葉さんに出会えてないから」

 

 ちょっと世間知らずなところもあったけど、と楓は苦笑している。でも、旅行とかに行く度子供よりも目を輝かせてはしゃいでいたそうだ。

 

「素敵なお母さん」

「そう言ってくれると、喜ぶと思うよ。俺の彼女に会うまでは死ねないが口癖だったから。まぁ、こんな形にはなっちゃったけど、それでも叶えてあげられたかな」

 

 俺、ちょっとお寺の人に挨拶してくるから。そう言って楓は歩いていく。私の知らない楓の横顔だった。手を合わせて、頭を下げる。

 

 こんにちは、初めまして。楓さんの彼女の、酒寄彩葉です。正直お母さんのお眼鏡に叶うような素敵な恋人になれているのか、自信はありません。それでも、楓さんのことを愛しているって言うのは本当です。きっと、お母さんに似たから優しい人に育ったんですね。その温かさで、私を溶かしてくれました。楓さんを生んでくれて、ありがとうございます。私も、お二人みたいな夫婦になれるよう、お母さんのように子供を素敵な子に育てられる母になれるよう、頑張ります。どうか、見守っていてください。私は必ず、楓さんを幸せにします。

 

 墓石は静かにたたずむだけ。何の返事も無い。12月にしては少し暖かい風が吹いてきて、活けられた花と私の頬を優しくなでる。認めてくれた……のかな。私は良い恋人に、妻に、母になれるのかどうかわからない。なにせ、モデルケースがあの母だけだし。厳しくしてしまいそう。でも、きっと楓がいれば大丈夫だ。

 

 もしかしたら、私の母もそうだったのかな。私やお兄ちゃんを育てる時に、厳しくしてしまうと分かっていて、それでもお父さんがいるから大丈夫と思っていたのかもしれない。そうだとしたら、お父さんがいなくなってしまったのは母にとって、私が楓を失ってしまったのと同じことなのかもしれない。

 

 ――あんたには、まだ分からん。

 

 お父さんのお葬式で泣かなかった母が、私に言った言葉。久しぶりに、母の声が聞こえた。ねぇ、お母さん。あの時、苦しかったんだね。それで多分、お父さんがいなくても自分が何とかしないとって思ってたのかな。

 

 ねぇ、お母さん。こんなこと言ったら子供のくせにって言われるかもしれないけど、少しだけお母さんの気持ちわかったよ。私も楓がいなくなったら、きっと同じようになってしまうから。

 

「お待たせお待たせ……彩葉さん、大丈夫?」

「え?」

「だって、泣いてるよ?」

 

 気付かないうちに、私は涙が出ていたみたいだ。何の涙なのかはよく分からない。多分、母の気持ちに少し共感してしまったのと、楓を失うなんていう最悪な想像をしてしまったからだろう。そのせいで涙腺が緩んでしまった。

 

「ごめん、大丈夫」

「ホントに? 具合が悪いなら、すぐ言ってね」

「そういうのじゃないよ。……私のお母さんの気持ちが、ちょっとだけ分かった気がして」

「そっか。それは……彩葉さんがちょっと大人になって事なのかもね。もしかしたら」

「そうかも」

 

 袖で涙を拭う。私に寄り添うように立っている楓の手には、何かが握られていた。多分、USBだろう。

 

「それ、どうしたの?」

「あぁ、お寺の人に貰った。なんか、母さんから預かっていたって。彼女と一緒に来ましたって言ったらくれた」

 

 家に戻って、楓のパソコンに接続する。中には、映像ファイルが一個だけ入っていた。楓が再生をクリックすると、映像が流れだす。そこに映し出されているのは白い部屋。多分、病室だろう。そこのベッドに、上体を起こした状態で綺麗な女性が映っている。垂れ目の穏やかな顔をした人。その雰囲気ですぐに分かった。この人が、楓のお母さんだって。

 

『楓がこれを見ているということは、私はもうこの世にはいないと思います。そして、楓が愛せる人が出来たって事だと思います。もしかしたら初めての恋人さんかもしれないし、或いは結婚前かもしれません。結婚した後かも? もう、子供いたりしない?』

 

 こんなにも優しい声で話す人なんだ。声を聞いただけなのに、自分の全てが包まれているような気分になる。お日様の光が注ぐ木漏れ日で、穏やかな午後を過ごしているような気持ち。楓によく似ていた。

 

『恋や愛がずっと続くなんて夢は見ないけど、あなたが愛した人はきっとあなたを生涯にわたって愛してくれるような人だと思います。あなたのお父さんが私にそうしてくれたように。どんな子なのかな、そこにいますか? 楓の選んだ子で、楓を選んでくれた子なら、きっと素敵な方なんでしょう。多分真面目なんじゃないかな? 頑張り屋さんで、時々無理しちゃう。お願いされたら断れない感じだと予想します。当たってる?』

 

 エスパーみたいだ。楓への理解度が凄く高い。そりゃそうだ、楓を生んで、育てたのだから当たり前の話だ。

 

『あなたの結婚式を見てみたかったけど……ごめんね、私はそれまで生きられません。あなたの良いところはちゃんと人に手を差し伸べられるところ。あなたの直さないといけないところは、自分より他人を優先してしまうところ。良いところを褒めてくれて、直さないといけないところを叩き直してくれる人がお相手であることを願います』

 

 はい、任せてください。お母さんの言った良いところは私の好きなところです。そのおかげで、私は救われました。直してほしいところも、お母さんの言った通りです。長い時間がかかりそうですけど、それでも気長に付き合っていきます。

 

『最後に、楓へ。幸せになってね』

 

 シンプルながらも、愛のある声。楓は静かに泣いていた。大粒の涙で泣いている。彼がそんな顔をしているのを初めて見た。私まで泣いてしまいそう。映像は一回暗くなる。ごめん、と言って楓は洗面所に向かった。

 

『楓はきっと泣いているのだと思います。あの子のことだから、きっと大事な人と一緒にこれを見ているんじゃないでしょうか』

 

 映像の続きが流れ始めた。

 

『この度は、私の息子を選んでくれてありがとう。少し重たいかもしれないけれど、私にとっては命を賭けて産んだ子で、そしてこのメッセージを直接伝えられないので、どうか許してください。あなたはきっと、素敵な方だと思います。会えないのが残念でなりません。楓を選んでくれる方なら、私とも主人とも仲良くなれたでしょうから。私の代わりに、夫にその役目は任せたいと思います』

 

 この時はまだ、お父さんが亡くなるなんてことは知らなかったんだ。だから、お母さんのお願いは果たされなかった。

 

『楓の中学校の姿も、高校生の姿も、その先も、私は見ることができないです。苦しんでいても、悩んでいても、困っていても、私は寄り添えない。勝手なお願いですが、あなたに託します。私の代わりに、あの子を愛してあげてね。きっと、この身勝手なお願いを受け入れてくれる方だと信じて、このメッセージを遺します。PS.これは内緒でお願いね』

 

 今度こそ映像は終了する。過去から未来へのメッセージ。私の存在なんて、当然だけどお母さんは知らない。それでも名前も顔も分からない未来の恋人を信じて、このメッセージを託した。

 

 私には、その想いに応えないといけない。何も言われなくてもそのつもりだったけど、このメッセージを託されたからこそ、より一層その想いが強まった。今日は泣いてばかりだ。お母さんの言葉の中には、楓への愛と想いと無念と苦しさと、そんな感情が入っていた。お話してみたかった。この人の力なら、もしかしたら私の母も少しくらい溶かしてくれるかもしれないのに。

 

「大丈夫ですよ、お義母さん。あなたのメッセージ、願い、祈り――全部受け取りました。あなたの代わりになれるのかは分かりませんが、それでも私は必ず最期の日まで彼を愛します。あなたがきっと、そうしたように」

 

 彼の机の上には、写真がある。両親と彼が映っている写真、その隣には私と二人の写真。そして、ヤチヨと撮った映像の切り抜き。写真の中のお母さんが、少しだけ微笑んでくれたような気がした。

 

「そういえば、サプライズ好きだったって思い出した。こんな爆弾遺してるなんて……」

 

 戻ってきた楓は目が真っ赤だ。

 

「これ、残弾が他にもあるらしいんだよね……今から怖い」

「素敵なお義母さんだね」

 

 彼は静かに頷いた。

 

「こんな重たいメッセージ、彩葉さんには――」

「大丈夫。ちゃんと、受け取ったよ。託された重たさはあるけど、それは大事にしないといけない重さだと思ってる。誰かと一緒に生きていく時には、当然背負わないといけないモノだろうから。むしろ、名前も顔も分からない私に託してくれた想いに応えないで、楓の隣になんていられない」

「――ありがとう。本当に……」

 

 彼は言葉に詰まっていた。私はそんな彼を抱きしめる。普段とは逆だ。でも、彼の持っている温かさは消えていない。冬の寒さにも負けないくらい、今の私の心は熱くなっている。絶対に幸せになるんだっていう、強い想いが。お母さんの望んだ彼の幸せな未来を一緒に作る。

 

 そして、私が死んだ後に天国のお母さんと出会えたら、ハッピーエンドと言ってもらえるように。

 

「幸せにするよ」

「それ、俺が言うべきセリフな気もするんだけどな」

「私はもう、幸せだから。あなたがいてくれるだけで」

 

 窓の外の雲は晴れて、夕焼けが空に滲んでいる。明日もきっと、晴れだ。

 

 私たちの未来と同じように。




感想欄で賜った質問、気になってる方も多いと思うので、ここで答えます。

Q:ヤチヨ視点はあるんですよね?
A:あるよ☆

if√が良い感じに終わったらやります。
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