超かぐや姫! ~ツクヨミの守り人~   作:tanuu

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Extra・IF√:楓がもっと早く越してきたら・6 【彩葉視点】

 クリスマスには小さいプレゼントを交換したり、お正月には私服だけど初詣に行ったり。私たちの冬はそんな感じで過ぎていった。おでんをつついたり、お餅を食べたりもした。おかげでちょっと体重が増えてしまったけど、美容適正体重にやっとたどり着いたのである意味ではこれで良いのかもしれない。

 

 時間はどんどん過ぎていく。光陰矢の如しっていうのを心の底から実感する日々だ。もう気付けばあの夏から半年以上が経過して、私たちは二年生になろうとしている。17歳、高校生活のど真ん中だ。高3になってしまうとあまり遊べないし、高2の間に青春しておくべきだろう。沖縄の修学旅行もある。大学生になったら一緒に旅行したいし、その予行演習になるかな? 今から楽しみだった。

 

「綺麗に咲いてる」

「そういう時は、私の方が綺麗って言ってくれるんじゃないの?」

「自明の理を言ってもね、と思ったんだけど」

 

 はい、カウンターが入りました。私の心は彼の放った恋の矢でハリネズミ状態だと思う。

 

 春休みの真ん中、桜満開のこの時期に、私たちは立川公園にいた。多摩川沿いの桜の名所の一つ。のんびりお花見をするにはここが最適だと思う。ちゃんとお弁当も作って来た。お弁当にデコポン入れてくるのは彼の謎のセンスだけど。お母さんが好きだったらしい。

 

「随分前に来たっきりだ、お花見なんて」

 

 風に吹かれてハラハラと散っている花弁を見ながら、彼は遠い昔を懐かしむような声で言った。

 

「私も。あんまり、桜なんて見てなかった」

「こんな近くで咲いてるのにね」

 

 レジャーシートの上で、私たちは手を繋ぎながらのんびりと時間が過ぎるのを感じていた。空は綺麗な青空で、高い彼方には飛行機雲がある。たまに調布の飛行機から飛び立った飛行機の音がする。遊んでいる子供の声、談笑する大人の声、喜色が満ちるこの空間は、穏やかさそのものだった。

 

 心が凪いでいる。彼の存在を隣りに感じながら、この美しい景色の中で穏やかな時間を過ごせている。去年の春、顔を強張らせながらこの街へやって来た私には想像もしていない時間だ。あの時の私に言いたい。大丈夫だよ、彩葉。あなたは、あなたのことを愛してくれる世界で一番の恋人に出会えるから。だから心配しないで。世界はあなたが思っているよりも、あなたに優しいよ。

 

「また、来たい」

「俺もそう思ってた。じゃあ、来年も来ようか」

「うん。来年も、再来年も、その次も、何度だって。未来のことなんてわからないけど、いつか楓と私の子供と一緒にまたここに来たい」

「そうだね。そんな日が来るように、頑張らないと」

 

 私たちの子供はどんな子なんだろう。無邪気に走り回っている子供たちを見て思う。楓に似て優しい子になってくれるといいな。誰かの痛みを、自分の痛みと思えるような、そんな優しい子に。名前は暫定だけどもう決まってるわけだし。

 

「生きてるだけで百点満点」

 

 楓がそう言った。

 

「母さんがそう言ってた。俺に向かって、よく言ってくれた。俺も、そういうことが言える親になりたい」

「そうだね。私も、そんな風になりたいよ」

 

 楓のお母さんは凄い難産の末に楓を出産したって聞いている。自分の命も危ういほどの出産だったとか。そんなお母さんからしたら、楓の存在は生きているだけで百点満点だったのだろう。だから、些細なことは気にならなかった。それが、楓が人の良いところを素直に見られる子に育った理由だろう。

 

「髪に花、ついてる」

「どこ?」

「取るね」

 

 そう言って、私は彼の髪に手を伸ばす。その時、少しだけ強い風が吹いた。花吹雪が舞う。その風に背中を押されるように、私は彼の唇に自分の唇を押し当てる。花に包まれながら、私たちは春の世界を謳歌していた。

 

 

 

 

 

 

 そんな春休みも終わり私たちは二年生になる。そして、私にとっては最大の鬼門イベント、クラス替えがあるのだ。私の高校は学年に上がる時にクラス替えがある。高3の時は進路別だけど、二年生の時はまだそういうのが無い。数学だけはレベル別らしいけど、そこは私と楓が同じなのは確定している。なにせ、向こうは学年一位だし。

 

「お願いいたしますお願いしますお願いします、神様仏様ヤチヨ様……!」

「そこをお祈りしてもねぇ」

「冷たい……。楓は離れ離れでもいいの?」

「離れ離れって言っても、帰る家は隣だしね。同じじゃないけど……」

 

 それはつまり、同じ家に帰りたい=結婚しようってコトなのかな。そういうことだね。うん、そうに違いない。それならそうと言ってくれればいいのに。待ってるからね、プロポーズ。でもあんまり待たされると、私からしてしまうかも。しないっていう選択肢はない。

 

 クラス発表が貼りだされている模造紙の前は人だかりだった。なんとか遠目で名前を確認する。酒寄……あった。高野は五十音順だとすぐのはず。どこだ、と目を下にやると、ちゃんとあった。

 

「っしゃぁ!!」 

 

 楓が目を丸くするくらいには大きな声で喜んでしまった。ガッツポーズまでしている。おっとはしたないはしたない。ちゃんと真実と芦花も同じクラスになっていた。先生が配慮してくれたのかは分からないけど、私にとっては黄金の一年が約束された布陣になっていた。

 

「仲のいい同士とか恋人同士は別クラスにさせられるって話もあったけど、よかった」

 

 そう言いながら彼も胸をなでおろしている。なんだ、ちゃんと気になってたんだ。気持ちが同じなのは嬉しい。先生には感謝しないといけない。くじ引きとかでないのなら、こういう風になるようにしてくれたわけだし。迷惑はかけないようにしないと。

 

「今年もいい年になるといいな」

「なるよ、きっと」

 

 私は微笑む。彼もそれに返すように微笑んでくれた。その笑みを見ると、愛が募る。心が溺れるほど満たされていく。愛してる、と内心で呟いた。その言葉だけで、何でも出来る気がした。

 

 

 

 

 

 

 私が働いているBAMBOOcafeは住宅街の隠れ家的なカフェだ。どういうわけか週末より木曜日の方が混んでいるという謎の現象が発生している。飲食店というのは毎日どんなトラブルが起こるか分からない。いつも来てくれるお客さんもいるけど、そうじゃないお客さんの方が圧倒的に多いからだ。

 

 混雑時はそれこそ戦場みたいな状況になっている。これを捌くのは結構大変。でも楓の仕事の様子を見ているとこっちの方がまだマシかもしれない。向こうはやらかすとそれこそ万単位の人に迷惑がかかるし、コンマ単位の判断が求められている。

 

 一回作業配信中に攻撃を仕掛けられた時、ものすごい数のウインドウを確認しながら操作していた。こんなアタックでここを落とそうなんて百年早い、みたいなことを言っていたのをよく覚えてる。それが自慢でも何でもなく、彼の実力からすれば正当な評価なのがまた格好良さを加速させているポイントだ。

 

「なんでハンバーグが冷たいの?」

「ねぇ、注文まだー?」

「おいおい、どうなってるんだよ!」

「す、す、す、すみませーん!」

 

 大戦争の真っ最中だった。

 

「おはようございます!」

 

 何がお早いのかはよく分からないけど、飲食店では朝でも昼でも夜でも変わらない挨拶だ。スタッフルームに駆け込んで、早々に着替えを済ませてしまう。

 

「店長、新しいハンバーグ、オーブンに入れてあるんであとお願いします!」

「助かる、酒寄さん!」

「林田さん、こっち私が下げますんで八番テーブルの注文お願いしていいですか?」

「頼むわ、酒寄さん。マジ神!」

「で、みおちゃんはどうしたの?」

「酒寄せんぱーい!」

「どうもこうもないよ!」

 

 汗だくでたたずんでいるのは、私が二年生になってから入って来た後輩バイトのみおちゃん。学年も一個下らしい。名前は東みお。やる気はあるんだけど、そのやる気に技術面が追い付いていない感じがある。最初は仕方ないところもあるので、しっかり教えていた。誰だって最初から完璧じゃない。楓だって最初はヤチヨに教わっていたらしいし。

 

「水頂戴って言ったら、この店員さんにピッチャー一杯分ぶっかけられたんだけど」

 

 怒っているお客さん。無理もないだろう。多分外回りのサラリーマンだ。ちょっとお昼ご飯をと思ったら冷水シャワー。これは激怒されても仕方ないと思う。

 

「一緒に謝りましょう。大変申し訳ございませんでした!」

 

 今日も今日とて、このお店は平常運転だった。嵐のようなお昼のピークタイムを何とか乗り切る。これで夕方から夜にかけてもう一回あるのだから中々骨が折れる。まぁでも、これが終わればもうすぐゴールデンウィークだ。勉強の予定があるけど、それでも一日くらいは楓とお出かけできる日がある。

 

 それを目指して、取り敢えず今は頑張っていた。家に帰ればあの笑顔が待っている。うん、それだけでやる気百倍、元気千倍!

 

「い、いらっしゃいませ!」

 

 なんとか自分を奮起させていると、みおちゃんが新しいお客さんを迎えていた。

 

「何名様ですか?」

「あーっと、一人です」

 

 あれ、なんか聞いたことある声がする。まさかと思って視線を送ると、家にいるはずの彼がいた。

 

「彩葉さん、お疲れ様」

「あ、あの酒寄先輩……?」

「私のお客さんだから、引き取っちゃうね」

「分かりました」

 

 私のバイト先に来てくれるのはこれが二回目だ。一回目は忘れもしない、あの雨の日。私にとっては嬉しい記憶と黒歴史とが同居している日。でも、あの日があったから私たちはもっと深い関係性を築けたと思っている。彼からも告白してくれた、ある意味では記念日だった。真夏の雨の中のあの言葉を、昨日聞いたかのように思い出せる。

 

「こちらにどうぞ」

「ありがとうございます。彩葉さんの接客姿、新鮮だね。制服も可愛いし」

「もう、おだてても今日の晩御飯が豪華になるくらいしかないよ~」

「あ、特典はあるんだね」

 

 芦花のセンスが光っている服装に身を包むと、まるで大学生みたいだった。元々穏やかさが同級生に比べて強いので、落ち着いた雰囲気の大人っぽさがある。年上に思われがちなのはそのせいかな。芦花も良いチョイスをしてくれている。流石の美容系インフルエンサー。私の彼氏をかっこよくコーディネートしてくれた。

 

「どうしたの、急に」

「いやちょっとこっちの作業が何とか終わりそうで。は~、あとちょっと~って思ったら顔が見たくなっちゃった。栄養補給、的な?」

「な、なるほどね~」

 

 彼はてへ、というあざとい顔をしている。いけない、仕事中なのを忘れてとんでもない顔になるところだった。仕事中だから耐えられた。仕事中じゃなかったら嬉しさが爆発しているところだった。この人はこういう相手をメロつかせてくるところがあるので要注意なのだ。しかもところかまわず、自然体で。

 

 劇薬すぎるので、私以外には取り扱えない。取り扱わせない。

 

「ちょうどちょっとピークを外した時間だし、昼ご飯にはちょうどいいし」

「ゆっくりしていって。私はあとちょっとで休憩だけど……」

「いいよ、ゆっくり休みな。夜もあるんだから。俺は食べたら買い物して帰るし」

 

 夜、そうだ夜もあるんだった。このまま手を繋いで家に帰れたらどれだけいいだろうか。スタイリッシュ退勤したい。楓がお姫様抱っこで攫ってくれないかな。疲れすぎて変な事考えている。

 

 あーてか夜の部は私にプレゼント持ってくるお客さんが来る日だ。彼氏いるって言ってるんだけど、なんか方便というか嘘だと思われてるらしい。お店のルールで受け取れませんって言って断っているけど、ちょっと面倒なのも事実。ここはそういうお店じゃありません。

 

「なにかお勧めとかある?」

「このハンバーグは人気だよ。結構美味しい。あと、こっちのタコライスとか」

「そっか、じゃあ折角だからこれ一つ」

「はい、ありがとうございます」

 

 頑張ってね、と手を振る彼に小さく手を振り返して、キッチンにオーダーを通してから休憩に入った。私服に着替えて彼が食べている様子を目の前でニコニコしながら見ていても良いんだけど、他のバイト仲間もいるし、店長は楓の存在を知っているとはいえあまり店長の前でいちゃつくのもどうかと思うしでやめておくことにした。ちぇっ、残念。

 

 ヤチヨの配信の切り抜きでも見て休むことにした。ツクヨミには新しいお店が多数出店するということで、大きく区画が増設されていた。どんどん膨らんでいく巨大な空間を、ヤチヨと楓の名コンビが支えている。守秘義務違反にならない範囲でだけ聞いているけど、それでも大変そうだと思う。そんな大変な仕事の末にみんなが喜んでいたり楽しんでいるのを見ている楓は、いつも素敵な表情だった。

 

 いい気分で休んでいると、ドンガラガッシャ―ンと凄い音がする。何事と思って思わずホールの様子を見に行った。そこには、左手で鉄板を掴まえて、右手でみおちゃんの腰を支えている楓の姿がある。しかも服までビチョビチョだ。一瞬状況を把握できないでいると、彼は苦悶の表情を浮かべながら取り敢えず鉄板を机に置いた。

 

「っ……」

 

 左手をひらひらさせている。手はどう考えても火傷していた。当たり前だ、あの熱い鉄板を掴んだのだから。でももし彼がそれを掴んでいなければ、多分みおちゃんに当たっていた。

 

「大丈夫ですか?」

「は、はい……あ、あの、ごめんなさい!」

「お怪我がないなら何よりです。立てますか?」

「はいっ!」

 

 良かった、と言いながら楓はみおちゃんを立たせている。私は彼を引っ掴んで、裏にある水道のところに連れて行った。

 

「ほら、冷やして!」

「あぁ、ありがとう彩葉さん。しっかり火傷しちゃった」

「しちゃったじゃない! この後病院、すぐ!」

「分かってるよ」

 

 ジャーと冷水で冷やしているけど、結構痛々しい見た目になっていた。多分、相当痛いと思う。その間に、私はタオルで彼の服や身体を拭いた。

 

「火傷した時は……」

「流水で15~30分。あと、水ぶくれは潰さない」

「詳しいね」

「医者の息子ですから」

「ごめん、あんまり話さない方が良い?」

「むしろ一人だと泣きそう。彩葉さんがいてくれると、痛みが和らぐ気がする」

「もう……」

 

 またそんなこと言って。やっぱりお義母さんの言う通りだ。自分より他人を優先してしまう癖がある。私が心配しているから、ちょっと強がってるんだろう。

 

「聞けるようならで良いんだけど、何があったの?」

「あの店員さんが濡れてる床に滑ったんだと思うよ。たまたまお手洗い行ってて、帰ろうとしたときに鉢合わせして。ぶつかりそうだったから後ろから声かけた俺が良くなかったみたい。びっくりさせちゃった。そして水も被ってこうなった」

「あのハンバーグは放置でもよかったんじゃ……」

「ひっくり返りそうになってたからね。そのまま顔に直撃とかだと、あの子の顔にやけどが出来ちゃうでしょ。俺の手は尊い犠牲になったわけだね。ま、女の子の顔を守れたならこの手も本望だよ」

 

 笑ってる場合じゃないんだけどな。大きな事故にならなかったのは不幸中の幸い。でも、一歩間違えればみんな大怪我だったかもしれない。誰が悪いって話でもないんだろうけど、私からすれば凄く冷や汗の出る話だった。

 

「お客様! 誠に申し訳ございません! ほら、君も」

「本当にごめんなさい!」

「それで、お怪我の方はいかがでしょうか」

「可愛い彩葉さんが治療してくれてるので大丈夫です。それより、店員さんは変なところを捻ったりしていないですか?」

「は、はい。大丈夫です」

「なら良かった。気を付けないと、怪我しちゃいますよ。濡れてる床を放置は良くないですね」

「本当に仰る通りです。治療費はこちらでお支払いいたしますので……」

「そうですか? ありがとうございます」

 

 店長が平謝りしている。楓が凄く心の広い人で良かった。それだけが不幸中の幸いかもしれない。

 

「すみません、私のせいで……」

「誰だって最初は慣れないこともあると思いますから。彩葉さんからいつも聞いてます。一生懸命な後輩がいるって。落ち着いてやればきっと出来るんじゃないかな。偉そうなことは言えないけど、何かをする前に一回深呼吸をすると良いかもしれませんね。焦っている時ほど冷静に、丁寧に。俺のモットーです」

 

 ツクヨミでは凄く厳しい判断を求められている時もある。常に思考をフル回転させているのだから当たり前だ。そんな時でも努めて冷静にしているからこそ、あんなふうな仕事を出来るのかもしれない。

 

「酒寄さん、今日はもう上がっていいから、病院の付き添いとかをしてください」

「いいんですか?」

「こちらは何とかします。いつも助かっていますし、今は彼氏さんの方を。時給は本来の分そのままつけておきますから」

「分かりました、お言葉に甘えます」

 

 本当は今すぐにでも一緒に帰って病院に連れて行きたかったので、店長の申し出はナイスだ。大急ぎで控室に戻って着替える。

 

「先輩……彼氏さんのこと、本当に……」

「いいって」

 

 ちょっと、いや大分よくないところがあるけど、楓が怒っていない以上私がここで何か言うのも筋違いだと思って呑み込んだ。もしみおちゃんが反省してなかったらそれこそ大激怒だけど、そうじゃないだろうし。

 

「楓も怒ってないから。でも気を付けないとダメだよ。楓が()()()相当優しいだけで、普通だったら大説教ものなんだから」

「は、はい……」

「みおちゃん、記憶力は悪くないんだから。団体のお客さんの注文も、全部覚えられてるでしょ? そういう出来るところをちゃんと伸ばして、ダメなところは直す。ね?」

 

 楓のアドバイスは普通に良い事言っていたと思うし、アレを参考にすればきっと少しは改善してくれるはずだ。あぁでも、一言だけ言わないといけないことがある。

 

 助けられた時、自分を気遣ってくれている時、みおちゃんが一瞬だけ仄かに見せた顔。あの表情の意味を私は自分のそれでよーく知っていた。

 

「みおちゃん、一個だけ」

「な、なんでしょうか……?」

「あの人は、()()だよ。物覚えの良いみおちゃんなら、しっかり覚えられる。よね?」

「は、は、はいッ!」

 

 ならよし。ニコッと笑って私は退勤する。取り敢えず牽制はOK。こういうところで見落とすと、後で大変なことになりかねない。この件はこれで釘を刺したので、あとは楓を早く病院に連れて行かないと。しばらく左手を使わない方が良いならその、お風呂とかも、ね。気を遣わないといけないわけですし。

 

 まずは病院、まずは病院。待ってる間に替えの服。頭の中の邪念を払いながら、楓を回収するために私は控室から飛び出した。この後、自分の身体を労わりなさいとヤチヨにもド説教されたらしい。同感なんだけど、こんなところで推しと気が合いたくはなかった。




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