超かぐや姫! ~ツクヨミの守り人~   作:tanuu

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Extra・IF√:楓がもっと早く越してきたら・8 【彩葉視点】

「いやぁ、助かった」 

 

 大きなビニール袋を二つくらい抱えながら、楓は帰って来た。時刻はただいま深夜の一時半。私たちの楽しい三連休計画は既に崩壊を迎えています。原因、というかそうなった理由は間違いなくこの子。さっきまでちょっとぐずっていたけど、今はまた大人しくしてくれた。

 

「あまりにも俺がウロウロしてたせいか、奥さんに子育て丸投げしてた旦那さんだと思われたみたいで。買い物に来てたどっかのママさんに助けてもらえた。おかげさまでちゃんと一式揃えられました。いい勉強だよ」

「こんなに色々使うんだね……」

「多分、ちゃんとやろうとするともっといると思う。お風呂セットとかはまだ買ってないし。流石に持ちきれないからさ。ベビーバスとかいるみたいなんだよね」

「まずはオムツとミルクだけあればいいかな。あと服もか」

「離乳食は流石にまだでしょ?」

「うん」

 

 乳液とか玩具とかウェットシートやマットレスもある。ここの上に赤ちゃんを寝転ばせておくのかな。ベビーベッドみたいな大きい品物は流石にないので、上手い事安全を確保してあげないといけない。大人が住む分にはこの部屋の状態でも問題ないけど、赤ちゃんを置いておくのには不安がある。安全第一だ。角にぶつかったりしないよう、あとは物が落ちてこないようにも気を付けないと。

 

 私がオムツを履かせて洋服を着せている間、楓は説明書を見ながらミルクを哺乳瓶に入れていた。摩訶不思議生命体なこの子だけど、性別的には女の子みたいだ。私の家族計画だと最初は女の子がいいと思っていたんだけど、もしかしてこの子は本当に私の願いを流れ星が叶えた末の存在なのかもしれない。

 

「星に願って叶うんだ……」

「星?」

「さっき、流れ星見たって言ったでしょ?」

「あぁ、そうだったね。この子の存在のインパクトで忘れてたけど。それで?」

「星に願ったんだ。幸せな家庭って」

「その結果、ってことか……」

「最初の子供は女の子が良いなぁとか思ってたらこうなっちゃったんなら、ホントに星の子なのかもしれない。私の願いが呼び寄せた、空からの贈り物みたいな」

「まぁ確かに子供は天からの贈り物とは言うけどね。だとしたら、益々他所に放り出すわけにはいかないかな。っと、出来た出来た」

 

 私の腕の中でゆらゆら揺れている赤ちゃんに、哺乳瓶を近づけてみる。ごくごくと飲んでいるので、結構お腹が空いていたのかもしれない。本当に自分の子供に飲ませているみたいな気分になって来る。もしかして、母乳出るんじゃないのかな。出ないか、流石に。

 

「はい、トントンするよ~」 

 

 けぷぅ、と息をして、キャッキャと笑っている。満足したのかな、このお姫様は。

 

「俺も抱っこしてみて良い?」

「どうぞどうぞ。ほら、お父さんだよ~怖くないよ~」

 

 私が彼の腕の中に受け渡しても泣かなかった。中々人を見る目があるらしい。この人は自分に危害を加えないって、本能で理解しているのかも。子供とかに好かれる穏やかな雰囲気は、赤ちゃんにも通用しているようだ。いいお父さんだからね、安心して抱っこされて大丈夫だよ。私の思いを汲み取ってくれたのか、ぐずる様子もない。

 

「ちっちゃいし、軽い。でも、重たいな。命の重みがある」

 

 楓は目を細めながら言う。確かにその通りだった。お人形さんみたいな軽さだけど、確かに生きているっていう重さがある。この重みが命を預かるっていうことの重みなのかもしれない。私に、それを背負える覚悟があるのだろうか。母は少なくとも私をこの小さな状態から育て上げたわけだ。次の命を宿せる大きさまで、五体満足で。

 

 世の中の普通のお母さんって凄い偉業を成し遂げているんじゃないだろうか。楓のお母さんなんて特にご自身の身体が弱い中なのに。お父さんもお医者さんだからそんなに休めないと思うし。

 

「楓が買い物に行ってくれてる間、色々考えた。お金のこととか、学校のこととか。正直、まだ覚悟が出来ているとは思わないけど……」

「うん、それでもいいよ。彩葉さんの考えを聞かせて?」

「私は――私たちのところにこの子が来てくれたんだと思う。私が星に願った結果なのか、もしくは全然違う偶然なのかは分からないけど、それでもこうなったのも運命なのかなって。もしかしたら、本当の子供が出来てたかもしれないし」

 

 そうなっていた可能性も高い。もし、何かの弾みで気持ちが昂りすぎていたら、きっと今頃は私のお腹は大きくなっていたことだろう。

 

「真実なんてわからないし、この子にも分からないと思うけど、それでももしこの摩訶不思議な奇跡が私たちを選んでくれたのなら……私はそれを放り出したくない。私のわがままだし、自分勝手なお願いだと思ってる。お花畑すぎる思考かもしれないし、空想的過ぎるかもしれないけど、私の中に抱かれてる命の責任を最後まで取りたい」

 

 これから先、きっといろんな悩みがあると思う。今は多分ゼロ歳から一歳くらいの間だろう。子供の成長はあっという間だというけど、その間に色々あると思う。イヤイヤ期が来たり、反抗期が来たり。保育園や小学校で人と関わる中でトラブルもあるかもしれない。それを全部乗り越えられるかどうかなんて、今の段階じゃわからない。私だって人間だ。機嫌の悪い日もある。

 

 でも、世の中のお父さんお母さんの多くはそれでも子供と向き合って育ててきたはずだ。ウチがそうとはあまり言えないけど……楓の家っていう素晴らしいモデルケースもある。

 

 母にはなんて言われるだろう。全然連絡を取っていないお兄ちゃんにも流石に何かを言わないといけないかもしれない。祖父母はどう思うかな。私が生んだ子ってことにすれば……でもそれだと楓が悪者になってしまう。そこも考えないといけない。

 

 だけど私の心は理性的に考えれば止めた方が良いという選択肢を選んでいた。理性で考えて上手く行った試しがここ一年程無いのも原因かもしれない。自分の心に素直に、好きに素直に。そうやって一年を過ごして、少しは自分を好きになれたし、素直にもなれたと思う。楓が好きと、私はそうハッキリ言えるわけだし。だから、私の心の中にある想いを伝える。例えそれが自分勝手なお願いでも。

 

「どうか、一緒に育ててくれませんか? この子が大きくなるまで、二人で」

「――もちろん。彩葉さんだけに背負わせたりしないよ。助け合って、支え合うのが家族だから。俺は彩葉さんと、そんな家族になりたいと思ってる。指輪も送ったわけだしね。だから一緒に頑張ろう。この子と、俺たちで、幸せな家庭を築けるように。星がそう導いてくれたのなら」

「ありがとう、ありがとう……大好き」

 

 抱っこしながら、私は思わず泣いてしまった。受け入れてくれるって信じていた。それでもやっぱり、こんな人生を懸けた決断も受け入れてくれるかどうかは不安だった。赤ちゃんは私を心配そうな目で見つめている。いけない、お母さんが泣いていては不安にさせてしまう。

 

「俺にもう一度人と触れ合う温かみをくれた人のお願いを、断るわけないよ。そうでなくても、愛してる人のお願いなんだから」

 

 楓は私の頭を軽く撫でてくれる。

 

「成長速度とかそういうのが普通の赤ちゃんと変わらないなら、保育園に預けないとね。ちょっと調べておく。俺の上司は頼れるAIですから」

「あんまりヤチヨをAI扱いしてる人いないんだけどな……」

 

 チャットGPTと同列に扱われてさっきちょっと怒ってたし。逆に言えば、そんな気やすい態度でもいいくらいには二人の間に信頼関係があるのだろう。ちょっとジェラシー。

 

 赤ちゃんは眠そうなので、さっき買ってきてもらったマットレスの上に寝かせる。タオルを枕代わりにすれば大丈夫のはずだ。寝がえりは出来るのかな? まだかな。今日は楓も泊ってくれるみたいだし、何かあっても大丈夫だろう。

 

「一応監視モニターも用意した」

「そんなのも買ってくれたの?」

「いや、普通に俺のタブレットのカメラ機能を使う。録画して、危険そうになったら警告音が鳴る設定にしておいた。AI判断だから大丈夫」

「そんな便利アプリがあるんだ」

「うん。さっき歩きながら作った。割とやってることはシンプルだからね」

「……なるほどぉ?」

 

 AI搭載なのは良いんだけど、どこからそのAIは引っ張り出してきたんだろう。そういえばツクヨミの管理ってヤチヨ以外にも楓が使ってるサポートAIみたいなのが複数いるし、もしかしてそこから……? もう突っ込むのはやめた。お眠だったようで、お姫様はすぐに夢の国に旅立っている。赤ちゃんって一日の大半は寝ているみたいだ。

 

「あ、そうそう。お金の方は任せて」

「え、でも」

「俺は一応、正規労働者なわけですし。従業員が俺一名な事が最近発覚しましたけども」

「楓のお給料っていくらなの?」

 

 起こさないように静かな声で話す。

 

「うーんと、よく分からない」

「へ?」

「ヤチヨが管理してくれてるんだよね。生活費用の口座があって、そこから生活費とか光熱費とか学費は引き出してる。プリントとか学校のお知らせとか税金や支払い関連も管理してくれてるし、よく助けてくれてるよ。リマインドしてくれないと忘れそうになるし」

 

 お金の管理は奥さん(予定)の仕事だと思うんだけどな。もちろんそうじゃない家庭もあるとは思うけど、旦那さんがそう言うのが得意じゃないなら、余計に。楓は無駄遣いしないタイプだけど、甘やかしそうだ。この子が大きくなって欲しい~って言われたらなんでもホイホイ買ってしまいそう。でもそれは教育上良くないと思う。

 

 なので、奥さん(まだ)が管理する方が良いと思うのだ。ヤチヨがやってくれているのは彼のことを慮ってのことではあるんだろうけど、ちょっと嫉妬する。ちょっとじゃないかもしれない。そこは奥さん(将来的には)の立ち位置なのです。あぁでも推しが家計を管理してくれてるってのは羨ましいかもしれない。

 

 つまり、楓と結婚すると私の財布の紐もヤチヨが握ってくれるのかな。それはなんて天国なのか。

 

「親と住んでいた家は、広すぎたからさ。食もコンビニ飯だったし、服もそんなに興味なかったし。暮らしていくのには最低限あればいいって言ったら、その額になってる」

 

 それでも結構な額はあるんだけどね。私のギリギリな口座よりはましだ。なるほど、それで最初に私にバイトをしないかと提案できたわけだ。加えて言えば、お恥ずかしながら私の食費も彼が出してくれているし。作るのが私、スポンサーが楓。それが私たちカップルの金銭状態だった。

 

「ちょっとその辺は後で相談してくる。でもツクヨミは貧乏じゃありませんので。ふじゅ~payの管理者も俺とヤチヨになるわけだしね。そこら辺はどうにかするよ。だから、どーんと任せて。彩葉さんは、その間に学校に行って、大学にも行って、就職する。俺は高卒でいいし、在宅ワーク出来るから。家族計画的にはこれで問題ないと思うんだけど、どう?」

「やってみない事にはわからないけど、聞いてる限りだと大丈夫だと思う。私だけなんか楽してるみたいだけど……」

「そんな事ないよ。大学も大変だろうし、ご飯は俺より彩葉さんの方が圧倒的に上手く作れるんだから。これからもそこは頼りっぱなしになると思う」

「役割分担、だね」

「その通り」

 

 未成年の子育てなんて普通は無理かもしれない。ただ、運の良い事に楓は既に手に職があって、少なくとも私とこの子を養える算段がある。先ずはお金が無いと何もできない。そこは楓のおかげでクリアできた。後は私がなるべく家事をしていく。そうやって上手く分担しながら、時には支え合いながら、この子を立派に育てる。

 

 まぁもしかしたら、その過程で妹とか弟が出来るかもしれないけど……それはそれでということで。

 

「私たちも寝よっか」

「だね。流石に眠い……」

 

 深夜に急いで買い物に行った楓は眠そうな目をしている。お風呂は明日の朝、交代で入ればいいかな。あんまり夜泣きをしないでおくれ……。そう願いながら、私たちは赤ちゃんの隣に寝た。二人とも寝相は良いので大丈夫のはず。

 

 強いて不満があるとすれば、しばらくはイチャイチャできない事だろうか。まぁでも、それも子育てっていうものだと思って甘んじて受け入れよう。

 

「おやすみ、楓」

「おやすみ、彩葉さん」

 

 窓の外には綺麗な満月。カーテンの隙間から月光が私たち三人を照らすように差し込む。優しいお父さん、可愛い娘、そして私。川の字に並んで寝ているこの光景は、何度も夢に見た景色だ。狭くても愛情のあるこの場所で幸せな家庭を作る。そんな夢を何回も見てきた。まさか、こんなに早く現実になるとは思わなかったけど。それに、娘の存在も予定と大分違うし。

 

 それでも、なんだか幸せだ。いいお母さんになれるように、楓のお母さんみたいになれるように。私、頑張るからね。あなたの将来が、輝いたものになるように。楽しい思い出を沢山あげられるように。人生を幸せだって思えるように。自分を、好きになれるように。

 

 時計は午前二時を指している。望遠鏡を覗き込めばほうき星が見えるのかもしれない。でも、今の私には見えないほうき星よりすぐ隣にあるこの星の化身みたいな娘の方を見ていたかった。

 

 

 

 

 

 

 朝を目を覚ますと、天使はスヤスヤとよく寝ていた。赤ちゃんは庇護してもらえるように誰が見ても可愛いと思える見た目をしているんだとか。その話を聞いた時はフーンとしか思わなかったが、いざこうして目の前にいるとその話の信憑性を実感する。産毛が朝日に煌いてキラキラと光っていた。優しく撫でると柔らかい。

 

「あぁ、そうか。私の子にしたんだ」 

 

 守ってあげないと。そういう思いが強くなる。もう一人、一緒に守ってくれる存在はまだ横で寝息を立てている。というか、この子は楓の服を掴んでるし、楓の服を口にくわえている。おかげで彼の寝間着の一部はよだれに染まっていた。

 

 大きな欠伸が出た。時間は七時半。もうちょっと寝れたかもしれないけど、起きてしまったものは仕方ない。二度寝しても良いんだけど、そのままズルズルお昼近くまで寝てしまいそうだ。

 

「八時くらいには起こそう」

 

 そう決めて、ゆっくりと布団から起き上がる。着替えて、顔洗って、朝ごはん。この子はミルクでいいけど、私たちは普通に食べないといけないし。そうして作業をしていると、八時くらいに楓が目を覚ました。この家は狭いから、誰かが寝ている時に作業をすると起こしてしまうかもしれない。

 

 やっぱり、引っ越すべきなんだろうか。

 

「おはよう」

「あぁ、うん。おはよう彩葉さん……。なんか、この子大きくなってない?」

 

 確かに、服が大分キツそうだった。結構余裕のあるサイズのはずだったんだけど。昨日は片手に収まるくらいの大きさだったのに、今はさらに一回りくらい大きくなっている。一歳になるかならないかくらいかな。

 

「保育園に預けるのはもうちょい待った方が良いかもしれないね。体感数㎝は大きくなってる」

「やっぱり宇宙人なのかな」

「おそらくはね。人間がとる成長過程はもっとゆっくりだし」

 

 そう言いながら、楓は頭を撫でている。いつまでもこの子、じゃ変だ。名前をあげないと。

 

「名前、考えないとね」

「確かに」

 

 ほえ、という感じで目を覚ましたお嬢様にミルクを差し上げ、私たちはその間に交替で朝ごはんを済ませた。今は玩具で遊んでいる。あんまりガンガン床に叩きつけないでね、修理しないといけなくなるから。

 

「さて……改めて名前をどうするか。真剣に考えたいと思います」

 

 私の張り切った言葉に、楓はパチパチと手を叩いている。

 

「まず名字はどちらにしようか」

「酒寄でいいと思うよ。彩葉さんが最初に抱き上げたんだし」

「そのままだと楓が婿入りすることになるけど、大丈夫そう?」

「俺はそこに拘りはあんまりないから。酒寄楓もいいと思うし」

 

 高野彩葉でもいいんだけどな。それはそれで憧れはあった。名字が変わってあぁ、私結婚したんだ、的な。でも酒寄楓になってくれるっていうのも凄い魅力的。母が認めてくれるのかは知らないけど、楓の良さは多分理解してくれると思いたい。

 

「では、名字は酒寄で。次、肝心の名前を決めたいね」

「何か使いたい漢字とか言葉があれば、そこから引っ張ってくればいいんじゃないかな」

「ナイスアイデア」

 

 使いたい漢字となると、月・見・ヤチヨ(とその関連、八千代とか)・楓あたりになる。ただ、それだとちょっと安直すぎる気もする。前に考えた子供の名前は私が産んだ子につける予定だったし。この特別な方法で出会った子には、何か別の良い名前がある気がする。

 

「特別な感じが欲しいかな。宇宙から来たんだろうし」

「宇宙っぽいとすると、空・星あたりも使えるかもね、漢字として」

「となるとこの辺かな……?」

 

 ずらっと命名サイトが並んでいる。今時は便利で、漢字と性別を指定するとその漢字を使った女の子の名前みたいなのが一覧になって出てくる。

 

凛月(りつき)とか瑞月(みずき)とか色々あるよ。星凪(せな)とか。彩葉さんの文字を使うなら、彩星(いろせ)とかもあるし」

 

 そこからが大変だった。ああでもない、こうでもないと命名辞典を総ざらいし、姓名判断サイトを調べに調べ、頭がパンクしそうになる。私たちの両親はどうして私の名前をこれにしたんだろう。多分、母の名前が紅葉だから、そこから「葉」の字を使うことにしたんだと思う。でも葉なら他にも色々ある中で、どうして「彩」の文字を使ったのか。

 

 あの母も悩んだのだろうか。調べてくれたりしたのだろうか。それとも、ビシッとこれに決めたのかな。どれにしたって、真剣に考えはしてくれたんだろう。親からの、最初の贈り物なのだから。

 

「楓は、どうして楓って名前なの?」

「単純に誕生日がシーズンだったってのと、本来の予定日が10月25日だったんだよね。その日は楓が誕生花だから。あとは、紅葉のど真ん中でプロポーズされたかららしい」

 

 誰かの名前には、それだけのエピソードがある。芦花や真実にだってあるだろう。この子には、どんな名前が相応しいのか。

 

「七色の電柱から出て来た、ってエピソードは反映させられないからなぁ。なんだかかぐや姫みたいではあるけど」

「……それだ」

「え?」

「それだよ!」

 

 かぐや姫みたい。そういえば、この子が入っていた扉の取っ手は竹みたいだった。子供のいない夫婦(予定)のところに赤ちゃんが来る。しかも赤ちゃんは通常あり得ない光る円柱型の物体に入っている。確か原典のかぐや姫もかなりハイスピードで成長していたはず。だとすれば、名前にするには相応しい。

 

「かぐや、かぐやっていうのは?」

「ひらがなで?」

「うん。当て字にするよりは、柔らかくて優しい感じも出るし。こんなかわいい子なら、かぐや姫の名前でも名前負けしないよ。どうかな?」

「良いと思う。かぐや、酒寄かぐや。将来はモテモテかな」

「楓の審査は厳しそうだなぁ」

「最低でも俺と彩葉さんのスペックは凌駕して欲しい」

 

 それはもう人類規模にならないと見つからないのでは? 私はともかく。

 

「あなたの名前はかぐやだよ。改めてこれからよろしくね」

 

 自分の名前を認識しているのかは分からないけど、かぐやは楽しそうに笑った。それを見ていると、私たちも自然に笑みが零れてくる。名前、気に入ってくれるかな。世界で一番の、我が家のお姫様。素敵な子に育ってね。多くの人に優しさと笑顔を与えられるような、そんな子に。

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