超かぐや姫! ~ツクヨミの守り人~   作:tanuu

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Extra・IF√:楓がもっと早く越してきたら・9 【彩葉視点】

 三連休はあっという間に過ぎていく。私は勉強、楓は仕事、それぞれやらないといけない事もあるので、交代で一緒に遊んだり様子を見守ったりしながら時間を過ごしていた。子供が生まれると子供中心の生活になるというけれど、本当にその通り。日々のやることも、会話の内容も、自然と子供中心になっていく。

 

 私たちの娘になった摩訶不思議七色電柱出身のかぐやは、よく眠り、よく食べ、よく笑い、よく泣いた。私は齢17にしておむつ交換が上手になるというスキルを取得した。きっとこれは後々役に立つだろう。

 

 かぐやは音楽が好きみたいだ。私が引っ張り出したキーボードでした演奏をキャッキャと楽しそうに聞いている。楓の膝の上に座りながら、小さな観客はその小さな手で大きな拍手をしてくれる。お父さんも、小さい頃の私を見てこういう気持ちになってくれたのだろうか。もっと聞かせてあげたいという気になってくる。

 

「――私たちは誰も ひとりじゃない ありのままでずっと あいされてる 望むように生きて 輝く未来を いつまでも歌うわ あなたのために」

 

 私が演奏に合わせて歌い終わると、楓が手を叩いてくれる。かぐやは目を輝かせて楽しそうにゆらゆら揺れていた。Jupiterは楓のご両親が好きだった曲と聞いている。お父さんの運転する車の中で流れていたんだそうだ。あなたのために歌う。それは今の心境と同じだ。誰かのためにこの声を届けられるのは、楽しい。

 

「やっぱり上手いね。ねーかぐや。お母さんは上手だね」

 

 赤ちゃんなので返事はないけど、その表情を見れば喜んでくれていることは分かる。

 

「たまには楓が歌ってもいいんだよ? 私が弾いてあげる」

「って言われてもなぁ。人前で歌うのはちょっと恥ずかしい」

「私に歌わせておいて自分がそれを言うの~? かぐやも聞きたいよね、お父さんのお歌」

「たい♡」

「ほら、ハイだって」

「いや、言ってない言ってない」

 

 仕方ないなぁ、と言いながら楓は口ずさみ始めた。私も知っている曲なので、それに合わせて鍵盤を鳴らす。

 

「――陽の当たる坂道を 自転車で駆けのぼる 君と失くした想い出乗せて行くよ」

 

 楓の声は優しく穏やかで結構高いキーも出る。なので、女性の歌も歌いやすいみたいだ。たまにヤチヨの歌も歌ってたりするし。だからこそロック系の曲とかを歌ってる時のギャップが凄まじいのだと、この前に行ったカラオケで知った。流し目されるとキュン死にしそうになる。

 

 真夏の太陽が外界を容赦なく照り付ける中、私たちの部屋には音楽があった。もっと大きい部屋なら、もっと思いっきり奏でられる。引っ越しを真面目に検討し始めた。

 

 そんなこんなで三連休はあっという間に終わった。かぐやは夜泣きをほとんどしないでくれる。たまにお腹空いたと起きることはあったけど、それくらい。なので、私も楓もあまり睡眠不足ではなかった。でも、子供によってそれは全然違うだろうし、かぐやの例を引きずるとこの後の子育てに困ってしまいそうだ。そこは気を付けないと。

 

「明日は俺が見ておくよ」

「仕事しながらで大丈夫そう?」

「左目はスマコンしないで仕事するから」

 

 普通の人は片目だけスマコンだと酔っぱらったりそうでなくても情報量が二つ存在しているのに耐えられない人が大半のはずなんだけどな。ARモードなら大丈夫だけど、ツクヨミの運営はそれじゃできないだろうし。まぁ本人がいけると言ってるんだから大丈夫だろう。細かいことは気にするのをやめた。

 

 ミルクを飲んで、かぐやはご機嫌のまま就寝中。これ幸いと、私たちも寝てしまうことにする。でもここ数日ほとんど触れられていない。それが少し寂しかった。

 

「じゃあ、寝ようか」

「楓」

「うん?」

「……ん」

 

 両手を広げる。その意図を察した彼は私を抱きしめてくれる。数日ぶりの温もりに、ここ最近の疲れとか色んなものが抜けていく。充電フルチャージ。これで明日も完璧な女子高生(子持ち)として振舞えるだろう。最後にキスだけして私たちは寝ることにした。そこから先はもっと広い家に引っ越すまでのお預けだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ねーねー」

 

 夜中に声がして目覚めた。

 

「ママぁ、お腹空いたぁ」

「はいはい、少々お待ちくださいませ……」

 

 夜起きたってことはそう言う事だ。もう分かってる。では準備を……あれ。寝ぼけまなこがはっきりと覚醒する。

 

「うわぁっ!」

「うおぉっ!」

 

 大声で飛び起きてしまう。目の前には少女がいた。年の程は十歳くらい。流れ星が二つ飛び込んできたような美しい瞳は、驚きを湛えて爛々と輝いている。星の煌きも宝玉の輝きも、なんでこの子に勝てようか。世界三大美人もはだしで逃げ出すだろう。腰まで伸びた艶やかな髪は不思議な色だ。白い肌は夜でも白磁のように光っている。この美少女を、私はよく知っていた。見間違えるわけもない。この三日間、私たちが愛を注いだ存在。

 

「ビビったぁ……」

「か、かぐや……?」

「うん」

 

 卒倒しそうになりながら、隣の楓を揺さぶった。

 

「楓、楓! 起きてぇ、お願い」

「ん……彩葉さん?」

「か、かぐやが……!」

 

 その言葉でぱっと目覚めた楓は目の前にいる美少女がかぐやだと呑み込めず、数秒の間機械みたいにフリーズしていた。

 

「あ、あぁ、成長したんだ……。早いな……」

 

 確かに予想外の成長速度だった。もっとゆっくり成長すると思っていたのに。脳内で思い描いていた映像が消えて散っていく。保育園のお遊戯会、小学校の入学式や運動会に授業参観、中学校の部活姿、高校で文化祭に出てたりして、それで成人式の振袖を着て、結婚式で「ありがとうパパ、ママ」なんて言われて……。そんな未来を、思い描いていたんだけど、どうも儚く消えたみたい。

 

「一晩で大きくなったねぇ」

「ふふん!」

 

 なんでそんなにあっさりと受け入れてくれるんだろう。楓の寛容さが時々心配になる。私だって呑み込みは悪くないのに、この事態は流石に受け入れるの時間を要した。まぁでも最初が七色の電柱だし、それに比べれば衝撃も薄いかもしれない。元々地球外生命体だてのは理解していたし。それでも育てると決めたんだから、こんなことで動揺していては母親失格か。

 

「でも、どうしてこんな一気に?」

「んー。まぁ、今時は何もかものスピードが早いんですわ」

 

 なんかインタビューみたいなコメントをしていた。可愛い声をしている。流石、私と楓の娘。血は繋がってないけど、才能は受け継いでるのかもしれない。

 

「取り敢えずだけど、確認したい。名前は分かるのね?」

「かぐや! ずっとそう呼ばれてたから」

「そう。大正解。私と楓が悩んだ末につけた名前だから。もしよければ大事にして欲しい」

「うん! 分かった」

「ありがとう。それで、私と楓のことは分かる?」

「ママ!」

 

 私を指して言う。

 

「で、パパ」

 

 楓を指して言う。素晴らしい、大正解だ。大天才! 楓の血筋かな。楓は天才肌なところあるし。

 

「そうです。凄い、大正解だよ」

「えへへ~」

「ママだってよ」

「うんうん」

 

 喜んでいる私を楓は微笑ましいものを見る目で見ていた。でも本人も父親と呼ばれたのが嬉しいみたい。頑張ってお世話をした甲斐があった。この声を聞くだけでそう思える。親ってそういう気持ちなのかもしれない。不思議なものだ。子供の声が力になったりするなんて。

 

 ぐぅー。私の目の前から大きな音がする。そういえば、寝る前にミルクをあげただけだ。さっきもお腹すいたって言われたし。そりゃそうか、この大きさになってしまったら赤ちゃんサイズ用のミルクは足りないだろう。

 

「たすけて~~?」

 

 かぐやの上目遣い。小首をかしげている。可愛い仕草をどこで覚えたのだろう。こんな風にされると何でも許してしまいそうだ。私はまだ自制心があるけど、楓はこの顔でお願いされたら何でもしてしまいそうな感じがある。要注意だ。

 

「じゃあ、何か作るよ。ちょっと待っててね」

「いや、彩葉さんは明日学校だし、俺がやるよ。すぐ終わるからね」

「ありがとう、お願い」

 

 そう言ってくれたので素直に甘えることにした。楓は冷凍ご飯を解凍しながら私のフライパンを取り出す。そして手際よくネギとハムをキッチンはさみでカットしていた。鶏ガラスープの素も出している。何を作る気なのかはすぐにわかる。深夜に食べたら背徳感メガ盛りの炒飯だ。

 

「ねぇねぇ、なにしてるの~?」

「お料理だよ。もうちょっと待っててね。凄く美味しいものが出てくるから」

「ホント!?」

「うん。ビックリするよ」

 

 ワクワクという顔をで待っているかぐやの期待に応えるように、お皿の上につやつやと輝く黄金色の炒飯が出来上がった。そこら辺のラーメン屋のものとは比較にならないくらい美味しい。グルメ系インフルエンサーとして美食にはうるさい真実がリピーターになりたいというくらいだ。芦花も凄い勢いで食べていたし、今年の文化祭はこれを売れば間違いなく大行列間違いなしだと思っていた。

 

「はい、お待たせ。彩葉さんの分もあるからね」

「やった」

「おぉぉぉ~!」

 

 かぐやは目をキラキラさせながら、机の上の炒飯を見ている。

 

「食べ方、分かる?」

「?」

 

 あ、そうか、急に大きくなったから箸とかスプーンの使い方なんて知らないよね。全然気付いてなかった。私もまだまだ視野が狭い。

 

「彩葉さんのを見てごらん、手で持って、こうやって掬う」

 

 なるほど、という顔でかぐやは頷いている。早速食べようとしたかぐやにストップをかけた。

 

「ちょっと待って」

「なんでぇ?」

「食べる前は、手を合わせて頂きますって言うの。作ってくれた人と、食材と、色んなものへの感謝を込めてね」

「分かった! いただきます!」

「はい、よく言えました。私もいただきます」

 

 どうぞどうぞ、と言いながら楓はフライパンを洗っている。一口掬って口に入れて、かぐやはもぐもぐと咀嚼した。その瞬間、瞳孔が何倍にも大きく見開かれる。

 

「――っ!!!!」

 

 分かるよ、気持ちは凄い分かる。みんなこんな顔になるんだ。中華料理が得意な楓だけど、その中でもこれは別格の味がする。今すぐこれでお店が出来ると私は踏んでいた。

 

「うまっ! うまっ! うまっっ!」 

「あんまり散らかさないように食べようね。お行儀悪いから」

「ふぉぎょうき?」

「そう、お行儀」

 

 私まで夢中になって食べていた。反省反省。いや、でも仕方ないんだ。これを食べている間は、余計なものは目に入らない。楓は礼儀作法は相当ちゃんとしている。お父さんに厳しく仕込まれたんだそうで。でも、時間をかけて根気よく教え込まれたらしい。こういう部分では甘やかさないだろうから、バランスは取れているのかも。

 

「礼儀作法はお父さんの担当になりそう」

「そう? つい気になっちゃうんだよね」

「良いと思うよ。食べ方が汚いと、千年の恋も冷めるし」

 

 この子の将来のためには欠かせない。将来を考えると色々と心配になってしまって、ついこうしなさい、ああしなさいと言ってしまいそうだ。母の気持ちが少し理解できた。自分が先に死んでしまうからこそ、助けてあげられない辛さとか不安があるのかもしれない。

 

 そんな事を考えている間に、かぐやは凄い勢いで炒飯を平らげた。私も食べてしまった。楓はアイスを食べている。かぐやにお願いされて、半分くらい奪われてたけど。

 

「ねぇ、かぐや。あなたはどこから来たの?」

「んっ」

 

 私の問いに、かぐやは月を指した。

 

「月から、か。かぐやって名前にして正解だったね」

 

 楓の言葉に同意して私は頷いた。

 

「なんかあんまりよく覚えてないんだけど~~。とにかく、毎日超つまんなくって~~。楽しいところに逃げた~~いって思った気がする」

 

 楽しいところに行きたいと思って私たち二人のところへ来てくれたのだとしたら、それはとても光栄なことだ。ここなら楽しく過ごせると思って、私たちの子供になってくれた。子供から聞かされて嬉しい言葉の中でも相当上位にいると思う。楓も同じ気持ちみたいだ。ちょっと泣きそうになってる。

 

「それで、私たちのところに来てくれたんだね」

「そうだよ。なんかね、星の光みたいなのに引っ張られてきた!」

「やっぱり、私の願いを星が聞き届けて……」

 

 星に願いを、なんて信じてなかったけど、私の願った「幸せな家庭」を叶えるためにかぐやが来たっていう仮説は本当だったのかな。この子がいれば私たちは幸せな家庭を作れる可能性があると星は判断したんだろう。そして、この子の「楽しさ」という願いもここでなら叶うと。

 

 本当にそうなのかは分からない。真実は不明だ。でも、断片的な話を繋ぎ合わせるとこういうことになる。()がどこの誰なのかは分からないけど、親として相応しいと認められた気がして、誇らしくもあり喜ばしくもある。これまで楓と積み上げてきた日々は、ちゃんと私を変えてくれたのだろう。

 

 きっと、彼と出会う前の私では親として相応しくはないだろうから。

 

「かぐや、私はまだまだ新米お母さんだから、いい母親になれるかは分からないけど、頑張るね。あなたが選んでくれたことを後悔しないように」

「え、かぐやの事好きじゃないの……?」

「好きだよ。どんな形でも私たちの子供なんだから、愛してる」

「じゃあ、だいじょーぶだよぉ」

 

 胸が詰まりそうになった。私の肩を優しく楓が支えてくれる。

 

「楽しい日々にしようね。俺も彩葉さんも、精一杯頑張るから」

「やった!」

「そうだね。楓と一緒に頑張ります。ただし、あんまり騒がないこと。いい?」

「はーい」

 

 かぐやは元気に言う。流石にこの人数でこの面積は狭い。不動産探しをするのは決定だ。そういえば、と思ってタブレットを取り出す。

 

「このお話に心当たりはある?」

「なにこれ?」

「竹取物語。月からやって来た姫が竹の中から出てきて、翁が拾って育てて、結婚迫られたりとか色々あって……って感じの話」

「へぇ……で、話は最後どうなるの?」

「お迎えが来て、翁たちが引き渡すまいと戦うも空しく、姫は羽衣を着せられて、地球のことを忘れて帰る」

「おー」

「……」

「で、続きは?」

「ない。終わり。めでたしめでたし」

「え、月に帰って終わり? なにそれ、なにがめでたいの? 超バッドエンド! かぐや姫絶対不幸じゃん! しかもなんかいい話風になってるのが余計許せないよ!」

 

 かぐやは私が驚くくらいの声で言う。でも確かに、バッドエンドかもしれない。この子が月に帰る……? 想像するだけで鳥肌が立った。そんなの絶対に許せない。軍勢を派遣してもらってでも守ろうとした翁たちの気持ちが分かる日が来るとは思わなかった。

 

「まぁお話は決まってるから。これはそういうお話として受け入れるしかない」

「えぇ~バッドエンド、や~~だ~~♪ ハッピーなのが、い~~い~~♪」

 

 かぐやはハッピーエンドを求める歌を歌い始めた。

 

「でも、これは作られたお話だからね」

「そう。楓の言ってくれた通り。これはお話の中だけのこと。私たちの未来とは何の関係もない。お話は確かにかぐやの言う通りのバッドエンドだし、過去のどこかでそういう風に決まってしまった運命を未来から変えることは出来ない。でもまだ未来は決まってない。でしょ?」

 

 お話は変えられないし、変えたら作者の人の気持ちを踏みにじることになってしまう。この竹取物語は作者不明だ。もしかしたら複数のお話とかがくっついているのかもしれない。なんにしたって、このエピソードを体系化した人がいて、その人はこのエンドでいいと思ったんだ。その意思は尊重しないといけない。

 

 でも、お話は変えられないけど、未来は変えられる。お話は未来から過去を覗くけど、私たちの人生は現在から常に未来に向かって視線を向けているのだから。まだ確定していないことなら、やりようはある。足掻ける余地がある。

 

「だから、もしかぐやがハッピーエンドにしたいなら、自分の人生をそういう未来にしたいなら、頑張ろう?」

「……そっか!」

「流石彩葉さん、良いこと言う」

「素直な気持ちだよ」

 

 未来は分からないんだ。だって、ここに引っ越してきたころの私は、こんなにも愛せる人が出来るなんて思ってもみなかった。恋情に振り回され、愛情を募らせ、煌くような日々を送れるなんて想像もしていなかった。でもそこから色んなことがあって、背中を押されたりしながら、私たちは歩んできた。

 

 ハッピーエンドは作れる。自分たちの努力次第で、幾らでも。この一年で私はそう学んだ。こうなるだろう、っていう予想はいい意味でも悪い意味でも当たらないことが多い。今の私は十分幸せだけど、そこで止まっていたらきっとどこかで上手く行かなくなるだろう。だから前に進むんだ。

 

 私は、一人じゃないのだから。

 

「決めた! かぐやもちゃんと自分でハッピーエンドにする!」

 

 狭い室内で、まるで大舞台で大見得を切った役者みたいに、かぐやは堂々と立っていた。あんなに小さかった娘が、大きく成長したみたいでほろりと涙が出そう。

 

「そんで、ママとパパをハッピーエンドに連れてく、一緒に!」

「そっか。嬉しいな」

 

 楓は優しい手つきでかぐやの頭を撫でた。かぐやは目を細めて嬉しそうにしている。一緒に、か。頼もしいような、微笑ましいような。それでも、私たちを幸せにしたいと思ってくれたその優しい心が、親としては嬉しかった。ちゃんと楓の良いところを受け継いでくれているようで。

 

 親になるっていうのは子供をしっかり守って育てることだと思っていた。でも、子供に手を引かれたり教えられたり気付かされたりすることもあるのだろう。人間の成長はずっと続いていく。親としては私たちは一年生未満。きっとこのパワフルな娘に引き回されながら、色んなことを経験して、少しずつ理想に近付いていくはずだ。

 

「そうなるようにしたいね、私としては。ただし、もう今日は遅いです。今寝ないと、明日は少なくともアンハッピーな一日になることが確定しています。ということで寝るよ。いい?」

「はーい」

 

 かぐやは素直に頷いて、するっと私たちの真ん中に入り込んで寝る支度はばっちりです、とアピールしている。目をパチパチして伝えていた。そこまでしなくても分かってるよ。全力で寝ようとしている姿は可愛いけれども。

 

「おやすみ~」

「はい、お休みなさい」

「お腹に毛布かけてね」

 

 かぐやはスースーと寝てしまった。寝つきが良いな。楓が毛布を掛けてすぐに寝息を立てている。狭い部屋の中に川の字になって寝ている形だ。ちょっと窮屈さもあるけど、悪い気分じゃない。横を向くと、かぐやの端正な顔。楓も同じことを考えていたようで、目が逢った。思わず二人して笑ってしまう。

 

 中々元気で、お転婆な感じの子。だけど、だからこそきっと楽しい日々が迎えられそうだ。明日もいい日になりますように。私はそう願いながら、静かに目を閉じた。もうちょっと赤ちゃんのままでも良かったんだよと、この三日間を少し懐かしみながら。




IFのIFで、この世界線において通常の人間と同じ速度で成長した場合ってのも存在はします。
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