超かぐや姫! ~ツクヨミの守り人~   作:tanuu

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Extra・IF√:楓がもっと早く越してきたら・14 【彩葉視点】

 そこからかぐやの怒涛の快進撃が始まった。当たり前だけど、かぐやは配信のことは詳しくない。なーんにも分かってない。でも、だからこそ思いついたことを片っ端からやっていく。楓の言っていた突っ走れの言葉通りに凄まじい速度で更新を繰り返していた。

 

 二番煎じ、後追い、気負い、照れ。そういう言葉はかぐやの辞書には存在しない。多分、不可能も存在しない。ナポレオン、私の娘に敗れたり。

 

「この動画のダンス可愛い~~。かぐやもやーろぉっと♪」

 

 という勢いでドンドンとチャレンジしていく。

 

「うひょ~、芦花の言う通りにメイクしたら自撮り爆盛できちゃった。はい、これもアップ! ついでに全然盛れなかったNGバージョンもアップ~~♪」

 

 芦花に教えてもらった自撮りは大層可愛く盛れている。流石の美容系インフルエンサー。かぐやの可愛さを上手く引き出すアプローチが上手い。楓のファッションも見てくれているし、同じようにかぐやのファッションも磨いていた。資金は楓が出している。あの甘やかしパパめ……。どっからあの資金が出てくるんだ。

 

「やった、真実おすすめのお店の取り寄せが届いた! 緊急で動画回しちゃいまーす」

 

 そのお金も以下同文。

 

「あー、そういうのどうでもいい! きっちり片を付け! 忘れる! 忘れるって人生でいち番大事な能力だからね! や、甘い事言って責任取らないやつにはなりたくないし! それがかぐやの優しさ!」

 

 ヤチヨの真似をしたお悩み相談までしていた。そういえば、ヤチヨのお悩み相談に背中を押されて、私は楓に告白したんだっけ。もう一年前の話なのだけれど、それでも思い出は消えない。どれだけ日々を積み重ねても、色あせない物って言うのは存在するのだ。

 

 私も作曲面と演奏で貢献はしているけど、やはり大きいのはかぐや自身の頑張りといい意味での無鉄砲さだ。そして、それを適切に楓がマネージメントしている。流石は長年ツクヨミの戦国時代を観察してきただけのことはある。伸びたものの擦り方と切り時、企画の立て方などなど、かなり真面目に軍師役をしていた。その影響もあってか、チャンネル登録者数はうなぎのぼりだ。

 

 私たちの子供なのだから人気になれないわけないと思っていたけれど、ちゃんと大人気になっている。この伸び方は過去にあまり例がないらしい。黒鬼の初期にも並ぶ速度で上昇中だそうだ。ただし、まだまだ一位にはなれない。絶対的な数が違う。

 

 勉強もアルバイトも続けている。そこは疎かには出来ない。かぐやが浪費しても出てくる楓の財布から察するに、彼は相当高給を貰っているはずだけれど、それでもまだ家計が同一じゃないのなら私は私のことをしっかり自分でやりたい。ご飯だけはかぐやが代わってくれた。娘の優しさに感激しつつも、折角掴んだ楓の胃袋を手放さないといけないのがやや残念ではある。

 

 私はいろPとして、かぐやの保護者枠をしながらプロデュースと楽曲提供、演奏を行っていた。

 

「ママ~、次はこれ歌いたい」

「何の曲? ってこれヤチヨの!?」

「そうそう。許可は貰って来た~」

「早っ」

 

 やはり行動力。まぁ確かにヤチヨはカバーの依頼は断らないけど。他の人のも悪くはないんだけど、やっぱりヤチヨの神秘性を孕んだあの声でないとどうにもこうにもしっくりこないところがあるって言うのがオタクとしての感想だ。本家→カバー→本家という順で聞くと、解釈が広がりつつも本家の味がいかに素晴らしいかを認識できる。魔法の連結だった。

 

「まぁいいよ。にしても『零魔』か……」

「なにそれ~?」

「曲名の略。午前零時の魔法使い。ヤチヨの二曲目の曲なの」

 

 Rememberの方が人気だけど、それでも二曲目もいい曲だ。優しさに満ち溢れているRememberに比べるとちょっと悲壮感とか苦しさ、切なさみたいなのがあるけど、それもまたヤチヨの表現力の高さを補強している。つまるところ、神曲だ。

 

 というか、この前の握手会を経てから思ったけど、これもしかして楓に向けたメッセージなのかな。だとしたらそれはそれで凄いエモい。相棒に向けたメッセージソングとか、オタクは大好きなやつだ。

 

「かぐやにこの切なさが出せるかな~?」

「ひどーい。ちゃんと出来るもん!」

「ごめんごめん。じゃあ、お手並み拝見しようかな」

 

 演奏しているのは楽しい。これまで家族にしか聞かせていなかったけど、私の演奏を褒めてくれる人も沢山いる。曲を評価されるのは、我が子を評価されるのと同じくらい嬉しかった。

 

 そして、かぐやの快進撃を非常に後押ししたのはほかならぬ楓の存在だった。

 

「みんなー、元気? 今日は何と、スペシャルゲストが来てくれました!」

「はい、お邪魔します。こうして誰かの配信に顔を出して話すのは初めてですね。仮想空間ツクヨミの統括管理人補佐、アメツキカエデです。配信は不慣れなのですが、どうぞよろしくお願い致します」

 

 些か堅い口調で楓が話している。最初は娘の配信とはいえ男が出るのはどうなのかと言って激しく抵抗していたけど、自分が背中を押しておいてそれは通らないでしょうということで出演することになった。

 

 それに、彼はどうも自分の影響力を分かっていない節がある。ツクヨミユーザーとしては男がどうとかどうでもよくなるだろう。ヤチヨと違ってコラボなんてこれまで一度もしてこなかったツクヨミ運営の立役者が出てくるなんてことになれば、それはもう軽いお祭りだ。ほら、コメント欄も凄いことになっている。同接数も跳ね上がった。早速ネットニュースになってる。

 

「カエデはね、かぐやのパパなの!」

 

 いきなりの爆弾発言に、視聴者が大困惑している。

 

『????』

『どういう……?』

『わけがわからないよ』

『守護神って学生じゃないの?』

『ま、まぁ一応高校は年齢関係なく入れはするが……』

 

「えっとねぇ、かぐやの家族がいなくなっちゃって、それで楓が引き取ってくれたの。遠い親戚? だからだって。育ててくれてるから、パパ」

 

 楓が焦った顔で渡したメモを読みながら、かぐやは事情を説明している。取り敢えずコメント欄はそれで納得してくれたみたいだった。細かいツッコみどころが無いわけじゃないけど、勢いで押し切るのがかぐや流だ。視聴者もあんまり細かいことは気にしていない。ファンは推しに似るのだろうか。てことは私はヤチヨに……? やめよう、自認ヤチヨは痛いやつだ。

 

『じゃあいろPは?』

 

 まぁそうなるよね、という形で私に飛び火する。楓のことなので、上手くまとめてくれるはずだ。

 

「いろPはママだよ~」

 

『ファーーwww』

『マジかい』

『え、じゃあヤチヨが言ってた守護神の彼女っていろP?』

『実の娘より先に血のつながってない娘の出来たいろPの心情やいかに』

 

「ママとパパは隣同士に住んでてぇ、そこにかぐやが来たの」

 

 なんか私たちの出会いまで暴露されているのだが。聞かせて恥ずかしい話ではないし、どんどん自慢したいレベルの話なのでむしろ構わないけど、娘の口から聞かされるのは流石にちょっと恥ずかしい。

 

『kwsk』

『え、いろPは俺の嫁だと思ってたのに……』

 

「やめてください、俺のです」

 

 結構なマジトーンで楓が言っている。

 

『お義父さん、かぐやちゃんを俺にください!』

 

 定番と言えば定番のコメントが流れて来た。楓は笑っている。ただ、目が凄く細くなっているし、口元以外が全然笑っていない。あ、これはあげる気なんてさらさらないやつだ。

 

「条件を突破出来たらいいですよ」

 

『マジで』

『よっしゃかかってこいや~』

『なんでもやります!』

 

「うん、じゃあまず、ツクヨミの基幹システムに攻撃を仕掛けて、十五個ある壁を突破した後、中枢システムの警告アラートを止められたら許可します」

 

『はい解散』

『無理無理無理』

『竹取物語かな?』

『五つの宝物探した方がまだ可能性あるやろ、こんなん』

『現代の竹取物語は両親の方が無理難題を出していくのか……』

 

 そんなこんなで親子配信は大量のネタを投下していき、これも勢いを加速させる要因となった。楓は運営側なので贔屓と思われないか心配だったけど、そもそも主催のヤチヨ自体が結構色んなところに顔を出しているので、今更かもしれない。かぐやの事情(仮)も相まって、受け入れてくれているようだ。

 

 かぐやは毎日楽しそうにしている。その笑顔が、私たち二人(夫婦)の宝物だった。

 

 

 

 

 

 

 青い海、白い砂浜、どこまでも続く高い空に入道雲が伸びている。そんな夏真っ盛りの海辺に

 

「ゆ゛う゛し゛ょ゛う゛し゛た゛い゛い――!」

 

 というかぐやの大声が響き渡った。砂浜に広げたレジャーシートの上で、ゴロゴロと転がって不満を表明している。

 

「かぐや、暴れないよ」

 

 せっかくの芦花のスタイリングを無駄にするわけにはいくまい。降り注ぐ陽光をそのまま身に纏ったようなオレンジ色の水着は、ツインテールに纏められたかぐやの艶やかな金髪と相まって、浜辺で輝くもう一つの太陽のように見える。

 

 私の水着は去年と同じもの。精々年に一回か二回くらい着ればいいものなので、なるべく手ごろな価格をと思って選んだ。それでも大分痛い出費ではあったけど。あと数年は持ちこたえてもらうつもりなので、私の体形維持も必須だった。

 

 この水着で思い出されるのは去年の夏。デートでプールに行ったことだろう。あの時に私と楓の関係性は大きく進展した。ただの恋人から一歩前進出来たのはあの時だ。初キスもそこだったわけだし。そこから先に進むのにはもうちょっと日を要するけれど、それでも大事な思い出。今度かぐやも連れて三人で行くのも悪くないかもしれない。

 

「お待たせ、買って来たよ」

 

 暑さのせいで死にそうな顔になっている楓がかき氷をかぐやと私に渡してくれる。芦花と真実の分も買ってくれていた。青いパーカーを羽織り、暑そうに太陽を見上げていた。本当は母娘二人で行ってくればいいよ、と言っていたのだけれど、かぐやが凄いごねたので一緒に付いてきてくれている。芦花と真実には凄く申し訳なさそうな顔をしていたので、多分女子会みたいにワイワイやってくればいいと思っていたのだろう。

 

「ありがと」

「彩葉さん、くつろいでるね」

「休む時も全力でやるのが真のエリートというものですから」

 

 私はパラソルの下、ビーチチェアの上で寝そべっている。足を組んでいたらチラチラと楓が見ているので、この姿勢でも問題ないみたいだ。色気は出せる時に出していく。これが大事だ。定期的にドキドキさせることが関係性を長続きさせるコツらしい。つまり、刺激を与えることが大事なのだとか。

 

「かぐやちゃん絶好調だよね~」

「この前の歌配信もすっごい良かった」

「犬DOGE改造計画も順調そうだし~」

「あれは楓が教えてくれてるからね! まぁ、かぐやが天才歌姫だってのもあるけど! 今度一緒に大改造するんだ~」

 

 かぐやの鼻が天狗のように伸びていく。親友二人が娘を認めてくれるのは、親としても大変嬉しいし誇らしい思いだ。

 

「オリジナル曲もよかったしさ」

「わかるー。あれ、彩葉が作ったやつなの?」

「彩葉、可愛い上に天才すぎ~」

 

 二人の称賛がこっちに向いてきた。どういうわけかかぐやと楓の二人が誇らしげな顔をしている。

 

「あ、蟹! 蟹いた! パパ、蟹掴まえる!」

「はいはい」

 

 かぐやに腕を引かれて、楓は休む間もなく灼熱の太陽の下に連れ出されている。あ、水かけられた。その様子は、元気の有り余った娘に振り回されている父親そのものだ。

 

「高野君、すっかりお父さんだねぇ」

 

 そう言っている真実は去年彼氏と買ったらしいガーリーなチェックのオフショルに水色のフレアスカートの水着を纏い、夏バテ知らずで三皿目の焼きそばを啜っている。

 

「はぁ、ウチの彼にも見習ってほしいわ、あの甲斐性というか包容力というか」

「あげないよ」

「いりません」

「いらないってどういうこと、あんな優良物件を!」

「めんどくせー」

 

 私の抗議に真実は苦笑している。真実の彼氏も楓に向ける尊敬の念が大きすぎる事を除いては凄くいい人だと思うんだけど。割とぐいぐいと進んでいく真実に上手く付き合えているのだし。

 

 波の音、潮の香り、そして眩しい日差しの中での会話。親友二人がいて、娘がいて、夫もいて、私は無敵に近い状態だ。今なら誰でも余裕で対処できると思う。母以外は割と簡単に。母も、まだお父さんが生きている頃に家族で海に行ったときは楽しそうだった。あの時、きっとこんな気持ちだったのだろう。

 

 かぐやが来てくれてから、母の気持ちが少しずつ分かるようになった。それは多分、私が大人になったってコトなのだろう。

 

 

 

 

 

 かぐや・いろPの活動は順調に加速していく。これにより集まっていくのがふじゅ~だ。ファンの方々からのありがたいお布施と、運営からの支払いもある。ふじゅ~はユーザーの脈拍や脳波をスマコンで感知し、感情がポジティブに動いたと判定されれば運営から支払われる仕組みになっていた。これもヤチヨと楓の合作で作成されたシステムになっている。

 

 かぐやは大判小判がざっくざくと嬉しそうにしていた。その様子は微笑ましいのだけど、あまり当たり前だと思ってはいけない。人気というのは水物だ。いつなくなってしまうか分からない。

 

「これが当たり前だと思わないようにね。当たり前だと思っちゃうと、貰えないことに不満を感じたりするようになるから。当たり前のことじゃなくて、普段から支援してくれるファンへの感謝を忘れないように」

「はーい」

「あと、お部屋を少し片づけようか」

 

 配信用の小道具が雪だるま式に増えていく。やっぱり引っ越しをしないとダメか。これじゃあダンスの練習をする場所も無い。なぜ練習が必要かと言えば、楓のアシストもありつつかぐやのファーストライブが決定したからだ。これは歌枠配信ではなく、ちゃんとツクヨミ内のスタジオを借りて行うもの。

 

 宣伝は既に大々的に打っている。プロモーションには金を惜しむな、というのが楓のスタンスだった。そのやり方はある意味正解みたいで、どんどんファンは増えていく。目に触れるというのは単純でもバカにならない効果がある。今日も今日とてスマコンを付けると、演出指導の楓が待っている。本当は隣の部屋にいるんだけど。

 

「じゃあやっていくよ~」

「はーい」

「この前やったところからね。取り敢えず一回音楽に合わせてダンスをしよう。歌はその後から」

「よ~し、行くよぉ」

「はい、1、2、3、4。1、2、3、4。1、2、3、ターン!」

 

 楓が手を叩きながらかぐやのダンスを指導している。流石、ヤチヨのライブの演出担当。演出担当というのはホントに演出関連を全部やっているみたいで、ライトの配色や動かし方、カメラの動かし方、ダンスの振り付けまで考えているそうだ。なので、こうしてダンスのやり方にも詳しい。

 

「手を真っ直ぐ伸ばす! 指先まで意識して! 身体に叩き込まないと当日動けないよ」

「パパ……スパルタ……」

「お客さんに変な演技は見せられないでしょ。もうちょっと完成度を落としてもいいならそれでもいいけど」

「うぅ、それはヤダ」

「じゃあ、頑張ってみよう。これに歌を合わせないといけないんだから、ね?」

 

 楓は優しいけど、別にいつでも何でも甘いわけじゃない。仕事に関してはかなりシビアだ。かぐやのことも応援しているし甘やかしているけど、仕事に関しては手を抜かないようにと常々言っていた。ユーザーのお金を質の低いものに支払わせるわけにはいかない、そして娘にはしっかりと晴れ舞台を飾って欲しいという想いがあるみたいだ。

 

「ヤチヨと違ってかぐやは人間だからね! AIみたいにホイホイ動けないからね!」

「分かってるよ~」

「ホントに……?」

 

 かぐやは結構荒い息を吐いている。それでもあきらめるとか止めるとは言わないので、それだけ本気なのだろう。

 

「はい、手が違う」

「はいっ!」

「彩葉さんも突っ立ってないで、一緒に踊るよ。弾きながらだけど、ステップはあるんだから」

「は、はい」

 

 楓は真剣な目で私の足の動きを観察している。二人してヒーヒー言いながらもクオリティーは日々上がっているのを実感する。確かにかなりハードな運動ではあるけど、それでも自分の実力が向上しているのを感じるのは楽しかったし、娘と二人で同じことをしているという経験を得られるのも喜ばしい。

 

 お父さんの意外な側面、という感じのものも見れたし。やっと来た休憩時間に、かぐやはごくごくと水を飲み干している。

 

「お疲れ様」

「お疲れ……。相談あるんだけど」

「うん」

「ちょっと練習するにしても最近部屋が狭くってさ」

「あー、それもそうか……」

 

 激しいダンスをしていると下の部屋にも響くし。

 

「家バレも心配だし、そろそろ引っ越すのはどうかな……って」

「そうだね、悪くないかも。どこか希望はあるの?」

「かぐやは駅前のマンションがいいって」

「あぁ……あそこね……」

 

 楓は遠い昔を懐かしむ顔だ。前に聞いたことがあるけど、楓はまだご両親が健在の頃あそこに住んでいたらしい。そんな場所に戻るのは彼を苦しめてしまうかもしれない。

 

「住むには悪くない場所だよ」

「でも、いいの?」

「うーん、まぁ、今の家族となら色々と上書きできると思うし」

 

 そういう風に思ってくれたのならば、私としても彼女冥利に尽きる。これまで壁一枚を隔てた関係だったけど、これで同じ家に住めるようになればその一枚分の距離がなくなる。それに、部屋が複数個あるのは大事な事だ。

 

「個室があれば、色々出来るね」

 

 彼の耳元で私は囁く。かぐや来訪以来、私たちのスキンシップはほぼしていない。その埋め合わせが出来るまでの時間は、そう長くないように思えた。




午前零時の魔法使い
作詩・作曲・編曲:月見ヤチヨ
演出・MV作成:アメツキカエデ


十二時の鐘は鳴ったのに 私の服は消えない
宙には丸い月 煌く星空
銀色の杖を振って 私の手を引いた
ガラスの仮面を脱ぎ捨てて 私は走り出したい

あなたの真似をして 私も杖を振ったけど
飛び出してきたのは 小さなウミウシだけ
遠い日の思い出は 私だけしか知らないから
呑み込んだ言葉が いつだって心を締め付ける

あぁ あなたはきっと魔法使い 人の夢ばかり叶えてる
あなたの夢を聞いたのに 私が輝くことだって
けれどあなたも一つだけ 叶えてくれない夢がある
いつか いつか 聞かせて

私の本当の名前 呼ぶ声を
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