サキュバスを召喚しようとしたら間違って最強のインキュバスを召喚してしまいました   作:佐久間 譲司

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第十二章 邂逅

 109も含め、渋谷周辺で買い物を行う。リコは完全に祐真のコーディネーションを把握しており、祐真に似合うであろういくつもの服を買い与えてくれた。

 

 リコ曰くこうだ。

 

 「祐真の体重、身長、スリーサイズ、体脂肪率全て頭に入っているから、安心して任せてね」

 

 祐真には鳥肌物だが、もうそれくらいでは驚かない。むしろこのレベルならば、穏健なほうだと言えた。

 

 買い物がある程度済むと、昼食をとり、ロッカーに荷物を預けて映画を観る。ジャンルは恋愛物だ。

 

 まさに『デート』といった流れで、二人は時を過ごした。

 

 夕方になると、さすがに疲れたので、東急百貨店内のフードコートで休憩をとることにした。

 

 喉が渇いた祐真のために、リコは、飲み物を買いに祐真のそばを離れる。

 

 一人になった祐真は、喧騒の中、手持ち無沙汰にスマートフォンを弄りながら、リコの帰りを待つ。

 

 その時であった。

 

 近くに人の気配がした。声がかかる。

 

 「あれー? 祐真君じゃん」

 

 顔を上げると、見覚えのある人物が目の前にいた。

 

 「横井さん」

 

 クラスメイトの横井彩香だ。

 

 彩香は、デニムのシャツに、黒いスカート、茶色のコアブーツと、カジュアルな服装だ。髪型こそは相変わらずの健康的なショートカットだが、私服姿を見るのは初めてなので、とても新鮮に感じる。別人のようだ。

 

 「ここで何しているの? 買い物?」

 

 彩香は祐真のそばに置かれた大量の荷物に目を向けながら、訊く。

 

 「まあ、そんな所かな」

 

 祐真は曖昧に答えた。そして、彩香の隣にもう一人、別の人間がいることに気がつく。

 

 中学生くらいだろうか。とても綺麗な顔立ちをした少年だ。さらさらで黒いメンズショートカットの髪型の持ち主である。

 

 日本人離れした美少年であるため、周囲の人間から時折視線を投げかけられていた。まるでリコのようだ。

 

 弟なのだろうか。祐真は少年を見ながら思った。それにしては、あまり似ていない気もするが。

 

 祐真の視線の意味を察したのか、彩香は隣の少年の肩に手を乗せ、紹介する。

 

 「この子は……駿《しゅん》君。私の従兄弟だよ」

 

 彩香はなぜか一瞬言い淀んだあと、少年の名前を口にした。

 

 紹介された駿は、すぐには挨拶をしなかった。何かに取り憑かれたかのように、祐真の顔を凝視している。

 

 洗練された刃物のように、美麗な駿の目に直視され、祐真はやや緊張する。同時に一体どうしたのだろうと、不安になった。顔に何か付いているのか。

 

 どうしようもないので、祐真は見つめ返した。

 

 少しだけ間があり、やがて彩香が駿の肩を叩く。

 

 「おーい、俊君、自己紹介」

 

 彩香にせっつかれ、そこで初めて駿は我に返ったように、はっとした表情になった。

 

 「ごめんなさい。ぼーっとしてて。よろしく。駿っていいます」

 

 駿は、爽やかな笑顔を作り、頭をぺこりと下げる。

 

 そして顔を上げたあとは、何事もなかったように、平然とした様子で、その場に佇んでいた。

 

 何か考え事でもしていたのだろう。祐真はそう解釈した。

 

 その後、彩香と祐真は二、三言葉を交し、やがて二人はその場を離れていった。最後に駿は、愛くるしい笑みをこちらに向けた。

 

 少し時間が経ち、リコが戻ってくる。

 

 「ごめん、祐真。お待たせ」

 

 リコは、手に持っていたソフトドリンクを祐真に渡し、隣に座った。まるで恋人のように距離が近い。祐真は少し離れた。

 

 リコはその行動を微笑んで見ていたものの、祐真の顔に目をやると同時に、何かに気づいたような表情になった。

 

 リコが、不思議そうに質問をする。

 

 「何かあったの?」

 

 一瞬、クラスメイトと邂逅した話をしようと思ったが、意味もないので、伝えないことにした。

 

 「別に何も」

 

 祐真はそれだけ答えた。

 

 「ふうん」

 

 リコはそれ以上追及しなかった。

 

 それから二人は、一通り店を回り、帰路へと着く。

 

 こうしてリコが要望した『デート』は、終わりを迎えたのだった。

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