サキュバスを召喚しようとしたら間違って最強のインキュバスを召喚してしまいました   作:佐久間 譲司

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第十八章 疑念

 学校が終わり、帰宅した祐真は、パソコンの前に座る。リコは今、買い物にでも行っているらしく、姿はなかった。

 

 祐真はパソコンを立ち上げ、星斗から借りたアダルトゲームをプレイする。学校は今あんな状態だが、やはり自分にはこれだ。

 

 ゲームは、借りてから少し時間が経っているお陰で、随分と進めることができた。ヒロインそれぞれのルートもほぼ攻略済みだ。この手のゲームにありがちな『全員と付き合いエッチをする』というセッションをクリアしたということである。

 

 評判の通り、文句の付け所もないほど素晴らしい作品だった。ヒロインたちのデザインも秀逸で、とても可愛くてエロい。有名声優の演技も相まって、夜のおかずに役立ってくれた(もっともリコがいるので、トイレや風呂場で行ったが)。

 

 ストーリーも掛け値なしに抜群だった。アダルトゲームと侮ることなかれ。ストーリーが絶妙に素晴らしい作品はいくつもあるのだ。

 

 残る作業は、ゲーム内に用意されたイラストを最後まで集めることだった。とても美麗な作りでなので、祐真としてもぜひコンプリートしたい。そのため、ヒロイン全ての会話を見なければならなかった。

 

 それには、一度行った会話シーンを再度見る必要もあった。スキップ機能はあるが、それでも、作業的単調さは拭えない。

 

 プレイし続けている内に、学校のできごとが頭をもたげてくる。

 

 一体何が起きているのだろうか。なぜあんな急に男の同性愛者が増えたのか。それに、星斗たちまで、そうなってしまって。

 

 祐真の脳裏に、『魔術』の二文字が浮かび上がる。

 

 可能性としてはありえるだろう。奇跡のような現象を引き起こせるシロモノだ。大勢の男子生徒を、同性愛者に変貌させることなど容易いかもしれない。

 

 だが、それならば『誰が?』という疑問が付く。

 

 該当しそうな人物は、今のところリコしかいない。だが、リコは一度も祐真が通う喜屋高校を訪れたことがないのだ。

 

 仮に内密に訪れて今回の現象を仕組んだとしても、今度は動機が不明だ。わざわざ他の男子生徒を巻き込まず、ダイレクトに祐真を狙えばいいのだから。一緒に住んでいるため、回りくどい真似をする必要などないだろう。

 

 それでは、他は誰の仕業になるのか。アネス? しかし、彼こそ動機がない。そもそももう『向こう』の世界に帰っているはずだ。

 

 新たな淫魔が出現した可能性もあるが、この短期間にこの狭い範囲で、リコに続き、そう何人も淫魔が現れるものだろうか。

 

 祐真は首を振った。

 

 『魔術』や淫魔は関係ないのかもしれない。しかし、それならば、やはりどうしてあれほど同性愛者が増えたのか。しかも男ばかり。偶然か、社会的な問題でもあるのだろうか。答えは出なかった。

 

 いずれにしろ、由々しき事態なのは変わりはない。別に同性愛者が増えた環境そのものが問題ではなく、祐真を取り巻く状況の変化が恐ろしかった。

 

 このまま続けば、何だか、自分が孤立してしまいそうな気がしてくるのだ。すでに星斗たちも、祐真そっちのけで、二人きりになることを所望している。今日は不覚にも、孤独感を覚えてしまった。独りぼっちというのは、やはり楽しくない。今日のような日が明日から続くのだと思うと、不安になる。

 

 鬱々としたものが、川底の砂のように、少しずつ堆積していく。ゲームに身が入らなくなってきた。

 

 その時、玄関の扉が勢いよく開いた。祐真はそちらのほうに顔を向ける。中間にあるガラス戸は開け放たれているので、リコが買い物から戻ってきたのだと視認できた。

 

 リコは、祐真が部屋にいるのを確認すると、両手にスーパーのビニール袋を提げたまま、飼い主を見つけた犬のように、表情を明るくした。

 

 袋をキッチンの床に下ろし、部屋の中へと入ってくる。

 

 「だたいま。祐真。またそのゲームやってるの? 二次元の女の子よりも、僕と遊ぼうよ」

 

 リコは椅子に座っている祐真の後ろから、艶やかな白い手を回し、抱きつく。あまりにも自然な流れだたっため、すぐに拒否ができなかった。

 

 それを勘違いしたのだろう、リコは、祐真の背中に抱きついたまま、嬉しそうに言う。

 

 「今日は拒否をしなのかな。ようやくその気になったようだね。言ったでしょ? いずれ必ず君は僕を――」

 

 「うざい」

 

 そこまで喋っていたリコの言葉を遮り、祐真は身をよじってリコを振りほどく。毎度毎度のことだが、特に今のように気持ちが沈んでる時は、本当にうんざりする。

 

 いつもより強い拒否にあったリコは、キョトンとした顔を見せた。そのあと、こちらの肩や顔を探るように見る。また抱きつこうと考えているのか。

 

 祐真は、リコに背を向け、ゲームに集中する。

 

 リコの声がかかった。

 

 「何かあったんだね?」

 

 祐真はそれを無視した。学校で起きている現象を説明しても、こいつはそれをネタに、では自分もと、再度こちらに迫るだろう。気分が悪くなるだけだ。

 

 祐真はそれ以上リコとの会話を絶つことにした。イヤフォンを付け、ゲームを続ける。

 

 やがて、リコがそばから離れる気配がした。

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