サキュバスを召喚しようとしたら間違って最強のインキュバスを召喚してしまいました   作:佐久間 譲司

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第三十四章 転校生

 休み明けの登校初日。祐真はいつもの時刻に起き、リコの朝食を食べて、アパートを出た。

 

 高校へと到着し、校門を通り抜ける。彩香の『全世界BL計画』が解除され、普段通りに戻った光景の中、他の生徒と共に校内を歩いた。

 

 二年一組の教室へ着き、中に入る。そこで祐真は、ふと教室内の雰囲気がいつもと違うことに気がついた。

 

 どこか浮ついているような感じ。すでに登校しているクラスメイトたちが、いつものグループで集まって、ひそひそと話をしているのだ。つい最近まで、敵であった彩香の姿はない。

 

 そして、祐真は、そのクラスメイトたちにちょっとした特徴があることにも気づく。男子と女子とで、様子が微妙に違うのだ。

 

 祐真は自分の席に向かいながら、この雰囲気には、覚えがあると思った。以前にもあった。確か『全世界BL計画』の時の……。

 

 「やっときたか」

 

 祐真が、席へたどり着くなり、すぐに星斗と直也が話しかけてくる。どうやら祐真が登校してくるのを待っていたようだ。

 

 星斗は言葉を続けた。

 

 「祐真、聞いたか? 良いニュースがあるぞ」

 

 祐真は、鞄を机に置きながら尋ねる。

 

 「良いニュース?」

 

 どうやら、そのニュースとやらのせいで、教室の雰囲気が違っているらしい。しかし『良い』との修飾語が付いている以上、バッドニュースではなさそうだ。だが、それでもやはり、クラスの雰囲気が何か異様な気がするのは、考えすぎか。

 

 星斗のかわりに、直也がその答えを言った。

 

 「今日、転校生がくるらしいよ」

 

 「転校生? こんな時期に?」

 

 祐真は訝しがる。転校生自体珍しい(というか今まで一度もない)のだが、高校二年生の、しかもこんな中途半端な時期にやってくるのは、ちょっと変わっているなと思う。

 

 その考えは、誰もが抱えているようで、教室の雰囲気がどこか釈然としないのはそのためだと得心した。依然、男女で差があることについての理由は不明だが……。

 

 しかし、なぜそれがグッドニュースなのだろう。新参者の存在が、この二人にとってそんなに良いものなのか。

 

 祐真がそのことについて質問すると、星斗は鼻の穴を膨らませた。

 

 「女子らしいよ。しかも、めちゃくちゃ可愛いみたい」

 

 なるほど。全て納得できた。確かに男子にとっては、グッドニュースに違いない。それで、男子と女子とで、アクションに差異があったのだ。

 

 そして、祐真も同様だった。星斗の話を聞き、胸が躍ってしまっていた。

 

 可愛い女子が転校してくるという恋愛ドラマのようなシュチエーションに、ときめかない男子はいないだろう。

 

 祐真の反応を見て、星斗は銀縁眼鏡の奥にある細い目を三日月のように曲げ、笑う。

 

 「お前にも事の重大さがわかったみたいだな」

 

 「ああ」

 

 「朝のSHRの時に、紹介があるらしいから、その時を楽しみにしてよーぜ」

 

 星斗は、こちらの肩をパンパンと叩く。つい最近まで、直也と恋人として繋いでいた手だ。

 

 そのあと、三人は、他のクラスメイトたちと同様、転校生について話をした。どれほど可愛いのか、なぜ今の時期に転校してきたのかの憶測など。

 

 やがて、朝のSHRの時間が迫り、星斗と直也は自分の席へと戻っていった。

 

 担任教師が入ってきて、SHRが始まる。流布されているように、転校生の話が行われ、紹介がされた。

 

 「入ってきなさい」

 

 担任教師の声が響き、前方の戸口が開かれる。教室中が静まり返り、皆の期待を寄せる目が、サーチライトのように集まった。

 

 教室に入ってきた人物の姿があらわになると、クラスメイトからどよめきが発せられる。それもそのはず。転校生は、噂どおり、いや、それ以上の美少女だったからだ。

 

 だが、祐真だけはリアクションが違っていた。戦慄していたのだ。まさか、そんな馬鹿な……。

 

 転校生の美少女は、教壇まで歩いたあと、喜屋高校の制服をひるがえし、黒板に名前を書き始める。

 

 名前を書き終わった転校生は、すぐに皆のほうに顔を向けた。再び、かすかなどよめき。祐真の後ろの席の男子生徒が「可愛い」と嘆息した声が、耳へと届いた。

 

 転校生の少女は、書いた名前を横に控えたまま、明るく言った。

 

 「風川花蓮です。よろしくお願いします」

 

 そして花蓮は、百合の花のような笑みを浮かべ、頭を下げた。

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