サキュバスを召喚しようとしたら間違って最強のインキュバスを召喚してしまいました   作:佐久間 譲司

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第六十五章 異変

 最初に異変に気づいたのは、教室に入ってからだ。下駄箱からここまでは特に変わった様子はなく、早朝の静かな校舎が存在しているだけだった。

 

 教室に入るなり、祐真は眉をひそめた。奇妙な光景が目に飛び込んできたためだ。

 教室の隅のほうの席で、男女が座っていた。言わずもがな、二年一組のクラスメイトだ。もちろん見覚えはある。

 

 問題なのは、二人の態度だった。まるでここがカップル喫茶でもあるかのように、手を握り合い、身を寄せ合って座っているのだ。デート中そのものの雰囲気であった。

 

 祐真は目が点になりながらも、自分の席へ向かう。二人があまりにもあからさまに乳繰り合っているため、祐真は、目が話せなかった。二人は、祐真が教室に入ってきたことにも気づかない様子で、自分たちの世界に没頭していた。

 

 祐真は自分の席に通学鞄を置き、周りを見渡す。ここまで堂々としているなら、他のクラスメイトも注目していることだろうと踏んだ。

 

 現在、登校を終えて教室にいる者たちは、あの二人の行動について、どう思っているのだろうか。

 

 そこで、祐真は硬直した。予想もしない光景が広がっていたのだ。

 

 今まで気がつかなかったが、教室内のあちらこちらで、似たような光景が展開されていたのだ。

 

 いずれも男女ペアで、仲良くいちゃついている。早朝であるため、クラスの人数そのものが少ないが、ほとんどの者がそうだった。ちょうど、クリスマス時期の公園がこういう感じだ。

 

 祐真は唖然と立ち尽くす。別世界に迷い込んだ気分だ。今が早朝の教室のせいだろうか。実は、朝早い教室は、祐真の知らないピンク色の世界が広がっていたということかもしれない。

 

 が、もちろんそんなわけがないだろう。祐真の頭に中で、明滅する光があった。

 

 おそらく、これは、また『面倒くさい』事象が関わっているに違いない。

 

 彩香&ユーリーペアが引き起こした全世界BL化計画。それを模倣し、リコを殺害するために古里&シシーペアが仕掛けた、全世界GL化計画とも言うべき策略。

 

 今回の奇妙な光景も、それらの事象に類似していた。はじめに目撃した時のインパクトも同じである。

 

 二度あることは三度ある。すなわち、現在、起きているこの渋谷駅前のような状況は、また何者かの姦計が水面下で動いていることの証左なのだ。

 

 とはいっても、祐真の思い過ごしの可能性もまだ否定できないが……。本当に、この高校の早朝がデートスポットとして機能しているだけで、特に人知を超えた力などは働いていない事実もあり得る。

 

 仮にそうなら、陰キャとしては少々悔しい事実ではあるが、淫魔や退魔士と争うよりは、かなりましのはずだ。

 

 少なくとも、これから周辺の環境に注視は必要だと思った。

 

 

 

 二日が経ち、祐真の推測は見事に的中を遂げた。

 

 先日の朝に目撃した男女ペアが乳繰り合う光景。それらは、急速に学校中に広まっていた。 

 

 祐真の周囲の人間もその変化に気づくほどだ。星斗や直也も、急に増えた男女のカップルに驚きを隠せないでいた。

 

 「なあ、この学校ってこんなにリア充多かったっけ?」

 

 星斗がクラスに何組かいる男女のカップルを見ながら、呆然と呟く。

 

 「そんなことないと思うけど……。ちょっと前まで普通だったし」

 

 直也も、丸い目をさらに丸くし、面食らっていた。

 

 動揺している友人二人を尻目に、祐真は歯噛みをする。これは、紛れもなく魔術が関わっている現象だ。当初はまだ疑う余地が残っていたものの、ここまでくると確信を通り越して、怒りすら沸いてくる。

 

 つまり、この高校に存在するのだ。魔術を使い、今の異様な光景に仕立て上げた犯人が。

 

 祐真は教室の中の様子を伺った。

 

 『カップル』が成立している割合は、大体クラスの半分ほど。BL化計画やGL化計画の時とは違い、異性同士であるため、『カップル』が成立していない生徒も残り男女半分となる。

 

 先ほど、教室の外を確かめてきたが、他のクラスも似たような感じだ。ただ、なぜかこのクラスが一番、男女のカップルが多いように思えた。

 

 祐真は忍ぶようにして、二年一組のクラスメイトの顔を一人一人見ていく。

 

 推測だが、このクラスが発端だと思われる。数もさることながら、一番最初に『男女カップル』を目撃した場所でもあるからだ。

 

 ということはつまり、このクラスにおいて、カップル化していない人物が、仕掛人ということになる。

 

 それは誰だろう。そして、何者なのか。

 

 と考える前に、やはり一人疑うべき存在がいる。そいつは、カップル化せず、友人たちと周囲の環境に困惑を見せていた。

 

 祐真はその人物に話を聞くことにした。

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