サキュバスを召喚しようとしたら間違って最強のインキュバスを召喚してしまいました   作:佐久間 譲司

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第八十五章 反転攻勢

 すっかりと日が昇り、明るくなった空の中。祐真とリコは、新橋を離れ、新宿までやってきていた。

 

 新宿駅の東口前にある広場で、祐真とリコは、敵の『退魔士』への対策について話し合う。

 

 広場や歩道では、大勢の人間が往来していた。休日なだけあり、祭りのように猛烈な賑わいだ。しかし、反面、祐真たちへの『攻撃』はなりを潜めていた。

 

 やはり、あまりにも人が多い場所だと、敵は攻撃を控える傾向にあるのだ。大騒ぎに発展することを忌避しているのは事実だと言える。

 

 「それでどうするの?」

 

 祐真は広場のベンチに腰掛け、隣にいるリコに質問する。そのあと、手に持っていたハンバーガーを一口齧った。安っぽいジューシーな味が口の中に広がる。

 

 朝になり、空腹だったため、近くのマクドナルドでリコに買ってもらったものだ。

 

 店内で食事をしないのは、室内での不意打ちを避けるためである。安全を期するなら、公衆の面前にいるべきなのだ。

 

 「バーで説明したように、退魔士を探すよ」

 

 リコは、ホットコーヒーを飲みながら言う。

 

 「空から探すってやつだろ? 成功するのか?」

 

 「するよ」リコは首肯した。

 

 「君が退魔士の顔を覚えているのなら、大した時間をかけず、すぐに発見できる」

 リコは自信満々だ。

 

 「でも、実際に探すのはリコだろ? なんでそう確信が持てるんだ?」

 

 祐真の質問を聞くなり、リコはニヒルに笑みを浮かべた。

 

 「そう思うだろ? だけど、実際に敵の退魔士を探すのは君だからさ」

 

 「俺?」

 

 祐真はハンバーガーを持ったまま、きょとんとした。

 

 「俺が? どうやって?」

 

 「空に飛ばした使い魔と、君の視界をリンクさせるのさ。そうすれば、監視ドローンみたいに、君が周辺をチェックできる」

 

 祐真はリコの意図を理解した。なるほど。使い魔って便利な存在だな。

 

 「わかった。でも建物の中にいたらどうするんだ?」

 

 「建物を透過できる機能を付けるよ。赤外線みたいに、人間を捕捉できるようにする」

 

 「建物や障害物が全くない場所に行くのは駄目なの?」

 

 「昼間だと、まず敵の退魔士は近づいてこないだろうね。結局、膠着状態が続く。そうなれば、こっちが不利になる」

 

 つまり、積極的にこちらから動かなければ、いずれは追い詰められるということか。

 

 「新宿でやるの?」

 

 リコは首を振った。

 

 「街中だと人があまりにも多すぎる。しかし、人が少ない場所なら、さっき言ったように、退魔士は引っ込んでしまう。だから人が多すぎず、少なすぎない場所を選ぶのさ」

 

 祐真は残ったハンバーガを口の中に放り込むと、首を捻った。

 

 「理屈はわかったけど、どんな場所を選ぶつもりだ?」

 

 「ちゃんと考えているよ。これからその場所へ行こう」

 

 リコはそう言い、コーヒーを飲み干すと、カップを手で潰した。

 

 

 「本当にここで大丈夫なのか?」

 

 駅に降りたあと、疑問に思った祐真はリコに尋ねた。リコは堂々と胸を張る。

 

 「大丈夫さ。ここ以上に適した場所はない」

 

 リコは断言した。

 

 新宿を離れた二人は、中央線から列車を乗り継ぎ、八王子市に行き着いていた。

 

 八王子市は東京都の南西に位置する中核市だ。ベッドタウンとして有名で、住宅街が多く、住みやすい街として名を連ねている。

 

 二人が降りた駅は、八王子でも特に住みやすい、みなみ野地区に位置するみなみ野駅だった。

 

 祐真とリコは駅の改札を出て、目の前のロータリーに足を踏み入れる。天元近くまで達した太陽が強い日差しを投げかけ、祐真は目を細めた。

 

 休日であるため、利用客は多い。人々の賑わいが祐真の耳を貫く、しかし、都心ほどの盛況さではなかった。

 

 「この地域は住宅街がメインで、自然も多く、僕らの『作戦』には都合がいい場所なのさ」

 

 リコがさらりと説明する。どうやって調べたのか知らないが、リコが言うのなら間違いないだろう。

 

 「……肝心の退魔士は追ってきているかな?」

 

 「きているよ。確実に」

 

 リコは言い終わると同時に、唐突に背後を振り返り、手を伸ばした。

 

 何かと思い、動きを追った祐真は、ぎょっとする。

 

 二人の背後には、いつの間にか中年の女性がいた。中年女性は腕を振りかぶっており、手にはカッターナイフが握られている。その腕をリコが、がっちりと掴んだところだった。

 

 気づかないうちに、二人の背後に操作されていた『敵』が接近していたのだ。

 

 「こうやって、攻撃が再開したからね」

 

 喋っているリコの前で、中年女性は膝から崩れ落ち、その場に倒れ込む。手からカッターナイフが落ち、地面に転がった。

 

 「騒ぎになる前に、この場を離れよう」

 

 リコは祐真の手を引き、街中のほうに向かった。

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