怪獣8号:ULTRAMAN   作:大胸筋が弱い人

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筆が乗ったのでもう1話


2話 始まりまで

夜の住宅街の屋根の上。

 

そこに陣取ったハヤタは静かな路地をかける1人と一体?私見下ろしていた。 

 

1人、、、市川レノはともかく一体、日比野カフカの方は世にも奇妙な形態変化を経て、安定した人型の形態を保ちつつ走っていた。

 

少し離れた家の屋根の上でそれを見ながら笑いころげている者がいることなど知らずに。

 

屋根の上で寝転がりながら、ハヤタは墜落後へと思いを馳せる

 

「あの後は色々あったな〜」

 

 

 

 

 

赤い空間だった。

 

夢を見ている感覚に近い。

 

上下もなく、重さもない。

 

体は浮いているのか、寝ているのかすらわからない。

 

意識だけがぼんやりと存在していた。

 

時間の感覚がない。

 

一瞬にも、永遠にも感じる。

 

何も考えられない。

 

ただ、眠っていた。

 

どれくらい経ったのか。

 

突然、意識が浮上する。

 

まぶたを開く。

 

白。

 

相変わらず何もない空間。

 

(……ここは)

 

声を出したつもりだったが、音がない。

 

それでも思考ははっきりしていた。

 

体を起こす。

 

地面はない。

 

だが立てる。

 

妙な感覚だった。

 

一歩踏み出す。

 

距離感がおかしい。

 

進んだのかどうかも分からない。

 

空間が歪んでいる。

 

(……四次元空間?)

 

そんな言葉が頭に浮かぶ。

 

理屈はわからない。

 

だが、直感的に理解していた。

 

ここは現実じゃない。

 

しばらく歩く。

 

何も起きない。

 

時間も流れない。

 

焦りだけが増える。

 

(……出られないのか)

 

その時だった。

 

眩い光と共に空間が裂けた

 

 

 

光が差し込む。

 

思わず目を細める。

 

外だ、と理解する。

 

ハヤタは躊躇わずそこへ踏み出した。

 

 

次の瞬間、地面に倒れていた。

 

固いコンクリートの感触。

風。匂い。音。

 

現実だった。

 

体を起こす。

 

周囲を見る。

 

何もない。

 

ただの荒れ地だった。

 

瓦礫も、残骸も、怪獣の痕跡もない。

 

海岸線の一部だけが、不自然に更地になっている。

 

(……消えてる)

 

ヘリも。

隊員も。

怪獣も。

 

全部。

 

ハヤタはゆっくり立ち上がる。

 

体に異常はない。

 

怪我もない。

 

だが、違和感がある。

 

妙に体が軽い。

 

呼吸も乱れていない。

 

ヘリが墜落した直後とは思えなかった。

 

歩き出す。

 

人の気配はない。

 

どこまでも続く空き地を抜け、市街地へ

 

無人の街の中をしばらく歩く。

 

ようやくあかりが見え始めた頃にようやく小さなコンビニが見えた。

 

灯りはついている。

 

営業しているらしい。

 

ハヤタは中に入った。

 

店員が一瞬驚いた顔をする。

 

無理もない。

傷がないとはいえ今の俺は防衛隊の戦闘服だ。

 

声をかけられないのを運良く思い、ハヤタは新聞コーナーへ向かう。

 

一枚手に取る。

 

日付を見る。

 

――五日後の日付だった。

 

思考が止まる。

 

もう一度確認する。

 

間違いない。

 

五日経っていた。

 

ページをめくる。

 

社会欄。

 

すぐに見つかった。

 

「防衛隊輸送ヘリ墜落」

 

記事は短い。

 

海岸付近で墜落。

逃亡した余獣による二次災害。

乗員全員死亡。

 

名前の欄を見る。

 

そこに、あった。

 

ハヤタ・シン。

 

死亡。

 

ハヤタは新聞を閉じた。

 

静かに棚へ戻す。

 

外へ出る。

 

夜風が吹く。

 

(……死んだ、か)

 

戸籍上。社会的に。

 

ハヤタは空を見上げた。

 

自分は生きている。

 

だが、世界からは消えた。

 

奇妙な感覚だった。

 

そして同時に、理解する。

 

(都合がいい)

 

身元はない。

記録もない。

追跡もされない。

 

自由だった。

 

だが――

 

ハヤタは、自分の手に握られた細長い銀色の筒を見た。

 

あの白い空間。

 

あの光。

 

何が起きたのかは想像がつく。

 

確信があった。

 

自分は、もう普通の人間じゃない。

 

 

 

 

 

そんな回想をしてる間に事態は大きな進展を迎えていた。

 

日比野カフカが少女を襲おうとした怪獣の前に立ち、全力で殴り飛ばした。

 

 

怪獣8号

 

その圧倒的な存在が、この世に浮き彫りになった瞬間だった。

 

 

 

その後カフカはレノと別れ、1人廃墟へと走っていく。

 

「…動くか。」

 

一部始終を見届けたハヤタは静かに呟くと、ポケットに手を入れ、上空に飛び立った。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。なんとかなるもんだな。」

 

近くに防衛隊員がいない事を確認したカフカは、深いため息をついた。

 

「どしたん?話聞こか?」

 

「あぁ、聞いてくれよ、、、え?」

ドクロの顔が滑らかな動きで右隣を見る。

 

顔つきは彫りが深く、体つきは細マッチョ。

服装はパーカーにジーンズのラフな格好。

そんな男が立っていた。

 

「……いやどちら様⁉︎」

 

「どうも、ハヤタって言います。以後お見知りおきを。」

 

緊張感の抜けるような話し方で男、ハヤタは自己紹介をする。

 

「あ、どうも。日比野カフカです。」

気を抜いた直後だったのも重なりその穏やかな声に、カフカは自分が怪獣の姿であることも忘れてカフカは自己紹介を返す。

 

 

「立ち話もなんだし、座ってください。」

 

そう言ってハヤタはどこからともなくちゃぶ台を引っ張り出す。

 

「あ、じゃあ失礼します。」

カフカは好意に甘えようとちゃぶ台の前に正座する。

 

「じゃ、ごめんね。」

「え?」

 

カフカの気の抜けた返事とその首筋にハヤタが手刀を叩き込むのは全くの同時だった。

 

「ゴバッ⁉︎」

 

およそ人間の手から出る音ではないガキンという音を鳴らしながら振り抜かれる手刀。

 

それを食らったカフカはそのまま吹っ飛んでいき、前方の壁を大きく破壊しながら、動きを止める。

 

(なんだ今の⁉︎というか今俺怪獣だぞ!それを手刀で弾き飛ばすって、バケモンかよコイツ‼︎)

 

「頑丈だな。意識飛ばすつもりで打ったんだけど。」

 

「何もんだよ。てめえ」

次の攻撃に備え、カフカは拳を腰ダメに構える。

 

「まぁ待て、敵意はない。人の姿に戻すためにちょっと意識を失ってもらおうとしただけだからさ。」

 

ハヤタはポケットに手を突っ込んだままカフカに向き直る。

 

「だから何もんだって聞いてんだよ‼︎」

カフカが自分の周りにかろうじて残った瓦礫を粉砕する。

 

「自己紹介しただろ。ハヤタ・シン あ、こっちの方が有名か。」

 

廃墟の隙間から月明かりが差し込む。

 

その光はちょうどハヤタの顔半分を照らし出す。

 

「ウルトラマン」

 

その照らし出された顔半分を銀色の無表情な仮面が覆っていた。




読んでくださりありがとうございます。
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