死神の息子 作:ころころさん
プライベートの方でテストだったりでなかなか続きが出せませんでした。
これからも不定期ですが更新させていただきますので、よろしくお願いいたします。
【修学旅行当日】
東京駅に集まった椚ヶ丘中学の生徒たち。京都への移動手段としてしようする新幹線なのだが、ここでも椚ヶ丘中学の風習が存在していた。
「うわ…A組からD組まではグリーン車だぜ」
「
本校舎生徒である、A組~D組の生徒は座席がグリーン席という世間的に見たら上質な席なのに対し、E組はただの普通車である。そのあまりの対応の差に、いい加減慣れはしてきたがやはりいい気分はしないE組一同。
「家の学校はそういう校則だからな。入学時に説明したろう」
「学費の用途は成績優秀者に優先される」
「おやおや、君達からは貧乏の香りがしてくるねえ」
そんなE組生徒たちをD組の教師や生徒たちが嘲笑う。相変わらずのご様子に苦笑いを浮かべる渚。
すると、彼らの前を二つの影が通り過ぎた。
「ごめんあそばせ」
「結構ギリギリだけど間に合ったね」
現れたのは、他を寄せ付けないほどの圧倒的な美だった。
1人はまるでモデルさながらのスタイルで中学校の制服を完璧に着こなしている。
そしてもう1人は、引率をする中学教師として模範的ともいえるフォーマルな服装。だが、服という物は着ているモデルの良さで他者からの見え方が180度変わるものである。
女性特有の細く丸みの帯びたシルエットを上手く隠しながらも際立たせている。
きっと普段の彼女ならもっと派手で露出の激しい恰好をしているはずだが、今回はその成を潜めていた。
それでもどこか彼女の強烈な色っぽさが溢れているのは、一種の才能と言えるだろう。
「ビッチ先生…だよな?」
「バカねえ。見ればわかるでしょ?」
「なんかちょっと意外かも。こういう時、一般常識の考えがないビッチ先生ならハリウッドセレブみたいな服装で来るかと思ったのに」
「昨日美雨と買い物行って買ってきたのよ。修学旅行以前に引率の先生の服装とか持ってなかったから。…ちょっと待て誰が一般常識ないじゃこらぁぁぁ!!」
「なぜだ。普段よりも肌が出ていないのに無性にエロく見える…」
イリーナが生徒たちにいじられ騒いでいる様子を、相変わらず下品な目つきで鼻血を垂らしながら眺める岡島。
なんやかんやで今日も変わらずE組は騒がしかった。
「それで、ビッチ先生と買い物行ったってどういうことか詳しく聞かせてくれないかな?美雨君」
「これは困ったね。怒ってるのかもしれないけど桃花ちゃんが僕の腕を抱きしめてるせいで話が入ってこない」
新幹線普通車内。E組生徒だけの車両内である修羅場が繰り広げられていた。
容疑者の名まえは無月美羽。罪状は不純異性交遊。取り調べているのは美雨と同じ班である、速水、矢田、倉橋、そして別班から参戦の神崎である。
本来なら美雨のほかにもう1人容疑者がいるはずなのだが、構うよりも放っておくほうがダメージがでかそうという理由で現在シカトされ中。
「こっちは怒ってるんだよ。早く話して」
「そんなに夢中になって手を揉まれたら、怒られてるとは思えないけどね。凜香ちゃん」
「……(ニコッ)」
「後ろの席から首に手を回して撫でるのは少しくすぐったいかな、ユキ」
「ねー、なんで私も誘ってくれないの?」
「陽菜乃ちゃんに関しては少しやりすぎてるね。男の上に容易に跨って座らない方が良いと思うよ」
外から見ればただの美少女たちの戯れのようで大変眼福もので羨まけしからん光景。しかし当人の女子たちはその内心では複雑な心境だった。
好きな相手が自分たちも悔しくも認める超やりて美人女教師と、知らぬうちに一日デートを決め込んでいたのだ。
男の方は特に何もないような様子を浮かべているが、問題はその相手の方だった。
通路を挟んで反対側の席。
そこには、シカトされたことにより意外とダメージを受けてシクシク泣いているイリーナがいた。
そんな彼女のことを美雨とべったりくっついている女子組はじっくりと観察する。
彼女の爪には明らかに最後に学校で会ったときにはしていなかった、可愛らしいネイルが施されていた。
それだけでなく、恐らく全身くまなくマッサージにでも行ったのだろう。
もともと綺麗で引き締まっていた身体がより一層ぴちぴちになっており、下手したら自分たち中学生よりもハリつやのあるもち肌になっている。
そして最後に、明らかにイリーナから溢れ出る色気が増していること。
これは今だそういった行為に経験がない彼女たちの勝手な憶測でしかないのだが、明らかに最後に見たイリーナよりも所作が妙に女らしいというか艶っぽい感じがしていた。
イリーナが時折見せる、自身の唇や首筋から鎖骨までをそっと触れたり、下腹部あたりを優しく撫でたり、体験したことはないが知識としてはすでに履修済みである彼女たちは、それだけで昨日美雨たちに何があったのかを連想する事が出来た。
もちろん頭では理解している。
殺し屋という闇の世界で生きていた美雨とイリーナとでは、普段の常識はもちろん、そういった行為に関しても平和に生きていた自分たちとでは価値観が違う事も。
現に、美雨がE組に来た時にイリーナにやって見せた様々なスキルの高さでそれは十分に理解させられていた。
今だ
本来ならそんな経験豊富すぎる男など、漏れなく悪い男判定で論外なのだが、そこは中学生の恋愛の性か。
そういう所もカッコいいというかむしろ加点ポイントになっている彼女たち。
毒だとわかっていてもそれが甘い香りならば近づいてしまうものなのだ。
しかもその毒は猛毒もいいところ。すでにアウトなところまで冒されている彼女たちは止まる事を知らないのだ。
好きな相手が危ない奴なら自分たちもその色に染まってしまうのが中学生の恋愛なのだ。
まあ中学生の範疇に入れていいのか怪しい相手ではあるが。
故に彼女たちは積極的である。
恋は盲目。
強い恋愛感情を抱く彼女たちの目には美雨しか映っていないし、それでいいと自分たちで納得していた。
「くそ…くそっ!!やはりイケメンは正義なのか!俺も無月ぐらいイケメンだったらあんなハーレムを味わえたのか!!?」
「いや、あんたの場合はまずその溢れ出るキショイ下心を無くす所からだから」
美雨たちのイチャイチャ世界を眺めながら相変わらず血涙を流す岡島。
そしてそんな岡島を蔑んだ目で見る中村。
そんな二人のやり取りを苦笑しながら眺める渚と茅野。
他のみんなもそれぞれでこの時間を楽しんでいた。
殺せんせーも決して上手くない変装で生徒と一緒に騒いでいる。
その光景を微笑みながら眺める美雨。
ずっと殺し屋として生きてきた美雨にとっては初めての修学旅行。
普段と変わらず、ただ乗り物に乗って移動しているだけなのに、いつも以上に騒がしくそして心躍る気分に美雨は内心で、自分でも驚くほどワクワクしていた。
移動時間を大いに満喫したE組一同。
彼らの宿泊先は、本校舎の生徒たちとは雲泥の差であるさびれた旅館だった。
その名も【さびれや旅館】
なんかもうそのまんまである。
新幹線から降りバス移動に切り替わってそのまま旅館にチェックインしたE組一同は、現在、旅館のロビーに集まっていた。
「はぁ…はぁ…ひぃ…」
「……1日目ですでに瀕死なんだけど」
「新幹線とバスで酔ってグロッキーとは…」
ロビーに設置されているソファで今にも死にそうな顔でダウンしているのは超生物こと殺せんせー。
どうやら極度の乗り物弱者だったようで、新幹線とバスの移動でこの場にいる誰よりもダメージを受けていた。
「…なるほど、乗り物がダメになったのか。今のうちに運転技術を完璧に磨いた方がいいかな」
「なんの話?」
そんな殺せんせーの様子を真剣な眼差しで見る美雨。その横にちょこんっと速水が並んでおり、身長差ゆえに上目使いになりながら美雨を見つめていた。
「んー、将来する親孝行を考えてたんだよ」
突然の親孝行の話題に思わず首を傾げる速水。そんな彼女の仕草にくすっと笑った美雨は優しく頭を撫でた。
すると、視界の端で神崎が茅野と一緒に自分の鞄の中を覗いている姿を見つけ、そちらの方へと向かっていく。
「なにか困ってる?」
「あ、無月君!神崎さんが日程表なくしちゃったみたいなの」
「日程表?もしかして自分でまとめた物がなくなった?」
「うん…確かにバッグに入れたと思ったのに。…どこかで落としちゃったのかも」
「神崎さんは真面目ですからねぇ。独自に日程をまとめてたとは感心です。でもご安心を…」
困った表情を浮かべる神崎。対して美雨はなにやら考え事をするかのように、顎に手を添える。そんなやり取りをダウンしながらも聞いていた殺せんせー。
するとなにやら懐をごそごそと漁り始めた。
そうして某猫型ロボットが秘密道具を出すときのような、どきどきわくわく感を無理矢理加えて出したのは…。
「この、"先生手作りしおりぃ~”を持てば全て安心」
「「それ持って歩きたくないからまとめてんだよ!!」」
てれれてってれ~と盛大な音楽が流れながら出てきたのは、やはり先生手作りの極厚しおりだった。
これにはE組生徒たちのツッコミもキレが増す。
結局この後も神崎の日程表は見つかる事はなく、一日が過ぎたのであった。
一方そのころ、あるホテルにて椚ヶ丘校と同じく修学旅行に来ていたガラの悪い男子生徒が、その見た目に似合わない『修学旅行日程帳』と書かれた可愛らしい手帳を眺めては不敵な笑みを浮かべていた。
「ふーん…あのガキら明日はこんな風に回るわけね」
「げへへ、よくやるわリュウキ。ま、男子校の修学旅行なんてウンザリしてたからちょうど良いけどよ」
ホテルの室内だというのにマナーを守らず煙草を吸う他の男子生徒を叱る教師の怒号をBGMに、生徒手帳を眺めるリュウキの周りに複数の悪人面が集まる。
年齢詐欺だろと突っ込まれるだろう老け顔の男に、首が座っていないのかはたまたらりっているのか頭が微細に揺れている男に、至近距離で強風を当てられているかのように髪も全てが後ろに引っ張られているように見える男。
これほど濃いメンツに囲まれているリュウキは実写版ク〇ーズに出ていた小栗〇をリスペクトしているかのようなオールバックという一番癖のない姿をしていた。
そんななんちゃってク〇ーズのリュウキはパタンっと手帳を閉じると悪人面をさらに濃くして笑みを浮かべる。
「俺って優しさの塊だからよ。ああいう頭良さげなガキ見るとな、無性に救ってやりたくなるんだよ」
悪い魔の手がE組生徒たちに忍び寄っていた。