前世でヤンデレ妹に人生をめちゃくちゃにされた俺。トラウマを糧に最強になったがあいつはまだ諦めない   作:エアハンター

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三章 魔力の新たな可能性
第14話 前途多難な学生生活


 魔力学院。親父の壮絶な決闘を終え、晴れてこの学院への入学を許可された。

 同盟国であるエアハート王国が設立したこの学園は広大な敷地と充実した施設が自慢らしい。

 貴族から平民まで幅広い生徒が通い、共に切磋琢磨しているとのことだ。

 

「ではミナト様。これより学院内での振る舞いについて注意事項をお伝えします」

 

 隣で淡々とした口調で説明するのは監視役に任命されたメイドのミリウスである。俺と同じく制服に身を包んでいる。

 

「あんた、アルフェンの側近じゃなかったのか?」

(わたくし)自らが志願いたしました。ミナト様が問題を起こさぬよう管理するには最適だと」

 

 そんな理由で第一王子の側近を外されるアルフェンが哀れだった。 

 

「まず第一……最も重要なことですが、王族であることを絶対に悟られないよう努めてください。身分を明かす行為はもちろん、貴族階級の生徒に対しても同年代ならば下手に敬語を使わず接することが重要です」

「一応聞いてるが、何でわざわざそんな面倒なことをする必要があるんだ?」

「ミナト様の場合は特に特殊なのです。あなた様の魔力量はこの学院の生徒全員を足しても全く及ばない程です。加えて、あのアドルフ様を凌ぐ力まで持ち合わせているとなれば周囲からの注目は必然です」

「まあ、わからないでもないか……」

 

 納得できる理由ではある。

 俺としても無双して悦に浸りたい訳ではない。

 平穏に生活したいのは当然だし、注目されるのは面倒だ。

 

「故に私達はあくまで庶民の出身。可もなく不可もなし。平凡な学生として振る舞うことに徹しましょう」

「了解した。名前はそのままだが問題ないのか?」

「幸い、ミナト様の名前は他国にはあまり伝わっておりません。クロフォードという性さえ隠していれば特に支障はないでしょう」

 

 ミリウスの冷静な分析に頷く。

 彼女は手に持った資料を確認しながら言葉を続けた。

 

「現在、ミナト様の立場を知るのは(わたくし)とカナデ様、学園長にしてエアハート国王のエルドリック様。そして、この国の王女殿下であるフレイア様です」

「学園長はともかく、王女も?」

「はい。三年生ですので直接関わる機会は少ないでしょうが、念の為に知っておいてください」

 

 カナデも今はこの学院の二年生として通っている。退屈はしないだろう。

 俺の目的はあくまでも魔力の新たな可能性を見つけることだ。

 

「他にも細かい規則はありますが、主にこれらを守って頂ければ問題はありません」

「わかった。努力はする」

「ご理解頂きありがとうございます。では、これから宜しくお願いいたします。ミナト様」

 

 ミリウスは丁寧に頭を下げる。だが心なしかその口角が僅かに上がっているような気がした。

 

 

 

 

 こうして俺の魔力学院生活が始まった。式典用の大ホールは既に大勢の人々で埋め尽くされている。

 新入生に在校生、教師や外部の来賓たち。学院の歴史と伝統を誇るだけあってその規模はかなりのものだ。

 

「続いてはエアハート王国、現国王エルドリック陛下より挨拶です」

 

 進行役のアナウンスと同時に舞台上に一人の男性が現れる。年齢的には50代後半といったところか。威厳と温和さを兼ね備えた男性だ。

 

「魔力学院の生徒諸君。改めて入学おめでとうございます」

(あぁ、こういうのは前世から苦手なんだよな)

 

 頭を雑に掻きながら早く終われと心の中で願いつつ、ふと周囲を見回すと上級生のクラスでカナデの姿を見つけた。

 彼女も俺に気づいたようで小さく手を振ってきた。苦笑しながら手を上げて応えておく。

 

「彼女、嬉しそうですね」

「散々一緒の学校に行きたいって言われてきたからな。知ってる顔が居てくれるのは心強い」

「意外ですね。ミナト様ほどの実力者があの様な平民出身の弱者を気にかけるとは」

「……俺をなんだと思ってる。後、もう少し柔らかい言い方は出来ないのか」

 

 ミリウスの無神経な言葉に呆れつつ、カナデを弱者と呼ぶ彼女に違和感を覚えた。

 やはりこの元メイド、何かおかしい。

 

「皆さんはそれぞれの祖国において将来有望な若者ばかりです。この魔力学院での出会いと学びが君たちの未来の糧となりますよう祈っております。以上」

 

 ようやく長ったらしい式辞が終わり、俺たちは各教室に案内された。

 20人ほどが収まる教室内は前世で通っていた高校の教室に酷似している。というよりほとんど変わらない。

 

「よう、隣の席だな。お前も貴族か?」

 

 声がした方に顔を向けるといかにもチャラそうな金髪の青年。

 顔立ちは整っているものの目つきには品性を感じられない。見るからに不良少年といった印象だ。

 

「別に貴族じゃないぞ」

「ふーん……平民出身か?まぁいいや。俺はレイヴン・バルクス。一応男爵家の三男坊だ。よろしく頼むぜ」

 

 馴れ馴れしい態度で握手を求めてきた。断る理由もなく右手を差し出す。

 

「魔力学院なんて名前だからどんな貴族様が集まるかと思ったが意外と庶民もいるんだな。なんか色々安心したぜ」

「庶民が多いのが嬉しいのか?」

「あぁ、勘違いしねーでくれよ?気を使われるのが嫌っつーかさ。そういう小難しい関係が苦手なんだ」

 

 どうにも軽薄さが拭えないが、悪い奴ではないらしい。

 まあ、クラスメイト同士仲良くするに越したことはないだろう。

 

「ミナトだ。宜しく、レイヴン」

「おうよ、こっちもな!俺結構不真面目だから、授業中は色々雑談しようぜ!」

 

 レイヴンの能天気なノリに苦笑しながら頷く。

 その後も他の新入生たちとも挨拶を交わし和やかな雰囲気で主な授業内容が説明される。

 適当に流しつつ、俺は辺りの魔力を探る。

 

「特に変わった魔力を持つ奴はいない……か」

 

 ホールに入った時から探りを入れていたが、これといった人物は見当たらなかった。

 

 単純な魔力量はアルフェンはどころかほぼ全員がカナデにも及ばない。

 当然といえば当然だが、改めて現実を目の当たりにすると落胆も大きい。 

 

(まあ、何かしら収穫があれば良しとするか)

 

 ため息を吐きつつ担任の話に意識を戻した。

 タイミングを見計らっていたようにチャイムが鳴る。初日ということもあり早々に解散。寮に荷物を置きに行くことになった。

 

「では皆さん、明日からの授業に向けてしっかり準備しておくように」

 

 担任に言われるがままに各自動き出す。俺も早々に席を立とうとした瞬間だった。

 

「失礼しま〜す。ミナト居るかなー?」

 

 聞き覚えのある声がした。廊下から教室に入ってきたのは案の定カナデだった。

 ブレザー型の衣装で胸元には校章が縫い付けられている。

 

「おい、あれって2年の……」

「うっそ。めっちゃ可愛いじゃん」

 

 カナデを見るなり周囲の男子生徒から羨望の眼差しが注がれる。

 何だこの展開。ラブコメ漫画かよ。  

 

 しかもカナデ本人はそれを全く気に留めることなく堂々と俺の席まで歩み寄ってきた。

 

「お疲れー。一緒に帰ろ?」

 

 周りの目が痛い。特に男子生徒からの嫉妬や羨望の眼差しが凄まじい。レイブンなんて完全に固まっている。

 俺は慌てて立ち上がりカナデの手を引いて廊下に出る。

 

「ちょ、ちょっと、いきなり何?」

「いいから。外に行くぞ」

「……もしかして、照れてる?」

「やかましい」

 

 天然娘め……こいつの能天気さには時々眩暈を覚える。   

 

「ミナト様、あまり人前で見せつける行動は控えていただきたいのですが」

 

 横から棘のある声。当然のようにミリウスが睨みを効かせている。

 

「俺のせいかよ。カナデに言ってくれ」

「はぁ……とにかく目立つ行為は慎むようにとの申し送りでしたよね?」

 

 ミリウスの無表情かつ淡々とした言葉には有無を言わせぬ迫力があった。

 

「カナデ様も、昨日も説明しましたがミナト様は……」

「大丈夫大丈夫。ミリウスさんも一緒なんでしょ?ほら、行こ!」

 

 そう言ってカナデは強引に俺の腕を引っ張る。

 俺とミリウスは互いに顔を見合わせて深いため息をついたのだった。

 

「要するに、ミナト様はこの学校では平民として扱わなければいけないのです。王族で且つこの学院内でトップの魔力量を持つ実力者であることがバレれば色々と厄介なのです」

「ふーん。でも、わたしは平民だよ?なら問題ないよね?」

「カナデ様の場合は既に学園で有名人ですから……」

 

 下校中、ミリウスがカナデに説明するもカナデは聞く耳を持たない。

 なんとも前途多難なスタートである。  

 

「はぁ……よく分かりました。馬鹿には何を言っても無駄ということですね」

「馬鹿!?今、馬鹿って言った!?」

「はい、言いました。一応学園内では5本の指に入るほどの実力者だと聞いておりますが、それがこんな馬鹿ではこの学校のレベルも知れたものですね」

「……ミナト。わたし、ちょっとだけこのメイドさんとお話したくなってきたな〜?」

 

 カナデが不穏な雰囲気を醸し出す。

 こいつらはあれだな、絶対馬が合わないタイプだ。

 まあ、喧嘩するほど仲が良いとも言うし放置するしかないだろう。

 

「お望みならすぐにでも身の程を教えて差し上げますが?」

「最近のメイドさんって口悪すぎ〜。なんならここで決着つけちゃう?わたし、結構強いよ?」

「ほう。面白い冗談を仰いますね。ではここでどちらが上か白黒はっきりさせましょうか?」

 

 前言撤回。これはマズイ。 

 

「はいストップ。落ち着け二人共」

「「……チッ」」

 

 まさかの舌打ち二重奏である。

 ミリウスはともかく、普段は無邪気なカナデまでそんな態度とは相当苛立っているらしい。

 流石に学院のルールを弁えていたのか、一応矛を収めてくれた──と思ったが……。

 

「命拾いしましたね。カナデ様」

「喧嘩売って来たのそっちだと思うな〜。というかミリウスさんって、あんなに煽り上手だったんだねー。メイドさん失格……あ、もう違うんだっけ?」

「……この平民のクソガキ」

「おー怖い。本性見ちゃった♪」

 

 煽りスキルMAXの罵詈雑言が飛び交う。やっぱりダメかもしれない。

 その後もカナデとミリウスの言葉のナイフを浴びながら、俺は寮に向かって歩いていくのだった。

 

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