前世でヤンデレ妹に全てを奪われた男はトラウマを糧に最強へ。しかし、あいつはまだ諦めない……!   作:エアハンター

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第41話 旅の始まり

 爺さんの家を後にし、俺達は吸血鬼の里を目指して歩き始めていた。

 カナデとセラは約束通り俺と一定の距離を保っている。ニアが睨みを効かせているので変な真似はしないだろうが……。

 

「見て!あれ、この近くじゃ見かけないお花だよね?」

「……あれは毒草。触れると皮膚が爛れる」

 

 セラが無表情で警告するがカナデは聞いていない。

 ニアは遠くを見つめながら溜息をつく。

 

「お前らなぁ、ピクニックじゃねーんだぞ」

「えー。いいじゃん。戦闘の危険はないんでしょ?」

「ん。70%の確率で安全。眷属たちは人間を襲わない」

「30%あるじゃねーか!」

 

 ニアが叫ぶが、カナデは相変わらず花畑の方へ目を向けている。

 ちなみに、セラはといえば……。

 

「……俺に何か用か?」

「魔力の流れが気になる。やはりキミは桁違い」

  

 先程から俺を見つめるその瞳には無表情ながらも驚きの色が見える。

 どうやら、魔力の波動を感じ取られているらしい。

 

「キミに初めて会った時、もう終わりだと思った。吸血鬼の里からは"ミナト・クロフォード"と"アドルフ・クロフォード"だけは絶対に相手にしてはいけないと通達が来ていたから」

「俺と親父か?」

「そう。クロフォード王国の中でも特に危険視されている。他国の国王がまとめてかかっても太刀打ちできないレベルだと聞いた」

「親父はともかく俺はまだ学生なんだが……」

「キミはそんなアドルフを打ち破った。エアハートでは国を滅ぼしかねない黒龍すら討伐した」

 

 どこでそんな話を仕入れたんだこの淫乱吸血鬼は。

 まぁ、事実だから否定する気もないが。

 

「おい、何でそんな情報を集めてんだよ?まさか吸血鬼の再興と一緒に支配でも企んでるんじゃねぇだろうな」

「自衛の為の情報収集。復讐じゃない」

 

 ニアの問いに淡々と答えるセラ。嘘を言っているようには見えない。

 

「なら何でカナデを連れ去った?わざわざ俺が居るタイミングで」

「あの場にキミが来るとは予想外だった。カナデの兄の実力は把握済み。正攻法でも53%の勝率があるし、不意をつけば84%の確率で勝てる。実際勝った」

「やっぱりこいつムカつくわ!今すぐ再戦しろ!」

「ストップストーップ!また喧嘩始めないでよぉ!」

 

 カナデが慌てて間に割って入る。ニアは未だにセラに負けたのが納得できない様子だ。

 ちなみに俺としてはニアの実力でセラと五分というのはやはり信じられないというのが本音である。ニアの名誉の為に本人には言わないが……。

 

「カナデの兄の実力は高い方。おそらく、眷属の中で勝てる者はいない」

「な、なんだよ。急に褒めて……気持ち悪りぃ」

「ん。ただ、私にとっては脅威じゃないというだけ」

「てんめぇ……やっぱ今ここで決着つけるか!?」

「あーもう!だから落ち着いてってば!」

 

 騒ぐニアとカナデを横目に、俺は少し前を歩くセラに尋ねる。

 

「俺と戦った時に見せたスピードと技、あれは吸血鬼特有の能力ってやつなのか?」

「そう。血を色濃く受け継ぐ吸血鬼は身体能力と魔力伝導率が極めて高い。特に私は純血だから尚更」

「すごい!それ、もしかしてわたしも使えるようになったりするのかな?」

 

 意外にもカナデが興味を示す。

 俺自身、吸血鬼の血を体内に取り込むとなるとやはり気になる。

 

「カナデはハーフ。だけど充分な魔力保持者なら能力開花の可能性は十分」

「やった!じゃあわたしもセラみたいに速く動けるようになるんだね!」

「……厳密には少し違う。魔力増幅と身体能力強化の割合は個人差がある」

 

 セラの説明を聞きながら俺は自分の右手を見る。

 吸血鬼の血を取り込めば戦闘能力が飛躍的に向上するかもしれない。

 それは、俺の望む強さへ近づく為の重要な鍵となる。

 

「カナデはともかくお前まで吸血鬼の能力に興味津々じゃねーか」

「当然だろ。強くなりたいんだから」

「これ以上鍛えてどうすんだよ。アドルフ様までやっつけちまうような奴が何に怯えてんだ?」

「色々あるんだよ」

 

 ニアの問いには曖昧に答える。

 俺自身、前世で培ってきた弱さとトラウマがまだ心のどこかにこびりついているのだと思う。それを埋める為には力が必要だ。

 

 例え、それが非合法なものであろうとも……。

 

「ったく。話を戻すが、戦闘の危険はないって言っても30%もあるんだろ?具体的に何に注意すりゃいい?」

「通常であれば眷属たちも客人として迎え入れてくれるはず。ただ……」

「ただ?」

「一部の過激派は外部者を快く思っていない。もし襲撃を受けた場合、彼なら問題なく対処できる。ただ……」

 

 セラの言葉にカナデが不安そうに尋ねる。

 

「そんな危ないの?わたし達、大丈夫?」

「カナデは心配しないで。私が守る」

「おーい?オレも居るんですけど?あとミナトも」

「彼は自衛可能。カナデの兄は……守るべきか迷う」

「迷うなよ!守れ!」

 

 またもニアが抗議する。カナデは苦笑いしながら宥めている。

 

「……わかった。カナデの兄も可能な限り守る」

「可能な限りって何だよ!?そこは確約しろ!」

「保証は難しい。他人任せにしないで自分の身くらいは自分で守って」

「お前が無理矢理連れてきたんだろうが!」

「強制はしてない」

 

 すっかり犬猿の仲となった二人を横目にカナデが俺に擦り寄ってくる。

 ニアは気づいてないようでセラと口論を続けているが……。

 

「うーん。喧嘩するほど仲が良い……ってことにしとく?あの二人」

「いや無理があるだろ……その内本気で殺し合い始めるぞ」

「あはは……ミナト、その時はお願いね?」

 

 カナデが呆れ半分といった表情で言う。

 言われなくてもそうするつもりだが……などと頭を掻きながら呟くと、カナデが唐突に手を握ってきた。 

 

「ミナト、本当にありがと。一緒に来てくれて」

「……改まってどうした?感謝されたくて同行したわけじゃないぞ」

「んー?照れてるー?目、逸らしてるけど」

 

 こいつ、完全に俺を弄ぶ気でいるな。全く油断も隙もない。

 

「ごめん、でも本当だよ?ミナトが一緒で良かった。心強いし、何より楽しい」

「そうか?それなら、いいんだが……」

 

 まさかこんなストレートに褒められるとは思わず面食らう。

 カナデの表情にはいつものような無邪気な様子ではなく、どこか落ち着いた雰囲気で微笑んでいた。

 

「カナデこそ、昨日今日でよく決断出来たよな。それとも吸血鬼云々ってのは前から気づいてたのか?」

「気付いてたっていうか……ミナトが魔力学園に入学する前くらいかな。セラと初めて出会ったの」

「え?そんなに前から知り合いだったのか?」

「うん。"いつか迎えに来るから"って。最初は冗談だと思ってたけど……お母さんの話を聞いて……」

 

 カナデが遠い目をしながら語る。

 俺が知らなかっただけでカナデとセラは既に面識があったらしい、通りで。

 

「最初は戸惑ったよ?でもあの日、ミリウスさんに負けてからずっとわたし考えてたんだ。このままじゃミナトにとってお荷物でしかないって」

「だから、吸血鬼の力を手に入れて強くなろうと?」

「それもあるけど……置いていかれたくないもん。言ったでしょ?いつかミナトの隣に立てる様になりたいって。助けて貰ってから、ずっと目標だったんだから」

 

 カナデの目は真っ直ぐだった。

 こんな無謀とも言える決断をした背景に俺の存在があったことに少しだけ胸が熱くなる。

 だが、それ以上に……。

 

「なぁ、カナデ」

「うん?」

「最初からそう言えよ。子作りだの遺伝子だの言うから本気で淫乱になったのかと思っただろ」

「ちょ、この流れで淫乱言うかな!?それにあれはセラの提案で……」

 

 カナデが慌てて否定する。

 まあ、今回は俺も大人げなかったと反省すべきかと思った矢先──。

 

「淫乱は事実。カナデはハーフなのに吸血鬼の血を濃く受け継いでいる。覚醒すれば彼にも迫るかも知れない」

 

 容赦なくも興味深い情報を提供するセラ。

 しかし、当然周りの反応は……。

 

「え──えぇっ!?オレ、そんなヤツと血が繋がってんのかよ!?悪夢か!?」

「酷っ!ひっど!わたし、淫乱じゃないから!」

「淫乱。むしろそうじゃないと困る。吸血鬼は基本性的な欲求が強い方が増殖に有利」

「やっぱり子作り前提なんじゃねぇか!?」

「ちーがーいーまーすー!!」

 

 今度はカナデも交えての三つ巴の口論に発展。

 ニアが遂に耐えかねてセラに斬りかかり、それをセラが躱し、さらにカナデが加勢するというカオスな状況の中、俺達の旅は続くのだった。

一番魅力的だと思うキャラは?

  • ミナト
  • カナデ
  • フレイア
  • アリス
  • ニア
  • ミリウス
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