前世でヤンデレ妹に人生をめちゃくちゃにされた俺。トラウマを糧に最強になったがあいつはまだ諦めない 作:エアハンター
翌朝。昨晩の襲撃騒ぎも落ち着き、俺達は再び吸血鬼の里を目指していた。
途中に何度か小休止を挟みながらも順調に進み、ついに目的の地に辿り着いたのは夕刻前の事だった。
「ここが……吸血鬼の里か?」
周囲は一見してただの荒地にしか見えない。岩と砂だけの不毛な地形が延々と続く。
だが、セラは迷うことなく進み続ける。
「あそこが入口」
「入口って……何もないよ?」
「正確な場所は地下。地上部分に偽装された入口がある」
セラは崖に近づき、手をかざす。すると、岩壁がゆっくりと開き始めた。
おそらくは彼女の魔力に反応して開く仕組みなのだろう。
「ま、マジかよ。こんな所に里が?」
「全長約20km。地下としては最大級」
「20km!?」
カナデが驚きの声を上げる。セラは淡々と続ける。
「吸血鬼は基本的に地上に住まない。陽光に弱い個体も多いから。それ以上に、過去の人間との戦いの名残で地下生活を選択した」
爺さんから聞いた話が真実なら、吸血鬼はかつて人類を脅かす存在だったはずだ。
そんな生物が現代に生き延びるには巧妙に隠れるしかない。
「入って。案内する」
セラが促し、俺達は暗い穴へと足を踏み入れる。
内部は意外にも整備されており、所々に松明が灯されている。トンネルを抜けた先には穏やかな世界が広がっていた。
「すげぇ……まるで田舎村みたいだ」
ニアが率直な感想を漏らす。
魔力による明かりに照らされた星空の下にある街並み。
そこには木造の家々が立ち並び、人々が行き交っていた。
ただ、普通の人間とは異なり、皆一様に白い髪と赤い瞳を持つ。間違いなく吸血鬼……いや、眷属と呼ばれる者達だろう。
「セラ様!お帰りなさいませ!」
「セラ様のお戻りだ!」
途端に周囲の人々が道を開ける。
セラが現れると彼らは深々と頭を下げ、畏敬の念を示していた。
「セラ様って……」
「すごい!セラ、偉いんだね!」
ニアは呆然とし、カナデは素直に感心している。
当のセラはいつもの無表情を保ちながらも、どこか嬉しそうに見える。
「長老は?」
「はっ、奥殿にてお待ちです。すぐにお呼びに」
「ん。こちらから出向く。急ぎ用件がある」
「承知致しました」
眷属たちは恭しく退いていく。セラの態度もいつも通りながらどこか威厳を帯びている。
「お前、そんな立派な立場だったのか?」
「私は唯一現代を生きる純血の吸血鬼。だから里を統括する責務がある」
「へぇ……って、ちょっと待て!確か純血ってのは500年前の生き残りなんだろ?じゃあお前──」
「ニ〜ア〜?女の子に年齢を聞くのはダメだからね〜」
カナデが鋭い視線を向ける。
まあ薄々そんな気はしていたが……セラの見た目はどう見ても十代前半の少女にしか見えない。これが吸血鬼の生命力というものか。
「ついて来て」
セラに案内されるままに里の中央部へと向かう。途中、すれ違う眷属たちが俺達に好奇の目を向けてくる。
特にカナデに視線が集中しており……。
「あの人間は?」
「まさか、あれが繁栄の巫女様……?」
「伝説は本当だったのか……!」
ざわめきが広がっていく。
何の事か分からぬまま、俺達は里の最奥にある豪華な建物へと到着した。
「セラ様……よくお戻りなされました」
そこに居たのは老齢の男だった。
他の眷属と同じ容姿でありながら只ならぬ風格を纏っている。
「里の様子は平穏無事でございます。但し、北方からの襲撃が続き……」
「報告は後ほど聞く。優先事項がある」
セラが遮り、俺達の方へ向き直る。
「これが繁栄の巫女候補。そして協力者」
老人の目がカナデを捉える。瞬間──その瞳が潤んだように見えた。
「な、なんと……」
「え?」
「なんと!あなたが“繁栄の巫女”様ですか!?」
長老の言葉にカナデが目を丸くする。一方で周囲の眷属たちが一斉に頭を下げ始めた。明らかに様子がおかしい。
「え?わたし、巫女?どういう事?」
「セラ様、予言が成就したのですね!」
長老は涙さえ浮かべて喜んでいる。
カナデのみならず、俺もニアも事情が飲み込めず戸惑っているとセラが口を開く。
「吸血鬼の血を濃く受け継ぎし者。数百年に一度現れる繁栄の兆し。故にカナデは我々にとって救世主」
「……マジで?」
ニアが呆然とするのも無理はない。
俺自身、セラに半信半疑だった部分もあるが……ここまで盛大に歓迎されるとは。
「うーん……?──うん、とにかくすごいんだ、わたし!」
相変わらずのポジティブ思考である。
いや、単に理解が追い付いていないだけだなこれ……。
「セラ様の命を受け繁栄の巫女様をお迎えできるとは光栄です」
「あ、はい。ただ、わたし、普通の女の子ですよ?」
「滅相もございません!あなた様こそ我が一族復活の希望!」
完全に信仰対象になってしまった。
もはや巫女というよりは神の化身扱いだ。
「……なあミナト、ここ笑うとこか?」
「多分違う」
「だよなぁ……」
ニアが耳元で囁く。
今まで平民だと思っていた幼馴染が吸血鬼とハーフなどという情報だけでも頭がパンクしそうなのに、これ以上余計な設定は積み上げないで欲しい。
「して、セラ様。後ろのお二方は……」
長老の鋭い眼光が俺とニアに注がれる。
温度が変わったような気がする。
「一人はカナデの兄。吸血鬼の血は流れてないけど、そこそこ役に立つ」
「てめっ、紹介が適当過ぎねーか!?」
「実情を説明しただけ」
「実情って何だよ!」
ニアが即座に噛みつくが長老は無関心のようだ。問題は俺に対する反応だった。
周囲の眷属達も明らかに警戒の色を示す。
「そちらの少年は……」
「ミナト・クロフォード。ただ、彼は……」
「っ……やはり!皆の者、奴を捕らえよ!」
長老の命令一下、周囲の眷属たちが臨戦態勢に入った。
武器を手にする者や魔力を練る者までいる。
「やはりクロフォード王国の人間か!?」
「セラ様が連れてきたというから信用したが……!」
眷属達の敵意が露わになる。
爺さんからは話を聞いた時からおおよそ予想はしていたが、彼らのクロフォード王国への憎悪は相当根深いらしい。
まあ、気持ちは分からないでもないが……。
「一族の仇!」
眷属の一人が飛び出してくる。
魔力を帯びた刃が閃くが、それらは俺の魔力障壁に弾かれた。
「な……っ!」
「おい、今のは俺への宣戦布告って解釈でいいんだよな?」
俺は体内から魔力を放出する。周囲の眷属達が恐怖に顔を歪めた。
争う気はないが、舐められるのも面白くない。これくらいは正当防衛の範疇だろう。
「おのれ……クロフォードめ!」
「怯むな!ご先祖様の無念を晴らすのだ!」
意外にも彼らは簡単に引かない。純血なセラとは違い、眷属故だろうか?魔力量が容易にわかる。
しかし、どいつもこいつもがカナデやニアに大きく劣る。いくら数が多くとも問題ではない。
「ま、待って!」
「おい、落ち着けよ!」
カナデとニアが声を上げるが、再び眷属達が一斉に襲いかかってきた。
これはもう仕方ない。俺は指先に魔力を集中させ──。
「──控えよ」
「……!」
セラの低く威厳のある声が響く。
彼女の体内から紅黒い魔力が溢れ出し、眷属達を威圧する。
「彼は私の招いた客。無礼は許さない」
「し、しかしセラ様!」
セラの紅い瞳が妖しく輝く。
その視線には殺意にも似た冷酷さが宿っていた。
「せ、セラ様!この男は吸血鬼の御先祖様を……!」
「クロフォードの血を引く者。が、直接手を下したのは彼ではない」
「しかし、吸血鬼の仇敵を招き入れるなど……」
「過去は水に流す。私がそう決めた」
「ですが!」
尚も食い下がる長老に対し、セラは冷たく言い放つ。
「我々が生き残るために必要な事。ここで彼を敵に回せば里自体が滅ぶ。そう言ったのは長老」
「……っ!」
その言葉に周囲の空気が凍りつく。完全に化け物扱いされているな。まあ慣れたものだが……。
「……申し訳ありません。里を守るためにも必要な措置でした」
「理解はする。ただし、二度はない」
長老は深々と頭を下げる。セラは相変わらず無表情だが、この里での権威の高さが伺えた。
「ミナト……殿。非礼を詫びます。どうかこの場は……」
「いや、まあそっちの事情も分かるしな」
「……ご寛恕に感謝致します」
とりあえず場は収まったようだ。
カナデは安堵した表情を見せ、ニアは呆れ半分といった感じで肩を竦めている。
「長老、明日は儀式を行う。全ての準備を整えておいて」
「はっ!お任せ下さい」
「他の者は部屋の用意。客人を丁重に案内するように」
「承知致しました!」
ひとまずは一件落着といったところか。
俺達はそのまま里内の宿泊施設へと案内されることになった。
一番魅力的だと思うキャラは?
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ミナト
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カナデ
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フレイア
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アリス
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ニア
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ミリウス