前世でヤンデレ妹に人生をめちゃくちゃにされた俺。トラウマを糧に最強になったがあいつはまだ諦めない   作:エアハンター

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第43話 吸血鬼の里に到着

 

 翌朝。昨晩の襲撃騒ぎも落ち着き、俺達は再び吸血鬼の里を目指していた。

 途中に何度か小休止を挟みながらも順調に進み、ついに目的の地に辿り着いたのは夕刻前の事だった。

 

「ここが……吸血鬼の里か?」

 

 周囲は一見してただの荒地にしか見えない。岩と砂だけの不毛な地形が延々と続く。

 だが、セラは迷うことなく進み続ける。

 

「あそこが入口」

「入口って……何もないよ?」

「正確な場所は地下。地上部分に偽装された入口がある」

 

 セラは崖に近づき、手をかざす。すると、岩壁がゆっくりと開き始めた。

 おそらくは彼女の魔力に反応して開く仕組みなのだろう。

 

「ま、マジかよ。こんな所に里が?」

「全長約20km。地下としては最大級」

「20km!?」

 

 カナデが驚きの声を上げる。セラは淡々と続ける。

 

「吸血鬼は基本的に地上に住まない。陽光に弱い個体も多いから。それ以上に、過去の人間との戦いの名残で地下生活を選択した」

 

 爺さんから聞いた話が真実なら、吸血鬼はかつて人類を脅かす存在だったはずだ。

 そんな生物が現代に生き延びるには巧妙に隠れるしかない。

 

「入って。案内する」

 

 セラが促し、俺達は暗い穴へと足を踏み入れる。

 内部は意外にも整備されており、所々に松明が灯されている。トンネルを抜けた先には穏やかな世界が広がっていた。

 

「すげぇ……まるで田舎村みたいだ」

 

 ニアが率直な感想を漏らす。

 魔力による明かりに照らされた星空の下にある街並み。

 そこには木造の家々が立ち並び、人々が行き交っていた。 

 

 ただ、普通の人間とは異なり、皆一様に白い髪と赤い瞳を持つ。間違いなく吸血鬼……いや、眷属と呼ばれる者達だろう。

 

「セラ様!お帰りなさいませ!」

「セラ様のお戻りだ!」

 

 途端に周囲の人々が道を開ける。

 セラが現れると彼らは深々と頭を下げ、畏敬の念を示していた。

 

「セラ様って……」

「すごい!セラ、偉いんだね!」

 

 ニアは呆然とし、カナデは素直に感心している。

 当のセラはいつもの無表情を保ちながらも、どこか嬉しそうに見える。

 

「長老は?」

「はっ、奥殿にてお待ちです。すぐにお呼びに」

「ん。こちらから出向く。急ぎ用件がある」

「承知致しました」

 

 眷属たちは恭しく退いていく。セラの態度もいつも通りながらどこか威厳を帯びている。

 

「お前、そんな立派な立場だったのか?」

「私は唯一現代を生きる純血の吸血鬼。だから里を統括する責務がある」

「へぇ……って、ちょっと待て!確か純血ってのは500年前の生き残りなんだろ?じゃあお前──」

「ニ〜ア〜?女の子に年齢を聞くのはダメだからね〜」

 

 カナデが鋭い視線を向ける。

 まあ薄々そんな気はしていたが……セラの見た目はどう見ても十代前半の少女にしか見えない。これが吸血鬼の生命力というものか。

 

「ついて来て」

 

 セラに案内されるままに里の中央部へと向かう。途中、すれ違う眷属たちが俺達に好奇の目を向けてくる。

 特にカナデに視線が集中しており……。

 

「あの人間は?」

「まさか、あれが繁栄の巫女様……?」

「伝説は本当だったのか……!」

 

 ざわめきが広がっていく。

 何の事か分からぬまま、俺達は里の最奥にある豪華な建物へと到着した。

 

「セラ様……よくお戻りなされました」

 

 そこに居たのは老齢の男だった。

 他の眷属と同じ容姿でありながら只ならぬ風格を纏っている。 

 

「里の様子は平穏無事でございます。但し、北方からの襲撃が続き……」

「報告は後ほど聞く。優先事項がある」

 

 セラが遮り、俺達の方へ向き直る。

 

「これが繁栄の巫女候補。そして協力者」

 

 老人の目がカナデを捉える。瞬間──その瞳が潤んだように見えた。

 

「な、なんと……」

「え?」

「なんと!あなたが“繁栄の巫女”様ですか!?」

 

 長老の言葉にカナデが目を丸くする。一方で周囲の眷属たちが一斉に頭を下げ始めた。明らかに様子がおかしい。

 

「え?わたし、巫女?どういう事?」

「セラ様、予言が成就したのですね!」

 

 長老は涙さえ浮かべて喜んでいる。

 カナデのみならず、俺もニアも事情が飲み込めず戸惑っているとセラが口を開く。

 

「吸血鬼の血を濃く受け継ぎし者。数百年に一度現れる繁栄の兆し。故にカナデは我々にとって救世主」

「……マジで?」

 

 ニアが呆然とするのも無理はない。

 俺自身、セラに半信半疑だった部分もあるが……ここまで盛大に歓迎されるとは。 

 

「うーん……?──うん、とにかくすごいんだ、わたし!」

 

 相変わらずのポジティブ思考である。

 いや、単に理解が追い付いていないだけだなこれ……。

 

「セラ様の命を受け繁栄の巫女様をお迎えできるとは光栄です」

「あ、はい。ただ、わたし、普通の女の子ですよ?」

「滅相もございません!あなた様こそ我が一族復活の希望!」

 

 完全に信仰対象になってしまった。

 もはや巫女というよりは神の化身扱いだ。

 

「……なあミナト、ここ笑うとこか?」

「多分違う」

「だよなぁ……」

 

 ニアが耳元で囁く。

 今まで平民だと思っていた幼馴染が吸血鬼とハーフなどという情報だけでも頭がパンクしそうなのに、これ以上余計な設定は積み上げないで欲しい。

 

「して、セラ様。後ろのお二方は……」

 

 長老の鋭い眼光が俺とニアに注がれる。

 温度が変わったような気がする。

 

「一人はカナデの兄。吸血鬼の血は流れてないけど、そこそこ役に立つ」

「てめっ、紹介が適当過ぎねーか!?」

「実情を説明しただけ」

「実情って何だよ!」

 

 ニアが即座に噛みつくが長老は無関心のようだ。問題は俺に対する反応だった。

 周囲の眷属達も明らかに警戒の色を示す。

 

「そちらの少年は……」

「ミナト・クロフォード。ただ、彼は……」

「っ……やはり!皆の者、奴を捕らえよ!」

 

 長老の命令一下、周囲の眷属たちが臨戦態勢に入った。

 武器を手にする者や魔力を練る者までいる。

 

「やはりクロフォード王国の人間か!?」

「セラ様が連れてきたというから信用したが……!」

 

 眷属達の敵意が露わになる。

 爺さんからは話を聞いた時からおおよそ予想はしていたが、彼らのクロフォード王国への憎悪は相当根深いらしい。

 

 まあ、気持ちは分からないでもないが……。

 

「一族の仇!」

 

 眷属の一人が飛び出してくる。

 魔力を帯びた刃が閃くが、それらは俺の魔力障壁に弾かれた。

 

「な……っ!」

「おい、今のは俺への宣戦布告って解釈でいいんだよな?」

 

 俺は体内から魔力を放出する。周囲の眷属達が恐怖に顔を歪めた。

 争う気はないが、舐められるのも面白くない。これくらいは正当防衛の範疇だろう。

 

「おのれ……クロフォードめ!」

「怯むな!ご先祖様の無念を晴らすのだ!」

 

 意外にも彼らは簡単に引かない。純血なセラとは違い、眷属故だろうか?魔力量が容易にわかる。

 しかし、どいつもこいつもがカナデやニアに大きく劣る。いくら数が多くとも問題ではない。

 

「ま、待って!」

「おい、落ち着けよ!」

 

 カナデとニアが声を上げるが、再び眷属達が一斉に襲いかかってきた。

 これはもう仕方ない。俺は指先に魔力を集中させ──。

 

「──控えよ」

「……!」

 

 セラの低く威厳のある声が響く。

 彼女の体内から紅黒い魔力が溢れ出し、眷属達を威圧する。

 

「彼は私の招いた客。無礼は許さない」

「し、しかしセラ様!」

 

 セラの紅い瞳が妖しく輝く。

 その視線には殺意にも似た冷酷さが宿っていた。

 

「せ、セラ様!この男は吸血鬼の御先祖様を……!」

「クロフォードの血を引く者。が、直接手を下したのは彼ではない」

「しかし、吸血鬼の仇敵を招き入れるなど……」

「過去は水に流す。私がそう決めた」

「ですが!」

 

 尚も食い下がる長老に対し、セラは冷たく言い放つ。

 

「我々が生き残るために必要な事。ここで彼を敵に回せば里自体が滅ぶ。そう言ったのは長老」

「……っ!」

 

 その言葉に周囲の空気が凍りつく。完全に化け物扱いされているな。まあ慣れたものだが……。

 

「……申し訳ありません。里を守るためにも必要な措置でした」

「理解はする。ただし、二度はない」

 

 長老は深々と頭を下げる。セラは相変わらず無表情だが、この里での権威の高さが伺えた。

 

「ミナト……殿。非礼を詫びます。どうかこの場は……」

「いや、まあそっちの事情も分かるしな」

「……ご寛恕に感謝致します」

 

 とりあえず場は収まったようだ。

 カナデは安堵した表情を見せ、ニアは呆れ半分といった感じで肩を竦めている。

 

「長老、明日は儀式を行う。全ての準備を整えておいて」

「はっ!お任せ下さい」

「他の者は部屋の用意。客人を丁重に案内するように」

「承知致しました!」

 

 ひとまずは一件落着といったところか。

 俺達はそのまま里内の宿泊施設へと案内されることになった。

 

一番魅力的だと思うキャラは?

  • ミナト
  • カナデ
  • フレイア
  • アリス
  • ニア
  • ミリウス
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