リィンカーネーションの花弁〜夢に囚われた狩人〜 作:アキヤマ ハルト
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項羽の作戦によって、レーダー係となっていたライト兄弟がハスコックの手によって地に堕ちた。ここからは罪人格対偉人格ではなく、偉人格対偉人格の戦い………そんな中、灰夜はヒトラーとポル=ポトの2人と合流し、ファーブルの排除の後に次の標的の元へ向かい始めた。
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「で、誰の元へ向かってるんだ?」
ポル=ポトに椅子ごと担がれながら歩いているヒトラーにそう聞く。何も聞かずに歩いてたけど、だれかわかんないと本気で行くか全力で行くか変わるしな。
「おや、今はそっちの口調なのか。急に変わられると違和感が激しいな……ひとまず、今は面倒なニュートンとアインシュタインの元へ向かっているよ」
「口調の変化はほっとけ……って、ニュートンとアインシュタインの方へ向かってるのか。それにしては、なんというか……向かってる先の気配が多くないか?」
んー、3人程度の気配が1人ずつ歩いてきてる?で、少し遠めのところに2人一緒に歩いてきてる気配があるな……
「あぁ、それは……止まれ、ポル=ポト」
「………」
「そうだ、降ろしてくれて構わない…狩人にも助力をお願いするよ?」
「ん〜……ちょっとそこは分からないな、今回はこれを使うから」
俺の周りを漂う霧に手を突っ込み、中から骨で出来た武器、獣の爪を取り出す。
「爪…?珍しい武器を使うね」
「まぁ、たしかにあまり使わない。で…理性的に立ち回れないから、2人は2人で戦ってくれ。じゃあ行ってくる……ッ!!」
「は?って、狩人!?」
ヒトラーの言葉を待たずして走る。この武器、なんでか性能が高くなってカレル文字を獣の抱擁を付けなくても動きが最適化されるようになった代わりに、手に持った途端に獣性が最大の状態から下がらなくなったんだよな。そのせいで半分獣みたいなものになるからあまり使わない……んだが、使わないとペナルティがあるから仕方がないよな!*1
身勝手に走っていった狩人の背中を見ながら、ボクは無意識に手をグッと握りしめながら怒りに震えていた。項羽も、狩人も、説明が足りないのはなんなんだ……!!
「……は、ははは…あのバカは、説明をせずに向かうなんて、連携というものを知らないのか……?」
「………」
ボクのことを心配した上で感情のまま動くのはよくないと抑えようとしてくれているポル=ポトをみて少しだけ怒りが収まった。はぁ……なんであんな男に好意的な感情を持ってしまったのか、本当にボクのことながら分からない………助けられたからってチョロすぎる気がするな………
「はぁ〜………ありがとうポル=ポト…ボクだって分かっているよ……怒りのまま動いてはダメだとはね。けれど……少し、八つ当たりするぐらいはいいだろう。ポル=ポト、これから来る偉人格は容赦なく潰そうじゃないか!!」
「………」
ポル=ポトがボクを心配しながらも、ボクの言葉に了承してくれているのを感じながらボクの視界には1匹の虫から見える狩人の動向が見えていた。どうやら興奮状態にあるみたいだ………あの武器のせいかな?
「まぁ、だとて仕方ない、なんて言う気はないけどね………!!」
「………」
この後来るであろう偉人格に少し憐憫の感情を持っているポル=ポトに気付きながらも、近付いてきている偉人格を迎え撃つために構える。まぁボクは戦わないが……戻ってきた狩人に対して、どう対応するか考えておくとしようかな………
気配がする方向へ全力で走り続ける。爪のせいで興奮度合いが上がっていってるのをしっかり感じながら、目の前に猫の頭をした偉人格を見つけた瞬間に久方ぶりの美味しそうな匂いに耐えきれず、飛びかかってしまった。
「あっははは!見つけたぞ、偉人格ゥ!!」
「ふむ、先程我輩らのところに来た男か。随分と粗暴な男のようではないか、この程度であれば容易く…なっ!?うぐっ!!」
猫の偉人格はこちらに銃を構えたがなにかに驚き、俺にそのまま組み伏せられた。すぅ〜、はぁ〜………興奮しすぎて逆に落ち着いてきたな。確か、こいつはシュレーディンガーだったか?項羽から教えられた記憶がある…
「ど、どの確率も…現れない、だと!?」
「あぁ、そういやアンタの才能は可能性を選べるんだったっけ!だったら諦めな、俺からは勝利も逃亡も……許さねぇからさぁ!!」
ジャキッ!ジャキッ!ジャキッ!!
シュレーディンガーの上に乗っかることで動けないようにしながら、右手にだけ付いていた爪を力任せに2つに分離して左手に装着する。そして……体力が保つ限界まで引っ掻き回す。シュレーディンガーは呻き続けるが、少しずつ声が掠れていき…花弁が散った末に、気付けば小さめの銃だけが残った。
「はぁ…はぁ……やっぱり、この武器は、好きじゃあないな………」
服にくっついた血を払いながら、獣の爪を霧の中に戻して折りたたまれた状態の葬送の刃を取り出す。*2
「さて……体力もとりあえずは戻ったことだし、ヒトラーたちの所へ戻るか。高まった獣性のせいで詳しい説明をしてる暇がなかったからな…お叱りは甘んじて受けようか」
森の中を歩きながら、ヒトラーたちの近くにいるであろう3個の気配のうちの1つが消えたことに気付く。ふむ……一体誰が腐ってしまったのだろうか?本人に聞くとしようか。
「やぁ、ヒトラー。偉人格シュレーディンガーは終わらせてきた」
「あぁ、ボクらに説明をせずに走っていった男じゃないか。なにか弁明はあるかい?」
「こればっかりはすまない…一応理由はありはした。あの武器を使ってる時は敵味方を問わず襲ってしまうから、ヒトラーたちから離れようと思ってね」
「……ふむ。嘘かどうかは判別がつかないが、狩人がそんな嘘をつくようには思えないし、おそらくその通りなんだろう。なら許そうじゃないか、ボクとポル=ポトに感謝することだね」
「ありがとう…それで、ヒトラーの方は誰が来た?」
「僕らの方はダーウィンとフィッシャーだったよ、あっけない終わりだったさ、才能に溺れていたからね」
「ほう……じゃあこれで終わりか「やぁ罪人たちと狩人くん。予約が無ければ、次は僕とどう?」…ニュートンじゃないか、いたのか……」
木の裏から現れたニュートンを見て驚くフリはする……ずっと分かってたけど、まぁ乗ってあげようってことで。アインのこともね。
「……ポル=ポト」
「………!」
ヒトラーの言葉に頷き、笑みを浮かべながらポル=ポトがニュートンに詰め寄る。ニュートンはすぐさま横方向に走っていき、数ある木の裏に隠れ、木が腐って崩れると同時に別の木に移ることでポル=ポトからの攻撃をどうにか避けている。んー…やっぱり優秀だよね、ニュートンは……どうにかして、彼女の才能の効果を消せないものかなぁ。
「…狩人、少し頼みたいことがある」
「ん?」
「ヤツの洗脳は呪いに含まれる可能性がある。その場合、狩人が持つ中で癒せるかもしれない物はあるか?」
「…おそらく、前に使った聖歌の鐘だったら可能だ。試してみるか?」
「あぁ、試してみてくれ。もしかすれば、こちらの戦力を底上げすることが可能かもしれない」
「構わない。だが、戦力の底上げのためだけに敵を生かすとは…なにか思うところでもあったのか?」
「ふん。才能に頼るだけでなく、自ら思考した上で行動する廻り者を容易く殺すのは非効率だと考えただけだ……」
「狩人の気持ちを汲み取った上で願いを叶えたい、などと言えるわけないだろうに……///」
「…?でも、それをするためにはまず彼女を説得しないとかな」
軍帽を深く被り直している彼女に少し疑問を抱きはするが、すぐに思考を戻し…木の裏で潜んでいる彼女の方を見ながら、そう口にする……なかなか難しい気はするけど、たぶんニュートンをどう扱うかが重要だな………
「やーばい、また来る!!」
うーん、的確に僕の位置を見抜いてくるなぁ…ヒトラーの才能?いやでも、狩人くんの才能かも……?いやぁ、狩人くんの才能が万能すぎてどっちかもわかんないな!
「…ポル=ポト、一旦止まるんだ」
「………」
…?攻撃の手を止めた?一体なんで……って、狩人くんが前に出てきた。狩人くんはいつも持っている刀ではなく、人と話すときに持っていることが多い杖を持っているみたいだ。
「ニュートン、ひとまず隠れるのをやめて出てきてくれないだろうか?少し交渉したいことがある」
「………」
「…出てこないなら無理やり確保することになるが、いいのか?」
狩人くんの声色が低くなり、どこか鋭く冷たい雰囲気を纏った。正直、ポル=ポトを相手するより、狩人くんを相手にする方が手札が分からない以上キツイよねぇ……でも、逆に言えば対話をする意思があれば即座に襲ってくることはないだろうし……
「………さすがに狩人くんとやるのは無理かなぁ……それで、交渉ってなにかな?」
「あぁ、その前に…アインも出てきてくれ。武力行使はしないと誓おう」
狩人くんのその言葉に、僕が聞く限り嘘がないのを感じ取れた。間違っていたらその時は僕の見る目がなかったってことだし…アインが隠れている木に目線を向けて、こっちに来るよう手招きする。するとアインも警戒しながらこっちに来て、僕の背後に隠れると、狩人くんがいつもの狩装束の懐から電源の切れた携帯を取り出して、地面に置いた。これは―――僕らに、携帯の電源を切って置け、ってことかな。
「…分かった。アインも、頼んでいいかな?」
「………分かったわ」
僕らがゆっくりと置くと、狩人くんが僕らの携帯を取り…霧の中にポイっと放り込んだ。あ、それって新しく物入れられるんだ!?
「……よし!これでとりあえずは問題ないはず。それじゃあ、交渉といこう」
「……まず、説明してくれない?急に襲われなくなったのも、正直僕らは分かってないからさ」
「分かった。じゃあ、まず……聖歌の鐘よ、同志を呪いから逃がしたまえ」
狩人くんは霧から取り出した銀色の鐘をこちらに、特に僕目掛けて鐘を振る。三回鐘が揺れて甲高い音が鳴ると、アインはなにも感じず…僕はどこか意識の底にあった重圧のようなものがなくなった。呪い……?
「なんか楽になった……でも、呪われた覚えは僕にはないよ?」
「呪いじゃない、洗脳だ………クリミアの天使による、ね」
…狩人くんの言った言葉に、僕とアインは同時に「はい!?」「なんて!?」と驚いてしまった。ただ、正直ありえないとは思わなかった。才能を複数個持つ廻り者がいる事実はあるし、それこそ偉人の杜のメンバーにもいるから。ただ、その才能が他者を操るっていうのは……
「ちょっとアンタ、今何言ってるかわかってる!?ナイチンゲールがそんなこと……!」
「クリミアの天使と呼ばれたナイチンゲールには、様々な逸話がある。クリミア戦争での看護婦としての話が主だが、それに関係する1つの話……手に持ったランプによって生まれるクリミアの天使の影に、患者たちはキスをする。俺はこの話から、ナイチンゲールには複数個の才能があると仮定した」
「………確かに、無くはない話だ」
「ちょっとニュートン!こんな話信じちゃ…」
「安心してアイン。僕もそう簡単に信じるつもりはないよ…狩人くん、そう言うってことはなんらかの確証があって言ってるんだよね?」
「あぁ。そうだな、じゃあここで予想をしてみよう。ナイチンゲールの才能で判明しているのは、【癒の天使】という触れた対象を死んでいなければ回復させる才能だ。であれば、あってもおかしくは無いと思うんだが、どう思う、ニュートン」
「……確実な情報がないから分からないね。でも、複数個才能があるのはノイマンも同じだ、そう考えるとおかしい話では無い………でも、携帯の電源を切ったのは?」
ナイチンゲールだけを警戒するなら携帯を気にしなくていいはずだ。でも消したってことは、おそらく狩人くんは警戒しているんだろう……
「そう、これは一応の保険だったんだが……アインかニュートン。特にアインに聞きたい。ノイマンがナイチンゲールに傷を治されたことはあるか?」
「………………ある。ナイチンゲールが加入した時に、才能を見るためノイマンが自分の指を切って傷を治してもらったことがあるわ。随分前だけれど……」
「となれば、ノイマンももう遅いか…はぁ。普通に想いを伝えたかったんだけどな………」
ため息交じりに放った言葉に、後ろにいるヒトラーの圧が重くなったのが分かる。さすがのアインでも気付いているしポル=ポトもそわそわしている…狩人くん、もともと高校生だったはずだよね……同級生との関わりなかったのかな………??
「………」イラッ
「…でも、ノイマンも治せるんじゃない?狩人くんならさ。さっきの鐘とかで」
「それは……「ここの説明はボクに任せてもらおう」お、おう…急に押し切ってくるな、ヒトラー?」
狩人くんはヒトラーに押し切られて後ろに下がった。ヒトラーはものすごく不機嫌ですって感じの雰囲気を出しながら話し始めた。狩人くんには後で女心を教えてあげよう…
「さて、君らに問いたいんだが……偉人の杜では、治療を全てナイチンゲールに任せていたんじゃないか?」
「うん、任せてたねぇ…特に船坂くんなんて一番治療されてたよ。実際僕も何回かは受けてるから、狩人くんの鐘で回復したようだからね」
「私は戦うことが少ないから、受けたことはないけれど」
「なら偉人の杜メンバーは大抵やられてると考えても間違いない……それと、さっきニュートンが言ったことだが。鐘を鳴らせば回復するのは間違いないが、あまり得策とはいえない」
「…それはなんで?」
「これは項羽とボクの予想もあるんだが…偉人の杜のナイチンゲールは、本物のナイチンゲールではない可能性がある」
さすがに飛躍した言葉に、僕とアインは「さすがに…」と否定した。だけどヒトラーはそんな反応すら想定通りといいたげな顔で説明を始めた―――
「予想通りの反応ありがとう。だが、これがおかしいことでは無いんだ……そのためにも、そうだね…狩人!」
「ん?どうかしたか?」
「ニュートンとアインシュタインに捕まったようにして、偉人の杜の拠点に行ってもらっても構わないかい?」
「え?別にいいけど…ヒトラーのことを項羽達のところに送ってからでいいならね。ポル=ポトがいるとはいえせっかくの大切な人を失いたくないし」
ヒトラーの提案としてそう言うと、アインに白い目で見られ始めた。ニュートンも、少し残念そうな雰囲気を出しながら「あーらら、狩人くんは女癖が悪いなぁ……」と言われた。俺、なんかしたか…?ヒトラーもなんか、顔を俯かせたまま動かなくなったし………
「…ヒトラー?」
「っ……な、なにかな狩人?」
「いや、大丈夫か?と思っただけだが……」
「もちろん大丈夫だよ!?この頭脳明晰でリーダーとしての才能に満ち溢れるボクが、そんな容易い動揺なんてするわけないじゃないか!!」
「い、いや……だいぶ動揺してそうだけど———」
「うるさい、黙れっ!あぁ、もう……!」
顔を真っ赤にしながら怒るヒトラーに対して訳が分からず首を傾げる俺。なんでかアインからの目がキツくなってきたし……ん?ニュートンがこっち来てってジェスチャーしてきてる?
「どうした?」
「いや〜…ちょっと助言だけしようかなって。君は多分、異性への察しが悪いだろうからね」
「察し…?」
察してるつもりなんだが……もしかして、ノイマンやヒトラーに急に怒られるのはそのせいなのか?
「ん〜…なんて説明しようか。君はノイマンのことが好きなんだよね?」
「そうだな……それは間違いない。あんまりそういうことが分からない俺でもそれは断言出来る」
「じゃあ…ノイマンが例えば、自分以外の男———まぁ東耶くんとかにしてみよう。そういった人に好きと思う甘い言葉を言ってるところを思い浮かべてみてよ。どう思うかな?」
ニュートンにそう言われ、頭の中で考えると……妙に胸がズキズキと痛み出して気持ちが悪くなった。
「ゔ…気持ち、悪いな。それに胸が痛い……」
「うんうん、そうだよね?じゃあ次!ノイマンが君に対してその甘い言葉を急に言ってきたら、どう思う?」
「………て、照れる、な……!」
「そうそう!!じゃあ、自分の今までの言葉を思い出して欲しいんだけど……全く同じこと、してない?」
「…してるな、すっごいしてる……あぁ…そういうことかぁ………」
ニュートンのおかげで自分の言動がよく分かった。これじゃ女たらしとか言われてもおかしくないわけだ……
「分かってくれたみたいだね!よかったよかった……君みたいないい子が刺されると困っちゃうからね」
「…ありがとう、ニュートン。さすがにこれから先は自分の言動を考えるよ……ちなみに、もし抱いてる感情がどちらにしても同じだった場合はどうするべきだと思う……?」
「諦めて刺されるべきだね!奇跡的にノイマンもヒトラーも受け入れてくれる可能性に賭けたらいいんじゃないかな〜。ノイマンも寛容な方だし許してくれるかもよ?ヒトラーは分からないけど」
俺の優柔不断な問いにニュートンですら匙を投げてしまった……さすがに自分の今までやってきたことを思い返して、内心で悶絶するが……平然を装いながらヒトラーとポル=ポトを項羽の元へと連れていった―――
第8話、終了!さて、灰夜がようやく自身の言動を理解したり、ニュートンの敵堕ちがなくなったりとてんやわんやですが……灰夜は実は感情の機微に疎く、学習能力はあってもどんなものも凡才止まりなんですね。狩人としての強さはヤーナムで培った経験や知識を活かしてるだけなので、それ抜きのヤーナムに来たばかりの灰夜だと廻り者になる前の灰都・東耶に負けます。ブラボ的に言うなら、過去が《生まれるべきではなかった》なんですね。なのでなんの才能もありませんし、唯一あるとすれば東耶に似た諦めずに努力できる才能ぐらいです。
第9話では、策略渦巻く騙し合いが始まりますよ〜。乞うご期待!!
主人公以外のキャラの視点はいる?いらない?
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いる
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いらない
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どちらでもいい
-
主人公と三人称のみでいい