私の約束された勝利の騎士道アカデミア   作:まだら模様

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とりあえず描き始めました。
好評なら続けようと思います。


入学編〜USJ編
第1話:「星の子」


 

 

 最後に覚えているのは、横断歩道の白線と、眩しいヘッドライトだった。

 

 痛みはなかった。ただ、暗い。どこまでも続く暗闇の中で、自分が自分であることだけを、かろうじて認識していた。

 

 ――そこに、何かがあった。

 

 手を伸ばす。指先が触れたのは、細長い何か。柄、だと思った。剣の柄だ。握った瞬間、暗闇が爆ぜた。

 

 眩しい。

 

 次の瞬間、俺は――私は、泣いていた。

 

 肺いっぱいに空気を吸い込んで、産声を上げている。自分の声が高くて、驚いた。身体が小さい。手足が短い。視界がぼやけている。

 

 転生だ、と理解するのに三秒かかった。

 

 女の子として生まれたらしい、と気づくのにさらに三秒。

 

 ……まあ、いいか。

 

 有斗リアとしての人生は、そうして始まった。

 

 

 

 個性が発現したのは、三歳の誕生日だった。

 

 ケーキの前で手を叩こうとした瞬間、テーブルを粉砕した。両親が絶句する中、リアは割れた木片を眺めながら、ああ怪力系か、と冷静に分析していた。前世の記憶があると、こういう時に動じなくて済む。

 

 個性診断の結果は「聖剣」。放出系と変形系の複合と推定、要経過観察。担当医が首を傾げながら書いた診断書を、母親は大事に仏壇の引き出しにしまった。

 

 剣を握ると、しっくりくる。木の棒でも鉄パイプでも、細長いものを手に持つと身体が勝手に動く。型を知っている。間合いを知っている。教わった覚えのない剣技が、肉体に刻まれていた。

 

 七歳の夏、事件が起きた。

 

 公園で大型犬に飛びかかられた瞬間、手から光が出た。

 

 ドォン、という音とともに犬小屋が消滅した。犬は無事だった。犬小屋のあった場所には焦げ跡だけが残っていた。飼い主のおじさんが腰を抜かしていた。

 

 リアは自分の手を見つめた。

 

 光。黄金色の、眩しい光。どこかで見た気がする。前世の、ぼんやりした記憶の中に、似たような何かがあった。スマホで引いたキャラクター。金色の髪の女の人。聖剣を掲げる場面。

 

 ……ああ、そういうことか。

 

 それだけ理解して、リアは思考を打ち切った。詳細は分からないし、分からなくていい。とにかく光のビームが出る。感情的になると暴発する。以降は封印する。それだけだ。

 

 剣の周りに、時々「何か」が走る感覚があった。風のような、圧力のような。掴もうとすると消える。靄のように、指の隙間から抜けていく。

 

 気になったが、触れ方が分からなかった。

 

 だからリアは剣技だけを磨いた。教室の隅で本を読みながら、放課後は一人で素振りをして、休日は山の中を走り込んだ。それだけで中学の体育は全て学年トップだった。クラスメイトと話が合わなかったが、別に困らなかった。

 

 高校は雄英に行こう、と決めたのは中学二年の春だった。

 

 理由は単純だ。ヒーローというものを見ていると、胸の奥がざわつく。守る、という言葉に、妙な重さを感じる。民を守る。弱き者を守る。それが、自分の在るべき姿だという確信が、どこかにあった。

 

 前世由来なのか、転生した何かの影響なのか、それも分からない。

 

 ただ、そういう気がした。それで十分だった。

 

 推薦の話が来たが断った。実力で入る。それ以外の形で雄英の門を潜るつもりはなかった。

 

 四月のよく晴れた朝、有斗リアは雄英高校の受験会場に立っていた。

 

 周囲はざわついている。緊張した顔、気合いの入った顔、今にも泣きそうな顔。様々な受験生が集まっていた。リアは人波の少し外側に立って、静かに会場を眺めた。

 

 一人、目を引く少年がいた。

 

 緑色の髪。丸い目。ぼろぼろのノートを胸に抱えて、あちこちの受験生を見ては何かメモしている。雄英オタク、という言葉が頭に浮かんだ。熱量が遠くからでも伝わってくる。

 

 ヒーローが好きなんだな、とリアは思った。ああいう目をした人間を、リアは嫌いではない。

 

 実技試験が始まった。

 

 模擬市街地に放たれた仮想ヴィラン――ロボットを破壊してポイントを稼ぐ形式だ。周囲の受験生が次々と個性を使って暴れ回る中、リアは木刀一本を手に、淡々と動いた。

 

 一体目。関節部を正確に打ち抜いて沈黙させる。

 

 二体目。踏み込んで、胴を薙ぐ。

 

 三体目。飛びかかってくる機体を横に捌いて、動力部を叩く。

 

 個性は使わない。使う必要がない。肉体に刻まれた剣技だけで、ロボットは面白いように止まっていく。

 

「個性、使わないの?」

 

 横を走り抜けた受験生が、驚いたように声をかけてきた。

 

「これが私の戦い方だ」

 

 リアは答えた。受験生は何か言いたそうな顔をしたが、別のロボットが来て走り去った。

 

 そのとき、地響きがした。

 

 遠くから、それはやってきた。

 

 0ポイント。試験の運営側がそう呼ぶ巨大ロボットが、ビルの間から姿を現した。受験生たちが一斉に悲鳴を上げて逃げ出す。地面が揺れるたびに、粉塵が舞い上がった。

 

 リアは逃げなかった。

 

 足を止めて、巨大ロボットを見上げた。でかい。馬鹿みたいにでかい。あれを剣技でどうにかするのは現実的ではない。

 

 選択肢は一つだ。

 

 リアは息を吐いた。木刀を下ろす。代わりに、右手を前に向けた。

 

 胸の奥に、熱がある。普段は蓋をしている。感情的になると暴発するから、ずっと封じ込めていた。

 

 でも今は、使う。

 

「……集まれ」

 

 呟いた瞬間、光が生まれた。

 

 右手の先から溢れ出した黄金の輝きが、あっという間に膨れ上がった。照準が定まらない。出力の制御が利かない。それでも構わず、リアは全部を押し込んだ。

 

 解き放つ。

 

 轟音。

 

 光の奔流が巨大ロボットを飲み込んだ。

 

 爆風が来た。リアは吹き飛ばされながら、ロボットの上半身が消滅していくのを視界の端で確認した。下半身は残っている。完全には仕留められなかった。

 

 地面に膝をついた。身体が重い。熱を使いすぎると、こうなる。しばらく動けない。

 

 静寂が落ちていた。

 

 粉塵の向こうで、誰かが動いていた。あの緑色の髪の少年だ。腕がおかしな方向に曲がっていた。それでも、転落しかけた女の子を受け止めようとしていた。

 

 リアは黙って見ていた。

 

 ああいう動き方を、この身体は知っている。民のために、自分を削る動き方だ。

 

 ……なかなか、やる。

 

 膝をついたまま、リアは小さく息を吐いた。

 

 

 

 合格通知が届いたのは、試験から数週間後だった。

 

 封筒を開けると、ホログラムが起動してオールマイトが現れた。派手な演出だと思いながら最後まで見た。合格。実技試験の得点は受験生中トップ。ただし備考欄に一行、小さな文字で書いてあった。

 

『個性の制御について、入学後に要観察』

 

 当然だ、とリアは思った。あの照準では話にならない。あの出力では使い物にならない。合格はしたが、聖剣はまだ自分のものになっていない。

 

 通知書を折りたたんで、机の上に置いた。

 

「……及第点、か」

 

 窓の外では、春の風が吹いていた。

 




好評なら続きを描きます

■ 個性登録名:聖剣(せいけん)

【宝具】
・約束された勝利の剣(エクスカリバー)
 → 使用可。ただし制御不能・燃費最悪

【スキル】
・直感A   :常時発動中
・魔力放出A :無意識のみ発動中
・カリスマB :常時発動中(本人無自覚)
・対魔力A  :常時発動中
・騎乗B   :常時発動中

【未解放】
・インビジブルエア(風王結界)
・上記スキルの意識的制御
・エクスカリバーの照準・出力制御
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