私の約束された勝利の騎士道アカデミア   作:まだら模様

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とりあえずまた書いておきます

※キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
作者はfateガチにわかです。ガバガバ設定になると思われます。
ご注意ください。


第2話:「個性把握テスト」

 

 

 雄英高校のヒーロー科、1年A組。

 

 その教室の扉を開けた瞬間、有斗リアは思った。

 

 ――うるさい。

 

 騒がしい、という意味ではない。正確には、熱い。あちこちから溢れ出す熱量が、廊下にまで漏れてきている。個性のある人間たちが一堂に会した時の、この独特の圧力。中学の教室とはまるで違う密度だ。

 

 リアは静かに教室へ入り、空いている席を探した。

 

 「あ! 試験の時の子や!」

 

 弾けるような声がした。振り向くと、茶色の短い髪をした女の子が、丸い目をさらに丸くしてこちらを見ている。

 

 「入試で……光のやつ出した子やんな? すごかったなあ、あれ! 私、麗日お茶子っていうんやけど!」

 

 勢いよく差し出された手を、リアはしばらく見てから握った。

 

 「有斗リアだ。よろしく」

 

 「リアちゃんか! かっこええ名前やね! 私の隣、空いとるよ!」

 

 断る理由もなかった。リアは素直に麗日の隣の席についた。

 

 「あの光、個性? めっちゃ綺麗やったんやけど! なんか、星みたいな感じで」

 

 「……そうかもしれない」

 

 「なんかよくわからんけどすごそう!」

 

 麗日はあっけらかんと笑った。秘密を詮索する気のない、まっすぐな明るさだ。リアは少し意外に思いながら、教室の中を改めて見渡した。

 

 緑色の髪の少年が、隣の席の赤い髪の少年と何か話している。入試でロボットを撃退しようとしていた、あの子だ。腕がまだ痛むのか、時々顔をしかめている。

 

 「デクくん! こっちやで! こっちおいで!」

 

 麗日が手を振った。緑髪の少年がぱっと顔を上げ、小走りでやってくる。

 

 「お茶子さん! よかった、同じクラスで……あ」

 

 少年の目がリアと合った。

 

 「入試の……! あの光を出した人!」

 

 「そうだ。緑谷出久、だったか」

 

 「え、なんで僕の名前を……」

 

 「入試の前に名札が見えた。よく覚えている方だ」

 

 緑谷は少し驚いた顔をしてから、深々と頭を下げた。

 

 「あの時助けてくれてありがとうございました! あなたがロボットを止めてくれたおかげで……!」

 

 「礼は要らない。私はただ、邪魔だったから排除しただけだ」

 

 「それでも……!」

 

 緑谷の目が真剣だった。リアは少し間を置いてから、小さく頷いた。

 

 「……気にするな」

 

 「ありがとうございます! 有斗さん、でいいですか?」

 

 「好きに呼べ」

 

 「じゃあ有斗さんで!」

 

 麗日が「なんか、二人ともちょっと似とる感じがする」と言った。緑谷とリアが同時に「そうか?」と返して、麗日がおかしそうに笑った。

 

 

 

 ホームルームが始まる前に、もう一人声をかけてきた者がいた。

 

 「君が有斗リア君か。飯田天哉だ。よろしく頼む!」

 

 眼鏡をかけた、背の高い少年だった。声が大きく、立ち姿が妙に整っている。

 

 「雄英の入試でトップの成績を収めたと聞いた。同じクラスになれて光栄だ! ともに切磋琢磨しよう!」

 

 「……ああ」

 

 「君も緑谷君のようにヒーローを目指しているんだね?」

 

 「そうだ」

 

 「素晴らしい! ヒーローたるものプロ意識を持って……」

 

 飯田の話は続きそうだったが、そこで教室の扉が開いた。

 

 寝袋に入ったような、くたびれた格好の男が現れた。真っ黒な服、首に巻いた白い布、充血した目。教師には見えない。

 

 「ハイ静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

 声は平坦だった。教室がすっと静まる。

 

 「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 リアは黙って観察した。この人物は、ただの教師ではない。立ち方、重心の置き方、視線の動かし方。鍛えられた人間の所作だ。そして首に巻いた白い布は——捕縛用の道具だろう。

 

 相澤は淡々と続けた。

 

 「さっそくだが着替えてグラウンドへ。個性把握テストをやる」

 

 「え、入学式は!? ホームルームは!?」

 

 誰かが声を上げた。相澤は振り向きもせずに言った。

 

 「雄英は自由な校風が売り文句。それは先生側も同じだ」

 

 

 

 グラウンドに整列した生徒たちを前に、相澤はソフトボールを一つ取り出した。

 

 「中学の頃からやってるだろ、個性禁止の体力テスト。あれの個性あり版をやる。まずソフトボール投げ。誰でもいい、一番遠くに投げられると思うやつ」

 

 爆豪勝己と呼ばれた、鋭い目の少年が無言で前に出た。

 

 「制限なし、個性を使って構わん」

 

 爆豪はボールを持ち、一瞬だけ腕に力を込めた。パァンという爆発音とともにボールが空へと消えた。測定器が数値を弾き出す。705.2m。

 

 「なるほど」

 

 相澤は淡々と言った。

 

 「これが個性社会でのスタート地点だ。かつて中学でやった体力テストの記録と比べてみろ。個性を使えば伸びるのは当たり前。問題はどれだけ使いこなせるかだ」

 

 そこで相澤がクラス全体を見渡した。

 

 「あと、一つ言っておく。このテストで最下位のやつは見込みなしとして即日退学処分にする」

 

 クラスがざわついた。麗日が「えっ」と小さく声を上げる。緑谷の顔が青ざめる。

 

 リアは特に表情を変えなかった。

 

 入学初日に退学。合理的ではないが、合理的に見せている。おそらく本気ではない——だが確かめる方法はない。備えるしかない。

 

 「なんで黙ってられるん、リアちゃん? 怖くないん?」

 

 麗日が小声で聞いてきた。

 

 「怖いかどうかは関係ない。やることは変わらないから」

 

 麗日がしばらくリアの顔を見てから、ふっと笑った。

 

 「……かっこええな、それ」

 

 「そうか? 当たり前のことを言っただけだ」

 

 「それがかっこええんやって」

 

 

 テストは続いた。

 

 50m走、握力、立ち幅跳び、反復横跳び、上体起こし。

 

 リアは個性をほぼ使わなかった。ただ肉体に刻まれた騎士の基礎能力だけで動いた。50mは3秒台。握力は測定器の上限に引っかかって「計測不能」と表示された。立ち幅跳びは着地の衝撃でグラウンドに足跡が残った。

 

 それでも相澤はリアに対して一言も発しなかった。ただ静かに、じっと見ていた。

 

 「……」

 

 その視線には、引っかかりがある。測定するような目だ。何かを探している。

 

 リアは意識しないようにした。

 

 「有斗さん、個性使わなくてあの数字なんですか!?」

 

 緑谷がメモ帳を取り出す勢いで近づいてきた。

 

 「体の動かし方が、普通じゃないというか……! 重心の置き方とか、踏み込みのタイミングとか、なんかすごく……!」

 

 「緑谷」

 

 「はい」

 

 「そのメモ帳は毎回持ってくるのか」

 

 「え、あ、はい……癖で……」

 

 リアは少し考えてから言った。

 

 「記録するのは良いことだ。続けろ」

 

 緑谷がぱっと顔を輝かせた。

 

 

 

 最後の種目はソフトボール投げだった。

 

 リアの番が来た。

 

 ボールを手に取る。軽い。風の向きを確認する。直感が、一瞬何かを告げた——エクスカリバーを使う必要はない。この程度なら、腕の一振りで足りる。

 

 深く息を吸い、腕を振った。

 

 ボールが風を切る音がした。

 

 測定器が数字を出す。189.4m。

 

 個性なし。素の投擲。

 

 「……やっぱりおかしい」

 

 相澤が小さく呟くのが聞こえた。リアは振り向かなかった。

 

 

 テストが全て終わると、相澤は結果の一覧を生徒たちに見せた。

 

 「最下位は緑谷出久」

 

 クラスがざわついた。緑谷の顔が青くなる。

 

 「退学か……?」

 

 誰かが囁いた。

 

 相澤は淡々と続けた。

 

 「嘘…合理的虚偽だ」

 

 沈黙。

 

 「そんな制度、雄英にはない。ただ、限界を超えようとしない人間はプロにはなれない。追い詰めることで何かを掴む人間もいる——そういう授業設計だ」

 

 麗日が「は〜! そういうことか〜!」と脱力したように笑った。緑谷はその場にへたり込んでいた。

 

 相澤はクラスを見回してから言った。

 

 「結果は通知する。各自分析しておくように。以上」

 

 踵を返しかけたところで、ほんの一瞬、その目がリアを捉えた。

 

 何も言わなかった。ただ見た。それだけだ。

 

 それでもリアには分かった。

 

 この教師は、何かに気づいている。

 

 

 放課後、校舎の裏手でリアは一人剣の素振りをしていた。

 

 木刀を振るたびに、剣の周りに「それ」が走る。風のような、圧力のような。今日も掴めなかった。

 

 「——なんや、練習しとるん?」

 

 声がして振り向くと、麗日がひょっこり顔を出していた。

 

 「わあ、木刀! 剣術もできるんや!」

 

 「一応な」

 

 「一応にしては動き綺麗すぎるやろ」麗日はリアの隣に腰を下ろした。「ひとりでおるん? 放課後、デクくんも飯田くんも、なんか三人でご飯行こって話してたけど——リアちゃんも来る?」

 

 「……私も、か」

 

 「当たり前やん。仲間やろ?」

 

 仲間。

 

 その言葉が、思ったより胸に響いた。

 

 騎士は、民を守るものだ。民の隣に立ち、共に歩むものだ——それが王の在り方だと、この身体はどこかで知っている。

 

 でもこれは学校だ。ヒーロー科の教室だ。隣にいるのは国民ではなく、同じ夢を目指すクラスメイトだ。

 

 「——行こう」

 

 リアが答えると、麗日がにっこり笑った。

 

 「よかった! ほなさっさと行こ! デクくんたち待っとるし!」

 

 リアは木刀を仕舞い、麗日の後について歩き出した。

 

 校舎の窓から、相澤消太がその背中を静かに見ていた。

 

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