私の約束された勝利の騎士道アカデミア   作:まだら模様

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とりあえずまた書いておきます

※キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
作者はfateガチにわかです。ガバガバ設定になると思われます。
ご注意ください。


第3話「騎士、戦場に立つ」

 

 更衣室を出た瞬間、廊下がざわついた。

 

 当然だと思った。青と銀の全身甲冑を纏った少女が歩いていれば、誰でも二度見する。

 

「リアちゃん!!めっちゃかっこいい!!」

 

 麗日お茶子がぱんと手を叩いた。ピンクのスーツ姿の彼女が、目を輝かせてリアの周りをぐるりと一周する。

 

「本物の騎士みたいやん……!光ってるし……!」

 

「光ってはいない」

 

「いや光ってるって!銀色がキラキラしてるもん!」

 

 芦戸三奈がにじり寄ってきた。ピンクの肌に触角、溌剌とした顔つきの少女だ。

 

「触っていい? 甲冑、触っていい?」

 

「構わないが」

 

 芦戸が指先でリアの胸当てをトントンと叩いた。金属の澄んだ音がした。

 

「うわ本物だ……! なにこれ、個性で出してんの?」

 

「サポート科に作ってもらった。素材は軽量合金だ」

 

「めっちゃ本格的じゃん……」

 

 八百万百が静かに近づいてきた。黒を基調にした大胆なコスチューム、推薦入学者として入試でもリアの記録を目にしていたはずの少女だ。彼女の目はリアの甲冑を観察するように動いていた。

 

「……可動域は問題ないのですか? 関節部分がかなり細かく設計されているようですが」

 

「動かしてみた限り支障はない。むしろ素の状態より安定している」

 

「サポート科の技術ですね。驚きました」

 

 八百万はそう言って、微かに目を細めた。批評ではなく、純粋な感嘆に見えた。

 

「あなたのコスチュームのコンセプトは何ですか?」

 

「騎士だ」

 

「……それは見れば分かります。もっと踏み込んだ意図を聞いています」

 

 リアは少し考えた。

 

「顔を晒して戦う。誰が守っているか分からない守護に意味はない。民が見ていてこそ、ヒーローは盾になれる」

 

 八百万がしばらく黙った。それから、静かに頷いた。

 

「……なるほど。非常に理に適っています」

 

 廊下の向こうから飯田天哉が大股で歩いてきた。眼鏡が光っている。

 

「皆さん! 整列の時間です! 談笑もよいですが、社会人としての自覚を持って行動を!」

 

「飯田くんはほんとにそれだよね」と芦戸が笑いながら廊下を歩き始めた。

 

 

 

 オールマイトが教壇の前に立つと、教室の空気が変わった。

 

 筋骨隆々の巨体、三白眼のように見開かれた目、眩しい笑顔。平和の象徴。この世界で最も有名な人間が、今目の前に立っている。

 

「さあ! 今日は皆に初めての戦闘訓練を行ってもらうぞ! 題して屋内対人戦闘訓練だ! HAHAHA!」

 

 生徒たちがざわめく。

 

「ルールを説明しよう。まず皆にはくじを引いてもらって、2名1組のチームに分かれてもらう。チームはA〜Jの10組だ。そしてそこからさらに、ヒーロー側とヴィラン側に分かれる!」

 

 オールマイトが人差し指を立てた。

 

「ヒーロー側の勝利条件は二つ。一つ、制限時間内に建物内に設置された核兵器(もちろん模擬だよ!)に触れて回収すること! 二つ、相手チームを確保テープで完全に拘束すること! ヴィラン側は制限時間内に核を守り切るか、ヒーローを全員捕獲すれば勝ちだ!」

 

「なぜ屋内なんですか?」

 

 飯田が即座に手を挙げた。

 

「良い質問だ飯田少年! 屋外だと個性によっては周囲への被害が大きくなりすぎる。屋内戦では状況判断と制限の中での個性運用が問われる。それがヒーローの実際に近い!」

 

 オールマイトがにこりと笑う。

 

「では、くじを引いてもらおう!」

 

 

 

 リアが引いたくじにはBと書かれていた。

 

 Bチームのもう一人を確認するために周囲を見ると、静かに立った半冷半熱の少年と目が合った。轟焦凍。入試でトップの成績を収めた推薦入学者。冷気と炎、二つの個性を持つという噂の少年だ。

 

「……同じチームか」

 

 轟が短く言った。感情の読めない声だった。

 

「そうだ。よろしく」

 

「あぁ」

 

 それだけで終わった。

 

 麗日が横から「二人ともあっさりしすぎやろ!」とツッコんでいたが、リアはそれより轟という人間を観察することに意識を向けた。立ち姿が静かだ。無駄な動きがない。個性の強さに甘えている人間の体つきではない。

 

 轟の方もリアを見ていた。一瞬だけ、その目が甲冑を上から下まで走った。

 

 

 

 ヒーロー側とヴィラン側の組み合わせが発表された。

 

 Bチームはヒーロー側。対戦相手はIチーム——尾白猿夫と葉隠透だ。

 

 他のチームの組み合わせも出た。Aチーム(緑谷・麗日)がヒーロー側でDチーム(爆豪・飯田)がヴィラン側、という第1試合が最初に行われることになった。

 

 残りのチームはモニタールームで観戦する。

 

 

 モニタールームは広く、壁一面に複数のスクリーンが並んでいた。屋内の各フロアの映像がリアルタイムで映し出されている。

 

 第1試合が始まった。

 

 緑谷出久と麗日お茶子がヒーロー側。爆豪勝己と飯田天哉がヴィラン側。

 

 スクリーンの中で、爆豪が動いた。単独で緑谷を追い始める。ヴィラン側が守るべき核を放置して。麗日はその隙に階段を上がり始めた。

 

「……爆豪、独走しすぎだ」

 

 轟が静かに言った。リアの隣に立っていた彼が、初めて自分から口を開いた。

 

「うん。役割を忘れている」リアも同じことを思っていた。「ヴィランは守るのが仕事のはずだ。核から離れた時点で負けに近い」

 

 轟がちらりとリアを見た。

 

「同じ見方をするんだな」

 

「当然の読み方だろう」

 

 轟は何も言わなかった。ただ前を向いた。

 

 スクリーンの中では、緑谷が爆豪の一撃を受けてフロアに叩きつけられていた。それでも動く。折れた右手を庇いながら、それでも立ち上がろうとしている。

 

 隣で麗日が両手を口元に当てて画面を凝視していた。

 

「……デクくん」

 

 その呟きは聞こえていたが、リアは何も言わなかった。自分が口を挟む場面ではない。

 

 緑谷が動いた。爆豪の一撃を受けて上方向へ吹き飛ばされながら、その衝撃を利用して核のある階まで跳躍した。

 

 リアは目を細めた。

 

 ——制御できない個性を、制御できる状況に変換した。あの発想は、自分にはなかった。

 

 直後、麗日が核に触れた。

 

「ヒーローチームWIIIIN!!!」

 

 オールマイトの声がモニタールームに響いた。

 

 講評が始まった。

 

 オールマイトが生徒たちに問いかける。

 

「今戦のベストは飯田少年だけどな!」

 

「え」と誰かが声を上げた。蛙吹梅雨だった。「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」

 

「ん〜そうだなあ〜何故だろうなあ〜?わかる人!!?」

 

 八百万が静かに手を挙げた。

 

「はい、オールマイト先生。飯田さんが一番状況設定に順応していたからです。爆豪さんの行動は私怨丸出しの独断。緑谷さんも受けたダメージから鑑みると無謀です。飯田さんだけが、ヴィラン役として核の防衛という役割を全うしようとしていました」

 

 オールマイトが苦笑いしながら頷く。

 

「……ま、まあ、飯田少年も固すぎる節はあったりするわけだが……正解だよ、くう〜!」

 

 教室のあちこちで笑いが起きた。

 

 リアは黙って聞いていた。役割の遵守。状況への順応。戦場においての基本だ。だが、それを徹底できる者が実際どれだけいるか——爆豪のように感情が先に出た瞬間、戦略は崩れる。

 

 轟が横でリアを見ていた。

 

「次は俺たちだ」

 

「分かってる」

 

「作戦はあるか」

 

 リアは少し考えた。

 

「お前が状況を制圧する。私がそれを守る。核には近づかせない。どうだ」

 

 轟がすぐに答えた。

 

「……いや、逆の方がいい。俺が攻めで、お前が守り、じゃなくて。俺が先に制圧して、核の確保はお前が行く」

 

「理由は」

 

「お前の個性は出力が読めない。攻めに使うより、核確保と万が一の切り札として残す方が安全だ。それに、俺は範囲攻撃が得意だ。屋内でも制御できる」

 

 リアはしばらく考えた。

 

 合理的だ。轟の言う通り、エクスカリバーは今の自分には制御しきれない。切り札として温存するのは正しい判断だ。しかし——

 

「分かった。ただし、味方を巻き込むな」

 

 轟が微かに眉を動かした。

 

「当然だ」

 

「言葉にしておく必要がある。屋内で広範囲攻撃を使えば壁も床も崩れる。それが相手にとっては脅威だが、核にダメージが及べば別の問題になる」

 

 轟が真っ直ぐリアを見た。

 

「……分かった。制御する」

 

「では行こう」

 

 五階建ての廃墟ビル。コンクリートの壁、錆びた扉、薄暗い廊下。

 

 リアと轟はエントランスに立った。

 

 向こうには尾白猿夫と葉隠透がいる。尾白は大きな尻尾を持つ少年。葉隠は——存在が見えない。透明の個性を持つ少女だ。厄介な組み合わせだ。姿の見えない相手に、感覚で追える索敵役。

 

「透明な方は場所が分からない」リアが小声で言った。「音を聞け。足音、衣服の擦れる音、呼吸。消えても消せないものがある」

 

「あぁ」

 

 二人は建物に入った。

 

 しばらく無言で進んだ。リアの直感が微かに何かを捉えた——右。

 

「右だ」

 

 轟が即座に右の廊下へ視線を向けた。

 

 床に、靴の跡がある。埃の上に刻まれた、新しい足跡。だが足跡は二人分——

 

「囮だ」

 

 天井から衝撃が来た。

 

 尾白の尻尾がリアの甲冑を真上から叩いた。金属が鳴った。衝撃を受けながら、リアは体勢を崩さずに一歩横へ逸れた。甲冑が衝撃を分散させた。

 

 尾白が天井から飛び降りてくる。

 

「外出てろ」

 

 轟の声がした。低く、静かで、有無を言わさない。

 

 リアは迷わず廊下の奥へ走った。

 

 背後で、冷気が広がる音がした。

 

 核兵器は三階の広間に置かれていた。

 

 オールマイトの顔がプリントされた模擬核だ。思わず「なぜ」と思ったが、場合ではない。

 

 葉隠透の気配が、部屋の中にある。

 

 見えない。だが分かる。直感が、右奥に何かを感じている。

 

 リアは静かに剣の柄に手をかけた。

 

「降参するなら言え。怪我はさせたくない」

 

 返事はなかった。

 

 ならば力技だ。

 

 リアは素早く部屋の中央に立ち、360度を視野に入れた。見えない相手への最適解——こちらが核の前に立てば、相手は動かざるを得ない。

 

 床板が微かに軋んだ。左。

 

 リアは体を半歩右にずらした。確保テープが空を切った。

 

「——惜しい」

 

 リアは素早く向き直り、音のした方向へ手を伸ばした。何かを掴んだ。腕だ。細い腕。

 

「捕まえた」

 

「わっ!!」

 

 葉隠の声が上がった。見えない腕を掴んだまま、リアは確保テープをその腕に巻いた。

 

「きゃ! なんで分かったの!?」

 

「音と重心の移動だ。床の軋みを聞いていた」

 

 しばらく沈黙があった。

 

「……すごい」葉隠が小さな声で言った。「直感系の個性なの?」

 

「そういうことにしておこう」

 

 一階では、轟が尾白を氷結で制圧していた。

 

 リアが戻ってくると、尾白が両足を氷で固められて床に貼りついていた。完璧な制圧だが——壁の一部に亀裂が入っていた。

 

「壁を割ったな」

 

「最小限だ」

 

「ならいい」

 

 轟が微かに、本当に微かに口角を動かした。

 

「速かったな。あっちで何があった」

 

「葉隠の位置を直感で掴んで確保した。透明の個性でも音は消せない」

 

「……なるほど」

 

 モニタールームのスクリーンの向こうで、オールマイトが声を上げているのが聞こえた。

 

「仲間を巻き込まず、核にもダメージを与えず、尚且つ相手も制圧! ヒーローチームWIIIIIN!!!!」

 

 更衣室への廊下を歩きながら、轟が一言言った。

 

「……お前は推薦入学か?」

 

「いや。一般試験だ」

 

 轟がリアを見た。

 

「一般試験でその入試成績か」

 

「お前もそうだろう。推薦で入って試験成績が上だった。どちらが優れているという話ではない」

 

「そうは言ってない」

 

 轟は何かを確かめるような目でリアを見ていた。

 

「……お前の個性、出力の制御ができてないのか」

 

 リアは少し驚いた。観察眼が鋭い。

 

「今はそうだ」

 

「なぜ使わなかった」

 

「必要がなかった。そして、使えば周囲が巻き込まれる可能性があった。ヒーローは民を守るために戦う。守るべき味方を傷つける個性の行使は愚策だ」

 

 轟が黙った。廊下を歩く足音だけが響いた。

 

 しばらくして、轟が前を向いたまま言った。

 

「……俺も個性の制御に課題がある」

 

「知っている」

 

「なぜ」

 

「試合を見ていた。右側——氷だけを使っていた。左は使わなかった。出力の問題ではなく、意志の問題だろう」

 

 轟の足が、一瞬だけ止まった。

 

 リアはそれ以上何も言わなかった。他人の事情に踏み込む必要はない。ただ見ていた。

 

 轟は何も返さなかった。ただ静かに歩き続けた。

 

 廊下の角で、麗日が待っていた。

 

「リアちゃん! どやった!?」

 

「勝った」

 

「やった!!」麗日がぱっと顔を輝かせた。「私たちも勝ったよ! 大変やったけど! デクくんめっちゃ怪我してんけど!」

 

「見ていた。緑谷は良い動きをした」

 

「でしょ!? もうほんとに心配したけど……!」

 

 麗日がはた、と気づいたように轟を見た。

 

「あ、轟くん! お疲れ様でした!」

 

「あぁ」

 

 麗日がこそっとリアに耳打ちした。

 

「轟くんってほんまに喋らんね……」

 

「問題ない。必要なことは言う」

 

「それがリアちゃんっぽいわ」麗日がくすくす笑った。「二人似てるかも」

 

 リアは少し考えた。

 

 轟焦凍。何かを抱えている人間だということは分かる。それが何かは知らない。だが、戦場においては信頼できるパートナーだった。それだけで今は十分だ。

 

 廊下の向こうから、オールマイトの「では講評だよ〜!!」という声が聞こえてきた。

 

 甲冑の重みを感じながら、リアはその声の方へ歩き始めた。

 

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