作者はfateガチにわかです。ガバガバ設定になると思われます。
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廃墟ゾーンの空気は重かった。
崩れたコンクリートの壁、錆びた鉄骨、砕けた窓ガラス。訓練用に作られた人工の廃墟だが、今は笑えない。
リアは木刀を手に、半歩前を歩いた。麗日が後ろについている。直感が左前方を示していた。
「リアちゃん……ほんとに来るん?」
「二人いる。左の建物の中だ」
「どうしてわかるの」
「今は説明する余裕はなさそうだ」
それだけ答えた。説明する時間はない。
角を曲がった瞬間、上から瓦礫が落ちてきた。
リアは麗日の腕を掴んで横に跳んだ。瓦礫がコンクリートを叩いて砕ける。
「上だ」
屋根の上に二人いた。体格の良い男と、刃物を持った女。ヴィランだ。訓練用の施設に紛れ込んだ、本物の。
「学生ってのは身軽でいいねえ」男が笑った。「でも俺の個性の前じゃ関係ない——重力制御!」
空気が変わった。体が重くなる。重力が増している。リアは足に力を込めて踏ん張った。膝が軋む。隣で麗日が「うっ……!」と声を漏らした。
「逃げろ」リアは麗日に言った。
「でも——」
「逃げろ。離れた場所で個性を使え」
麗日の個性は接触で無重力を付与する。重力制御を受けている今、物を浮かせて攻撃する戦い方ができる。だが接近戦は不利だ。
「わかった!」
麗日が走り始めた。男の視線が追う。その隙に、リアは建物の壁を蹴って屋根へ飛んだ。
甲冑の重みが増している。それでも体は動いた。
「重力があっても動けるのかよ!」
「この程度なら」
木刀を振った。男が腕で防ごうとして、手首を打たれた。骨が折れる音がした。
女が刃物で斬りかかってくる。リアは身体を捻って躱した。刃が甲冑を掠め、火花が散った。
「甲冑……!?学生でそんなもの持ってる奴がいるか!」
「個性だ」
嘘だが、今はそれでいい。
重力制御が更に増した。男が片腕を押さえながら、残った手で個性を発動している。リアの膝が、ついに折れた。
片膝をついた。
甲冑の重みが足に集中する。立てない。立とうとすると、重力がまた増す。
——上限をどこかで超えてくる。この男の個性は、重力を増し続けられる。
リアは地面を見つめながら、冷静に考えた。
エクスカリバーは使えない。制御できない出力が、麗日を巻き込む。
では——
剣の周りに、あの感覚があった。
いつもと同じ、靄のような「何か」。でも今は——重力に押しつぶされそうな状況で——その感覚がいつもより鮮明だ。
掴もうとする。指先を、靄の中に伸ばすように。
消えない。
「——っ」
何かが、変わった気がした。剣の柄を握る手の周りに、わずかに、風が走った。一瞬だけ。
だが確かに。
リアは即座に立ち上がった。重力が増しているはずなのに、体が軽かった。一瞬だけ。
「なっ——」
男が目を見開いた。
その隙に、リアは木刀で男の額を打った。男が意識を失って倒れた。重力制御が解除される。
女が叫んで逃げようとした。
「逃さない」
確保テープを取り出した。訓練用に渡されていたものだ。
女の腕を掴んで、テープを巻いた。
廃墟の外に出ると、麗日が壁に背を預けて待っていた。
「リアちゃん!! 大丈夫!?」
「無事だ」
「よかった……! 私、瓦礫浮かせて牽制しようとしたんやけど、もう終わっとった」麗日が息を吐いた。「あの重力、すごかった。膝が折れそうやった」
「折れなかったか?」
「うん……なんとか」
リアは手を見た。
剣の柄を握る手。あの一瞬の感覚を思い出す。風が走った、確かに。制御できたわけではない。ほんの一瞬、靄に触れた気がしただけだ。
だが——触れた。
「リアちゃん? どうかした?」
「……いや」
リアは手を下ろした。今考えることではない。まだヴィランがいる。仲間のことを考えなければ。
「中央広場に戻れるか。相澤先生が一人で戦っている」
「行こう」
麗日が頷いた。二人は廃墟を出て、中央広場の方角へ走り始めた。
走りながら、別のゾーンから爆発音が聞こえてきた。
爆豪だろう、とリアは思った。あの個性の爆発音は一度聞けば忘れない。
しばらく走ると、倒壊ゾーンの方から切島鋭児郎が現れた。額に擦り傷を作っているが、笑っていた。
「有斗! 麗日! 無事だったか!!」
「ああ」
「よかったぜ! 俺と爆豪は廃墟ゾーンに飛ばされてさ——あそこのヴィラン、もう片付けたから! 爆豪が全部吹き飛ばした」
「爆豪は?」
「中央に向かった。黒霧を倒しに行くって言って」
リアは走りながら答えた。
「一人か」
「そう。俺も行こうとしたけど止められなくて」切島が苦笑いした。「ダチ信じるしかないかなって」
麗日が「爆豪くんらしいな……」と呟いた。
「相澤先生が単独で戦ってる。急ごう」
切島がぱっと表情を引き締めた。
「分かった!」
三人で走り始めた。
中央広場が見えてきた。
リアは目を細めた。
広場の中心で、相澤が一人で多数のヴィランを相手にしていた。捕縛布が縦横無尽に動いている。一体、また一体と仕留めていく。
だが既に、体力の限界に近い動きだ。
そして——中央に、死柄木が立っていた。あの手だらけの青年が、静かに相澤を見ていた。
「……嫌だな、プロヒーロー」
死柄木の声が、広場の端まで届いた。
「有象無象じゃ歯が立たない」
脳無が動き始めた。
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