私の約束された勝利の騎士道アカデミア   作:まだら模様

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※キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性がございます。
作者はfateガチにわかです。ガバガバ設定になると思われます。
ご注意ください。

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第7話「ゲームオーバー」

 

 

 中央広場に戻った時、相澤はまだ戦っていた。

 

 一人で。

 

 捕縛布が空を切り、ヴィランを縛り上げ、また次へ。消耗しきった体で、それでも動いていた。ゴーグルが赤く光るたびに、ヴィランの個性が消える。だが数が多すぎる。

 

「……すごい」

 

 切島が呟いた。

 

「個性消して、体術だけで何十人も……」

 

「静かに」

 

 リアが短く言った。

 

 死柄木が広場の中央に立っていた。首をぼりぼりと掻きながら、相澤の戦いを眺めている。その隣に、脳無がいた。

 

「本っ当にかっこいいぜ、イレイザーヘッド」

 

 死柄木がぼそりと言った。子供が漫画のキャラを褒めるような、妙に素直な口調だった。

 

「でもさ——もう限界じゃないのな?」

 

 脳無が動いた。

 

 相澤が捕縛布を投げたが、脳無には効かなかった。腕が一本、折れた。それでも動く。相澤が体術で対抗する。だが脳無の怪力が相澤の腕を掴んだ。

 

「先生!!」

 

 緑谷の声が聞こえた。広場の端に、水難ゾーンから戻ってきた緑谷、梅雨、峰田の三人がいた。

 

 リアは状況を瞬時に把握した。

 

 相澤が脳無に捕まった。飯田はまだいない。このまま時間が経てば——

 

「飯田」

 

 リアは声を張った。飯田天哉が振り向いた。

 

「走れ。今すぐ外へ。連絡しろ」

 

「しかし委員長の風上にも——」

 

「今行かなければ全員死ぬ。お前の足でしか打開できない。行け」

 

 飯田が一瞬硬直した。

 

 砂藤力道が叫んだ。「外に出られりゃ追ってこれねえよ!お前の脚でモヤを振り切れ!」

 

 瀬呂が「そうだ!」と続けた。

 

 13号が飯田に向けて声を上げた。

 

「委員長、君に託します。救う為に個性を使って下さい」

 

 飯田が歯を食いしばった。それから——走り出した。

 

 エンジンの轟音。飯田の脚部から炎が噴出して、あっという間に出口へ向かっていく。黒霧が追おうとしたが間に合わなかった。

 

「あ——行っちゃったじゃないか」

 

 死柄木が首を傾けた。声が、少し低くなった。

 

「黒霧、お前……お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ」

 

「申し訳ありません、死柄木弔」

 

「……まあいいや。どうせオールマイトは来ない」

 

 死柄木がぼりぼりと首を掻いた。

 

「子供を殺せば来るのかな?」

 

 リアの直感が、最大限の警告を発した。

 

 

 脳無が相澤を地面に叩きつけた。

 

 嫌な音がした。

 

 緑谷が叫んだ。麗日がリアの袖を掴んだ。切島が歯を食いしばった。

 

 死柄木がゆっくりと歩き始めた。生徒たちの方へ。

 

「なあ」

 

 軽い口調だった。子供がゲームの話をするような。

 

「ヒーロー目指してるんだって? でもさ——ヒーローって何だろうな。オールマイトみたいに笑って飛び回って、それがヒーロー? お前ら守られるだけで、それで満足なの?」

 

 誰も答えなかった。答えられなかった。

 

「つまんないなあ」

 

 死柄木が手を伸ばした。

 

 梅雨に向けて。

 

 リアは動いた。

 

 一歩で死柄木と梅雨の間に割り込んだ。甲冑の胸当てが死柄木の手を受け止めた。

 

 金属が削れる音がした。崩壊の個性が、甲冑の表面を少しずつ砕いていく。

 

「——なんだよ、甲冑」

 

 死柄木が初めて、表情を変えた。

 

「個性?それとも道具?どっちでもいいや。でも——硬いな」

 

 リアは動かなかった。

 

 崩壊は進んでいる。甲冑が持つのは、あと数秒だ。エクスカリバーを撃てば終わる。だが制御できない。この距離で、この方向で撃てば——死柄木を消すかもしれないが、後ろの仲間も巻き込む。

 

「……何かあるんだろ、そんな顔して」

 

 死柄木が首を傾けた。子供が不思議なものを見るような目で、リアを見ていた。

 

「個性、出せないの? 出したら困る感じ?」

 

 図星だった。

 

「なるほどなあ」死柄木が少し笑った。「じゃあ——詰んでる」

 

 その瞬間、出入り口が爆発した。

 

 扉が吹き飛んだ。

 

 光が差し込んできた。

 

 「——もう大丈夫」

 

 低く、静かな声だった。いつもの高らかな宣言とは違う。怒りを押し殺したような声。

 

 「私が、来た」

 

 オールマイトが立っていた。

 

 死柄木の手が止まった。リアはその隙に一歩引いて、仲間の前に立った。甲冑の胸当ての一部が、崩れて落ちた。

 

「……コンティニューだ」

 

 死柄木がぼりぼりと首を掻いた。

 

 リアは崩れた甲冑の破片を見た。

 

 あの数秒、死柄木の崩壊を受け止めながら、剣の周りに何かが走った気がした。あの感覚——廃墟ゾーンで感じたものと同じだ。重力に押しつぶされた時と、崩壊に晒された時。

 

 極限の状況で、何かが動く。

 

 まだ掴めない。でも——確かに、そこにある。

 

 オールマイトと脳無の戦闘が始まった。

 

 轟が氷で脳無の脚を封じた。爆豪が飛び込んで黒霧を捕らえた。切島が「コミックかよ……!」と叫んだ。

 

 リアは生徒たちを後方へ下がらせながら、オールマイトの戦いを見ていた。

 

 圧倒的だった。脳無の「ショック吸収」の個性を、数の暴力でねじ伏せていく。打って、打って、打って——

 

「ヒーローとはな」

 

 オールマイトの声が響いた。

 

「常にピンチをぶち壊していくものだ!!」

 

 最後の一撃が、脳無を空へ吹き飛ばした。

 

 死柄木が舌打ちした。

 

「……ゲームオーバーだ」

 

 黒霧がワープゲートを開く。死柄木が振り返りもせずに歩いていく。

 

「今回は失敗だったけど」

 

 その声は静かだった。さっきまでの子供っぽさが、少し消えていた。

 

「今度は殺すぞ」

 

 靄が消えた。

 

 広場が静かになった。

 

 麗日が隣でへたり込んだ。切島が大きく息を吐いた。緑谷がオールマイトの名前を呼んだ。

 

 リアは立ったまま、崩れた甲冑の破片を見つめた。

 

 民を守った。仲間を守った。だがエクスカリバーは使えなかった。甲冑は傷ついた。

 

 十分ではない。まだ、遠い。

 

 でも——あの感覚は、確かにあった。

 





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