作者はfateガチにわかです。ガバガバ設定になると思われます。
ご注意ください。
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性があります。ご注意ください。
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USJの翌日、雄英高校は静かだった。
授業はなかった。事情聴取と健康確認のため、生徒は順番に呼ばれ、残りの時間は教室で待機する。普段は賑やかな1年A組が、珍しく落ち着いた空気を纏っていた。
リアは窓際の席で、砕けた甲冑の破片を手のひらに乗せて見ていた。
死柄木の崩壊が削り取った金属の欠片。親指の爪ほどの大きさだ。青と銀、その境目が崩れている。
騎士の甲冑は盾でもある。これが砕けたということは——まだ、足りないということだ。
「リアちゃん」
麗日が隣の席に座った。
「昨日、助けてくれてありがとう。梅雨ちゃんのとこに割り込んでくれて」
「民を守るのは当然だ」
麗日がくすっと笑った。
「そういうとこやよね、リアちゃんって」
「何がだ」
「ありがとうって言われたら、普通は『どういたしまして』とかって言うやん。でも『当然だ』って言う。……でもそれが、なんか安心するんよね」
リアは少し考えた。
「守ることは義務だ。礼は要らない」
「うん。それがリアちゃんらしい」
麗日が窓の外を見た。空は晴れていた。
「怖かった? 昨日」
「……怖い、か」
死柄木の手が甲冑に触れた瞬間を思い出す。崩壊が進む感触。あと数秒で貫通していた。
「怖いかどうかは分からない。だが——間に合わなかった場合のことは考えた」
「そっか」麗日が小さく頷いた。「私は怖かった。手が震えてた。でも……リアちゃんが前に立ってくれたから、動けた気がする」
麗日の声は静かだった。いつもの明るさとは少し違う、芯のある声。
「リアちゃんがいてよかった。ほんとに」
リアは甲冑の破片を握った。
民の声が聞こえる場所で戦う。それが騎士だ。仲間の声が聞こえた。それで十分だった。
廊下に出ると、緑谷が壁にもたれて包帯だらけの腕を見つめていた。
「有斗さん」
「……怪我の具合は」
「あ、はい。リカバリーガール先生に治療してもらって、だいぶ良くなりました」緑谷が少し苦笑いした。「でもまた怒られましたけど」
「当然だ。治療の度に消耗させるな」
「……そうですよね」
緑谷が包帯を見た。黙っていた。それから、ぽつりと言った。
「昨日、有斗さんが死柄木さんの前に出た時……あれ、止められなかったですよね、エクスカリバー」
リアは答えなかった。
「あの距離で使えば、後ろの僕たちも巻き込まれてた。だから使わなかった。……そういうことですよね」
「そうだ」
「俺も同じです」緑谷の声が少し変わった。「個性が制御できないから、使い方を間違えると仲間を傷つける。だから使う場面を選ばなきゃいけない。でも選んでる間に……間に合わないことがある」
リアは緑谷を見た。
この少年は、ちゃんと考えている。痛みの中で、正しく考えている。
「それが今の私たちの限界だ」とリアは言った。
「だから鍛える。制御できるようになるまで」
「……はい」
「急ぐな。壊れてからでは遅い」
緑谷がゆっくり頷いた。今度は、素直に。
事情聴取から戻ると、教室では切島と上鳴が何か話していた。
「いやマジで有斗さんすごかったよな! あの甲冑で死柄木の個性受け止めてさ!」
「あれ即死もんじゃん普通……」
「俺も最初そう思ったけど、ちゃんと計算してたんだよな。後ろに俺らいたから個性使えなかったってことでしょ」
切島がリアを見つけて手を振った。
「有斗! お疲れ! 昨日マジかっこよかったぜ!」
「そういうものではない」
「いや絶対そういうものだって! 俺なんかさ、正直あの場面で足すくんでたんだ。死柄木が来た時。個性使おうって思ったけど体が……」切島が少し俯いた。「爆豪は黒霧に突っ込んでいったのに、俺は」
上鳴が「切島……」と言った。
「それが今の俺の現在地だと思って。もっと強くなりてえ」
リアはしばらく考えた。
「昨日、相澤先生を見ていたか?」
「え?」
「あの人は怖くなかったわけではないはずだ。それでも一人で飛び込んだ。怖くて足がすくむことと、それでも動くことは別の話だ」
切島が目を見開いた。
「……そっか」
「お前は最後、オールマイトをサポートしに動いた。足がすくんでいたとしても、最後には動いた。それで十分だ。今は」
切島が、じわりと目を赤くした。
「……なんか、すごい刺さった。ありがとな、有斗」
「礼は要らない」
上鳴が「リアさんって不思議な人だよなあ」と呟いた。
放課後、相澤が教室に顔を出した。包帯だらけで、松葉杖をついている。それでも目は鋭かった。
「お前らに言っておく」
クラスが静まった。
「昨日の経験は、まだ早すぎる経験だった。プロが相手にしているものの一端を見た。それは事実だ。だが——お前らは全員生き残った。自分の頭で考えて、動いた。それも事実だ」
相澤が一人一人を見渡した。
「体育祭は2週間後に予定通り行われる。警備を強化した上でな。準備しろ」
それだけ言って出ていった。
教室が少しだけざわついた。麗日が「体育祭……!」と声を上げた。芦戸が「生きてたらイベントがある、それだけで十分!」と笑った。
リアは立ち上がり、サポート科への依頼書を鞄から取り出した。昨夜書いたものだ。
甲冑の修繕と、改良の依頼。崩壊の個性に対してどこまで耐えられるか。材質の見直し。それから——剣の柄の部分の調整。あの「感覚」が走った時、柄を握る感触が変わった気がした。その感触を、次に繋げるために。
廊下を歩きながら、リアは昨日を思い返した。
死柄木の崩壊を受け止めた瞬間。廃墟ゾーンで重力に押しつぶされた瞬間。二度、あの感覚が走った。極限の状況で、剣の周りに「何か」が動く。
風王結界は、まだ制御できない。だが——存在を感じ始めている。
触れそうで、触れない。
だが、近づいている。
リアは廊下の窓から空を見た。
体育祭まで、2週間。
民を守るヒーローになるために、騎士は剣を磨く。それだけだ。
グラウンドの端で、夕暮れの中を素振りする。
一回、二回、三回。
剣の周りに「それ」がある。今日は、いつもより鮮明に感じる。昨日の戦いが、何かを揺り動かした。
掴もうとして——
消えない。
「……もう少しだ」
独り言が夕風に溶けた。
グラウンドの向こうで、緑谷がランニングしているのが見えた。包帯の腕で、それでも走っている。
隣で轟が素振りをしているのも見えた。氷と炎、どちらも使わずに。ただ、素の動きで剣を振っている。
リアは小さく息を吐いた。
仲間が、それぞれの道を歩いている。
騎士王の道は孤独ではない——民の隣に立つ、それが王の在り方だ。
もう一度、素振りをする。
夕日が長い影を引いた。
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