「……そんなことわかってるよ」
「だったらなんで!」
「……いから」
「あんだって?」
「……怒んないでね…………め、めんどいから!」
「殺すぞ」
命が掛かっているというのに、惰性を極めたこいつに畏敬の念をもつ。でも、金を貰っているため、逃げるという訳にも行かなかった。
「アーティファクトを持って来いって言われたんだよな…?」
「そうだね……でも、ハスター関連のじゃないと多分ダメだよ?」
「……1つある……私が研究室にいた頃に、秘密裏に蜂蜜酒と笛を手に入れたことがある。あと、輝くトラペゾヘドロン
何があるかも分からない洋館に入って、死ぬよりも、そっちを回収してしまった方が安全だろう。それに詳しく話してないあたり、あっちもどんなものか想像がついていないんだろう」
「どこにあるの、それ?」
「……やべ、研究室だわ」
「ダメじゃん、え、てか『輝くトラペゾヘドロン』ってヤバいやつじゃね?」
「………………やばいやつだね」
すっかりと忘れてしまっていたが、あれはニャルラトホテプなどの神格を呼び出すことができてしまう。
「え?てかなんで持ってんの。私のやつよりやばいんだけど。」
「……私が姿をくらましたことで、恐らく調査が入っただろう。その時に、もし……もし『輝くトラペゾヘドロン』が保管されている場所を発見された場合!国は、これを所持していた私を危険視し、他にも保管していないかを確認する。そして、危険なものを持っているのにも関わらず、あっさりと死を選んだ私の事を訝しむ!そうなったら、私の事が捜索されるのも時間の問題だ」
改めて口に出すと、そのやばさがわかる。もし見つかっていた場合、ライカも私を捕まえるために協力しているのではないかと、頭に過ぎる。
まだ国に見つかっていないとしても、星の智慧派に限らず、宗教団体のスパイにバレた場合、絶対に盗まれる。こんなことをしている場合ではない。研究室に戻り、蜂蜜酒なども一緒に盗み出すしかない!
「すまないが、協力してくれ。」
「絶対にヤダ!!!」
仕方ないか……私は『黄の印』を取り出す。彼女はそれがなにか分からなかったらしいが、見てはいけないものだとは理解できたのだろう。
彼女は、目を瞑りながらこちらに手を振りかざす。衝撃波がこちらを襲い、洋館の一部が削られる。彼女は目を瞑っているため、正確な位置は分からないのだろう。私は、そこら辺に落ちている石を散らかすように投げていた。だが、私は彼女を舐めていたのだろう。突如として指に激痛が走る。突然の痛みに声が我慢できなかった私は、その後、衝撃に襲われた。
「ハハッハ、残念だったね。君のことを仕事に参加させるようになった時……それを渡しただろう?覚えてるかは知らないけど。まぁいいか……それはね、呪われた銀の指輪って言ってね。そのまんますぎるけど、名前の通りに呪われているんだよ。……裏切り者の行動に対して、罰を与えるために。フフ」
肉体の保護の呪文を予め唱えておいたが、これをはめた状態での詠唱だった。だから、肉体の保護も効かなかったのだろう。
「熟練の魔術師はね、大体が『肉体の保護』を使えてしまう。でもね、ある条件を満たすと物理的な攻撃は効くんだよ!それは、呪いを持ったまま、それを唱えることだ!」
気持ちよく語っている彼女の目線の場所に門の創造で『黄の印』を出現させるか……?いや、それはダメだ。あれは、見せながら、呪文を聞かせないと効果がない。いや、まだだ!神話生物に変身してしまえば!いや、ダメだ。インスマスとビヤーキーごときにしかなれないのなら、やるだけ無駄だろう。せめて、シャンタクレベルではないと。
「考え事は終わったかい?じゃあ、また消させてもらうね」
頭を押さえつけられながら、呪文を聞かされる。自分の記憶がなくなり、自分が自分で無くなってしまう感覚だ。これをされる時に思い出す。ああ、これは''何回目''だっけ?
『黄の印』持ってんじゃねぇか!