イゴーロナクは、私に向かって手を伸ばしてくる。それは獲物を刈り取るために、相手を確実に殺すように伸ばしてくる。あの魔術師は、死んでも迷惑を掛け続ける。どうしようもないな。
その一撃を避けることができた私は、銃火器でその醜く爛れている腹を撃ち抜く。ぶちゅと音が聞こえた気がする。そんなわけはないが、スライムを握りつぶした時に感じるあの気持ち悪さを肌で感じた。吐き出したくなるような異臭に耐えながら、臨戦の体制をとる。
退散の魔術は、大体知っている。しかし、唱えるのはこれが初めてだった。失敗したらどうしよう、唱えている間に攻撃されたらどうしよう、そんな考えが頭を巡る。巡り巡った結果、今ここでやらなければ、他の隊員に迷惑がかかってしまう。だから私がやらなくてはいけないという使命感に駆られる。
「……私が……やらねぇと」
呪文を唱えた時、声にならない声が叫び渡る。思わず耳を塞いでしまった。
あいつを退散したあと、今まで気が付かなかったが、吐き気を催すほどの異臭が、辺り一帯に広がっていることに気がついた。
これに耐えることは難しく感じた。どこかないかと探し、用水路に盛大に吐く。その様子を咎める者も誰もいなかった。イゴーロナクのせいではある。あいつのせいではあるが、あいつのせいではない。あれを退散させたあと、1階におりた。
呼びかけても誰も返事をしない。敵がいると思い、すぐに警戒をする。しかし、それは無駄なことだった。その惨状を確認した時、敵はもう既に去っていて、仲間は全員死んだことがわかった。
探しても見つけたい痕跡は何も見つからない。血と銃弾の痕跡だけだ。鑑識を呼べば、話は変わってくるのだろうか。いや、変わらないだろう。恐らく、神話生物。それも、神レベルの。それを倒すことは、奇跡に近い。そして、ニャル以外の神は、弄ぶということも知らない。弄ぶ……閃いた、閃いてしまった。
あの場所にまた赴いた。そこで気がつく。手と足が胴から引きちぎられていなかった。少しでも引っ張れば、ちぎれてしまいそうなほどのバランスを保っている。それにプラスして、血で文字が書いてあることに気がついた。そこには『また頑張りましょう』という言葉が書かれていた。
あいつは、俺たちのことをどこまでバカにすればいい……あの邪神への憎しみが強くなる。
消す。俺が生きている間は地球から追い出してやる、絶対にだ!
ってなこと思ってんだろなぁ〜、あいつ
あー可哀想、思ってないけど。