消し飛んだ、仲間の血肉を浴びた、生暖かった、食べてみたい衝動に駆られた、まずかった、案外いけるものだった、正気に戻った、吐いた、共に潜入した仲間が死んだことに今気づいた、また吐いた、そして気がつく、騙されたと、最後に応援を要請しとかないとな……
あの日が始まりだった。警察官として真面目とは言えない法の取りしまりをしていた。めんどい時は無視をして、めんどくない時でも無視をして、それが祟ってクビになる可能性もあったが、権力争いをするのがものすごく嫌だった。
怠惰を極め、上司の命令を無視するいつも通りの日々を送っていた。なにか面白いことないかなーと青く澄んだ空を意味もなくただ眺めていた。そんな時だった。応援要請が入る、ただ事じゃない様子だったので、急いで向かう。
「上司、これヤバくないすか。応援要請の時の声、やばかったですよね」
「やばいよ、これ。てか、君来たんだ、珍しい」
「ええ、交番で待機でも良かったんですけど、たまには来ようかなって、後輩に譲りましたよ……優しいな、俺って」
「それ……普通ね」
上司と雑談を交わしながら、目的地に到着する。車の中から地面に足をつけると、身も毛もよだつような感覚がゾワリと突き刺さる。上司も感じたようだ。逃げ出したくなるが、仕事であり、ほかの人員がまだ到着していないことから、私たちが対処するしか無かった。
待つべきだったのだろう。いや、待つのが正解だった。だが、恐怖に当てられ、判断力が鈍ってしまった私たちは、歩を進めてしまった。
商店街の中に入り、警察官の死体を目撃した。仕事上、死体はよく見る。だが、あまりにも冒涜的な死に方だった。死体の1部がもう腐り始めている。早すぎる、どんなに早くても1日はかかる。なのに、なぜ!もう腐ってんだ。
「帰りましょう、上司、帰りますよ。応援を待ちます。ここは危険です。……上司?」
「君は先に行きなさい。振り返るなよ、行け、速く行くんだ!」
珍しかった。今まで声を荒らげたことがないあの人が声を張り上げるだなんて、珍しかった。だからこそ、わかってしまう。あの人は死ぬんだと。叫び声が聞こえた。何度も聞こえた。段々と小さくなっていく、命が終わっていく音が、声が聞こえてしまった。
後ろを振り返る。かなり遠くまで逃げてきたようだった。まだ冷静でいれるうちに応援要請をする。だが、普通にやっても犠牲者を増やすだけだった。国はこのことを知っているのだろうか、知らなかった場合がまずい。上でお高く止まっている官僚共は知らない。現場を知らない。そんな奴らを動かすには、たった一つやればいいことがある。
ここら辺に住んでいる住民を鏖殺することだ。それをSNSで上げでもすればいい。そして、そこに今回の出来事を載せる。魚のような生臭さが残る人間が襲いかかってきたと。
あのとき、上司に守られ、振り返るなと言われた時、1度だけ振り返ってしまった。その時に見てしまった。魚のような人間が佇んでいたことを。