何処を見ても日本が終わるなどと騒ぎ出す奴らが存在する。うるさいなと思いながら、コンビニに寄る。バイトがバックれたのか知らないが店長がワンマンでまわしていた。この炎天下で冷房がついているといっても、暑い事に変わりは無い。傍から見てもわかるほどに汗をかいていた。
飲み物と食べ物、そして熱中症対策の商品を買う。外に出ると、先程よりも騒ぎ声が大きくなっていることに気がついた。こいつらは馬鹿なのか?騒いだって何もない。だが、騒ぎたくなる気持ちもわかってしまった。人混みに目をやると、まるで同じ人間とは思えないほどに鱗や魚のような頭、ギョロりとした瞬きをしない大きな目、弛みに弛みきった首の肉。あれは人間ではない。ここから逃げ出した方がいいのかもしれない。そう考えるよりも先に足は反対方向に動いていた。
SNSをみる。何やら、日本が終わるなどといった信じるわけもない嘘が散乱していた。しかし今の私はそれを信じた。あれを見てしまった。同じ生命体とは、同じ世界の住民とは思えないあの気色の悪い魚人間を。そうだ。もしかしたら、他の人はあれをSNSに投稿したのかもしれない。そう思い、思いつく限りのあれの特徴で検索をかけた。しかし何故だ?何故あれを皆投稿しない。いまの時代、くだらないことでも投稿する時代のはずだ。いや狂気的な、あの冒頭的な生物関連は投稿すら出来ないように設定されているのか?
いやそれはない。例えそうだったとしても、制限することは絶対にできない。抜け道を使うやつもいたはずだ。ではなぜ……
そんな時だった。家のチャイムが鳴り響く。誰かは知らない。ここは築50年のボロアパート、わざわざドアまで行くのが億劫だが、音を立てないようにして、居留守を使える選択肢を増やしておく。そろりそろりとドアに付いているスコープを覗き込んだ。そこには異教の頭がこちらをスコープ越しに覗き込んでいた。
息ができなかった。殺される、そう思った。私は貴重品と個人情報となる全てと包丁などの武器を持って窓から逃げ出した。その時、1つの考えが思いついた。皆、投稿しないんじゃない。投稿できないんだ。それは何故か、それは目撃者は全員消されていたから。思い出すことすら憚られるような恐怖が襲ってきた。
だが幸運だったのか?私は。この恐怖心をかき消す程の恐怖が私に襲いかかってきた。私の中に何かが入り込む。それを感知した時、私の記憶と意識は無くなった。
目を覚ました時、あの不気味な魚人間の死体と顔をベールで隠した男女の姿があった。あの時のことはよく覚えていない。でも私が殺した。それが本当で、私が殺していない。それも本当だ。
何がなんだがわからない。死んでしまった方が楽なのではないかという程に意味がわからない。本当に日本は終わってしまうのか?
知らない男の精神を乗っ取ったあと、インスマスと銀の黄昏団員を処分する。そろそろ本格的に不味くなってきた。ハスター教団は徹底的に潰したらしいが、それが間違いであったと言わざるを得ない。睨み合いのままにしとくべきだった。いやどちらも壊滅させるほどの戦力を送り込んだはずだ。ではなぜ?不確定要素があったに違いない。それはなにか、ニャルラトホテプだ。あれが今回の諸悪の根源だ。
銀の黄昏は兄弟団よりも戦力が勝っていた。団員も多かった。だから、あの時潰したって意味がなかったのだ。
……戻るべきなのかもしれない、過去に
あの時、もっと早く乗っ取るべきだ。兄弟団が上陸する少し前の総理を乗っ取るべきだ。そうしなければ破滅することが今回の出来事から判明した。
赤い閃光が、爆撃が、悲鳴が混在するこの時間から逃げ出した。
あれ、大いなる種族って時間を支配しているからOKだったはず……だよな。時間逆行は