【第一章完結】もしもカヤに親友がいたら   作:あめざり

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なんか凄い伸び方をしてビビってる


第十六話 エピローグ

"起き上がる"

 

"テレビを付ける"

 

『……クロノススクールです、朝のニュースをお届けします。早速、先日防衛室との癒着が判明したカイザーコーポレーションについてですが』

 

"コップを手に取る"

 

『現在連邦生徒会内部では厳しい処罰を与える方向性で会議を進めているとの事です。尚、連邦捜査部シャーレの先生の先日の発言もこの決定に大きく関わっている様です』

 

"顔を洗う"

 

『それに加え子ウサギ駅地下にカイザーコーポレーションの巨大サイロは連邦生徒会の所有物として今後の地域防衛に活用していくとの方向性が発表されました。続いて、以前よりヴァルキューレにて治療が行われていた不知火カヤ元連邦生徒会長は……』

 

"歯を磨く"

 

『懸命な治療の末一命を取り留め、矯正局に収監されているとの事です。公安局による取り調べにおいては『全て私の独断であり、私の責任である』と発言していたとの事です』

 

"スーツを着る"

 

『そして元連邦生徒会所属、伴篠ウツツ氏は連邦生徒会を自主退学した後、その行方は今も不明との事で……』

 

"矯正局に向かう"

 

***

 

受付にてシャーレの身分証を提示すると、ヴァルキューレの子が現れ、そのまま面会室まで案内される。

道中、「相手は凶悪犯罪者なので話には過剰に受け答えしない様注意して下さい」なんて、スリラー映画みたいな事を何度も言われた。

だが私は、そんな言いくるめられて使われるなんて心配は一切していない。

防衛室で交わした会話での違和感、それと一人の少女が抱えている重荷を理解する為に私は今日ここに訪れたのだ。

 

しばらく歩き、ガラス張りの部屋へと通される。

そこには一つの机と、二つの机のみが置かれていた。

奥のドアが軋みながらゆっくりと開き、その中から一人の少女があらわれる。

 

「やはり貴方でしたか、先生」

"……カヤ"

 

その姿は、一言で表すのであれば『悲惨』であった。

右半身は焼け爛れ、その影響か右目に眼帯を付けている。幸い左目は開けられる様だが……

そして何より印象的なのが、彼女の足。

爆発による下半身麻痺とは聞いていた、理解はしていたはずなのに、彼女が乗っている車椅子を見ると、どうしようもない気持ちが押し寄せてくる。

 

「さて、一体何を話に来たのですか?矯正局に入ってまでお説教は……椅子が邪魔ですね。あの、看守?私車椅子なので椅子必要ないんですけど、早く退けてもらえますか?あの!聞こえてますよねぇ!」

"私が退けるよ……"

 

話すな、関わるなと言われているのだろう。

だからカヤの訴えを無視する看守の子が悪い訳ではない。

ただどうにも見ていられなくなったので、私は向かいの椅子を持って端の方に置いた。

 

「ありがとうございます。どうも困った事にうちの看守はケチでして、良くしてやった恩を忘れたのでしょうか」

 

笑顔でそんなことを溢すカヤ。

言っている内容は酷いものだがどうも悪意がこもっていない様に感じる。

どうやら冗談を言う余裕は出来たらしい。

 

「まあそんな話は置いておいて、本題に入りましょう?」

"そうだね。じゃあ……カヤ、どうして自爆の事、他の子達に話してなかったの?"

 

始まりは些細な違和感だった。

ユキノを始めとするFOX1小隊の反応、冷静になり思い返してみればあれはおかしい。

何故、自爆を計画していると聞いて一瞬困惑していたのか。

それにウツツの足止めもおかしい。

そんな自爆装置が存在しているのであれば、計画が失敗した時点で撤退し、カヤに起爆させ証拠を隠滅させれば終わる話だ。

 

「……私もあまり何故なのか分かって居ないんですが……多分、巻き込みたくなかったのかと」

"それは……ウツツの事を?"

「それもありますが、FOX小隊、連邦生徒会役員、幹部……誰一人としてこんな作戦に巻き込むべきではないと思って居たのだと思います」

 

頭に一つ疑問が浮かぶ。

それならば既に、ウツツとFOX小隊は巻き込んでいるのではないか。

てっきり自爆は作戦が失敗した時の最終手段と考えていたのだが……

 

「不思議そうな顔をしていますね。そうだ、せっかくですしお伝えしましょうか。この作戦の全貌と言うものを」

 

私だけではない、その言葉に、看守も明らかに動揺していた。

何せカヤは作戦……犯行について何も語らなかったと言う。

公安局ですら引き出せなかったそれを、こんな面会の場で語ると言うのだから動揺もするだろう。

 

「さて、始まりは空が赤く染まったあの日。先生はカイザーの兵士に捕えられ、同時にウツツも捕えられた……あれが私とカイザーの共犯だったと言うのはまだ話していませんが……まあ大方予想はついていたでしょう」

"うん、君が残した『書類』があったから"

 

そう、彼女は全ての書類を焼いた訳ではなかった。

表面だけ焦げた金庫に入った分厚い書類、その中にはカイザーとカヤの癒着を示すものが複数含まれていた。

それさえ読めば何となく察しはつく。

 

「そしてあの時気付いたのです。各地であらゆる問題を解決し、あの女が選んだ貴方であろうと、少し策を練り実行すれば拘束くらいはいくらでも出来る。今までも感じていた不安が一気に現実になったのです」

"今までも私の事はあんまり信頼してくれていないんだね"

「いえ、信頼していないなんて事はありませんよ。ただし超人である前連邦生徒会長ですらミスを犯した。貴方がそれを超える超人の可能性に賭ける程、リスク管理のできない間抜けではありませんから」

 

心の中で"酷いこと言うな"と少し思いながらも、その話には納得感があった。

と言うよりも等身大になったと言うべきか。

彼女がやってるのはただのリスクヘッジ、重要な立場の人間に問題が生じても大丈夫な様にする為の対策にすぎない。

そこに連邦生徒会長と言う主語がついたから、ここまで大事になっただけの事……

 

「そして同時に理解した、カイザーの危険性。そこで私は思いつきました。邪魔なら潰して仕舞えば良い……単純すぎて笑えるほどですが、いくつか問題もありました」

 

「増える失業者、名義を変え立て直しをされる可能性、連邦生徒会の反対……ですが私は、これら全てを解決する神の一手を思い付いたのです」

"それがあの地下サイロ爆破?"

「ああ、あれはダミーですよ」

 

その言葉に驚きを隠せない。

どうやら私だけでなく看守もらしい。

 

「先生、そもそも貴方はどうやって地下サイロ爆破の計画を知ったのですか?」

"それは……確か非通知の電話がかかってきて……!"

 

頭の中で合点がいった。

考えてみれば他に誰がいる?

連邦生徒会内部の極秘作戦の情報を知り、それを漏らすことのできる人間が。

 

"……あれは、カヤがかけてきたんだね"

「ええ、中々推理が上手いですね先生。探偵ものの小説でも書いてみては?」

"それは遠慮しておこうかな……"

「それはそれは、残念です」

 

では何故、カヤが電話をかけてきたのか。

あのまま作戦を続けていれば、サイロの爆破は成功しカヤの思惑通りになっていただろう。

それなのに何故、わざわざ作戦を失敗に導く様な事をしたのだろう。

そんな疑問を見透かした様に、彼女は話を戻す。

 

「さて、話を戻して……一度冷静になって考えてください。サイロの爆破程度でカイザーの軍事力が完全に無くなるなんて事あり得ますか?」

 

確かに彼女は言っていた。「カイザーは名義を変えて立て直しを図る可能性がある」と。

他にも事業を複数持つカイザーが再起不可能なほど追い詰められる?大規模とは言えサイロ一つで?

 

"……ありえない"

「ですからあんな作戦、はなからダミーなのですよ。本命は……貴方です、先生」

 

何かが分かるたび分からない情報が提示される。

それにしても私が?彼女は私の事を頼った事なんて……ウツツの事を託したあの時以外……

 

「貴方はお人好しで、生徒のためなら何でもしてしまい、そして何でもできる権力を持っている。凄く都合が良い相手です。私は貴方の生徒になった覚えなどありませんが、貴方は私の事を自分の生徒だと思っているのですから、それを使わない理由はないでしょう?」

"でも私は、君に生徒として頼まれた事が無かったと思うんだけど"

「頼み事なんてする訳ないじゃないですか。私が好きなのはですね、先生……理解もさせず、思惑も見せず、それどころか偽のゴールを目指させる。そんな一局です」

 

カヤは動く方の手で口を押さえながら笑いを放つ。

喉も少し焼けているのか、少し痛そうな顔をしていた。

 

「例えば……生徒が命をかけて潰そうとしたと言う理由があれば、貴方は喜んで権力を使う事でしょうね」

"……まさか"

「貴方は相手が生徒の為であれば動く。のであればその理由を作ってやれば良い。矯正局でもニュースくらいは見れましてね、どうやら貴方は私の思う様に動いてくれた様です」

 

実際私はあの書類を見た時、罪悪感を感じた。

私が何もしていなかったから生徒に無理をさせてしまった、と。

だからこそこんな事を二度と起こさない様に、権力を行使してカイザーに対する処罰の厳罰化をした訳だ。

 

"それでも……君が犠牲になる必要はなかったんじゃ"

「しかしそうでもしないと私以外を巻き込んでしまいます。私とカイザーが癒着していた証拠がなければ、地下サイロ建設を見逃していた連邦生徒会全体の責任になってしまう……それだけは避けなければいけませんでした」

 

「私が責任を負う」といつもの様に言えればどれだけ良かっただろうか。

彼女が以前言った様に、私が同じ状況にあれば同じ事をするだろう。

自らが犠牲になるなら安い、なんて考えてしまう。

 

「……先生、そろそろ」

 

看守の子が私の肩を叩き、面会終了の旨を告げる。

もう少し話したいこともあったが仕方ない、私はゆっくりと腰を上げた。

車椅子を押されカタカタと言う音を立てながら去っていくカヤ。

そういえば、と一つだけどうしても聞きたい事があったのを思い出す。

 

"ねえカヤ"

「はい、どうしました?」

"ウツツが何処にいるか、知ってたりしない?"

 

***

 

ブラックマーケット、そこはならず者達以外にも、様々な事情を抱えている者が多い。

カヤもウツツが行きそうな場所は知らない様だったが、この状況でかつ見つかっていないのであればブラックマーケットが有力だろうと助言してくれた。

その予想が合っている事を信じ、大通りから路地裏まで隅々調べ始める。

 

あの時、私はカヤから託されてしまった。

全てを一人で背負おうとした少女の、唯一手からこぼしてしまった友人。

カヤが私にした、最初で最後のお願いだ。

先生として、叶えないわけにはいかないだろう。

 

「…………先生?」

 

暗い路地の裏、ネズミの住処になっていそうなじめじめとした空間に彼女はいた。

彼女は極めて不思議そうな顔で私を見つめる。

 

「……今さら、何をしに来たんですか」

"カヤに託されたんだ、君の事を”

 

彼女は路地の壁へとうずくまり、力なく横たわっている。

 

「託されたとして貴方に何ができるんですか。いや……何でもできますよね、それなのに何もしなかった」

"そうだね……だからここに来たんだ"

 

この一連の事件は私の未熟が招いたものだ。

今更成長してだなんて、そんな甘い事を言うつもりはない。

だがせめて、託されたものを繋ぐくらいは精一杯やろう。

 

"……ウツツ"

 

"シャーレに来ない?"

 




次回は掲示板回です
その後失踪しなければ2章に入りますね
それとプロット分書き終わったのでおまけ消します
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