もしもカヤに親友がいたら   作:あめざり

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オリ主はいずれ描く


第一章 アンティオキアの手榴弾
第一話 カヤという子


子供にとって特別な季節、春。

今年も春がやってきた。

青の文字を冠する生活の始まりは、桃色の桜で彩られている。

私も今年から高校1年生だ。

所属は連邦生徒会、この学園都市キヴォトスの中枢である。

絹のように白い制服を纏い、真っ直ぐになるようネクタイを結ぶ。

狂いのないよう、しっかりと。鏡の前に立ちながら、自分の身なりを何度も確認した。

肩にかからない程度に整えた水色の髪、長すぎると言う事はないだろう。

琥珀の様な色をした私の目、化粧は目立ちすぎない程度に。

気にしすぎだと言うものもいるかもしれない。

だが私の立場はそこらの生徒、学園とは訳が違うのだ。

なんて言ったって連邦生徒会はキヴォトスを守り、管理し、より良くする為の組織。舐めた態度で仕事が務まる場所ではない。

そして、態度と言うのは身なりに出る。

全身の最終チェックを終えた私は革製の鞄と2丁のショットガンを持った後、誰も居ない部屋に「行ってきます」と残し、私は家を後にした。

 

***

 

「ねえ、良ければ友達になってくれない?」

この言葉は、入学早々私に近づいて来た1人の新入生が発した一言だ。

何故「友達」なんて言葉が出てくる?

分からない、連邦生徒会長はここの事を「厳しい場所」だと、「キヴォトスを背負っている自覚を持て」と言っていた。

それに関して私は完全同意である。だが他の子達はそれを聞いて何故、まだ自分がキヴォトスの生徒で居られると思っている?

そんな喉元まで来ていた毒を飲み込み、その場では当たり障りなく返し、連絡先の交換を行った。

今悪い印象を持たれても良いことなどないし、連絡先さえあれば困った時に頼れるだろう。

……私の目標は連邦生徒会の幹部、あわよくば連邦生徒会長の座に立つ事。

人脈はあればあるほど良い。

そう言った意味では、彼女を見習うべきなのかもしれない。

どんな相手にも使い道はある、彼女もそれ目的で近づいたのかも知れないし……

心機一転、私は手当たり次第声をかけて見ることにした。

出会い頭に会釈をし、あまり慣れていない様な雰囲気を纏いながら名前を聞く。

反応が良ければその場で情報を引き出し、そうでなければ連絡先だけ交換する。

話しかけられるよりも早く話しかける。そうする事で会話において主導権を握り、思うがままに相手を動かせるのだ。

それにしても馬鹿ばかりである。ヘラヘラヘラヘラと笑いながら受け答えをし、背筋が曲がっている生徒も多い。

それが周りにどの様な印象を与えるのか分かっていないのだろうか?

不満はある。だが逆に、そう言った部分がちゃんとしているかを見極めれば、優秀な子と関係を築ける可能性が高いと言う訳だ。

周りを見渡す。大半の子はパッとしないが、その中に1人目立つ子がいた。

綺麗に手入れされた桃色の髪、制服も姿勢も完璧と言えるほど整っている。

迷わず彼女の元へ向かい肩を叩く。

 

「はい?何か用ですか?」

 

前が見えているのかも分からない細目で彼女は私の顔を見る。

手にはペンとメモ帳、何か書いている最中だったのだろう。

 

「何書いてるの?」

「大したものではありませんよ。必要事項を忘れないように為にメモしていただけです」

「真面目だね。私はそんなこと出来ないし」

 

大嘘だ。

私も先輩の話していた内容などは逐一メモしているし、話した相手の性格などもまとめている。

こっちの方が話を繋げやすいだろう。そう考えての嘘である。

 

「……そんなくだらない会話をするならどこかに行ってもらえますか」

 

だがそんな嘘を、彼女は『くだらない話』と一蹴した。

そして戸惑いを隠せない私を見て、心底面倒そうな顔をしながら言葉を続ける。

 

「一体貴方はここに何をしに来たのです?お友達ごっこ?青春ごっこ?それなら進学先を間違えましたね。ここはキヴォトスの中枢であり砦です。私達には今後キヴォトスを守る義務があるのですよ?もしも生半可な覚悟でここに来たと言うなら……いや、こんな話をするのも酷ですね。とにかく、私にこれ以上関わらないで頂けますか」

 

息も付かせない否定と説教の中から、私は同じものを感じ取っていた。

少なくとも、彼女はキヴォトスを守ると言う目的を持ち連邦生徒会に入ったのだろう。

ならば、もう良い子ちゃんぶる必要は無いな。

 

「失礼、私は貴方のことを舐めてたみたい」

「……そうですか」

「だからもう一つ質問をしたい。……貴方は、キヴォトスの現状をどう見る?」

 

一瞬だけ彼女の目が開く。

翡翠のような緑だった。

 

「……くだらなくは無いので答えましょう。今のキヴォトスは治安の悪化や非行生徒の増加だけでなく、カイザー等の企業勢力も確実な脅威として抱えている……その癖連邦生徒会はこの体たらく。これではイレギュラーが起きた際の対応ができません」

「私も同感。だから私はこう考えてる。連邦生徒会の幹部又は生徒会長の座に圧倒的な能力を持つ者が座るべきだ、って。例えば……事務作業を1人で全部こなして人望も厚い、先の先の先を読み続けられるような人間が」

「流石にそれは無理筋でしょう。そんな超人が居たらそれはそれはありがたいですが、そんな超人が居ないから今のキヴォトスになっているのですから」

 

さっきまでが嘘かのように会話が続いた。

いや、会話と言うよりも会議の様な、とても入学1日目にするものではない話を繰り返す。

話せば話すほどわかる、彼女がどれだけキヴォトスに対し真摯に向き合おうとしているのか。そしてその先に見つめている未来が……

 

「なら私たちがなれば良い」

「勝手に私を巻き込むのはやめていただけますか……」

「てっきり、なりたいと思っていたんだけど」

「いや……私よりも適任は居るでしょう。私はあまり人に好かれるタイプではないと言うか、人の上に立つほどの能力もありませんし」

 

一見すると生真面目で頑固、何か野望がある様にも思える。

だが彼女は相当自尊心が低いらしい。

勤勉な下っ端がせいぜいだとでも思っているんだろうけど。

 

「あんまり、自分を卑下するものじゃないよ」

「自戒のようなものですよ……とにかく、私は連邦生徒会長になる気なんてありませんから」

「そう……でも1人だと困る事もあるだろうから、仲の良い人を作っておきたいと思って」

「さっきから手当たり次第話しかけまくっていたではないですか。まさか全員に断られたのです?」

 

どうやら見られていたらしい。

嘘で塗り固めて媚を売る自分を見られていたのはなかなかに恥ずかしいものである。

 

「そう言うわけでは無いけど……他の子達といても、困り事は尽きなそうだから」

「……私も、同じだと思いますが」

「私はそうは思えない」

 

私の言葉に彼女は深いため息で返す。

少しの沈黙の後、彼女の唇が動いた。

 

「はぁ……貴方、名前は何と?」

「伴篠ウツツ。貴方は?」

「不知火カヤです」

 

名前を言い合い、連絡先を交換する。

有象無象の中に埋もれた彼女を、一番上にピン留めした。

 

***

 

入学式から1ヶ月、休みの無い日々を過ごしてきた。

とは言っても振られる作業が多いと言うわけでもなく、経験と実績を積む為自分から忙しくしていると言うだけだが。

聞くだけだが会議にも出席する様になり、ほぼ理想通りの生活を送れている。

 

……一つ、愚痴を言うのであれば。

 

「カヤ、今日の会議で行ってた話、私達で問題点纏めて先輩に提出しよう」

 

初めて出来た友人?がしつこい。

 

彼女は入学式に何故か私に話しかけ、何故か私に付き纏い、何故か私に大きな期待をしている。

 

「それ、一昨日も言っていませんでした?貴方はどうしてそんなに……」

「言ったはず、連邦生徒会長になる為だよ。もちろん2人で」

「それも聞き飽きましたよ」

 

そう、彼女は何故か私と2人で出世しようと誘ってくる。

ここもしつこいポイントの一つだ、今日の会議よりまとめるべき問題点が多い。

何故こんな事をし続けるのか、それは私にも分からない。

ただ懐かれているだけなのか、それとも私に対する過大評価から来るものなのか。

まだ1月の付き合いである私にはよく分からない。

 

「何か勘違いしている様ですし言っておきますが、私はキヴォトスを良くしたいのであって、立場が欲しいわけではありませんから」

「でもキヴォトスを良くするためにはある程度立場は必要でしょ?」

「それは……そうですが、裏方で十分だと言っているんですよ」

「じゃあ一緒に仕事しよう」

 

そんなこんなで今日も誘いを断れず、彼女と資料作りに勤しむこととなった。

 

***

 

今日は久々に早めに上がり、行きつけの射撃場にて訓練をする事にした。

仕事も大事だが、いざと言う時の武力も同等以上に大事である。

ここ最近は忙しく出来ていなかったため鈍っているとは思っていたが、想像以上だ。

今までは無意識で出来ていた動きにラグが多い、数ヶ月でここまで落ちるものなのか。

 

愛銃の『ファーストドリーム』を握り、射撃場を駆け回りながら視界に入った的を片っ端から撃ち倒す。

この銃はありったけの貯金を叩いて購入した水平二連散弾銃、所謂ダブルバレルショットガンである。

兎に角威力を追求した結果取り回しは絶望的、その上フルオート武器相手に2発の弾で立ち回らなければならない。

ただ近づきさえすれば高威力の2発を胴体に撃ち込み、キヴォトスの生徒であろうと大抵は即沈黙させられる、そんなピーキーな性能の武器である。

 

ベタついた汗を休憩所で拭きながら水分補給、酷使してばかりではパフォーマンスも落ちると言うものだ。

だが同時に、休んでいる暇がないのも事実。

私はあまり頭が良くない、人望を集めるタイプでも無いし、特筆すべき部分のない生徒だと自分でも理解している。

しかし諦めきれない夢があるのだ。

キヴォトスの恒久的な平和と言う夢が。

その為には、人望なんて関係なしに誰もが認めるような超人に成らなければいけない。

キヴォトス一強く、キヴォトス一頭が冴え、キヴォトス一優秀な人間に。

 

ただ、弱音を吐くようで格好悪いとは思うが、自分に限界を感じている。

そこで目を付けた、不知火カヤと言う人間に。

初めは優秀な人脈程度の認識だった。しかし時間が経つにつれ、彼女の優秀さがどんどんと見えてきたのだ。

そこで思考する。

『彼女と2人であれば、そんな超人になれるのでは無いか?』と。

 

だから私は彼女と一緒に仕事する事を何より重視する。

彼女と共に連邦生徒会長の席まで歩めるように……

 

***

 

時計の針が12を指し、連邦生徒会本部の中にはもう人っこ1人残っていなかった。

ここ数日は残業続きだ。

そんな中、二つのキーボードがカタカタと言う音を発している。

深夜の静かな部屋の中に響くその音は、普段よりもうるさく感じた。

 

隣には彼女、伴篠ウツツが座っている。

彼女は猫背で画面を見つめながら、片手間で書類を捌いていた。

毎度思うが、彼女の事務能力は凄く優れている。

マルチタスクが得意なのだろう、このような優秀な人物を間近で見て参考にできると言うのも、私が彼女と共にいる理由の一つであった。

 

一方私は彼女と真逆、根っからのシングルタスカーである。

複数の業務が舞い込むと頭が少し混乱してしまい、パフォーマンスを発揮しきれない。

弱点だと分かってはいる、分かってはいるのだがどうも治せないのだ。

……余計に、何故彼女が私を評価しているのか分からなくなってくる。

邪魔な思考を消すために伸びをして、再度仕事に取り掛かろうとした、その時であった。

 

キーボードのすぐ側に置いてあった電話が、けたたましい音で鳴り響く。

少し驚きながらすぐに受話器を手に取った。

 

『ス、ススケバンの奴らっ、奴らに追われて!アイツら身包み剥がそうと!!』

 

奥から聞こえてきたのは生徒の声、それも酷く慌てている。

……今ここに先輩方は居ない。経験は浅いが私とウツツの2人で対処しなければならないと言うわけだ。

だがこう言った状況でのマニュアルは叩き込んである。

 

「分かりました、携帯の電源をそのまま付けておいてください。位置情報を追いかけますので」

『早く!早くしてくれ!』

 

そしてここからはヴァルキューレに連絡……だが今彼女たちは出動できる状態にあるのか?

時間帯的にもう帰宅している可能性が高い。

そうなるとSRT?いや、あそこは私の権限では動かない。

考えていても仕方ない、すぐにヴァルキューレに連絡を……

 

「カヤ、私のスマホに位置情報を共有して!」

 

私の思考は、唐突に聞こえたウツツの叫び声でかき消される。

 

「え、それは…何故です……?」

「私が助けに行ってくる!」

 

そうとだけ言い残し、彼女はそのまま飛び出して行ってしまった。

色々と思うところはあった。彼女の戦闘力はどうなのかとか、そもそも個人で対応できる案件なのかとか。

だがそんな悩みを断ち切って、私は言われた通り彼女のスマホに位置情報を共有、そして電話先の生徒に声をかける。

 

「今そちらに救助が向かっています。出来るだけ暗い場所に隠れていて下さい。もし見つかった場合は抵抗の意思が無いことをアピールして身の安全を確保、心配しなくても奪われた荷物は必ず回収します」

『わ、分かった!』

「それとあまり大きな声は出さないように、相手に気づかれてしまいますから。なるべく呼吸も整えて」

 

最大限出来ることをした後、今度はウツツの方に連絡をする。

 

「既に位置情報は共有してあります。ただあまり無茶はしないように、すぐに他の戦力も送りますから」

『大丈夫、そこらのスケバンなら私1人でも』

「大丈夫って……貴方ねぇ……!」

『本当に大丈夫だから。カヤは私が居ない間、私の分の仕事も処理しておいて』

 

そうとだけ言って、彼女は通話を切ってしまった。

不安が汗となって体外に溢れる。

それを何とかかき消そうと、まずはヴァルキューレに一報、状況を一通り伝えた後に先輩方に連絡を入れた。

通話に出た全員が驚く、連邦生徒会の1年生が1人で事件現場に突撃したと聞けばそれも当然だ。

良い事ではないのは分かっている。

だがそれでも、私は被害者より、ウツツからの連絡を待っていた。

 

10分ほど経った頃だろうか。

スマホが鳴る。ウツツからだった。

急いで手に取り着信ボタンを押す。

 

「無事ですか!?すぐに救助が……」

『えっと、こちら伴篠ウツツ。加害者と思われる不良6人を無力化、被害者の安全も確保した。今から身柄をヴァルキューレに引き渡す』

 

私の心配とは裏腹に、彼女の声はいつも通りで。

安心感と同時に、無力感が襲ってきた。

 

***

 

翌日、私は表彰を受けていた。

内容は勿論、昨日……と言うより今日の初めに行った事件対応についてである。

先輩もヴァルキューレも居ない中、1年生2人で解決したと言う話はすぐに広まり、私達はすっかり有名人だ。

 

「……私は、何もしていないと言うのに」

 

うるさく鳴る歓声の中で私は呟く。

そうだ、私は何もしていない。

何かしたのは他でもないウツツだ。

彼女が居なければ被害者は不良たちに見つかり、好き放題した後不良も消えていただろう。

基本、こう言った事件は連邦生徒会に連絡が行き、その後書類手続きなどを済ませた後にヴァルキューレに解決を委託する仕組みになっている。

「キヴォトスは各自治区に治安維持が任されているから、そんな理由で作られた制度だった。

だがこの制度のせいで、自治区が対応出来ない時間帯などに事件が起きると、制度上解決までに大幅なラグが生じる。

 

それを彼女は解決した。

連邦生徒会では無く、「一生徒として不良を倒しただけ」と言う理由付けを行なって。

実際、ヴァルキューレが到着したときの彼女は連邦生徒会の制服では無く、古びたアウターを着ていたと言うのだ。

恐らくはどこかのゴミ場に捨てられていたものだろう。

 

……そんなこの事件のMVPは、いまこの場にいない。

不良との戦いで受けた怪我のせいで、しばらく自宅療養との事だ。

無理もない。相手は複数人で高学年、そんな奴ら相手にまともな装備も無しに1人で突撃していったのだから。

私は人混みを振り切りウツツの家へ向かう。

彼女のことが心配なのか、この場にいることが苦しくなったのか、はたまたその両方かは分からないが、とにかく気が狂いそうだった。

 

***

 

昼間、突然家のインターホンが鳴る。

相手が誰なのかを確認する為あざまみれで痛む身体を起こし、玄関の方へと一歩ずつ向かった。

恐らく私の事を心配しに来た先輩方だろう。

そんな事を思いながらドアについたスコープを除くと、予想とは裏腹にカヤが立っていた。

 

「ウツツ……居ますか?」

 

ドアスコープ越しに見る彼女からいつもの笑顔は消えていて、心配気な表情をしながらソワソワとして立ちつづけている。

 

「居るよ。……入って」

 

待たせるのも悪いのでドアを開け、彼女を中に入れることにした。

 

「その、どうですか。具合の方は」

「もう治った。痛くも痒くもないから心配しないで」

「それなら良いのですが……次からは無理をしないよう」

 

引きずりたい足を必死に動かして元気を取り繕う。

なんとか部屋まで辿り着き、ソファに腰を下ろした。

カヤも私の隣に座る。

 

「今日の連邦生徒会は貴方を褒める声でいっぱいでしたよ。昇進もあり得るのではないですか?」

「ならカヤもだね。私だけじゃない、カヤの手柄でもあるから」

 

少し彼女の表情が曇った。

口をもごもごと動かして何か言いたそうにしている。

 

「……私は、ただマニュアル通りの事をしただけですから。評価はされませんし、されるべきでもないんですよ」

 

まただ、カヤはこう言う時卑屈になる癖がある。

恐らく自分の力を過大評価し、そのせいで失敗するのが怖いんだろう。だから『自分は何も出来ない』と言うことにして、そう言う空回りをしない様にする、一種の自己防衛だ。

 

こう言う時、何と声をかけてあげればいいのだろうか。

恐らく彼女は全て私のおかげとでも思っているのだろうし、褒めても嫌味にしか聞こえないだろう。

「私も大したことはできてない」とでも言ってみるか?

いや、これもダメだろう。

彼女にとってそれは情けになる。

 

……そうだ。と私はアレの存在を思い出す。

私はゆっくりと立ち上がった後近くの棚からそれを取り出し、カヤの前へ差し出した。

 

「一体何ですか、この箱は」

「プレゼント。心配、かけたみたいだから」

「見舞いの品のつもりですか?貴方は受け取る側でしょうに」

「いいから、開けてみて」

 

御託を勢いで押し切ると、彼女は申し訳無さそうに箱を開ける。

 

「これは……銃ですか。どうして私に?」

 

その中には、白と紺に塗られた拳銃が入っていた。

この銃は親交の証としていつかカヤに渡そうと思い購入したものだ。

性能はそこらの銃とは桁違い。パーツの精度も非常に高く耐久性も折り紙付き、だが軽量で取り回しの良い逸品だ。

 

「だってカヤ、銃持ってないじゃん。自衛の手段は大事だよ」

「いえそれはそうですが、こんな高級そうなもの……」

「カヤは弱いから。良い銃を持っておかないとね」

「まったくうるさいですね……ですがまあ、その、ありがとうございます。いつかお返しはしますよ」

 

照れくさそうな彼女に対し、「別にお返しはいらない」なんてスカしたことを言ってみようかとも思ったが恐らく言ったところで無駄だろうし、大人しく黙っておくことにした。

 

「それと何度も言うけど、今回の事はカヤのおかげでもあるから」

「本当に何度も……」

「いざという時にマニュアル通りにしっかり出来るのも能力だし、私はそれに助けられた。1人だったらもっと大変だったかも」

 

カヤがまた何か言い出す前に追い打ちをする。

こんなので彼女の自己肯定感が上がるわけもないが、下げさせないことも大事だ。

 

「だから、その銃は感謝と親交の印。大切に使って」

「ああもう……分かりましたよ。これからも宜しくお願いしますね」

 




1話が1年生編、2話が2年生編です。
3話くらいに先生が来て、5,6話でエデン条約と最終編を突っ込みます。
1話に押し込む都合上文字数がアホみたいに増え、投稿が馬鹿みたいに遅れます。
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