【第一章完結】もしもカヤに親友がいたら   作:あめざり

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なんかエタりかけてたら評価バーが真っ赤になってました
感謝感激


第六話 作戦会議

「ではこれより、緊急対策委員会会議を始めます」

 

車椅子に腰を下ろしながら手を叩き、眼前に並んでいる生徒達に向かって声を広げる。

席に座るのは主席行政官に財務室長、体育室長……そして現防衛室長まで。

 

「これより私が提示する作戦は、元SRT所属のFOX小隊と元防衛室長伴篠ウツツ、計5名で行う少数攻略作戦です。」

 

会議室が明らかにざわつく。

その理由は簡単に予想できた。

先生なしで少数攻略だなんて可能なのか。そもそもアレに勝てるのか。

そんな困惑の心の声が聞こえてくるようだ。

 

「静粛に……まずはこちらをご覧下さい」

 

前面のボードに資料を映し、ポインターを使って目線を誘導する。

 

「……これは?」

「ミレニアムに依頼し調査した敵のデータです。まあ全て覚えろとは言いません。重要なのはこの部分、脳波計測結果です」

 

そこには書かれているのはギザギザとしたグラフ線。

幹部達は何がなんだかわからないと言った様子だ。当然私もミレニアムの超頭脳に追いつけるはずがなくわからないのだが、聞き齧った知識を繋げてなんとか説明を続ける。

 

「これによると、どうやら対象からは複数の脳波が検知されているようです。考えられる可能性は2つ、対処が複数の脳を持つ生物か、他の生物の脳が含まれているのか」

「私がゲヘナ風紀委員長に話を聞いた際、彼女は先生が殺されたでは無く"飲み込まれた"と言ってました。もし後者であるならば……」

「……!先生が生きている可能性がある、と?」

 

リン行政官から適切な質問が飛んでくる。

その通り、先生は恐らく生きている。

第一状況がおかしい。個人戦において指揮の力はそれほど大きくないのだ。最強格であるゲヘナ風紀委員長であれば尚更だろう。先生に見えているものは彼女にもある程度見えているはずだ。

のであればわざわざ先生を優先して狙う必要はない。

それどころか先生への攻撃を想定しなくて良くなった分、攻撃性は増すだろう。

後方の相手を狙う様な知性を持った相手が、それに気付かないなんてあり得るのだろうか?

もしそれに気づいた上で庇う事によるダメージを狙うのであれば遠距離攻撃が最適だろう。

狙えば仲間が当たりに来てくれる的があるなら、それを消費する必要はない。

仮説として考えていたことではあるが、脳波計測でほぼ確信に至った。

 

「生きている可能性が高いでしょう。ですので本作戦は、対象の撃破と先生の奪還の両方を目標とします」

「……分かりました。それでどうするのですか?『飲み込まれた』……つまりは相手の体内にいるであろう先生を、どの様に奪還すると?」

 

リン行政官が先生が生きていると言う事実を噛み締める様にして頷く。

何とか平常心を保とうとしているのだろうが、目や唇、体の震えからその喜びが伝わってきた。

 

「分析によれば、先生と思われる脳波は睡眠時と似ているとの事です。であるならばやり方は一つでしょう。寝ているのなら、叩き起こす。そのための策があります……ウツツ、説明をお願いできますか」

 

言葉と目線で彼女に合図をする。

連邦生徒会の制服ではなく、SRTのお古を着た彼女に。

 

「本作戦は4段階に分かれます。『塔』の攻略、対象の弱体化、先生の奪還、対象の撃破。それぞれ順を追って説明しましょう」

 

『塔』、対象が謎の力で建造し引きこもっているオブジェクトの名称だ。

高さはサンクトゥムタワーより一回り小さい程、内部構造はさまざまな調査を行ったが特殊な素材なのか一切不明。

つまりそこは完全なアドリブ、単純な地力が試される。

 

「『塔』の内部は未知数、ですので通信機を使いながら手探りでの攻略になります。そして弱体化、ここがこの作戦の要です」

「……そもそもそのプロセスは必要なのかしら?あくまで撃破までの通過点でしかないように思えるわ」

「当然の疑問ですね、アオイさん。ですがこれは必要なんです、先生の奪還の為に」

 

ボードに映し出された画像が切り替えられる。

そこには激しく上下にうねった二つの波線グラフが。

 

「このグラフは対象から検出された異常エネルギー波を示す物です。このレベルのエネルギーが観測されたのはあの大災害以来……ですが決定的に違う点が一つ。上記二つのエネルギー波は互いに反対の動きを繰り返しているんです。つまり……えっと、何だったっけな……」

「つまり片方が弱い時はもう片方が強くなると言うわけですね。となると一見エネルギーのブレを無くしている様にも思えますが、前述の仮説を踏まえるとまた別の見方も可能です」

 

ウツツのド忘れを補う様にして話に加わる。

さて、ここからは仮定に仮定を重ねた憶測だ。

 

「先生の持っていると言われるオーパーツ、『シッテムの箱』。先生と共に飲み込まれたそれが、対象の発するエネルギーの弱まりを突いて抵抗している……であれば対象の弱体化によるエネルギーの減少で、先生の覚醒を促せるのでは無いかと」

「はーい、一つ質問いい?」

「……どうぞ」

 

いつも通りポテチを片手に、交通部の一年、由良木モモカが手を挙げる。

私の胃に何度も穴を開けた女だ、許すまじ。

 

「これってさ、先生が生きてる可能性、オーパーツが飲み込まれててそれが抵抗してる可能性、対象の弱体化でオーパーツが先生を覚醒させる可能性……全部ただの可能性じゃん。あんまデータとかわかんないけどさ、これが全部成立するのは正直……"奇跡"としか言いようがなくない?」

 

改めて思う、なんて脆弱な作戦なのだろうと。

どれか一つでも予想を外したら破綻する。そんなあまねく奇跡を手繰り寄せる様な作戦を、声高らかに発表しているこの状況も我ながら呆れてしまう程だ。

 

「うーん……痛いところを突いてきますね。正直な所、成功確率は無いに等しいでしょう。何せそもそもが無謀な作戦です、かの風紀委員長が負けた相手に先生無しで立ち向かおうというのですから」

 

会議室が静まり返った。

当然だ、作戦前から作戦失敗を宣言している様な物なのだから。

 

「ですが、奇跡に縋る事すら諦め、このまま破滅を待つ事が果たして最善でしょうか。このままより良い策を探し続け、時間を浪費する事が最善でしょうか」

 

言葉一つ一つに熱を込める。

もはやこの場は理論では動かせない。放つ言葉がでまかせでも、士気さえ上がればそれでいいのだ。

 

「貴方達は先生から教わったはずです。勿論私は彼の事を先生などと思った事はありませんが……貴方達は違うでしょう。先生とは先を進み教える者、そんな彼の背中を追う様にして、私たちは進んでいかなければなりません」

 

「彼に習って、あまねく奇跡を手繰り寄せに行きましょう」

 

未だ場は静まり返ったままだ。

しかし彼女らの目に映る感情は困惑ではない。

おそらくは思い返しているのだろう。先生の発言を、行動を、その全てを。

全くとんでもない影響力だ、これは私じゃ到底真似できない。

 

「……その通りですね。このまま問題を先送りにしたところで何かが良くなるわけでもありません」

「はぁ……カヤ室長のせいでしばらくはサボれなくなりそうだね」

「思えば私達はいつも先生に助けられてきた、今回の作戦はそのお返しね」

 

どうやら成功したらしい。

役員達はどんどんと声を張り上げ、会議室内に一体感が生まれ始める。

 

「それでカヤ、作戦名は?」

「私は前回決めましたから、今回は貴方に譲ります」

「私に振られても……」

 

少しのいたずら心でウツツに投げた役は相当彼女のことを困らせているらしく、うっすら湯気が見えるのではと言うほどに必死な表情で彼女は考えている。

だがしばらく経つと何か良い案を思いついたのか、真反対の爽快そうな顔をしながら私の方を見た。

 

「OPERATION:HomeComing……英語だけど」

「存外良いじゃないですか。先生を取り戻して、生徒ともう一度……ピッタリですね」

 

私の反応を見てウツツがその案をボードに書き記し、正式に作戦の開始を示した。

 

「では、異論がない様であれば対策会議を終了しますが……」

 

当然の様な全会一致、この場に文句を言うものは誰一人いなかった。

 

「愚問でしたね……皆さんは作戦開始時刻である明日朝8時まで、体を休めて下さい」

 

伸びをしながらぞろぞろと会議室から出ていく役員達、しばらく経って部屋に残ったのは私とウツツ、そしてリン行政官だけ。

先程まで張り切っていた反動なのか、私も気が緩む。

 

「……カヤ、もしも……この作戦が失敗した場合はどうなるのですか?」

 

リン行政官から当然の疑問が飛んでくる。

会議中も考えていたのだろう。この「もしも」の行く末を。

 

「先生が死に、私たちはじわじわと追い詰められ、キヴォトスは奴のものになるでしょうね」

 

他の役員とは違い、彼女は真実を怖がる様な人間ではない。

我ながら悔しいがある意味の信頼なのだろう。ありのままの想定を伝えた。

 

「他に質問がないなら……私は少し寝ます。昨日から休みなしですから」

 

ウツツにそうとだけ伝えて、目を瞑る。

車椅子の唯一良い点と言えばその場で眠れると言うことくらいだ。

だが今の様な激務の最中だとそんな微かな利点すら有難い。

 

……全く、先生は厄介事ばかりを持ち込む。

そんな問題児の先生が帰ってきた暁には、しっかりと説教してやらないと。

 

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