もしもカヤに親友がいたら   作:あめざり

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今日の新ストーリー楽しみですね
私は偽会長が世界を幸せ(ユメ先輩のような故人の復活や銃の抹消)にしようとするディストピアAIみたいなやつと予想しています。


第四話 狐と超人

うるさいアラームの音で目を覚ます。

眠い目を擦りながら身体を起こすと、どうやら寝違えたのか、首にじんじんと痛みが走った。

今すぐにもう一度身体を寝かしてしまいたいほど寝覚めが悪い。

だが今日も朝から予定がある。それもいつもとは違った、少しでも遅れては行けない大事な予定が。

枕元に目をやると、桃色の髪がいくつか抜け落ちていた。最近抜け毛が多い。ストレスだろうか、それとも寝不足だろうか。思い当たる事が多すぎてよく分からない。

 

とにかく、目を覚ます為にもコーヒーを淹れることにした。

コーヒー豆にはこだわりがある。私にとって数少ない、趣味と言えるようなものだ。熱帯の方の山脈から個人的に取り寄せた、市販の物より3倍以上も高級な代物。

それをハンドミルで丁寧に挽き、ドリッパーを使って1滴1滴淹れていく。

朝に早く起きるのはこの時間を確保するためでもある。

 

コーヒーの重みと熱さが加わったコーヒーカップを机に置き、舌を火傷しないようにゆっくりと啜りながら、朝の日課である日記を書き込む。

朝起きた際の調子だとか、1日の予定だとか、最近気付いたことだとか。大したことない日常に区切りをつけるように綴っていく。

 

一昨日まで、朝には連邦生徒会長からの通知が来ていた。

本当にくだらない朝の挨拶だったが、恐らくそれを二度と見ることはないんだろう。

スマホのフォルダには彼女とウツツ、そして私の三人で一緒に撮った写真がたくさん入っている。

このフォルダも増えることはないんだろうか。

 

***

 

「ウツツ、おはようございます」

 

待ち合わせ場所に指定した外れの廃墟、私が付くよりも先にカヤは建物前に立っていた。

 

「今日は一段と隈がひどいですね。何かありましたか?」

「一つ、気になることがね」

 

大前提、連邦生徒会長は超人である。

それが突然失踪した、ここまでは納得できる。彼女にも予想出来ないことや対処できないことくらいあるだろう。

だがその後の事を考慮せずに消える、と言うのはどうも納得がいかない。と言うかあり得ない。

彼女なら必ず、自分が居なくなった際の混乱の対策として何かしらを残すはずだ。

それが先生、と言うのも考え難い。

彼女なら必ずリスク分散をする。いくらその人が有能でも、先生と言う脆い一本柱でキヴォトスを支えられるなんて考えるほど浅慮な人間ではないはずだ。

ならば最低でももう一つ、彼女の遺産がどこかにある。

それは秘密兵器かもしれないし、書類かもしれないし、メッセージかもしれない。ただ確実にある。

私たちの考えを遥かに上回る何かが、どこかに。

 

それを昨日思いついて以降、ずっとその遺産を探し続けていた。

その影響でかつてないほど体調が悪いし、成果もゼロ。

カヤに言うべきかも迷ったが、何もかもが不明な遺産捜索に彼女の思考を向けさせるわけにはいかないので黙っておくことにした。

私たちがやるべきは原因療法と対処療法の同時進行だ。

リソースを分散させられるほどの余裕もない。ならば、それぞれがそれぞれのやるべきことに集中すべき……だと思う。

 

「それで小隊は?もう着いてるの?」

「そのようです。ですので急ぎましょう、時間を無駄にするわけにはいきませんから」

 

念のため私が3歩前を歩きながら廃墟の中に入った。

中はじめじめとしていて生臭く、暗くなった証明には蜘蛛の巣と埃がへばりついている。

 

「それとウツツ、貴方は少し口調を強くした方がいいかもしれません」

「え?どうしたの急に」

「ほら貴方、ゆったりとした口調をしているではないですか。今回は状況が状況ですので、話し方を変えて立場をはっきりさせておいた方がいいのでは……と」

「また難しいこと言う」

 

そんなことを言われてもどんな口調にすればいいのかわからない。

ただまあ、いつもとは真逆で圧が強めなものがいいのだろうか?

 

「……私が命令し貴様が従う、これがルールだ……みたいな」

「ふっ、ふふ……笑わせないでいただけますか……」

「……結構強めの口調にした、つもりなんだけど」

「流石に悪役すぎますよ……ほらあるじゃないですか、軍人っぽい"あの"口調」

「要求多いんだけど……」

 

そういえば、久しぶりにカヤが笑った気がする。

忙しいのもあり、こうして二人で話す機会と言うのは殆どなくなっていたから新鮮だ。

だが、そろそろ気持ちを切り替える時かもしれない。

 

廃墟の二階に上がり廊下を歩いていくと、大きな広間のような場所に出た。

今まで見た場所と比べると比較的きれいに整えられていて、窓から光も入っている。

そこには4人、軍用装備を身に着けた少女が待っていた。

 

「不知火防衛室長と伴篠防衛次長だな?FOX小隊隊長、七度ユキノだ」

「ええ、早速ですが今日は小隊の皆さんに、伝えたいことがあります」

 

一呼吸してカヤは話を始めた。

 

「昨日の朝、連邦生徒会長が失踪した事は知っていますね?それに伴い、連邦生徒会内部で貴方達の母校であるSRT特殊学園の閉鎖案が出ています」

 

小隊員たちの顔が明らかに変わる。

連邦生徒会長の失踪は連邦生徒会内の人間のみが知っている情報だ。キヴォトス全土には情報規制がされており、一般の生徒には知られていない。

だがそこに存在する例外がSRTだ。

何せSRTは連邦生徒会長の捜索に駆り出された唯一の学園である。

ただ廃校の件は、当然ながら知る由もない。

そもそも理由が『SRTを武力的脅威としてみなしたから』だ。なのにそんなことを知らせ逆鱗に触れてしまったら、それこそ武力的脅威になってしまう。

だから、この事態をSRTの生徒に伝えることそのものがダメなのだ。

 

「これはその証明となる書類です。もちろん我々防衛室はこの案に反対ですが、恐らく結果は変わらないでしょうね」

「待て、話が見えてこない。何故それを私達に伝える必要がある?私達が関われることなど殆ど……」

「では簡潔に、私の私兵になって下さい。貴方たちの正義を振るう場をいくらでも設けます、その代わりに力を使わせていただけませんか」

「……悪いが、無理な話だ」

 

ほんの少しだけ申し訳なさそうに、ユキノが伝える。

断られる事はある程度想定はしていた。だが彼女たちの替えは無く、私たちは説得を続けるしかない。

 

「それは何故です?」

「私達が道具だからだ、無論連邦生徒会長のな。道具は考えてはいけない、道具は考えないからこそ価値がある。そんな私達が個人的な判断で連邦生徒会長以外の命令に従う?もう一度言う、『無理』なんだ」

 

以前ワカモの件で会った時はもっと意思があったように思えるが、今の彼女にはそれが感じられない。

考える事を放棄している、そしてそれを道具と言う言葉で正当化している。

何と言うか、見ていられない。

 

「……お前達の持ち主は、恐らく2度と帰ってこない。そんな事はとっくに分かっているだろ」

 

口調を強く、なんて意識はしていなかった。

ただどうも感情が漏れてしまったのか、本気で説得したくなったのだ。

 

「連邦生徒会長は失踪した、もう居ないんだ。そんな生きてるかも分からない女を埃を被りながら待ち続けて、それが彼女の求めた事だと?」

 

喉からどんどんと、絶え間なく言葉が飛び出てくる。

 

「お前達は捨てられたようなものだ、道具は使い手がいなきゃ価値がない。このまま大人しくいずれ来るゴミ箱行きを選ぶのか?」

「それでも、私達は連邦生徒会長の……」

「うるさい!いいか、捨てられたお前たち道具を私が拾うって言ってるんだ!私が、私がお前達に使い道を教えてやる!」

「どうしても連邦生徒会長の命令しか聞けないと言うのであれば、私が成りましょう。必ず連邦生徒会長の座に立ち、SRTもキヴォトスの平和も守ります。ですからどうか、私たちに託してはくれませんか」

 

一転、沈黙が流れる。

ユキノはどう答えるべきかを考えているようだった。

体感で10分ほど経った時、ようやく彼女の口が動いた。

 

「……了解。FOX小隊は、防衛室長の指示に従う。小隊各員も、それでいいな?」

 

彼女の後ろに立っていた3人の隊員がこくりとうなずく。

 

「では、皆さんはいつも通りに生活していてください。必要な場合はこちらから連絡いたしますので」

 

カヤの言葉で、小隊は広間の出口へと向かった。

その時、ユキノが出口の目の前で足を止めて振り向き、私のほうを見つめてきた。

 

「防衛次長……私たちの事、せいぜいうまく使うんだな」

 

そうとだけ言い残して、彼女たちは去っていった。

私とカヤだけの空間になり、雰囲気が緩む。

 

「なかなか軍人らしかったですよ。やればできるではないですか」

「あれは別に……意識したわけじゃ」

「全く。せっかく褒めているのですよ?もう少しうれしそうな表情をですね……」

 

むすっとした顔のカヤをあしらいながら、私たちも入ってきた道を戻り連邦生徒会に戻ることにした。

 

***

 

夜、私は見慣れた防衛室の席に座りながら、見慣れた書類をさばいていた。

今日は色々なことがあった。その中でも一番大変だったのは何といっても、FOX小隊との接触だろう。

説得は成功、だが半分はウツツのおかげといってもいい。

彼女が敗色濃厚の現状を覆したのだ、感謝してもしきれない。

 

そして私は私で、とんでもない宣言をしてしまった。

連邦生徒会長になるだなんて、かつてウツツが語っていたようなことを高々と。

私はよく噓をつく。だがそれはついても悪影響の少ないものばかり。

現状、FOX小隊とは『SRTの保護』と言う利害関係でつながっているに過ぎない。

それを成さず、宣言を嘘にしてしまったら関係は崩壊、それでは意味がなくなってしまう。

そしてその宣言を実現するためには今の立場では足りない、連邦生徒会長という絶対的権力が必要不可欠だ。

 

現状ならその席は代行で、リン行政官で良い。

だが彼女はどうも慎重な部分がある。使える権力を使わず、問題を先延ばしにする癖がある。

要するに彼女は事務向きなのだ。

人を束ね、何かを決断するという点においては、連邦生徒会長よりも数段劣る。

だからこそいずれ、誰かがその席に座らなければならない。

代行ではなく、本物の連邦生徒会長として。

そしてそれができるのは……

 

(本当に?本当にそれが正しいの?)

 

何度も考えた。もっと相応しい者がいるからと理由を付け、避けてきた結論。

だが時間がない、余裕もない、逃げ場も今日の朝になくなった。

それならばもう、覚悟するしかないんだろう。

 

(……私が)

 

どんなに苦しい道だろうと。

 

(私が"超人"になる)

 




カヤとFOXの馴れ初め部分、そしてカヤが超人超人言っていた部分の補完ですね
書いていて思いましたが、新規ストーリーで補完されたら結構詰みじゃないですか
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