もしもカヤに親友がいたら   作:あめざり

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メインストーリーの時系列ってカルバノグ1章がエデンより早いんすね



第五話 邂逅

先生とやらが来てから、キヴォトスの問題は続々と解決していった。

着任直後に起こった狐坂ワカモによる混乱も解決、アビドスに残る問題も先生のおかげで改善傾向にあるとのことで、今や彼の名はキヴォトス中に広まっている。

中には先生を狙うものもいるとかなんとか……

 

それに比べ連邦生徒会、並びにSRTの問題はいまだ解決しないどころか、悪化の一途をたどっていた。

私やウツツ、その他何割かの反対派がSRTの廃校案に反対し続けたおかげで最悪の事態は避けられたが、それも時間の問題だろう。

結果SRTにはヴァルキューレへの編入を進めるポスターが張られる等、実質的な廃校通告が行われ、SRTの生徒たちが一時デモを起こす事態となった。

そしてその中でも特に反抗したのが、1年生部隊のRABBIT小隊。

よほど不満だったのか、先日D.Uの子ウサギ公園を占拠し廃校に対する抗議を行った。

最終的にはこれまた先生が解決し、事態は収束したわけだが……

 

「はあ、心労絶えないとは正にこのことですね」

「本当……そろそろFOXに合わせる顔がない」

「あれだけ大口たたいておきながらこのざまですからね、まったくどうしたものか……」

 

私はウツツと二人で、公安局のオフィスにRABBIT小隊の取り調べ記録を取りに向かっている。

本来こういった事件の処罰はヴァルキューレのほうで決めるのだが、今回は連邦生徒会の関りもあったため、私が処分を決めることとなった。

……あのウサギを放っておいたらSRTの立場がさらに悪くなりかねない。

そうすれば廃校は確定、FOXの信頼も地の底に落ちる。

そのために何とか、彼女たちの背景を探り、説得を行わなければ。

それに彼女たちはまだ未熟な1年生だ。絶対に手放せない戦力と言うわけでもないのだから、最悪の場合はSRTの状態を安定させるまで一時的に、矯正局にでも入れておけばいい。

 

そもそも、私がここまでSRTと言う学校に拘っているのはその装備が理由だ。

ヴァルキューレとSRTの装備はまさに雲泥の差、どれだけ優秀な兵士でも弱い装備を使えば戦力は低下する。

装備と言うのは何も銃や防弾チョッキだけの話ではない。

高性能なデータベースやサーバールーム、最先端の光学機器にドローン、実験段階の兵器まで。

それがあるからこそ、SRTは特殊部隊として成立するのだ。

 

公安局の狭い廊下を抜け、オフィスの入り口に立つ。

中にはカンナ局長と……

 

「あれって……もしかしてシャーレの?」

「ヘイローが無く、連邦生徒会の服を着ている。そんな人間、このキヴォトスには一人だけでしょう」

 

先生とカンナ局長は何かを話している様子だった。

断片的にしか聞き取れないが、『編入』『ヴァルキューレ』『SRT』などと言った単語から導き出せるのは一つ。

 

「……どうやらRABBIT小隊の話をしているようですね」

「確か取り調べも先生が関わってる、となると処分についての話?」

「恐らくは。ですがこれはチャンスですよ。先生の説得があれば、RABBIT小隊もおとなしくなってくれるかもしれませんし、彼をこちらに取り込んでおけば今後も楽です」

 

ウツツも連れてオフィスに入る。

入り口から離れているからか、2人はまだ気づいていない様子だ。

 

"じゃあ、連邦生徒会の子に聞いてみるとか……?"

「それは、私からは何とも……」

「では、私達が代わりにお答えしましょうか」

 

私の声を聞き振り向いた2人と目が合う。

先生とやらは少しパーマのかかった黒髪で顔も整っている。なるほど、これは狙われる訳です。

 

「防衛室長と防衛次長……お疲れ様です」

「お気遣いありがとうございます、公安局長。ですが貴方もお疲れでしょう?下がって大丈夫ですよ」

「ですが……」

「大丈夫だよ。それに、多分長話になるから」

「……了解しました」

「さて」

 

去っていくカンナ局長を見送り、視線を先生の方へと戻す。

 

「初めましてですね、先生。連邦生徒会所属、防衛室の不知火カヤと申します。そしてこちらが……」

「同じく連邦生徒会防衛室所属、伴篠ウツツです。何卒」

 

取り込むのであれば初手の印象は最重要、丁寧な言葉と温かい笑顔で良い印象を与えるべきだ。

交渉の基礎の基礎である。

 

"それで2人は……友達なのかな?"

「「ただの上司と部下ですよ」」

 

発した言葉が一言一句ウツツと被ってしまった。

まずい、早速だらしないところを見せてしまっただろうか。

 

"やっぱり仲良いんだ"

「……話を戻しましょう。SRT特殊学園についての話でしたよね」

 

誤魔化しの為に話を逸らすことにした。

少し強引ではあるがそこはご愛敬である。

 

"うん。ところで一つ聞きたいんだけど、ヴァルキューレやSRTは防衛室の担当?"

「ええ、ヴァルキューレに関してはその認識で構わないのですが、SRTは少し特殊な組織でしてね」

"特殊……ってどういうことなの?"

「簡潔に説明しますと、SRTは連邦生徒会長の指示でのみ動くことのできる、彼女直属の組織なのです。ヴァルキューレのような警察組織は出動までの手続きがあったり、自治区での活動が制限されていたりと、色々と制約があるのですよ。そのような状況であれば我々は後手に回ることしかできません。そう言った制約を無視して出動できる組織、それがSRT特殊学園です」

 

この組織は本来、連邦生徒会長と言う超人ありきのものだった。

今問題となっている『武力的脅威になりえる』と言うのも、「連邦生徒会長であれば大丈夫」と言う能力に裏付けられた信頼があって消えていた問題。

そもそもSRTは極めて不安定な組織なのだ。

実際に手にすると、それがより実感できる。

 

「ですが今、その存続が脅かされています。原因はひとえに、連邦生徒会長の失踪による責任の所在の不明瞭化。彼女たちは厳しい選抜を通過したエリートです、私としてもその能力を失うのは惜しいと思っていますが、連邦生徒会内では廃校の方向で話が進んでしまっています。当然、私達防衛室は反対派なのですが……それでもいずれ廃校は決定してしまう事でしょう」

 

『防衛室は廃校反対派』と強く強調して言った。

最悪は先生と敵対してしまうことだ。現状、SRTを救うには彼の手が必要不可欠なのだから。

 

「そこで一つ、先生に頼みごとがあるのです。RABBIT小隊員達のの気持ちは私にも痛いほどわかるのですが、このままではSRTに対する印象の悪化につながりかねません。ですので先生から、彼女たちをヴァルキューレに編入するよう説得してはいただけませんか?勿論、他の生徒はSRTに残れるように対応しますので」

"……それは、彼女たちを犠牲にしろって事?"

 

先生の声が少し低くなる。

何が気に障ったのだろうか。とにかく今は、これが最善の選択であることを伝えなければ。

 

「犠牲、と言うほどではありませんが、このままではSRTは火薬庫としての印象が根付いてしまいます。ですので彼女たちのような凶行に走る生徒が少数派であり、大半の生徒は正義のために戦っているということを示していかなければいけませんので……」

"悪いけど、生徒たちが望まない進路を、強制することはできないかな"

「私たちとしてもRABBIT小隊の皆さんが望まない進路を進むのは望ましくないことだと思っています」

 

私のフォローに入るようにして、ウツツが補足を始める。

 

「ですけど先生、このままでは他のSRT生までもが望まない進路を進んでしまうんです。ですから貴方にやっていただきたのは『強制』ではなく『誘導』です。それに彼女達がやったことは立派な治安妨害です。自分のせいで他の生徒に迷惑をかけた、その代償が矯正局送りではなく進路の変更であるだけ、まだ良いと思いませんか?」

"それでも私は、生徒たちの居場所を奪うようなことは出来ない。みんなにとって一番いい方法を探していきたいんだ"

「……先生も今日は指揮や取り調べでお疲れでしょう。明日も業務があるのですから、本日は早めに帰宅して休まれては?」

 

これ以上話しても印象を下げるだけだ。

それならば、と。話を強引にでも切り上げ悪化を防ぐべきである。

 

結果として、この日の交渉は大失敗。

後日、謝罪文とともに『RABBIT小隊の処分をシャーレが決定する』事が決定したという旨の手紙を送り、なんとかその場を収めることとなった。

 

 




なんでこんなことになったかと言うと、全てはカヤがガチで「SRTを存続させたい」と考えていたことが原因なんですね。
本編のカヤはどうもSRTの復活は本気ではなく、あくまでFOXを利用するための釣り餌としてうまく使っている印象でした。
だから上辺だけの寛容そうな発言ができた、鼻からSRTがどうなろうとどうでもよかったわけですからね。
どちらにしろのらりくらりと言い訳を重ね、FOXをこき使う予定だったのでしょう(そうなると先生やRABBITが居なくても未来は暗そうですが)
ですがここの世界戦ではウツツが熱血説得したせいでのらりくらりがしにくくなりました。
なのでSRTの廃校=FOXの裏切りだと考えるようになるわけです。良くも悪くもウツツの情っぽい性格が影響しましたね。
そうなるとカヤは本気でSRTをどうにかしようとします。RABBITを切り捨ててでも、思いつく最善の手段で解決しようとするわけです。
ですがここで問題が。そう、先生ですね。
先生とカヤの最善は違います。先生の最善は全員の救済、カヤの最善はSRTと言う居場所の救済。
そうなんです、カヤは「居場所がなくなるなんて可哀想!」なんて理由でSRTを守っていません。
あくまでFOXの信頼の為、駒を手元に置くための手段です。
当然、このマインドはウツツもある程度共通しています。
ですが先生は正に「居場所がなくなるなんて可哀想!」のマインドで行動します。
だからSRTを守るという部分は共通しているのにずれるんですね。
この部分はテーマでもある「理解できない真実を通じて、私たちは他人の理解を得れるのか」とも関わってきます。理解できそうにありませんね。

さて、と言うわけで先生からの信頼は地に落ちたわけですが、FOXはどうでしょうか?
FOXから見たカヤとウツツはどう見えるのでしょう。
きっと、私たちの居場所の為身を粉にして働いている、誠実な上司に見えるでしょうね。

と言うことで次回はエデン条約編3章、その次の話で最終編をやります。
そこから1話くらい挟んでカルバノグ2章ですかね、失踪さえしなければ。
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