もしもカヤに親友がいたら   作:あめざり

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難産。
それとこれは創作者あるあるだと思いますが、評価とか感想とか貰うと出ちゃいけないタイプのドーパミンが出るんですよね。
要するに嬉しいってことです。
ありがとうございます。


第七話 塔

「非常対策委員会?」

 

ある日の昼、カヤから告げられたその通達に、私は戸惑いを隠せなかった。

 

「ええ、リン行政官が。どうやらキヴォトスに謎の巨大エネルギー源が複数発生したとか、それがキヴォトスの危機になりえるかもとか、色々と理由はあるようですが」

「そもそもそう言った脅威対策は防衛室の管轄でしょ。どうしてリン代行が……」

「シャーレの予言、予知夢……らしいですよ」

 

そう言ってため息を残し席を立つ。

大体、根拠の薄いものの為に権力を振り回すのはおかしいだろう。

そういう事態の対処を担うのは防衛室、つまり私達であるというのに。

それは権利の侵害どころか、連邦生徒会と言う組織の私有化とも取れる行為だ。

彼女の能力は認めている、だが『代行』だ。『超人』ではない。

 

「もう一つ、シャーレの先生がそこに呼ばれるようです」

 

その名前に、少し嫌な思い出が浮かんだ。

防衛室とシャーレの関係は最悪である。全てはあの、公安局での会話が原因だ。

ただ、非常対策委員会とやらに先生を呼ぶこと自体は納得できる。

 

「そして私たちはカイザーコーポレーションと協力し、先生を確保。シャーレの一時解体を行います」

「……はぁ?」

 

思わず言葉がこぼれる。

確かに私たちはカイザーと以前から関りがあった。だがそれはヴァルキューレ用の武器の調達や資金援助と言った取引の類。決して"共謀"ではない、せいぜいが"癒着"止まりだった。

だが、カヤが何の考えもなしにそんな計画を立てるわけがない。

 

「とりあえず……理由を聞いても?」

「ええ、貴方も関わる話ですからね」

 

そう言ってカヤはコーヒーを一口、啜ってから話を始める。

 

「私たちの目標はSRTの復活、しかしそのためにはシャーレの存在が邪魔です。問題を起こしたRABBIT小隊と、彼女たちと深い関係を持つシャーレ……それらがある限り、連邦生徒会内でのSRTに対する認識は変わり得ません」

 

ごもっともである。その上、シャーレと関係の悪い私たちの頼みを聞いてくれるわけもない。

 

「ですが、シャーレを私たちの下に置けば話は別です。シャーレではなく、連邦生徒会として先生を動かし、先生の行動の責任を私たちが取る。そうすればRABBITの問題行動も癒着も、私達が解決出来る範疇になる」

 

案としては一応……筋は通っている。ただ問題点がないわけじゃない。

 

「先生を確保、解放した程度でシャーレの解体と再建を進められるとは到底思えない……けど」

「当然それは一手目、理由付けに過ぎません。その後私が連邦生徒会長代行の座に就き、先生の"失踪"を理由にシャーレを一時解体……そう言う計画です」

 

カヤの口から『連邦生徒会長代行になる』なんて言葉が出てきた事に、私は心底驚愕した。

昔から自己肯定感の低かったカヤがそんな事を……私が言う側だったのに、気付けば立場が変わっていたらしい。

 

「……分かった。確保計画の進行は……」

「そこはカイザーの部隊が行います。私達はそのバックアップ、連邦生徒会への事件を装った通達が任務ですよ」

 

カヤの言葉を聞き、FOXにかけようとして手に持った携帯を置き直した。

それにしても先生か……最初はその能力に疑問を持っていたが、次々と問題を解決していくのを見て、やはりこの人は連邦生徒会長の後継なのだなと分かってきた。

 

そういえば、連邦生徒会長の遺物はどこを探しても見つからなかった。

引き継ぎ書類も、超兵器も、影も形もないのだ。

……他に調べていない場所と言えば……そうだ。

 

「シャーレ……」

 

そうだ、シャーレはまだ調べていない。

理由は単純、先生がいるからだ。

ただでさえ関係の悪い彼の職場に無断で踏み入り捜査?許されるわけがない。

だが今は話が別……シャーレから先生は離れる、当番の生徒も対策委員会に呼ばれて来れない可能性が高い。

そうでなくとも今は昼間だ、生徒の大半は学校にいる。

エデン条約の時のように、私達が忙しくなると言うこともない。

そもそもこの非常対策委員会は、極めて不確実な証拠に基づいて設立されたもの……つまりは大規模な"何か"が起こるわけもなく、私達には殆ど仕事が回って来ず、各校を架空の大災害で手いっぱいに出来る最高の機会。

 

私はカヤに話した。

シャーレに眠るかもしれない彼女の遺物と、今がそれを探すチャンスであると言う事実を。

 

「確かに……連邦生徒会長の遺物……何かを残して……それなら辻褄も……」

「カヤも同意するなら、今すぐFOXに連絡を入れるけど」

「……やりましょう。作戦のタイミングは先生がシャーレを離れたタイミング、入れ違いが理想でしょう」

「了解、伝えておく」

 

私は先ほど置いた携帯を再度握り直し、FOX1と書かれた番号に電話をかけた。

 

***

 

カイザーとの暗躍を行うため、私とウツツは車に乗り、人目に付かない廃ビルへと向かった。

そこにはカイザーの兵士が5人と、ジェネラルと言う名のカイザー幹部が待っており、確保作戦を行う兵士たちと通話を行っているようだった。

 

「計画はどうですか、ジェネラル?」

「滞りなく進んでいるさ……それと、まさか次長の方も来るとは」

 

彼はどうも、ウツツの存在を少し煙たく思っているようだった。

何故かは分からない。だが普段よりも視線が冷ややかである。

 

「……私は防衛室長の補佐としての仕事もありますので」

「そうか、そうだったな。失礼した」

 

苦笑交じりにジェネラルが言う。

 

「……シャーレの先生を確保した」

 

その言葉に、思わず心の中でガッツポーズをしてしまった。

FOXはすでに動いている、遺物の捜索も進んでいることだろう。

後は上手い言い訳を考えておくだけ、それだけでこの計画は完遂だ。

 

「ふふっ、流石ですね。これでリン行政官の立場は落ち、シャーレ解体も進むことでしょう。ではジェネラル、本日はこれで……」

 

唐突に、誰かに床へと押し倒される。

それと同じタイミングで響く複数の乾いた音、銃声だ。

幸い、私には当たっていない。

それはなぜか。

それは、私を押し倒した人物が、代わりに受けたということで……

 

「……ウツ、ツ?」

 

その人物は、とても見知った顔だった。

水色の髪からどす黒い血を垂れ流しながら、私の事を苦痛を抑えこんだような笑顔で見つめながら。

 

「……くッ……そ、ジェネラル……これはどういう……?」

「私は最初から、君たちの正義に興味などないのだよ、防衛次長。その上シャーレを解体など……そんな事、進められてもらっては困るからね」

 

だんだんと状況が理解できて来た。

銃を撃ったのはカイザー、理由は私たちの目的と食い違っていたから。もしかしたら連邦生徒会の戦力を削るという意味もあるのかもしれないが。

そして……私の事をかばったのは、ウツツだ。

背中や頭に複数の……カイザーが持っていたのであればARであろう弾を食らった、一般の生徒であれば即倒する攻撃。

ウツツは丈夫だ、だがそれでも不意打ちでこれだけ食らえば……

 

「カヤ……逃げて……車まで早く……」

「ですが、貴方を……」

「いいから……!!」

 

ひりだすような叫び声を聞き、私は全力で走り出す。

後ろは向かなかった、微かにウツツの、ショットガンの銃声が聞こえていたから。

彼女は私を逃がすために戦っている。兵士5人とジェネラルを、装備もなしの満身創痍の体で足止めしている。

私にできることは、逃げることくらいだった。

 

「クソ……繋がって、繋がれ……」

 

車に乗り込みアクセルを踏み込む。

そしてFOX小隊にコールしながら、全力でその場から離れた。

 

『……室長?どうした?』

 

コールに出たのはユキノだ。

彼女は心底困惑したような声で返事をする。

 

「緊急です!ジェネラルが裏切りました!今ウツツが囮に私を逃がして……座標を送ります!すぐに来てください!」

『だが……まだ調べ切っていないが』

「現状で見つけたものだけ持ってすぐにその場を離れてください!」

 

もうこの際、連邦生徒会長の遺物なんてどうでもいい。

そんなことよりウツツが大事だ。

この腰に掛けている彼女から貰った銃を、遺物になんてさせるものか。

 

『……了解、すぐに向かう』

 

そう言ってユキノは通話を切る。

私はカイザーに追跡されることを警戒し、連邦生徒会ではなくセーフハウスに全速力で向かった。

 

そして数時間後、ウツツが失踪した事を知らされることになる。

 




1章の物語も佳境に向かいます。
そう言えば章を追加しました。
名前の『アンティオキアの手榴弾』は、カルバノグの洞窟に住む殺人ウサギを撃退するために使われた武器の事です。
FOX小隊は自らの事を道具とよく表します。
カルバノグの兎はもちろんRABBIT小隊。それと対峙するユキノは本編で、自らを道具として『爆破』しようとしていました。
結局はピンを抜かずに終わったわけですが、ここまで考えられていたらすごいですよね。
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