【第一章完結】もしもカヤに親友がいたら   作:あめざり

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今話、大方本編のセリフ通りなのですが少し違う場所が所々あります。
テンポ的に飛ばしたり変えたものもあるにはありますが、比べた時に本編セリフのニュアンスすら含んでいない様なものを入れてます。
暇なら探して見て下さい。


第九話 クーデター

ウツツが復職して数日が経った。

一見回復したように見えるが、睡眠時間が確実に減っているし、表情も以前より暗い。

結局シャーレの予言とやらは的中していて、私が隠居していた最中に先生やリン行政官が大災害を解決。

またしてもシャーレの株は上がり、彼に頼りきりの世の中になってしまった。

私たちはその後始末、つまりは災害後の治安悪化を担当している。

普段の3倍はある書類の山、それを私とウツツの二人で回すのだ。

だが彼女の処理能力はあの事件の影響か復職前より落ちている。だからその落ちた分を私が負担しなければならない。

別に迷惑だなんて思っていない。そもそもこんな状況で仕事をこなしている事自体がおかしいのだ。

本当は休んで欲しい。だが彼女は休む事を迷惑だと思うのだろう。

 

そして仕事の合間に行うことといえば、当然仕事だ。

内容はSRT復興を進める為の案作りである。

何故SRTが廃校になり再建もされないのかと言うと、それは一重に責任の所在が問題だ。

ならば責任の所在を明確化してやればいい、そんな単純な事をできなかった理由は二つ。

一つは責任を負いきれない可能性。

これは今までSRTの責任の全てを超人である連邦生徒会長に背負わせていた事が原因だ。つまりは彼女に匹敵する程の土台が無い、と言う物。

二つ目は責任を負う人物に対する信頼。

もしも当人が暴走し、力を振り回してしまったら?そうすれば誰が止める?誰が責任を取る?

そしてこれらを解決し得る案を考えるのが私の義務だ。

ただある程度案は固まっている。それは『責任を分散させる』と言う物だ。

あまりにも単純、だが分散させる相手が居なかった。

一人は連邦生徒会長代行、一人は防衛室としてもう一人は欲しい……そしてそれはあまりに近くに居た。

そう、先生である。

責任を負い切れる大人、そして生徒からの信頼も厚い。だが彼はシャーレの所属である。

何かしらがあった時のために、責任の所在は連邦生徒会内で固めたい。

でなければ超法規的権限を濫用され、連邦生徒会の方針と反発する形でSRTを使われる可能性もある。

だからこそSRT再建の前にシャーレを連邦生徒会名義に、つまりは連邦生徒会の傘下に置く必要がある。

だがそんな事を考えている暇もあまり無い。とにかく今は案の完成が先決だ。

 

それ以外にもカイザーが問題だ。

先日のカイザーによる連邦生徒会襲撃、その処罰を決める会議が今日開催予定ではある。

ただあれだけの事をやらかしたのだ。恐らく厳しい処罰が下るだろう。

そこを付いてカイザーに恩を売るというのも……

 

(けどそうなると……ウツツの精神状態が)

 

一度拷問紛いの事をされた相手との再接触なんて、彼女がなんて思うか……

もしかしたら、ここからは私一人でやるべきなのかもしれない。

 

「防衛室長、時間です」

 

頭を抱えながら書類と睨めっこをしていると、防衛室の扉を開けて通達係の生徒が入ってきた。

「時間」と言うのは勿論会議の事である。

最近時間の流れが早くなっているように感じる。

意識が時々朦朧としているような……まあ問題ない、それならいつも通りの過労だ。

……問題なんて、これっぽっちも。

 

***

 

会議が始まってからどれだけ経っただろうか。

詳しくは分からないが首と腰に蓄積した疲れがその長さを物語っている。

ウツツは今日の会議に出席していない。

本人は当然やる気だったが、オーバーワークを想定して私が無理やり休ませた。

 

「しかも、カイザーコーポレーションはキヴォトス有数の大企業です」

 

役員の1人が声を上げる。

今の議題はカイザーに対する処罰について、その方向性は私の想定していた方向とはかけ離れていた。

 

「カイザーインダストリー、カイザーコンストラクション、カイザーコンビニエンス……これらの企業が活動を止めれば、キヴォトスは失業者で溢れかえるでしょう」

 

カイザーの弱体化に伴う失業者の増加を恐れ、役員共は処分を軽くしようと考えているのだ。

全くふざけている。企業勢力と言う脅威の排除は最優先だろう。

その上ウツツが、連邦生徒会の幹部が被害に遭っていると言うのに。

そんな相手への処罰を軽く?正気とは思えない。

 

「そうなればかつてない混乱が生じるのは必須です。その責任は一体誰が負うのでしょうか?」

 

連邦生徒会長が失踪した影響であらゆる責任の所在が不明瞭になっている。

だからこんなにも会議が長引くわけだ。

必要なのだ。私が責任を取る、と先陣を張って言える人間が。

 

「……カイザーコーポレーションの影響力を踏まえ、罰金の請求のみで片付けるというのも……」

 

本当に馬鹿げた会議だ。

誰も話を進めようともせずに一生平行線、こんなものを数時間やっているというのだから生産性のかけらもない。

 

「ですが実際、連邦生徒会の職員が襲撃されています。これは厳しい処罰を下すに値する行為では?」

「先程も発言しましたが、今回の襲撃はリン行政官が開いた対策委員会による混乱が大きいかと。それと防衛次長の誘拐についてですが……

あれは当人の注意不足ではないでしょうか?」

 

……は?

 

「彼女は連邦生徒会襲撃とは別に誘拐されたと考えられます。カイザー相手に遅れを取るのは注意不足……能力不足と言わざるを得ません」

 

この会議にウツツがいないからと好き勝手言って……それならお前らは何だ、襲撃を受けても無力で、未曾有の災害とやらも指を咥えて見ていることしかできなかったお前らに……

 

「……発言の撤回を求めます。会議の場で、その様な他人を貶める発言は看過出来ません」

 

怒り混じりに私は声を上げる。

 

「防衛室長、同所属の方を貶された様に感じお怒りなのは分かりますが……これは事実なのです」

「事実?そんな出鱈目を事実などと……そこまでしてカイザーに優しくしたいのですか」

「……静粛に」

 

ヒートアップしてしまった会話をリン行政官がなだめた。

思わず熱くなってしまったことを反省し、深呼吸してからリン行政官の方を向く。

 

「お互い、何もそこまで結論を急ぐ必要はありません。ここにいる皆さん、それぞれ何かしらの意見があるでしょうし、少しずつ時間をかけて、意見をまとめていきましょう」

 

一度落ち着いたのにも関わらず、その発言でまた苛立ちが募る。

時間をかける?いつまた脅威が迫ってくるか分からないと言うのに、既存の脅威を放っておいて丁寧に話を進める?

 

「……その必要はあるのでしょうか」

 

心の内が、抑えていた言葉が少し漏れる。

ずっと考え続けてきた事、ただのくだらない愚痴だと深く考えないようにしてきた事。

 

「貴方は主席行政官ですが、同時に連邦生徒会長の代行でもあります」

 

きっとリン行政官なら、リンなら、あの人が良くしていた彼女なら……そうして押し殺してきた疑念。

 

「代行の権威さえ使えば、こんなくだらない会議などすぐにでも終わらせられるのではないですか」

「……権威、ですか」

 

私は縋っていた、願っていた。

ああどうか、私にこんなことをさせないでくれ、と。

貴方があの人の立場に値する人間だと証明してくれ、とも。

 

「それは毒の入った聖杯のようなものですよ、防衛室長。確かに便利な切り札かもしれませんが、使えば使うほど自分の身を滅ぼします。自分の意見と違うからと言って、権威を掲げて他人を抑圧することはできません」

 

それを聞いて私は、私は。

その場で立ち上がり、腰に掛けている拳銃を、リン行政官に向けていた。

俯きながら、机に置いた自分の手を眺めながら。

 

「……貴方にはやはり、代行の資格がないようです」

 

ざわざわと、会議室に困惑の声が響く。

 

「……何のつもりですか、防衛室長?」

「貴方の事は以前から目障りだと思っていました。連邦生徒会長代行になったというのに、周囲の意見を集めて物事を進めようとするだなんて……そんな衆愚政治のようなやり方では何も解決しません」

 

「キヴォトスは、超人によって指揮されるべきなのです」

 

リン行政官がどんな顔をしているのか、彼女の顔を見る勇気はない。

しかし俯いていても感じられる視線から、ある程度の予想はついている。

 

「連邦生徒会長は今も行方不明です。そして彼女の居場所を守ること、それが主席行政官の役目です」

「実は、シャーレの地下で面白いものを発見しましてね。それは、隠されていた連邦生徒会長の手紙です」

「手紙……彼女の……?」

「この手紙によると、連邦生徒会長が代行業務を依頼していたのは行政官ではなく防衛室長のようです。つまりその腕章をつけるべきは貴方ではなく、私である、と言うこと」

 

少し顔を上げてリンの表情を見る。

どうも驚いた様子だ。

当然だ、こんな話をいきなり聞かされて困惑しないほうがおかしい。

 

「こんな手紙がシャーレの地下に隠されていた理由。考えてみれば彼女の失踪当時、シャーレに出入りできたのも、これを隠して得をするのも……貴方しかいないのですよ、リン行政官」

「……それが連邦生徒会長によって書かれたものだという証拠はあるのですか?筆跡鑑定を……」

「確かに筆跡鑑定は重要ですね、連邦生徒会長室に残されていたあのメモのように」

 

痛いところを突かれたのか、彼女は黙り込んでしまう。

 

「七神リン行政官、貴方を公文書毀棄及び職権乱用の疑いで緊急逮捕します。連邦生徒会役員規定第78条に基づき、連邦生徒会長代行の職務は調査が終了するまで停止されます……何を突っ立っているのですか、早く連れて行きなさい」

 

困惑する聴衆、それらを叱責して無理やり動かす。

 

「それと……この腕章は預かっておきますね」

 

連れ去られている彼女の腕に付いた代行の腕章を無理やり外し、私の腕に付け直した。

 

「ぼ、防衛室長……」

 

おびえた様子の役員たちをよそに、私は先ほど失言をしていた役員に銃を向け、その引き金を引いた。

 

「……ふざけるな、ふざけるなふざけるな!!彼女の事を何もわかっていない癖にあんな事抜かしやがって!!調子に乗るな知った様な口を聞くな!!2度と……2度とあんな……!!」

 

言葉を吐き捨てながら何度も何度も引き金を引く、彼女が地面に倒れるまで。

叫びすぎたのか息が苦しい、呼吸ができない。

何とか胸を叩きながらいつもの笑顔を貼り付け直した。

 

「……さて」

 

撃ち終わった銃を腰に戻し、リン行政官が座っていた席に座りなおす。

 

「有意義な会議にしましょう」




ここからカヤ視点がほとんど無くなる予定です。
カヤが何を思ってこんな事をしたのかわからない、と言うのがここからの良さだと思っているので。
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