VRロボゲの元絶対女王を隣の席の俺が幸せにするまで 作:Amisuru
という訳で。
待ちに待った、その時です。
「……マジで来るんだよな?」
「マジだって。さっきここのIDと入り方送ってやったら『了解』って返事来たし」
「うわー……な、なんかわたし緊張してきた……」
現在、夜7時52分。バイト上がりのユメさんを迎えて、後は
チームの加入自体はリーダーによる承認制だが、チームルームに入るだけなら設定されたログインIDを入力すれば非メンバーであっても入室が可能となっている。既にチームを抜けてしまったリベさんなんかも、あの人の気が向いたらふらりとここに遊びに来ることが出来たりする訳だ。ギーザーに
「そんな固くなる必要ないぞ、ユメさん。ちょっとキャラ作ってて嘘がヘタクソでたまに頭のネジ外れるけど、全然普通の奴だから」
「ヒーローくんの普通の概念が普通じゃなくない?」
「ま、何かしらぶっ飛んでなきゃたかだか中坊で全一になんざなれねーだろうとは思うが……にしても、やりやがったなヒーロー。どうやって天照サマを岩戸から引っ張り出した? 裸踊りでも踊ったのか?」
「知らん。秋の空としか言いようがない」
実際、何があいつの心変わりを誘発するきっかけだったのか思い返してもさっぱり
「そもそも俺、あいつ誘うの一度完全に諦めたんだよな」
「あ? それがなんで結局来ることになってんだ」
「だからそれが謎なんだって。
「……あやしい」
不意に、そんなことを言って。
俺の顔を下から覗き込む、もこもこ女児服に身を包んだ栗毛パーマの幼女(23歳)。
「え、怪しいって何ユメさん」
「確かに女の子の気持ちって、ころっと変わっちゃうことあると思うよ? わたしはよくわかんないけど、げろげろ現象とか言ったりするじゃん」
「蛙化な蛙化。でそれがどーしたユメ」
「でもさ、セリンちゃんの場合って完全に逆パターンじゃん? 脈無しっぽかったのが180度ひっくり返ったわけじゃん? これヒーローくん何かやったでしょ。お姉さん達にまだ言ってないこと、あるんじゃないですか」
「言ってないこと……」
それはまあ、ある。
あいつの母親のこととか。
あいつをまた泣かせたこととか。
あいつの頭に上着を被せたこととか。
しかしなんだろう、どれも素直に言うのは憚られる。一つ目に関しては俺も詳細を把握出来ていないし、二つ目に関しては渡良瀬の名誉が絡んでくるし。初犯の方はバラし済みだから今更かもしれないが。
そして、三つ目に関しては──
「……や、別に」
「あー! これ絶対なんかあったやつだー!!」
「お? なんだ? おめーらそういうアレなのか?」
「いや違うから。
「普段から生意気ばっか言ってっからこういう時に反撃貰うんだよ、おぼっちゃん」
「そーだそーだ! これは虐げられしわたし達からの叛逆である!」
「年下のガキに虐げられるような自分の在り方をまず見つめ直すべきだと思うんだよね」
「もー! ホントそういうとこー!」
ぶんぶんと両手を振って全身で怒りを表現する23歳。見た目が幼女に片足突っ込んでるから全然迫力ないけど。お姉さんぽく扱われたいなら
形の上ではギーザーがリーダーということになっている我が『イノセンス・モラトリアム』であるが、ご覧の通りメンバー間に上下関係みたいなものは存在しない。誰かが隙を見せれば殴られ、殴られた方も機会があれば殴り返す健全で対等な間柄だ。
この輪の中に渡良瀬を放り込んだ結果、どういう化学反応が起こるのかはまだ分からない。まあ、特に面倒なことにはならないと思っている。なんだかんだ言って二人ともちゃんと大人だしな。ちょっと社会的立場が弱いだけで。
「……にしても、中々来ねーなセリンの奴。ヒーロー、おめー送ったID打ち間違えたりしてねーだろーな?」
「メモからコピペしたしそりゃない筈だが……ちょっと待ってくれ、どうなってるかLANEで確認してみ──」
ギーザーの言葉に相槌を打ちつつ、視界を
部屋の入口に閃光が瞬き、
その正体は、言うまでもなく──
「────」
──腰まで伸びた後ろ髪に、綺麗に切り揃えた前髪。
どちらも綺麗に黒一色で、日本人形か何かのよう。
睫毛の映える切れ長の目、整った顔の造形。『可愛い』よりも『美しい』の形容詞が似合いそうな、そんな少女。
確かにそこに、立っていた。あいつが。
「わた──」
だから許してくれ。開口一番本名ぶっぱしかけた俺を。
咳払いを一つ挟んで、
「……セリン、か?」
「あ──」
「本名で呼ぶなよ? 呼ぶなよ?」
「…………!」
咄嗟に口元を抑えてもごもごする渡良瀬──いやセリンか。とにかくこいつもやりかけやがったな同じこと。早いとこ慣れなきゃいけないな、お互いに。
「わー! すごい! ホントにきたー!」
「よく来たな
「……ど、どうも」
栗毛幼女と眼帯大男のコンビに絡まれ、人見知り全開の
「あ、あの……
「そうだよ。声で判るだろ」
「そ、そうだけど……
「安心しろ、ちゃんと知らない人達も混ざってるから」
「はーい! しらないひとAでーす!」
「後輩女子が出来たからってテンション上がってんなあユメ……」
「あ、ギザさんノリわるーい! そこはちゃんとしらないひとBでーすって言ってよー!」
いや、マジで今日のユメさんテンションおかしいな? こんなに普段はしゃぐ人だったっけ? 実はこっそり酒とか入ってない?
でもまあ、ギーザーの言う通りこの半年間ずっと野郎二人に囲まれてたんだもんな。待ちに待った同性の、それも年下の仲間が増えるとなれば弾けもするか。ただでさえ小さいもの好きだもんな、年齢も含めて。
いや、
「──とまあ、こんな感じの連中だよ。仲良くしてやってくれ」
「え、ええ……あの、それはいいのだけど」
「うん?」
何だろうか。さっきからずっとセリンの歯切れが悪い。単なるアウェーでの緊張感によるものかと思ったんだが、どうもそれだけではないような気がする。
で、その原因は一体何かと言いますと──
「……あなたのこと、
「……あー……」
俺でした。
そして俺が言葉に窮したのは、このタイミングで一つの事実に気が付いたからでした。
俺のプレイヤーネームってさあ。
「おいどーした? 黙ってねーで堂々と名乗ってやれよ、
「こんのノンデリ昭和親父がァァァァァ!!」
「あァ!? てめーなんだこの野郎、年号は関係ねーだろ年号は!」
「うっさいわアラフォー! いい歳こいていつまでゲームばっかやってんだいい加減卒業しろ卒業!」
「おめーそれ言ったら戦争だろーがクソガキ! 久々にフリマ潜って10番勝負で白黒付けっか、おお!?」
「上等じゃこんボケェ! 今日こそロートルに引導渡したらァ!!」
タイタン乗りの本懐とは!!
ナメられたら殺す!!!! それに尽きる!!!!!!
「あ、あの──え、えぇ……?」
何一つとして意味が理解らない。どうして彼は急にキレ始めたのだろう。どうして急に彼と大男さんは喧嘩を始めてしまったのだろう。どうして彼らはそのまま
どうして私は置いてけぼりを食らっているのかしら。
え? 今日の主役って私で合っているわよね? ゲストとして盛大にお出迎えされる流れだったわよね? まだ碌な自己紹介も済ませていないわよね? 赤嶺くん? 赤嶺くん??
「あっははー……ごめんねえ? いきなりウチの男どもがお見苦しい姿を晒しちゃって」
「い、いえ……」
そして私は、出会ったばかりの女の子といきなりふたりぼっちにされてしまった。
どうしよう。そもそも女の『子』という認識からして正しいのだろうか。少なくとも性別に関しては間違いない。WTにおいてはインカムによる肉声でのやり取りが推奨されている関係上、普通のネットゲームによくいるTSプレイヤーというのはごく少数の筈なので。野太い男性の声で堂々と女性アバターを利用しているプレイヤーも、まあ、見たことあるけれど。
とりあえず相手が年上という前提で行こう。大男さんも『後輩女子が出来た』と言っていたし、彼も学校で『歳の離れた遊び相手が二人いる』と言っていたし。
下に離れているのかもしれないけれど。
「……彼、
「ヒーローくん? うーん、ギザさんとはよくあんな感じでトムジェリってたりするけど……普段は割と冷めてる方じゃないかなあ。淡々とした声で容赦なくツッコミ入れてくるの。お姉さんもよく泣かされてます」
「な、泣かせ……?」
「ま、じゃれあいみたいなものだけどね? ホントに泣いてる子には多分甘いんじゃないかなあ、あの子。そもそもわたしが『ユメさん』でギザさんが呼び捨てなあたりに、あの子の本音が出てるとわたしは思います」
「…………」
それは──知っている。
とても、よく、知っている。
だからこそ、よく見ているなと思った。彼と、この──ユメさん? がどれだけの付き合いなのかは知らないが、この女性は随分と彼のことを理解しているように思える。
そのことが、正直ちょっと、うらやましい。
「──それはそれとして、さっきのヒーローくんが急におかしくなっちゃったのはね? 単なる照れ隠しだとわたしは思うのですよ」
「……え?」
「ギザさんが言ってたでしょ? 『REDHero』だよ、あの子の
「レッド……ヒーロー……」
赤嶺陽彩。
あかみね、ひいろ。
……なるほど。
「ぷっ……ふふ……」
「どう思った?」
「……かわいいなあって、思いました」
「でしょー!? カッコつけてるくせにそういうとこあるんだよあの子! そもそも本名がどうとか関係無しにレッドヒーローって名前自体が男の子丸出しなの! 肝心のそこに気付いてないっぽいところがホントわたしのツボ!」
確かにそうだ。まるっきり、日曜朝に出てくるなんとか戦隊の変身後みたいな名前をしている。そういうのが好きそうなタイプにも見えないのに。人は見かけによらないって、こういうことを言うのかしら?
──やっぱり私はまだ、彼のことを何も知らない。
知りたいな、と素直に思う。学校では知ることの出来ない彼のことを。
だから私は、この荒野へと帰ってきたのだ。母の想いを踏み躙ってまで。
……もっとも、彼の存在だけが理由でもないけれど。
ログインしたその数秒後に、ゴーグルを外す羽目になってしまった。
両の瞼から溢れるものを、堪えることが出来なくて。
砂塵が舞う乾いた土の大地。紅に染まる空の色。
青色の噴射光を撒き散らし飛び回る、鋼の
もう二度と、目にすることは叶わないと思っていた。
私の魂の場所は今も、記憶の中と変わらない姿で、確かに残っていた。
──帰ってきた。
私は本当に、電子の荒野へと帰ってきたのだ。
「……ぐすっ」
あ、いけない。思い返したらまた目が潤んできてしまったわ……というか私、ここ二日間で3年分くらい泣いてる気がする……この3年間情緒死んでたから余計に……またゴーグル外さないと……。
「──え、ええええええ!? なんで!? なんでセリンちゃんこのタイミングで泣いてるの!? わたしの話の中に泣き要素なんかあった!?」
「ごっ……ごめんなさい、ワケがわからないですよね……泣きジェスチャーで待機してますから少しだけ待っていてくれませんか……ぐすっ」
「いやそんな律儀なことしなくても──うわホントに
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きっと、身体が覚えている。何処までいっても忘れられない。
私は『serin』。電子の荒野に咲き誇る、一輪の花──
「あああああああああ!!」
「ええええ今度は何!? セリンちゃん!? 泣きジェスチャーのまんま大声出されるのすっごいシュールなんですけど!?」
忘れられないとは言ったけれど……
それよりも──そうだ。こんな下らないことを気に病んでいる場合ではない。
大声は、マズい。
とても。
「──リンちゃん?」
ノックの音と共に、部屋の外から声が掛かった。
ゴーグルを即座に外して、コントローラーと共にベッドの下へと放り込む。テレビの電源も落として、本体の方は──間に合わない。気付かれないことを祈るしかない。
それに何より、身に纏っているタイツスーツ。こればかりは、1秒や2秒で脱ぎ捨てようもない。
ベッドの上へと飛び込んで、肩の上まで布団を被る。
そのタイミングで、扉が開かれた。
母が、部屋へと入ってきた。
「どうしたの? すごい声がしたけれど……」
「な──なんでもないよ。寝てたんだけどね? 今日私、持久走で──久々に走ったりしたから、足攣っちゃったみたいで……」
「そうなの? お水か何か持ってくる?」
「大袈裟だよ、もう大丈夫。……その、目が冴えちゃったからしばらく起きてると思うけど、音とかしても気にしないでいいから」
「……そう。あんまり夜更かししちゃ駄目よ、いくら明日が学校お休みだからって──」
私は知っている。
母は私を愛している。今だってただ純粋に、心から私を心配してくれている。
そんな母に対して、私が。
どうしようもない後ろめたさを、感じてしまうのは。
「──ただでさえあなた、
負い目があるからだ。3年前から、ずっと。
その過ちから目を背けて。今もこうして、嘘を吐いて。
私はのうのうと、彼の待つ荒野へと帰ろうとしている。
「……うん、わかってる。おやすみなさい、お母さん」
「おやすみってあなた、まだ起きてるんじゃないの?」
「今日はもう顔合わせないでしょ。だから、おやすみ」
「……まあそうね。おやすみ、リンちゃん」
そうして漸く、扉が閉められた後にも。
私はしばらく、布団から出る気分にはなれなかった。
「……はああああ……」
最低だ。
私は、最低だ。
目先の欲求に囚われ、自分のことばかりを考えて、実の母親を騙してまで、やっているのはただの
誰が見たって、どう考えたって、間違っている。
私は本当に、どうしようもない、
──ぎゅうっ、と。
抱き締められるような、感覚があった。
「…………え?」
布団を捲り、辺りを見回す。当然、部屋の中には私以外もう誰もいない。母の気配も既に遠ざかっている。
それなのに、その感覚は続いている。
「…………!」
飛び跳ねるようにベッドを降りて、ゴーグルとコントローラーを引っ張り出す。すぐさま頭にゴーグルを被って、枕元に置いておいたリモコンを手に取り、テレビの電源を入れ直した。
そうして、私は。
私をそっと包み込む、感覚の正体を知った。
「……ユメ、さん?」
「あ、おかえり」
ごく自然に、彼女はそれだけを言った。
『涙』のジェスチャーは至極大袈裟で、膝を曲げてその場にしゃがみ込み、両目を擦りながらわんわんと泣きじゃくる動作になっている。私のアバターは女性キャラクターとしてはやや高めな背丈をしているけれど、今の体勢であれば──
──
「ごめんね。全部聞こえちゃった」
「あ、あの……」
「でも安心して! ウチのどあほう二人はまだ帰ってきてないから──うわ、ホントに10本やろうとしてる。信じらんない……あ、そこのモニタで二人の対戦観られるよ。セリンちゃんからしたらへっぽこもいいとこだろうけど、元全一として気になるとこあったら後で遠慮なく──」
「あの! ユメさん!」
「声、抑えないとダメなんでしょ」
「…………!」
そうだった。大声はマズいと誓った側から、同じ過ちを繰り返していては世話がない。
暫し間を置いてみたが、再び扉が開く気配はない。音がしても気にしないでほしいという牽制が功を奏したのかは知らないが、とにかく。
深呼吸を一つ挟んで、控えめな声量で。
「……どうして、私……抱き締められてるんですか?」
「んー? だってねえ」
彼女の声が近い。ほとんど耳元で囁かれているのだから当然だけれど。そう思うと、先の大声は彼女にとっても相当喧しく響いたに違いない。
にも拘らず、彼女はそのことをてんで気に留める様子もなく。
「わたしはお姉さんだから、かわいい妹が泣いてたら慰めてあげるのは当たり前なのだよ」
おどけた調子で、言った。
そう──たとえ私がゴーグルを外して、テレビの電源を切ったとしても。ゲーム機本体の電源を落とさなかった以上、WTの中の
だから、彼女の前にずっと映っていたのは。
母親を相手に嘘を吐き、座り込んで泣きじゃくるばかりの、
「すごい時代だよねえ。わたしとセリンちゃん、全然別の場所にいるのにさ。こうしてくっついてると、ホントにあなたのこと抱き締めてるような気分になるよ」
「……そう、かもしれません」
「頭とかも撫でてあげたいんだけどね? 流石にそこまではセンサー付いてないもんねえ、ただのわたしの自己満足になっちゃうもんね。でも髪綺麗だから撫でちゃう、うりうり」
「……あの」
「んー? なにかな?」
「私のこと、何も、聞かないんですか……?」
「聞いてほしい?」
「…………」
踏ん切りは──付かない。まだ。
当然だ。笑い話にするどころか、朝よりもずっと大きなしこりになってしまっている。これを消化し切るには、相当に長い時間を要するだろう。いや、おそらく──
私が母と対峙することを選ばない限りは、一生。
そうやって、言葉を返せず黙り込んでいると。
「──ね、セリンちゃん。ヒーローくんから、ウチのチーム名って聞いてるかな」
まだ私を抱き締めたままの彼女が。
不意に、そんなことを言った。
「……え?」
「『イノセンス・モラトリアム』──わたしね、この言葉をこう訳してるんだ。『
「……ユメさんも、何か、立ち止まってるんですか?」
「うん。23歳フリーター、人生絶賛停滞中」
「そ、そうなんですか……」
あっけらかんと言い放たれてしまった。どう返すのが正解だったのだろう。23歳なんて全然、取り返しの効く年齢だと思うのだけれど。
そんなことを、思っていると。
「だからさ。セリンちゃんもちょっと、休んでいきなよ。ウチで」
本当に、唐突に。
核心を、突かれた。
「勝手な想像なんだけどさ。セリンちゃんは誰よりも速く走り続けてたから、身体か心の方がちょっと、疲れちゃったんじゃないかなって」
「────」
「だから力尽きちゃって、そのままずっと、動けなかったのかもしれないけど──
「……あ、ぁ」
「だからしばらく、ゆっくりしてさ。また一歩でも進みたくなったら、歩き出せばいいよ。ね?」
「……うぁ、うぁぁぁぁぁ……」
──どうして。
どうして、今になって。
あの頃の私が欲しかった言葉を、全部くれるんだ、このひとは。
彼だけじゃない。きっとこのひとが、あの頃の私に寄り添っていてくれたのなら。
「……ようこそ、セリンちゃん」
いつしか私も、泣いていた。
そんな私の背中をそっと、撫でる感触があった。
「ここは『イノセンス・モラトリアム』──あなたがここで立ち止まることを、わたし達は赦します」
その言葉に抗う術を、罪人の私は持っていなくて。
『涙』のジェスチャーを解除出来るようになるまでは、本当に──本当に長い時間を要した。