VRロボゲの元絶対女王を隣の席の俺が幸せにするまで 作:Amisuru
「あーあ、結局5-5か……今日こそは勝ち越せると思ったんだけどな」
「バカ言え、20年早えーよ。……しかしまあ、おめーとも結構な数やり合ってきたもんだな。ランクマ時代から数えたら何戦目だ?」
「どうだろうな。一時期、毎日のように10ガチやってた頃もあったし……下手したら1000とか行ってたりして」
いや1000は流石に盛ってるか。最近は頻度減ってきたけど、去年の夏あたりの一番モチベ高かった頃とか含めて考えれば……500戦くらいは普通にやってるかもな。かれこれ一年、週一ペース換算で。
しかしまあ、今日は何がきっかけで
そんなことを思いながら、
「ギザさん」
「
「「正座」」
仁王が立っていました。
しかも二人。
「弁明があるなら聞きましょうヒーローくん」
「ついカッとなってやった。今では反省している」
「極刑」
「判決の殺意が高過ぎない? フランス革命期か?」
「なあ……いつまで続けんだこれ、この歳になると長時間この姿勢保つの普通に辛えんだが……」
「そんないい歳したおじさんが立場も状況も弁えずに私闘に及んだ件については?」
「ついカッとなって乗った」
「極刑」
「いやちょっと待て膝押されっと骨に直接ダメージ行ってあああああああああ!!」
現代のロベスピエールによるギロチンの刃がアラフォーの膝に落とされた。でもねユメさん、清廉の人と謳われた彼も最期は自らが断頭台へと送られたんだよ。恐怖政治の行き着く先には報復が待ち受けていると知りたまえ。
という訳で、本日の主役を放置して突発的十番勝負に及んでしまった罰として二人並んで
で、仁王の片割れが中年虐めを楽しんでいる以上、俺の前にももう一人の仁王が立ちはだかっているのが必然な訳でありまして。
「私は悲しいわ陽彩くん。あなたが三顧の礼で私を誘ってくるものだから、その熱意に心打たれて私は
「いや、お前誘ったの一回だけだしその一回で諦めかけたし……ていうかお前、その、呼び方……」
「『
「……そりゃまた、随分と慈悲深い湯婆婆様なことで」
……まあ、そういう理由なら納得してもいいだろう。リベさんなんかも俺のことはヒロ呼ばわりだったし。しかも割とこいつと似たような言い分で。
だからまあ、他意はない筈だ。うん。
「もー、ホントごめんねセリンちゃん。早くも愛想尽かしてない? だいじょうぶ?」
「心配無用よ
「セリンちゃん……! ひしっ」
「嗚呼、お姉様……! ひしっ」
でさあ。
何があったのこの二人。ちょっと目離した隙にドン引きするほど仲良くなってるんですけど。お姉様って何? 完堕ちじゃん完堕ち。絆レベルの上昇速度が速過ぎるだろ、
あとアバターの身長差のせいでセリンの腕がユメさんの頭上に絡まってる問題。vtuberが体型バレする瞬間見てるような気分になるな……ていうか
「あー……遅くなったけど自己紹介タイムにでも入る? 後もう立っていい?」
「んー、と言ってもねえ。セリンちゃんとヒーローくんはリアルで同じクラスな訳だし、わたしとセリンちゃんはもう互いのホクロの位置まで確かめ合った間柄だし」
「ほ、ほくっ……!?」
「なあやっぱ今日のユメさん酒入ってるだろ? 後もう立っていい?」
「となると後はそこのおじさんか。ギザさん生きてる? 膝に矢を受けた冒険者みたいな悶え方してるけどだいじょうぶ?」
「い……射った張本人の癖に他人事みてーな態度取りやがって……おめーいつか覚えてろよ……」
流石に耐えられなくなったのか、足を崩して胡座の姿勢になるギーザー。
「『動くな』」
呪言師ばりの圧を込めて言われては従う他になかった。
どうして……(困惑)。
「……改めてようこそ、
「なら最初に一言。あなたは自分の呼ばれ方に拘りがないようだけれど、私はそういう揶揄するような呼び名は好きじゃないわね」
「そいつは失敬、ミス・セリン」
「結構。よろしく、隊長さん」
とまあ、こんな感じで我が
などと思いつつ、二人のやりとりを見守っていると。
「「ちょっとタイム」」
まさかの同時申告であった。
何だこいつら息ピッタリか?
「……よおヒーロー、今のオレはおめーの目から見てどんな感じだ? 元全一相手でも日和らねえ大物感ってやつ醸し出せてるか?」
「そんなことをわざわざ小声で確かめに来る時点で小物感丸出しだよ」
「声でけーんだよバカ! いいか、格付けって奴は最初が一番肝心なんだからな。一度でも『あ、こいつに敬意払う必要ねえわ』って思われたらな、その先一生そいつは相手に舐め腐った態度取るようになるもんなんだよ!」
「随分実感の籠もった意見だなギーザー」
「まさに実例が今目の前にいんだよ……!」
ヘー、ダレノコトダロー。サッパリワカンナイナー。
というかね、ユメさんに正座させられて膝を嬲られてるこの状況で威厳を保とうっていうのがまず無理あるよね。事故が起きてから保険に入ろうとしても遅いんだよ。実際今も立てなくてよちよち歩きで寄って来る有様だし……。
「……だ、大丈夫だったかしらお姉様。初対面の、それも年長の方にこんな歯に衣着せぬ物言いをしてしまって……不快に思われたらどうしよう……」
「気にしない気にしない。イヤだったんでしょ? 完璧でも何でもないのにパーフェクトなんて呼ばれ方するの。いいかねセリンちゃん、言いたいことはガンガン言わないと生きていけないのだよ、この獰猛なチワワ達の檻の中じゃ」
「そ、そうなのね……お姉様がそう言うのなら……というか、獰猛なのにチワワ扱いなの?」
「牙は剥くけどか弱いからね。実力的にも社会的にも」
「しゃ、社会的にも……」
で、向こうも向こうで
そしてやっぱりセリンが
ま、
「はーい! という訳でね、無事に顔合わせも済んだことだし──ここから何するギザさん? リーダーなんだからしゃきっと話進めてよほらほら」
「散々人をいたぶっといて肝心なとこだけ丸投げしやがって……あー、おし」
気合を入れて床に手を付き立ち上がるギーザー。未だに正座を解けていない俺。おかげで見上げる首が痛くて仕方がない。ただでさえ無駄にデカいんだもんなこいつのアバター。ユメさんと足して2で割れば丁度良くなるのに。
そしてユメさんに逆サバ疑惑が芽生えたのを思うと、このおっさんのリアル身長にも怪しいところが……まあ普通に考えてリアルで2m越えは流石にないよな。NBA選手か何かじゃあるまいし。そもそもサイズの合うスーツ売ってるのかも怪しい。オーダーメイドとか受け付けてるんだろうか。
「晴れて4人揃ったところで、『イノセンス・モラトリアム』の今期の活動目標を伝える──つっても前から言ってた通り、狙うは当然上位過半数入りでのAクラス昇格! かつて後一歩で涙を飲んだオレ達に元全一のセリンが加わった今、こいつは決して夢物語の目標じゃあねえ!」
「いえー! どんどんぱふぱふー!」
「後一歩まで導いてくれた肝心の人がもういないけどな」
「何しょうもねーこと言ってんだヒーロー! 単純にリベがセリンに置き換わっただけでも戦力アップは間違いねーんだ、何なら昇格どころかBクラス一位だってワンチャンありえるぜ!」
「優勝待ったなし! Vやねん!」
「ユメさん野球のこと詳しくないって前言ってたよね?」
大型補強が必ずしもハマるとは限らないのがチーム競技の怖いとこなんだけどなあ。今季のレアル然りリバプール然り……スロットは結局解任されずにシーズン走り切れるんだろうか……。
さておき、ギーザーの言うことは理屈の上では正しい。確かにリベさんも俺達には過ぎた腕前の持ち主だったが、あの4年前の動画を見る限り──全一クラスは流石に物が違う。あの頃のセリンがそっくりそのまま蘇ったとするなら、個の勝負で太刀打ち出来るプレイヤーはBクラスには存在しないと断言出来るだろう。
……3年のブランクがあって尚、
「──少しいいかしら?」
丁度、そんなことを考えていた矢先。
当のセリンその人が、初めてこの場で自ら口火を切った。
「私、途中からあなた達の対戦を拝見させて貰ったのだけれど……陽彩くんと隊長さんは、チーム戦に参加しているプレイヤーの中でどの程度の位置付けになるのかしら?」
「あん? あー……ぶっちゃけ可もなく不可もなくってなとこだな。チーム戦は最低限プレイヤーポイント10000持ってることが参加条件みてーなとこあっからな」
「──そう。私の時代と今の10000が同じ価値かは知らないけれど、Bクラスと言っても思っていたよりレベルが高いのね?」
「今は20000越えが上級者ラインってとこだ。ちなみにオレは18000、
「リリース初期からやってる癖してデビュー二年目の俺にもう追い抜かれようとしてるおっさんがいるらしい」
「一々うるせーんだよおめーは! 大体ヒーロー、おめーはこういうゲームやんのWTが初めてじゃねーんだろ! オレはWT触るまでロボット物は専門外だったんだよ!」
そりゃまあ、ガンダムを始めとして思いつく限りのロボットゲーには手を出してきましたとも。ただ俺の悪い癖として、どのゲームも上級者ラインに手が届いたくらいで切り上げてしまうとこがあるんだよな。『極めた』なんて言い切れるようなゲームは、今のところ一つもない。
それこそWTであっても、20000ポイントに辿り着いて
……まあ、今のところはかつてないほどモチベ高いけれども。誰かさんが来て下さったおかげで。
「ちなみにお姉様は?」
「さ、3000くらい……」
「さんっ……!?」
「おめーマジでもう少しランクマ潜れよなユメ。ちゃんとガチアセン組んで」
「組んでも勝てないって前から言ってるじゃんよぉー! わたしは言わば幸運の置物なの! 立ってるだけでみんなに何らかのバフが振り撒かれてる筈なのぉー!」
「半年以上一緒にやってて一度も恩恵受けた覚えないわ」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
ごめんなユメさん。女を泣かせて喜ぶ趣味はないとか言ってたけどあれ嘘かもしれないわ。少なくともユメさんを泣かすのは楽しい。すっごい楽しい。
「うごくなこのあほぉー!!」
まあそうなるな。
裁判長の心象を悪化させてしまったわ。終身刑コースかな……。
「……ふっ、ふふふふふ……」
あ、
こいつ壊れる時になると薄笑い挟む癖あるな。段々
「……隊長さん。つまるところ、あなたは私に
「何か問題あるか? エースに丸投げも立派な戦術の一つだぜ。かのボビー・ロブソンだってこう言ってらあ、『私の戦術はロナウドだ!』ってな」
「クリスティアーノか?」
「いや豚の方」
「うーん、サッカーの話はわたし全然わかんな──」
「
【悲報】ユメさん、セリンに台詞を上書きされる。
それはそれとして、唐突にセリンの背後に大量の『ゴ』の字が浮かび始めた。何なら合わせて『ゴゴゴゴゴ……』と地鳴りのような音も鳴っている。
まるで漫画の世界が如きその演出は、『怒り』のエフェクト機能によるもの。いくら変態企業製の『Wasteland Titans』であっても、プレイヤーの表情筋までもは流石にアバターに反映出来ない。けれどこういった
なので、はい。
「私がこのチームで成すべき、最初のこと──それはあなた達に、
「せ……セリンちゃん? なんか押しちゃいけないスイッチ押しちゃってない?」
「だから言ったじゃん。たまに頭のネジ外れるって」
「今なの!? 今外れてるのこれ!?」
さてと。
渡良瀬は俺にこう言った。『私が走り続けて止まらなくなりそうになったら、あなたが私を止めて』と。だから、ひょっとしたらここは止めに入るべき場面なのかもしれない。
しかし、だ。
『走り出そうとするのを止めろ』とは、言ってなかったよな。渡良瀬。
だから続行します。当たり前だよなあ?
「隊長さん。私今のWTには疎いのだけれど、チーム練習用の
「お、おう……よおセリン、おめーいったい何を始める気だ?」
「決まっているわ、
そうして大変、律儀なことに。
かつて女王と呼ばれた女は、わざわざジェスチャー機能で『笑顔』の
「──戦場の中で、お互いのことを理解り合いましょう。
とまあ、そういうことらしいので。
そろそろ立っていい?