ウマ娘プリティーダービー 4th season 妄想プロット   作:サンデー狂

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ネットでの配信をイメージした特別エピソードです。

スピカを陽、カペラを陰と捉え、オグリ達はその狭間をイメージしています。

オグリは「シンデレラグレイ」、つまり灰色ですから。



25.5R 間組は病の闇に直面する

夕暮れのグラウンド

冬の陽が、府中に沈みゆく。

 

オグリのチーム特訓グラウンドは、長い影が地面を這うように広がっていた。

 

吐く息が白く凍り、汗が冷たい風にすぐ乾いていく。

 

クロノジェネシスは、有馬記念を見据えた最終調整の真っ最中だった。

 

彼女の足音が、乾いた地面を刻む。

 

オグリキャップは腕を組み、静かに見守っていた。

 

芦毛が風になびくその姿は、まるで光と闇の狭間に立つ影のようだった。

 

オグリ「クロノ、もう少し脚の回転を意識して。有馬は中山の坂が鍵になる。ここで鍛えたものが、必ず生きる」

 

クロノは息を荒げながらも、力強く頷いた。

 

前髪が汗で額に張り付き、瞳には先輩たちへの信頼が宿っている。

 

クロノ「はい……!オグリさん、タマさん……みんなの期待に応えられるように、全力で!」

 

その時、タマモクロスのスマホが、静かなグラウンドに軽やかな着信音を響かせた。

 

トゥルルルル

 

タマは画面を見て、目を輝かせた。

 

夕陽が彼女の芦毛の髪を赤く染めている。

 

タマ「おっちゃんからや!」

 

オグリが少し首を傾げた。

 

オグリ「おっちゃんって、昔世話になった人だと聞いたが」

 

タマは笑顔でビデオ通話に出た。

 

タマ「おっちゃん! 元気か!?」

 

画面に映ったのは、病室のベッドに横たわる初老の男性——タマの恩人である大家「おっちゃん」だった。

 

顔色は優れないが、目には温かい光が宿っている。

 

おっちゃん「タマ、元気か?ワシは……流行病で入院中や。でも、ニュースでクロノジェネシスの活躍は見とるで」

 

タマ「ウチは元気やで、おっちゃん!!毎日、クロノを鍛えとるんや!」

オグリが画面に近づき、丁寧に頭を下げた。

 

オグリ「初めまして。オグリキャップです。タマとはいい勝負を何度もしました。いつもお世話になっていたと聞いています」

 

おっちゃんは少し目を細めて微笑んだ。

 

おっちゃん「そうか……タマのライバルか。ワシも若い頃はタマに走りのイロハを教えたんやが……、今はこんな体じゃ、厳しいんや」

 

タマは画面に向かって元気よく、しかし精一杯の明るさで言った。

 

タマ「ウチらが鍛えとるクロノを紹介するで!!」

 

クロノは緊張しながらも、画面に向かって深く頭を下げた。

 

クロノ「初めまして、クロノジェネシスと言います。タマさんやオグリさんをはじめ、先輩方にお世話になっています。オグリさんの紹介でテイエムオペラオーさんやシンボリクリスエスさんからも鍛えてもらえています!」

 

おっちゃんの目が優しく細められた。

 

画面越しに、温かい視線がクロノを包む。

 

おっちゃん「おお、よろしゅうな。有馬出るんやな?」

 

クロノ「はい!!勝って見せます!!早く元気になってください……!」

 

おっちゃんは咳き込みながらも、力強く頷いた。

 

おっちゃん「ワシも、テレビでクロノの走りを見守っとる。タマの後輩として……頑張れよ」

 

ビデオ通話が切れた後、タマはスマホを握りしめ、少し目を赤くした。

 

タマ「……おっちゃん、頑張れよ……ウチらも、有馬で結果を出して……おっちゃんに、元気になってもらわな」

 

オグリはタマの肩にそっと手を置き、静かに言った。

 

オグリ(…光と闇の狭間。スピカは陽、カペラは陰。私は灰色——シンデレラグレイ。病の闇は、誰にでも平等に訪れる。でも、走り続けることでしか、その闇を越えられない。)

 

オグリ「そうだな。明けない夜はない……クロノ、お前がその光になれ」

 

クロノは拳を強く握り、夕陽に向かって力強く頷いた。

 

その瞳には、恩人の病と、自分の使命が燃えていた。

 

 

有馬記念直前、特番が組まれた。

 

司会「今回のゲストはナリタブライアンさん、サクラローレルさん、グラスワンダーさんです。なお、当初予定しておりましたシンボリルドルフさんは急用で出演がキャンセルとなりました」

 

ブライアン「私が予想するのはクロノジェネシスだ。なんだかグラスワンダー感があるからな」

 

サクラローレル「私もクロノジェネシスちゃんですね。あのトリッキーコースに強い印象もあります」

 

ドリジャ「私はキセキさんを消しますね。ジャパンカップの逆噴射はどうかと思います」

 

司会「ドリームジャーニーさんはなかなか辛辣ですね」

 

 

 

有馬記念 終了直後 オグリのチーム部室

 

有馬記念の興奮がまだ冷めやらぬオグリのチーム部室は、クロノジェネシスの勝利を祝う温かい空気に満ちていた。

 

テレビでは、有馬記念のゴールシーンが繰り返し流れ、芦毛のクロノが中山の直線を力強く駆け抜ける姿が映し出されている。

 

オグリキャップは穏やかな笑みを浮かべ、クロノの肩を叩いた。

 

オグリ「よくやったな、クロノ。芦毛の意地と、先輩たちの教えをしっかり体現した走りだった」

 

タマモクロスは目を輝かせ、大きな声で褒め称えた。

 

タマ「新時代の芦毛の誇りや!!ウチの後輩として、最高の走りやったで!!」

 

イナリワンは豪快に笑いながら、クロノの背中をバンバン叩いた。

 

イナリ「春秋グランプリ制覇ったぁめでてぇな!!お前、オグリ世代の意思を引き継ぐ芦毛として、立派にやってくれたぜ!」

 

クリークは優しく微笑みながら、少し遠い目をした。

 

クリーク「私はクラシック期の有馬記念で、斜行失格しちゃったのよね(史実1988年)。それで3着入線が取り消しに……、あの悔しさを知ってるからこそ、クロノちゃんの勝利が嬉しくて……」

 

シンボリクリスエスは、穏やかな笑顔で拍手を送った。

 

クリスエス「Congratulations、クロノジェネシス。君の走りは、多くのウマ娘にドラマを与えたはずだ」

 

クロノジェネシスは先輩たちに囲まれ、照れくさそうに笑いながら頭を下げた。

 

クロノ「ありがとうございます!!みんなの教えと、応援のおかげです……!でもまだ先があります!!来年はもっと強くなって、皆さんの期待に応えたいです……!」

 

部室は笑い声と拍手に包まれ、温かい勝利の余韻に浸っていた。

 

しかし、勝利の喜びが最高潮に達したところで、オグリ以外のスペシャルコーチたちが、静かに輪の中心に立った。

 

タマモクロスが、いつになく真剣な顔でクロノを見つめた。

 

タマ「クロノ……今日はほんまにおめでとう。ウチはここまでや。あとは……自分の力で勝ち進んでくれ。芦毛の誇りを、ちゃんと背負ってな」

 

イナリワンは椅子に立ってクロノの頭を軽くくしゃくしゃと撫でながら、豪快に笑った。

 

イナリ「あたしもだ。お前なら、もう十分だ。あとは自分で道を切り開け。グランプリ3連覇も全部自分の脚で掴み取れよ!」

 

クリークは優しく微笑み、クロノの両手を握った。

 

クリーク「私もここまでよ。特別トレーニングも、今日でおしまい❤️。あとは自分のスタミナを信じて…、有馬を、春秋グランプリを、あなた自身の力で掴んでね」

 

ディクタ「俺は足の都合でクラシック期しか走れなかった。クロノ、お前はまだ走れる。その先を見せてくれ」

 

オペラオーは大げさに腕を広げ、豪快に笑った。

 

オペラオー「ハーハッハッハ!!ボクもここまでだ!あとは自分の力で、グラス君さえ超えていけ!」 

 

ドトウは涙目になりながら、クロノを抱きしめた。

 

ドトウ「わ、私も……ここまでです……。未来は……あなた自身の手で掴み取って……!」

 

シンボリクリスエスとゼンノロブロイも、静かに頷いた。

 

クリスエス「私たちも、ここまでだ。君はもう、十分に強くなった」

 

ロブロイ「グランプリ3連覇、頑張ってください!」

 

クロノは先輩たちの言葉を聞き、目頭を熱くした。

 

彼女は深く頭を下げ、声を震わせながら答えた。

 

クロノ「……みんな、ありがとうございます。スペシャルコーチとして、短い間でしたが……本当に、たくさんを教えてくれました。あとは……自分の力で、勝ち進みます。皆さんの分まで、光を掴みます……!」

 

オグリは静かに微笑みながら、皆を見守っていた。

 

オグリ「……これで、スペシャルコーチ陣は解散だ。クロノ、あとは君の時代だ」

 

部室に、別れの寂しさと、新しい始まりの予感が混じり合った。

 

年末の寒い夜に、芦毛の若き挑戦者は、先輩たちの背中を見送りながら、自分の道を歩み始めた。

 

 

しかしその翌日

 

勝利の余韻がまだ残る朝、オグリとタマの部屋はいつもより静かだった。

 

窓から差し込む冬の陽射しが、床に長い影を落としている。

 

タマモクロスのスマホが、短い着信音を鳴らした。

 

画面に表示されたのは、昨日話したばかりのおっちゃんの病院からのメッセージだった。

 

タマは画面を凝視したまま、動きを止めた。

 

芦毛の耳がぴくりと動き、血の気が引いていくのが自分でもわかった。

 

タマ(……嘘やろ。昨日、笑顔で話してたのに……。)

 

彼女はスマホを落とし、部屋の隅に崩れ落ちるように膝を抱えた。

 

タマ「おっちゃーん!!」

 

声は最初小さく、すぐに嗚咽に変わった。

 

芦毛の体が小さく丸まり、床に涙がぽたぽたと落ちる。

 

クリークがすぐに駆け寄り、タマの背中を優しくさすった。

 

クリーク「今は朝早いわ。一旦オグリちゃんの部室に行きましょう」

 

オグリ「そうだな。イナリにも連絡しておこう」

 

オグリのチームの部室に、オグリたちが集まった。

 

クロノ「タマさんのあの大家さんが!?」

 

クリークの声も少し震えていた。

 

クリーク「感染症禍のせいで火葬済み。悲しすぎるわ……。直接お別れもできないなんて……」

 

イナリは壁に寄りかかり、拳を強く握りしめた。

 

苛立ちと悔しさが混じった声で呟く。

 

イナリ「クロノの有馬見届けてから急変か。最期に見れたのが救いか」

 

オグリは静かに立ち上がり、タマの肩に手を置いた。

 

オグリ「タマ、今すぐ葬儀に行くんだ。それがおっちゃんへ送る気持ちだ。交通費と香典代を用意しておく」

 

タマは涙を拭いながら、半分呆れたように言った。

 

タマ「このブルジョワめ!」

 

タマ(……おっちゃん、いつも「タマはいつもお金を家族に使っとるな」って笑ってたな。今は……みんながおっちゃんのためのお金で、最後のお別れに行けるんや)

 

オグリは大手スポーツ用品店『SPORTS LIGHT』の広告塔を務めていて、オグリキャップモデルは今でも人気商品だ。そのため収入が多いのだ。

 

クリークが冷静に、しかし優しく提案した。

 

クリーク「私たちは直接的な関わりがないから相場は3~5Kってところね」

 

イナリはすぐに財布を出し、皺くちゃの紙幣を数えた。

 

イナリ「あたしも出すぜ。3Kでいいか?」

 

オグリ「なら私は5Kだ」

 

タマ「いや張り合うなや」

 

オペラオーが大げさに笑いながら財布を出した。

 

オペラオー「ハーハッハッハ!!ボクも5K出そうじゃないか!!」

 

タマは涙を拭いながらも、苦笑した。

 

タマ「なんであんたらも出すねん!!気持ちはありがたいけどな」

 

オグリは心の中で、別の心配を抱えていた。

 

オグリ(六平もかなり高齢だ。感染したらまずいな……。でも、今はタマのために……)

 

おっちゃんの最期の言葉が、タマの胸に蘇った。

 

「タマ、お前のライバルと一緒に鍛えたクロノジェネシス、よく頑張った、ぞ、」

 

タマは涙を堪え、ゆっくりと立ち上がった。芦毛の瞳に、決意の光が戻る。

 

タマ「……おっちゃん、ありがとう……ちゃんと、行ってくるわ」

 

 

大阪へ向かう新幹線の中

 

年末の新幹線は、感染症禍の影響で驚くほど空いていた。

 

自由席車両はガラガラで、マスクをした乗客がまばらに座っているだけ。

 

窓の外を、冬の景色が高速で流れていく。

 

タマは窓際に座り、膝の上で手を強く握りしめていた。

 

隣に座るコミちゃんが、静かに声をかける。

 

コミちゃん「年末だから混んでいるって思ったけど、自由席ですらガラガラね」

 

タマ「感染症禍の影響やな……おっちゃんも、こんな状況で……」

 

タマは窓に額を押しつけ、目を閉じた。

 

タマ(……おっちゃん、ウチはまだ走れる。クロノも、みんなも……。おっちゃんが教えてくれた「走りのイロハ」を、ちゃんと次に繋ぐ。せやから……天国で、ちゃんと見とってな)

 

コミちゃんはタマの肩に軽く手を置き、静かに言った。

 

コミちゃん「私も一緒に行くわ。の最期の言葉、ちゃんと胸に刻んで……、タマちゃん、あなたは一人じゃないよ」

 

タマは小さく頷き、窓の外の灰色の空を見つめた。

 

新幹線は、冬の大阪へと静かに滑り込んでいった。

 

 

 

一方、オグリのチームは藤井の新聞社を訪れた

 

年末の編集部は、いつもより静かだった。

 

感染症禍の影響で出社人数が減り、モニターの明かりだけが淡く浮かぶフロア。

 

キーボードの音と、時折聞こえる咳払いが、部屋に重く響いていた。

 

六平銀次郎が先頭に立ち、懐かしい顔を見回した。

 

オグリキャップ、北原穣が続いている。

 

灰色のコートを羽織ったオグリの姿は、まるでこの部屋の影そのものだった。

 

六平「藤井、お前も立派なマスコミになったな」

 

藤井編集長はデスクから立ち上がり、深く頭を下げた。

 

昔の若々しさは残っているが、目には責任の重さが刻まれている。

 

藤井「あの頃は純粋で若かったと思っとります。過剰な取り上げでオグリキャップの精神を乱してしまいました。有馬直前に前編集長たちと殴り合って、その後やり口をURAに流して失脚させたんや……本当に、すまなかった」

 

オグリは穏やかな目で藤井を見つめ、静かに言った。

 

オグリ「本当に私を注目してたんだな」

 

六平は少し肩を落とし、ため息をついた。

 

六平「今まですまなかったな。どこかで俺はマスコミに偏見があったのかもしれないな……。お前がちゃんとケジメをつけてくれたおかげで、オグリも救われた」

 

北原が空気を変えるように、話題を切り替えた。

 

北原「話は変わりますけど、今年度のURA賞はどう考えておりますか?」

 

藤井はデスクに広げられた資料を指で軽く叩きながら、冷静に答えた。

 

藤井「今年のクラシック路線混合G1の優勝はティアラ路線がほとんどや。クラシック級は無敗三冠のコントレイル、ティアラ路線はデアリングタクトで確定やけど、シニア級は春天勝ったフィエールマンや」

 

六平が頷きながら続ける。

 

六平「高松宮記念はスーパーモズフレア、安田記念・スプリンターズステークス・マイルチャンピオンシップはグランアレグリア、大阪杯はラッキーライラック、秋天・ジャパンカップはアーモンドアイ、宝塚・有馬両グランプリはクロノジェネシスが勝ってるから消去法でっていったところか」

 

オグリは窓の外の灰色の空を見つめ、静かに呟いた。

 

オグリ「昔はティアラがクラシック路線に勝つのは難しいと言われてたが、今はそう言われなくなったな……時代が変わった証拠だ」

 

北原「本命の年度代表はコントレイルと?」

 

藤井は少し声を落とし、率直に答えた。

 

藤井「表にできひんが僕はアーモンドアイや。ジャパンカップでの直接対決で勝ったのが大きいな」

 

六平「直接対決といえば、去年のリスグラシューの年度代表ウマ娘はアーモンドアイと有馬で直接対決して勝ったのも大きいな」

 

藤井「記者はどうしても中央のレース、特にクラシック路線混合の王道路線を重視してまう。もしあの時アーモンドアイが香港を勝ったとしてもリスグラシューが選ばれた可能性大や」

 

オグリの表情がわずかに曇った。

 

灰色の瞳に、過去の影がよぎる。

 

オグリ「その時のサトノダイヤモンドたちの心は闇に覆われていた。リスグラシューを利用してスピカを潰そうとしていたのも事実だったが、あくまでホテルのアップグレードとかだったな」

 

藤井は資料を閉じながら、苦い顔で頷いた。

 

藤井「サトノ家はメジロ家と比べて新興、発言権を増すために支援したのにサトノダイヤモンドたちが便乗したのが真相やろうな……。潰すにしてもあくまでレースでってわけやな」

 

オグリ(…光と闇の狭間。アーモンドアイの九冠は確かに輝いていた。しかしその光が、誰かの闇を深くしたことも事実だ。私は灰色として、両方を見つめ続けるしかない。)

 

部室に短い沈黙が落ちた。

 

藤井がコーヒーを淹れ直し、皆に配る。

 

藤井「今年は特別や。感染症禍の中で走り続けたウマ娘たちに、ちゃんと光を当てたいと思っとる」

 

オグリはカップを受け取り、静かに微笑んだ。

 

オグリ「それが、お前の贖罪か」

 

藤井「そうや……オグリ、君が教えてくれた『走る者の物語』を、ちゃんと伝えていく」

 

窓の外では、冬の陽がゆっくりと沈み始めていた。




今回は原作キャラ死亡回です。

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