ウマ娘プリティーダービー 4th season 妄想プロット 作:サンデー狂
1月中旬 サトノグループ本社 大ホール
新年の冷たい風が窓を叩く中、サトノグループの新規事業発表会見が開催された。
会場は感染症対策で入場者を大幅に制限し、記者席も半分以下。
照明は控えめで、ステージに立つダイヤの父の姿が、どこか重々しく映えた。
後方には大型スクリーンが設置され、ダイヤちゃんのレース映像や、精神的なダメージを象徴する抽象的なグラフィックが静かに流れている。
ダイヤの父は、厳しい表情でマイクの前に立った。
スーツの襟を正し、深く息を吐いてから、静かに口を開いた。
ダイヤ父「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。我がサトノグループは、新規事業としてメンタルヘルス部門の参入を検討しております。これは、単なるビジネス拡大ではなく、ウマ娘アスリート、そしてヒト社会全体の『心の健康』を支えるための、責任ある一歩だと考えております。」
会場がざわついた。
記者の一人が手を挙げ、質問を投げかけた。
記者「なぜ、そのような計画を?サトノグループはこれまでアミューズメントを中心に不動産や科学技術を中心に事業を展開してきました。メンタルヘルス分野への参入は、かなり異例です。」
ダイヤ父は一瞬、目を伏せた。
その表情には、父としての痛みと、企業家としての決意が混じり合っていた。
ダイヤ父「……うちの娘が、サトノダイヤモンドが、凱旋門賞の大敗をきっかけに心が壊れていったからです。彼女はあのレース以降、ピークアウトの現実を受け入れられず、ただの石ころのように惨めな日々を過ごしました。ドリームトロフィー移籍後、憎悪と嫉妬を燃料として、心のみならず肉体をも壊す心理的強化——いわゆる『マインドドーピング』に手を出しました。その結果、今年度のドリームトロフィーは全休となりました。私は……父親として、自分の娘がそこまで追い詰められるのを、ただ見ていることしかできなかった。彼女の心が、黒い石ころと化していくのを……ただ、傍観していた。だからこそ、この事業に着手したのです。ウマ娘アスリートが、勝利のプレッシャー、世代交代の痛み、ピークアウトの絶望に、一人で立ち向かわなくて済むように。心のケアを、企業として本気で支えたい。サトノグループは、これまで最先端の科学技術を追い求めてきました。しかし、今、必要なのは『心』の強さです。」
会場が静まり返った。
記者の何人かは、メモを取る手を止め、父の言葉に聞き入っていた。
ダイヤ父は、声を少し震わせながら続けた。
ダイヤ父「娘は今、リハビリを続けています。短く切られた髪を、罰ではなく『新しい始まりの証』として受け止め、仲間たちと共に、少しずつ前へ進もうとしています。私は……父親として、彼女の傍にいてあげられなかったことを、今でも悔いています。だからこそ、この事業を通じて、同じように苦しむウマ娘が、いいえ、人間も一人でも減るように……全力で取り組む所存です。」
ダイヤちゃん(会場スクリーン映像を見ながら)(……お父様……私の惨めさを、こんなに公の場で……でも、ありがとう。あの黒い石ころだった私が、今、こうしてリハビリを続けられるのは、お父様がちゃんと向き合ってくれたから……私は、もう逃げない。スピカで得た光を、カペラにも、同じように苦しむ子たちにも、届けたい……)
会場に、静かな拍手が広がった。
父は深く頭を下げ、会見を締めくくった。
ダイヤ父「サトノグループは、技術だけを追い求める企業ではなく、『心』をも支える企業へと、生まれ変わります。どうか、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。」
会見が終わった数時間後。
リハビリ室の隅で、ダイヤちゃんは車いすに座ったままタブレットを開いた。短くなったボブヘアが、部屋の柔らかい照明に静かに映える。画面には、サトノ家の執務室から父が映っていた。
ダイヤちゃんは少し緊張した面持ちで、静かに口を開いた。
ダイヤちゃん「お父さま、立派な会見でした。闇に堕ちてしまった愚かなことをした私の経験を、他の人にもさせないために新事業を立ち上げたのですね……」
父は画面越しに、穏やかだが重い表情で頷いた。
彼の目には、企業家としての決意と、父親としての深い後悔が浮かんでいた。
ダイヤ父「そうだよ。これまでサトノグループは科学技術で最先端をリードしていた。だが、お前の心が壊れていくことに対処することができなかった。……すまない。父親として、娘の苦しみに気づけなかった。凱旋門賞以降、お前がどれだけ惨めな思いをしていたか、私はただ、傍観していただけだった……」
ダイヤ父(……ダイヤ。あの夜、私はお前の愚かさをただ叱責することしかできなかった。髪を切らせ、罰を与えた。でも、本当は……お前を抱きしめて、「よく頑張った」と、一言でも言ってあげたかった……。この新事業は、私の贖罪だ……)
ダイヤちゃんは短くなった髪をそっと触り、涙を浮かべながら微笑んだ。
ダイヤちゃん「謝るのはこちらです。お父さまが名付けてくれたダイヤモンドのように、強く砕けないウマ娘になれなかった……。本当のダイヤモンドは傷つきにくいけど衝撃に弱い宝石だった。私もすっかり泣き虫になってしまいました……。家族にこっぴどく叱られて、髪を切られて、ようやく自分の惨めさと向き合えた……でも、今は……この短くなった髪も、罰じゃなくて、新しい始まりの証、お父様からの最初の贈り物にしたい……スピカのみんなに支えられて、少しずつ、光を取り戻せそうです……」
ダイヤちゃん(……お父さま。あの会見で、私の闇を公に語ってくれた……。科学技術だけじゃ、心は救えない。私のように、憎しみに堕ちて体を壊すウマ娘を、これ以上増やさないために……お父さまの決意が、私の心に、温かい光を灯してくれた……。私は、もう泣き虫でいい。本当の自分を受け入れて、強く、優しく、生きていきたい……)
父は画面越しに、静かに微笑んだ。
その笑顔には、久しぶりの安堵と、深い愛情が溢れていた。
ダイヤ父「……泣き虫でいい。お前はもう、十分に頑張った。これからは、サトノダイヤモンドとして、自分のペースで輝いていけ。父さんも、この新事業で、お前と同じように苦しむ子たちを、一人でも救えるようにするよ。カペラもスピカとの合同練習をすることになるだろう」
ダイヤちゃんは涙を拭い、力強く頷いた。
ダイヤちゃん「……はい。お父さま、ありがとうございます。私は、スピカのみんなと……ちゃんと、強くなります」
リモート越しの親子の会話は、静かで、温かく、そして、確かに、新しい希望を運んでいた。
リハビリ中
白を基調とした清潔な訓練室に、午後の柔らかい陽射しが差し込んでいた。
窓の外にはまだ冬の名残が残る木々が揺れ、室内は消毒液の匂いと、わずかな汗の匂いが混じり合っている。
ダイヤちゃんは平行棒に手をかけ、ゆっくりと体重を移動させていた。
短くなったボブヘアが汗で額に張り付き、息が荒い。
まだ激しい運動は禁止されているため、動作は慎重そのものだった。
ダイヤちゃん「うう……やっぱり入院長かったから身体が鈍ってる……。脚が思うように上がらない……」
ダイヤちゃん(……石ころだった頃よりはマシだけど、まだ遠い。凱旋門賞以降、わたしとクラちゃんの道は荊がびっしりと敷き詰められていた。闇に逃げて荊から逃れても、今度は過酷なリハビリという茨の道。でも、これは私たちが選んだしまった結果。短くなった髪を見るたび、罰と再生の両方を思い出す。キタちゃん、アイさん……みんなの顔を思い浮かべながら、一歩ずつ、ちゃんと前に進まなきゃ)
クラウンは隣のマットに腰を下ろし、松葉杖を傍らに置いて静かに話しかけた。
クラウン「知ってる?ネットで私たちがG1勝っていた時期、ダイヤが菊花賞を勝って、私が宝塚記念を勝つまでのほぼ1年間を『サトノ家奇跡の1年間』って言われているの」
ダイヤちゃんは息を整えながら、苦笑した。
ダイヤちゃん「ええ、秋以降また勝てなくなったから、まるで奇跡のようだって揶揄してるのよね……」
クラウン「今年レーヴが入るから彼女に託すわ」
ダイヤちゃん「おドウちゃんと同期ね。調べた結果スピカにいないスプリンターだから今度はスピカを潰すんじゃなくて自分のために走って欲しいわ」
そこへ、ドアが静かに開いた。
キタちゃん、テイオー、マックイーンがやってきた
キタちゃん「ダイヤちゃん、リハビリ手伝おうか?」
ダイヤちゃん「ありがとう、キタちゃん。……皮肉よね。私はキタちゃんが憧れたテイオーさんみたいにリハビリに苦しんで、キタちゃんは私が憧れたマックイーンさんに近い戦績になっちゃったよね……」
テイオーが少し複雑な表情で、優しく言った。
テイオー「ダイヤちゃん……そんな風に自分を責めないで。ボクも骨折で苦しんだことあるよ。一緒に、ゆっくり回復していこう」
マックイーンは優雅に微笑みながら、ダイヤちゃんの背中を軽くさすった。
マック「気を落とさないでください!わたくしたちも、皆で支えますわ」
そこへ、さらに賑やかな気配が加わった。
ドアが再び開き、オグリキャップ、スーパークリーク、イナリワンが、それぞれトレーナーを引き連れて入ってきた。
オグリは紙袋を、クリークは手作りのおにぎり風の包みを、イナリはスポーツドリンクのケースを抱えている。
オグリは穏やかな笑みを浮かべ、部屋を見回した。
オグリ「みんな、大丈夫か?にんにく味噌食べるか?」
イナリが豪快に笑いながら、ケースを置いた。
イナリ「おめーら、差し入れだぞ! 栄養満点のプロテイン入りバーと、回復にいいハーブティーも持ってきたぜ!」
クリークは優しく微笑みながら、ダイヤちゃんの近くに包みを置いた。
クリーク「しっかり食べてね。スタミナを回復させるには、食べることが一番よ❤️」
オグリはダイヤちゃんの肩に軽く手を置き、静かに励ました。
オグリ「キタサンたちも復帰を願っているぞ。焦らず、自分のペースでいい」
ダイヤちゃんは汗を拭きながら、嬉しそうに頭を下げた。
ダイヤちゃん「みんな……ありがとうございます。本当に、励みになります」
その時、訓練室の入り口に新たな気配が現れた。
奈瀬英人とバンブーメモリー、そして見慣れない新人ウマ娘が立っていた。
英人は腕を組み、部屋の中を一瞥して言った。
英人「サトノダイヤモンドくん、回復が遅いんじゃないかな。プランが甘すぎるんじゃないのか?」
六平が即座に反応し、眉を寄せた。
六平「お前に言われる筋合いはねぇよ」
キタちゃん「ダイヤちゃんは毎日頑張っています」
英人は構わず、淡々と続けた。
英人「リハビリのプランが甘いんじゃないのか?時間がかかればそれだけ筋力は低下し、勘は鈍る。機能回復への投資は惜しむな。やり過ぎるくらいで良い。なんだったら腕のいい医師を紹介しようか?」
ダイヤちゃんは息を整えながら、静かに答えた。
ダイヤちゃん「……専属の先生に言われた通りにこなしています」
英人はさらに踏み込んだ。
英人「不十分だ。より高度な専属の専門医をつけろ。」
奈瀬文乃(英人の娘でクリークのトレーナー)が、苛立ちながら口を挟んだ。
文乃「クリークたちの時と同じこと言ってますよ」
六平「それにそのウマ娘は誰なんだ?」
英人「ああ、紹介が遅れた。僕たちのチームに入ったウマ娘だ」
そこに立っていた新人ウマ娘が、元気よく一歩前に出た。
新人「エフフォーリアです!よろしくお願いします!」
オグリは小さく目を細め、小声で呟いた。
オグリ(小声で)「……なんかナリタブライアンくさいな、いやジャングルポケットか?」
クリークがくすっと笑った。
クリーク「世代交代できそうってこと?」
オグリ「そうじゃない。言葉では表せない……ただ、強烈な『何か』を感じる」
イナリ「そういやドゥラメンテに憧れている総合格闘技からトゥインクルに飛び込んだタイトルホルダーとは同期になるからライバルになりそうだな」
ダイヤちゃん(……エフフォーリア、タイトルホルダー。新世代の風が、もうここまで来ている。私はまだ松葉杖なのに……。でも、妬まない。悔しくない。ただ、ちゃんと回復して、みんなの隣に並びたい)
シュヴァルは静かに言った。
シュヴァル「僕たちのダメージは物理的なものだけじゃありません……。新世代の衝撃や、嫉妬や憎悪からくる心の傷も、まだ完全に癒えてはいない」
英人は気にせずに続けた。
英人「まだまだ君たちも青いね」
六平が英人を睨みつけた。
六平「冷やかしじゃねぇだろ」
英人は肩をすくめ、軽く笑った。
英人「ああ、僕たちのチームに入ったウマ娘だ。参考までに、プランを見せてもらえるか?」
部屋に、緊張と希望が混じり合った空気が流れた。
オグリは静かに皆を見回し、心の中で思った。
オグリ(……灰色の私は、光と闇の狭間で、ただ見守るしかない。だが、それが私の役割だ)
六平(小声で)「おい、お前ら。あいつの心は強いんじゃない、鈍いんだ。コニュニケーションが苦手で娘の地雷を踏み抜く。あいつのメンタルは参考にするなよ」
シュヴァル「あ、はい」
ダイヤちゃん(焦っちゃダメ。今はしっかり身体を回復させないと。ラブちゃんの応援にも行きたい)
クラウン「ラヴの自走は京都記念よね。私が連覇したG2だから思い出深いわ」
ダイヤちゃん「年明けの始動戦ね。体調次第では私も応援に行くわ」