【再構成作業中】聖剣の勇者カリナ・クロスロード戦記 ―世界を救った少女は、鋼の未来でも人を救う―   作:美風慶伍

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Ⅵ:地形の罠と見えない敵

 そして長い進軍ルートを着実に進み、伏兵や巡察部隊と戦い、何人かの兵士を失いながらも、カリナたちは目的地へと一歩一歩進んでいった。

 その時彼らは奇妙な地形に出くわすこととなる。

 

「これは――」

「どうした、カリナ?」

 

 一度小高い丘を登って降りようとした時だ。

 

「非常に嫌な地形です、窪地の中を道がまっすぐに伸びている。その道の左右に高台がある。この淀んだ空気――敵の襲撃が考えられます」

 

 カリナの言葉をエルリックたちは肯定する。

 

「そうだな左右から挟撃してくるには、理想的な状況だ。迂回路は無いのか?」

 

 ミリアが顔を左右に振る。

 

「残念ながら――、岩場を登坂すれば別ですが」

「流石にそれは無理だな」

「えぇ、周囲に向けて最大限に注意を払い、一気に駆け抜けましょう」

 

 ソフィアが同意する。

 

「そうね、この地形は時間をかけると厄介だわ」

 

 方針は決まった。カリナが決断する。

 

「分かりました、では周囲への警戒を最大レベルに上げて、一気に駆け抜けるということで」

「了解!」

 

 こうして警戒すべき地球地帯の突破の方針が決まった。

 

「進軍!」

 

 エルリックが号令をかけて着実に前に進んでいく。

 全体の隊列が窪地の中に飲み込まれていく。

 その時ソフィアがつぶやいた。

 

「嫌な雲だわ――」

 

 ミリアが言う。

 

「いえ、これは雲ではありません濃霧です」

「霧――、それにしては随分と黒い色がかかってるわね」

「黒霧か――」と、エルリック

 

 だがそこで周囲警戒に当たっていた斥候兵たちが大声で叫んだ。

 

「敵襲! 左右の高台に人的反応あり! 魔王軍の伏兵です!」

 

 カリナが叫んで号令する。

 

「全員戦闘準備! 行軍の足を止めるな!」

 

 戦士が剣を構え、弓兵が弓をつがえる。全員がいつでも周囲に攻撃ができるように、十分な警戒を行いながらその進軍速度を上げた。だが――

 

「ぐあっ!」

「うわぁっ!」

 

 敵はその気配を消しながら一斉に襲いかかってきたのである。その姿は肉眼ではおぼろげにしか見えてこない。さらにこの〝黒い霧〟が人間たちから視界を奪うのだ。

 

「敵襲! 姿の見えない襲撃部隊です!」

「くそっ! この状況どうやって対処すればいいんだ!」

「諦めるな!」

 

 団員たちは次々に叫んだ。魔導士兵の一人が叫んだ。

 

「隠身魔法だわ! 極めて高度な光学魔法!」 

 

 状況はカリナたちにも同じことが起きていた。

 

「くそ! 窪地地形に黒い霧、そこに姿の見えない襲撃兵――、とんでもないことを考えやがった!」

 

 エルリックが叫ぶ傍らで、カリナは思考を巡らせていた。そして聖剣の中の精霊のエリュシオに声をかけた。

 

「エリュシオ、あなたの機能を複合で発動させてこの状況の対処ができないかしら?」

『可能です。遠隔視で敵の位置を把握し、啓示で全員に敵の位置のビジョンを与えます』

「やるわよ!」

『かしこまりました。速やかにご準備を』

 

 エルリックも手慣れたようにカリナの行動の補佐をする。

 

「重装歩兵は集まれ! カリナ団長を守る盾となる!」

「はっ!」

 

 そして速やかに重装歩兵たちが、カリナを守るバリケードを作った。その中でカリナが対策の準備を始めていた。

 左腰から引き抜いた聖剣レギオンブレイドを地面に突き立てる。

 そして片膝をついて聖剣を両手で掴むと、カリナはその額を、レギオンブレイドの握りの柄に押し当てた。

 

「エリュシオ! お願い!」

『了解、大規模遠隔視、能力発動します』

 

 肉眼で目の届かない遥か遠くまでを見通す千里眼的な能力が遠隔視だ。精霊エリュシオの得意技でこれで広大なエリアも、遥か遠くも見抜くことができる。カリナはエリュシオと連動することで彼女自身も遠隔視の光景を脳裏に見ることができる。啓示はさらにエリュシオが意図した相手に対して、メッセージやビジョンを送って対象者の認識の中に見せることができるのだ。

 これは魔法というよりレギオンブレイドと精霊エリュシオが持つ固有能力のようなものだ。

 

「見えた! 霧の中の敵の位置がつかめる!」

『ではそのイメージをみんなに広げましょう』

「お願い!」

『了解しました。遠隔視で得られたイメージを即時に〝啓示〟で共有します』

「急いで!」

『はい、敵襲イメージを啓示にて周囲に共有いたします』

 

 レギオンブレイド全体がかすかに光を放ち、それが全てのアルカナヴァンガードの団員たちに共有されていく。

 

「なんだこれは?」

「見える見えるぞ!」

「姿が見えればこっちのものだ!」

 

 兵士たちの叫びが聞こえる。

 

「歩兵各部隊、全員抜刀! 応戦開始!」

「弓兵! 抗魔矢を撃て!」

「銃火兵! 弾をこめよ! 連続で敵を打ち倒せ!」

「魔導士は戦闘支援魔法展開! 敵の攻撃を防ぐ結界魔法も併用!」

 

 敵の存在を看破したことで状況は一気にこちら有利になる。

 

「反撃成功!」

「敵攻撃陣形崩壊! 襲撃が止まりました!」

「追撃いたしますか?」

 

 それにエルリックが答えた。

 

「深追いはするな! この地形を踏破する方が先だ!」

「了解!」

 

 そして、術をかけていたカリナを支えながら、エルリックの行動の指揮のもと、窪地を脱出していく。

 こうして、アルカナヴァンガードは危機的状況を見事に回避したのだった。

 

 だが――

 

『遠隔視、及び、啓示――終了いたします』

 

 エリュシオとカリナの連携が終わる。術の行使が終わり、自分の足で歩き出すカリナだったが、その足取りはフラフラしていた。

 

「ちょっと大丈夫?」

 

 ソフィアが心配そうに声をかけた。

 

「大丈夫です、ちょっと気力を集中させすぎただけですから」

 

 2000人規模の大軍団全員に思考共有をしたのだ。それだけの術をかければ、消耗しない方がおかしい。カリナを気遣いながらエルリックが告げる。

 

「ここを突破したら場所を探して休憩させよう。それまで交代で背負うぞ」

「はっ!」

 

 力のありそうな兵士たちがカリナを背負い始めた。

 

「申し訳ありません……」

「なんの! あなたの御技で危機を脱したのです。これくらいさせていただくのは当然のことです」

「巫女さまは、しばらく体をお休めください」

 

 団員たちとカリナの間には深い絆があった。アルカナヴァンガードが発足して移行、着実に築き上げてきた信頼の絆だった。

 

「ありがとうみんな」

 

 仲間たちとの信頼の絆を噛みしめながら、彼らは彼らに疲れた体を委ねたのだった。

 




魔王城へ至る道は、ただ進むだけでは越えられない戦場です。
カリナが勇者として、指揮官としてどう切り抜けていくのか、引き続き見守っていただけましたら嬉しいです。
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