Over the Horizon of Dawn.   作:榛桐 玲

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Series.10 『東京港トンネル-2』

───視点は後方に移り、東京港トンネル。

 

前半集団の殿に位置していた、ロニの147アリストとカイルのFD。その2台が、流麗なボディが生み出す良好な空力特性と大排気量ターボEgによるハイパワーを活かし、前方2集団との間隔を急激に詰めてきていた───

 

800ps超の2JZ-GTEと650psの20B-REW。その「咆哮」と「狼の遠吠え」が、第3集団の後方から迫ってくる。

 

「What───あのGS(アリスト)、ココで本領発揮ってワケ!?」

「なんつー勢いだ……いや、GSだけじゃない!FDも来てやがる!ありゃ絶対、13Bのままじゃないぞ!」

「───ロニ!カイル!うふふっ……貴方達2人は、そのまま沈んじゃうワケないって思ってた!」

 

トンネル前半までの下り勾配を味方に付け、前方集団が撒き散らすダーティエア(乱気流)を跳ね退けながらも2台の最高速は340km/hを超えてくる。

 

「俺のアリストは、コレくらいのダーティエア程度じゃ乱れねぇよ!GTウイングこそ着けてねぇが、ディフューザーでしっかりグラウンド・エフェクトは稼いでんだ!!軽量化をしてねぇのも、全てはスタビリティの為さ!!」

「俺のFDも───父さんが多少のフロントヘビーを許容してでも13Bから20Bにスワップしたのは、全てこのステージで最前線を張る為さ!それでもREは捨てなかった! それが父さんの拘りなんだ!」

 

「カイル!ロニ!2人とも、遅かったじゃない!」

「あはっ、ゴメンよリアラ!俺もロニもスラローム合戦はどうも苦手でさ!俺はウデと経験のせいだけど、ロニはクルマがね……!」

「うるせーよ、カイル!俺だってもっとウデがありゃあ、あのアメ車使いのお姉さん方みたく左右自在にデカいボディを振り回せるだろうによ……!」

 

リアラとカイルからの軽口に噛みつくように応じつつ、同じく重量級のハイパワーFRを自在に操るアイオワとサウスダコタの走りを見てロニは歯噛みする。

 

「……そうは言っても、コルベットもバイパーも本気のスポーツカーだしなぁ」

「車重も、少なくともアリストよりは軽いわよね……重量配分も……」

「「……なんで80スープラにしなかったの?」」

「ぐぬぬ……うるっせーよ!俺はこのイタルデザインが手掛けた流麗で薄いボディデザインが気に入ってんだ!!確かに純粋な速さなら80スープラが上だろうさ!けどなぁ、俺はこのアリストで行くって決めちまったんだ!もう引き返せねぇんだよッ!!」

 

ロニは吐き捨てるように言うと、カイルのFDと共にリアラのNSX-Sを両サイドからオーバーテイクしていく。

 

「悪ぃな、リアラ!」

「お先ッ!」

「きゃっ!───あいつらクレイジーだ!」

 

両サイドからオーバーテイクを受けたリアラは、2000年シーズンのF1ベルギーGPでミハエル・シューマッハとミカ・ハッキネンに両側から同時に抜き去られたリカルド・ゾンタさながらのリアクションを見せる。

 

「───っ、は……今、本気で怖かったんだけど……!!」

「ご、ごめんリアラ!」

「ラインが両脇しか空いてなかったんだ!悪りィ、リアラ!」

「ふぅっ……いいわ、許してあげるわよ───貴方達のエアポケット、貸してくれるならね!」

 

リアラはそう言うと、ロニのアリストが押し退けた空気の隙間へと潜り込み、車速を伸ばしていく。

 

「お……オイオイ、マジぃ───!?」

「アオるよな、けっこー……リアラのNSXッ!!」

 

スリップに入った途端、スピードを乗せて追い縋ってくるリアラのNSX-Sをバックミラー越しに視認したカイルとロニは、その様子に驚きを隠せない。

 

「私のC32B改は、アメリカンVみたいなハイパワーや圧倒的なトルクは持ってないけど───10,000rpmまで回せる、このハイ・レブリミットが最大の武器なのよ!」

「流石は高回転のホンダVTEC───その特性はスーチャーを積んでなお死んでいない、か!」

「へっ、そうなりゃ───このまま3台でトレイン組んで、アメ車コンビの前に出るぞ!」

「了解、ロニ!」

 

第2・第3集団も東京港トンネルを脱出。直後に待ち構える大井コーナーも、8台のマシン達は一直線に隊列を組みながらクリアする。しかし、アプローチ時のブレーキング精度にバラつきがあった事により、第2集団と後ろのマシン達の間隔が幾ばくか詰まる。特に3番手を走るナナリーのステージアは、こういった超高速域でのブレーキングでどうしてもステーションワゴンというボディ特性のデメリットが現れてしまう。

 

「───Yes! 前のGroupとの差、今のコーナーで詰められたみたいね!」

「あのステージア、瞬発力自体はなかなかのモノだけど───やっぱりワゴン故の慣性は殺しきれないみたいだな!」

 

しかし───ナナリーはそれでも尚、意地を見せてポジションをキープ。後方から迫る2台のアメ車を立ち上がり加速で抑え込む。

 

「───あたしも、ステージアを選んだ理由は……ロニと同じようなモンさッ!!」

 

左の高速を立ち上がって、大井のストレート。大井JCTを通過し都心方面に向かうクルマは全て消えた為、ここからは再び最高速合戦の側面が強くなってくる。前を行くリオンの34GT-Rと鳳翔のZ32に、ナナリーはスリップストリームを駆使して必死に食らい付く。

 

「GT-R以上に無骨なフォルムに、充分な居住空間とラゲッジスペース……そこに組み合わされるRB26とアテーサE-TSッ!この相反するギャップを上手く纏めあげたパッケージング!ソレがあたしがステージアを迎えた理由だよッ!!あたしもロニと同じく、このコと最後まで走り続けるって決めたんだッ!!」

 

2基のGT3037Sタービンが吸い込んだ空気を圧縮し、大量の酸素をEgの燃焼室内へと送り込む。GT-Rに比べて劣る瞬発力を強化すべく、高回転域で伸びる最高速合戦向けのビッグシングル仕様ではなくツインミドル仕様に仕上げられたナナリーのステージアは、レスポンスの良さを活かし中間域での再加速で勝負を掛ける───

 

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