Over the Horizon of Dawn. 作:榛桐 玲
そして、最後尾───殿の2台が合流した事で、5台が入り交じる大混戦となっている第3集団。先頭にアイオワのC4コルベットZR-1、2番手にサウスダコタのSR型バイパーGTS、3番手タイがカイルのFDとロニの147アリスト、最後尾がリアラのNSX-Sだ。
こちらも大黒コーナーを既に立ち上がり、後は1km弱のベイブリッジを駆け抜けて、フィニッシュラインである標識ゲートを潜り抜けるだけ。正真正銘の力比べだ。
「───Final Straight! 先に走り出した者として、後ればかり取ってはいられないわ!」
「───私も同感だ!American spiritってヤツの意地、アイツらにキッチリ示してやるッ!」
C4ベットのLT5が、バイパーの356-T6が、それぞれ咆哮を上げる。5.4Lと8.0Lという日本車の視点からは規格外とも言える膨大な排気量が、どの回転域からでも圧倒的なトルクを供給し車体を前へと進ませてくれる。決して上まで回るとは言えないEgだが、ギアレシオで帳尻を合わせてしまえば済む事だ。
「───クソッ!ココまで来たってのに、ジリジリと離されやがる!パワー自体は俺のアリストが上のはずなのに、コレが純粋な排気量の差ってワケか!?」
「───みたい、だね……上は俺のFDや、リアラのNSXが伸びるけど……この速度域まで来ると、純粋なトルクの差は大きいよ……!」
「───悔しいけど、ココまでね……けれど、あの2台に最後まで着いていけた。コレは必ず、次に繋げられるわ!」
前を行くアメリカンスポーツ2台と、徐々に間隔が広がっていく3台の日本車勢。だが、その姿は最後まで2台のルームミラーから消えず、ハッキリと3台の車体が映されていた。
───フィニッシュラインの標識ゲート。鼻先の差でアイオワのC4ベットが最初に通過し、サウスダコタのバイパーが直後に続く。次にロニ、カイル、リアラの順でゲート下を駆け抜ける。
「───Got it!! ギリギリだったけど、なんとかVetteの意地は見せたわよ、Dakota!!」
「───Oh jesus……流石はAmerican Sportsの代表格、そう簡単には撃墜(オト)せはしなかったか……ハハハッ!」
アイオワのC4ベットの背後にサウスダコタのバイパーが着き、ハザードを点滅させながら減速。本牧JCTを左に折れ、前の5台に続くカタチで後方3台をK3号狩場線へと導く。
「……負けちまったな」
「うん、そうだね……でも俺、全然悔しくないよ!『途中まで着いていければ御の字』───ロニがそう言ってた相手に、最後まで食らい付けたワケだから!」
「ふふっ、確かにね……それにカイル、貴方が悔しいと思わないのは───彼女達も、私達と同じだって事が実感出来たから……でしょう?」
「───ああ、もちろん!」
リアラからの問いに、カイルは胸を張って答える。出身地も、国籍も、乗っているマシンも違う。だが、非合法かつ無関係な他者すら巻き込みかねない危険な最高速バトルの中で、『湾岸族』達が追い求めているモノは皆同じ───『スピードの快感』と『生の実感』だ。
危険だと、犯罪だと分かっていても、ソレを得られる場所は現時点(いま)の彼ら彼女らにとって『湾岸(ココ)』にしかない。だからリオンのように降りる理由が見つかるか、事故によって自らの命を落とすまで───走り終えた後の『暁の水平線(Horizon of Dawn)』の美しさを味わうべく、反社会的な禁忌だと知った上で……ココを走り続けるのだろう。