Over the Horizon of Dawn. 作:榛桐 玲
───ペースを落としながら合流した10台のマシン。クーリングの為に100km/h前後のスピードを維持しつつ、K3号狩場線の石川町JCTからK1号横羽線へ入る。その次は生麦JCTからK5号大黒線へ。そして大黒JCTから再び湾岸線・ベイブリッジを経由し、狩場線の新山下ランプから一同は下道へと降りた。
示し合わせたワケではないのだが、山下通りを10台は連なって進んでいく。対岸に見えるみなとみらい21のビル群や、間近に聳え立つ横浜マリンタワーの照明が眩く煌めいている。
そして、山下公園の向かい側に居を構える、24時間営業のチェーン系ファミリーレストラン。先頭を走るビスマルクのC62は、そのファミレスの駐車場へと入っていく───が、車高の低い962Cがベース故に『段切り』しなければならなくなっているのは御愛敬、か。
「……街乗りなのに、冷や汗が出るわ……」
ビスマルクは苦笑しつつ、空きスペースを見つけるとドアを開きサイドシルに腰掛けながらC62を慎重にバックさせていく。
「……『カウンタック・リバース』か。ま、後方視界は明らかに利かないでしょうし当然よね~」
その様子を見たハロルドは、クスリと笑いながらも同じように35GT-Rを空きスペースにバックで駐車させる。
「……ふぅっ。コレでよし、と」
イグニッション・キーを捻ってEgを切ったビスマルク。サイドシルに腰掛けたまま身を翻して、足を車内から地面へと着けた。黒いスニーカーの底面(ソール)が、パフっと空気を押し退ける音がする。
「いやー、お見事お見事♪ ドイツのおねーさん、なかなかに器用で……なかなかの美脚でもあるわね~」
隣に着けた35GT-Rから降り立ったハロルドは、先程まで360km/hというスピード域で鎬を削りあった相手───ビスマルクに声を掛ける。
「び、美脚……同性だとしても、初対面の相手に対して言う事かしら?ソレ……」
「あら、そーかしら?私は事実を言っただけなんだけどね~」
「……相当な変わり者みたいね、貴女って」
「んふふ、よく言われるわ♪仲間からも、兄貴にもね」
「仲間……チーム『Dunamis(デュナミス)』ね?噂は聞いてるわよ、色々と。こうして顔を突き合わせて話すのは、今が初めてだけど……」
その言葉と共にビスマルクは、35GT-Rのフロントウインドウ上端に貼られた「Dunamis」のカッティングフォントと、フロントバンパーに斜めに貼られた銀色のステッカーに視線を向ける。
「あら。私達の名前を、あの『シュヴァルツェ・クレーエ(漆黒の雌鴉)』に覚えてもらえてるなんて……光栄ね♪」
「───貴女みたいな走り屋や、私の仲間から呼ばれる時は……なかなか悪い気はしないわ、その二つ名。じゃ、改めて……木更津鎮守府所属の艦娘・ビスマルクよ。Sehr erfreut, Junge dame.(はじめまして、お嬢さん)」
「ご丁寧にどーも!私はハロルド・ベルセリオス。レーシングチーム『Dunamis』のメンバーよん♪」
互いに自己紹介を終えると、鳳翔をはじめとした他の艦娘3人や、『Dunamis』のメンバーも集まってくる。
「……はじめまして、ですね。『ジューダス』さん……」
リオンの姿を見て、鳳翔は恐る恐るながらも声を掛ける。
「……まだ、その二つ名で呼んでくれる走り屋がいたとはな。僕も君達───艦娘4人組の話は聞いている。特に彼女……『シュヴァルツェ・クレーエ』は乗っているマシンがマシンだからな。話題にならない方がおかしいさ」
「フフンっ、でしょう?」
リオンから二つ名とマシンに言及された事で、ビスマルクは得意気になる。
「意外ね~。ビスマルクさんって案外目立ちたがり屋なワケ?」
「そうよ、ハロルド。私は褒められて伸びるタイプだから♪」
上機嫌なビスマルクを見て、ハロルドがからかい半分で投げ掛けた言葉に彼女はすぐさま返答する。『もっと褒めてくれても良いのよ?』と言わんばかりに。